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14日目 陳さんと考える抖音(Tik Tok)の未来
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眩しい日差しに目を細めながら朝食を食べた後の9時半
陳さん(2回目)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「陳さん~おはようございます」
「エリ先生、おはようございます」
画面に映る陳さんはバッチリと化粧をしていて綺麗だ。以前は手に持っていた自動翻訳機を今日は持っていない。
「お元気ですか?」
「はい。今日はスケジュールが緩くてゆっくり過ごせるの」
陳さんは北京の金融会社に勤めながら個人投資家としての一面も持つ。
「そうなんですね。それは良かった」
「ええ。日本のジブリの作品である"千と千尋の神隠しを見たわ"」
「ええ、良いですね笑」
「凄く面白かったわ。ストーリーはもちろん幻想的な作画も素敵だった」
「あ、そうだ。以前、陳さんにbilibiliでの動画投稿を紹介された後に中国語と日本語での自己紹介の動画をとってみましたよ」
以前、陳さんとレッスンで話した際に陳さんから、私がbilibiliで日本語講師として日本語関連の動画を投稿したら多くの人が見てくれる、と勧められたのだ。bilibiliは中国版のYouTubeだ。
「あ、本当ですか?後で送って下さい。bilibiliのアカウント作成や字幕を付けたりなどは私がやりますよ」
「ええ、いいんですか?」
「はい」
「なんだか悪いな...」
「いえいえ、こういうのってなんだかワクワクするでしょ?」
そう言って陳さんは笑う。確かにワクワクする。国外市場に自分のコンテンツを発信するなんて不思議な感じだ。
「陳さんは中国企業のSNSしか使わないんですよね?」
「基本的にはね。厳密にいうとVPN(Virtual Private Network)でTwitterやInstagram 、それに中国国内では閲覧出来ないWebページにアクセスはできるわ。だけど、多くの中国人にとってアウェイなの。分かる?」
陳さんの言っている事はよく理解できた。中国人にとってTwitterやInstaglamよりも微博を、LineやWhatAppよりも微信(WeChat)を、Googleよりも百度を使う方が便利で心地いいのだ。それに、中国には人口14億人以上が構成する膨大な市場があるわけだから中国企業が運営するSNSで網紅(インフルエンサー)になれば十分認知され、影響力を持てる。
「分かります。以前、上海出身のモデルをしている大学生の女の子の生徒がいました。彼女は微博では1万人以上のフォロワーがいたから、今度は海外のフォロワーもつけたいと思い立ちInstaglamを始めましたが中々うまくいかなかったようです。当たり前ですが両アプリのトレンドやニーズは違うし、微博の方が中国人からすると理解しやすいんでしょうね」
「まあ、そういうことね。エリ先生は抖音(TikTok)は使っていますか?」
「以前見ていましたが今はやっていません」
「そうなの。珍しいですね」
「うーん、そんなに珍しくはないかな。TikTokは若い人が使っているイメージです」
「エリ先生だって十分若いですよ笑 中国ではTikTokのユーザーは80后~90后と言って、大都市に暮らす1980~1990年代生まれの世代が1番多いんです」
「そうなんですか。恐らく中国のショートビデオの市場は日本のそれよりもだいぶ大きいんでしょうね」
「うーん、まあそうですね。日本だけじゃなくてショート動画の市場に関しては中国は間違いなく最先端です。北京や上海の大都市の多くの人がHuawei(ファーウェイ)やXiaomi(シャオミ)のスマホでショート動画を見ています。統計では彼らのショート動画の視聴時間が微信(WeChat)の利用時間を超えて1日110分という結果が出ています」
「110分??1日に2時間近くもショート動画を見ているんですか?」
「そうです。あまり理解できない?」
「うーん、もちろん日本のユーザーでもそのくらいの時間を見てる人はいると思うけど、日本ではSNSにおいてTikTok一強って訳でもないから単純に可処分時間が足りなくて利用時間はそんなに多くないと思っていました」
「なるほど。日本においてはショート動画のプラットフォームはTikTokのシェアが1番多いの?」
「現時点ではそうですね。中国ではどうですか?」
「中国では抖音(TikTok)の他に快手(Kuai Shou)ですね。この二つは結構ユーザーやコンテンツの傾向が違うわ。抖音のユーザーは女性が多く、快手は男性が多い。また、抖音のユーザーは大都市に暮らす1980~1990年代生まれの世代で、学歴は高卒以上が中心だなのに対して、快手のユーザーの多くは地方の中小都市に住む2000年以降生まれのさらに若い世代で、学歴は中卒レベルも少なくないです」
「なるほど。私は以前一度快手を使ってみたことがあるんです。面白い動画ばかりでずっと見ていられました。でも快手を知っている日本人はあまり多くないですね~」
「そうね。まあ、YouTubeやbilibiliの需要が無くなる事はないけれどads(広告)やメディアの役割、そして純粋な娯楽としてショート動画の文化がさらに大きくなるのは明白よね」
「確かにそうかもしれないですね...。欧米でも#ShortsでYouTubeなどで短い動画コンテンツが増えてますしね」
「うん。でもそれならプラットフォームを変えちゃった方が早いのよね。YouTubeとTikTokの違いはなんだと思います?」
「うーん...。YouTubeは検索して動画探す事があるけどTikTokは殆ど受け身で自分にあった動画が永久に流れてくるところとか?」
「そう! さすがエリ先生! レコメンデーション機能です。TikTokのアルゴリズムやユーザビリティは群を抜いています。なんていうか、TikTokには言語がいらない。自分の好みや欲しい情報を自動的にリコメンドしてくれるから検索する必要すらないんです」
なるほど...。恐るべしTikTok。しかし、だからこそ個人情報やプライバシーの問題が同時に浮かび上がる。
「なるほど。プライバシーの問題はどう考えていますか?」
「うーん。正直中国はそこは筒抜けよね。全ての個人情報は政府が把握してしまっている。これを人権の侵害だと非難する声ももちろんある。だけど、皮肉なことに幅広いユーザーの個人情報が取れるという事は無尽蔵なデータを元に研究を続けられるということ。アメリカはプライバシーや権利に関する問題が浮かぶと研究がストップするけど、中国はストップしない。ユーザーの情報を元に洗練されたアルゴリズムの開発を続けられる」
うーん、なんだか複雑な問題だな...。
「やはりアメリカと中国のこれからの動向や関係性が重要になってきますね」
「そうね。どうなるのか...」
レッスンの終わりの時間
「今日はショート動画など興味がある話題について色々お話しできてよかったです」
「いえ、こちらこそ。またお話ししましょう」
「はい、もちろん」
「じゃあ、エリ先生の自己紹介の動画を後で確認してみますね」
「あ、そうだった。はい、なんかすみません。宜しくお願いします」
「はい。ではまた、さよなら」
「はい、さようなら」
今日陳さんと話した感想
TikTokを始めとする中国のショート動画の市場は本当に凄かった。この分野で時代の最先端をいく中国の動向には目が離せないと改めて思った。
陳さん(2回目)
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「陳さん~おはようございます」
「エリ先生、おはようございます」
画面に映る陳さんはバッチリと化粧をしていて綺麗だ。以前は手に持っていた自動翻訳機を今日は持っていない。
「お元気ですか?」
「はい。今日はスケジュールが緩くてゆっくり過ごせるの」
陳さんは北京の金融会社に勤めながら個人投資家としての一面も持つ。
「そうなんですね。それは良かった」
「ええ。日本のジブリの作品である"千と千尋の神隠しを見たわ"」
「ええ、良いですね笑」
「凄く面白かったわ。ストーリーはもちろん幻想的な作画も素敵だった」
「あ、そうだ。以前、陳さんにbilibiliでの動画投稿を紹介された後に中国語と日本語での自己紹介の動画をとってみましたよ」
以前、陳さんとレッスンで話した際に陳さんから、私がbilibiliで日本語講師として日本語関連の動画を投稿したら多くの人が見てくれる、と勧められたのだ。bilibiliは中国版のYouTubeだ。
「あ、本当ですか?後で送って下さい。bilibiliのアカウント作成や字幕を付けたりなどは私がやりますよ」
「ええ、いいんですか?」
「はい」
「なんだか悪いな...」
「いえいえ、こういうのってなんだかワクワクするでしょ?」
そう言って陳さんは笑う。確かにワクワクする。国外市場に自分のコンテンツを発信するなんて不思議な感じだ。
「陳さんは中国企業のSNSしか使わないんですよね?」
「基本的にはね。厳密にいうとVPN(Virtual Private Network)でTwitterやInstagram 、それに中国国内では閲覧出来ないWebページにアクセスはできるわ。だけど、多くの中国人にとってアウェイなの。分かる?」
陳さんの言っている事はよく理解できた。中国人にとってTwitterやInstaglamよりも微博を、LineやWhatAppよりも微信(WeChat)を、Googleよりも百度を使う方が便利で心地いいのだ。それに、中国には人口14億人以上が構成する膨大な市場があるわけだから中国企業が運営するSNSで網紅(インフルエンサー)になれば十分認知され、影響力を持てる。
「分かります。以前、上海出身のモデルをしている大学生の女の子の生徒がいました。彼女は微博では1万人以上のフォロワーがいたから、今度は海外のフォロワーもつけたいと思い立ちInstaglamを始めましたが中々うまくいかなかったようです。当たり前ですが両アプリのトレンドやニーズは違うし、微博の方が中国人からすると理解しやすいんでしょうね」
「まあ、そういうことね。エリ先生は抖音(TikTok)は使っていますか?」
「以前見ていましたが今はやっていません」
「そうなの。珍しいですね」
「うーん、そんなに珍しくはないかな。TikTokは若い人が使っているイメージです」
「エリ先生だって十分若いですよ笑 中国ではTikTokのユーザーは80后~90后と言って、大都市に暮らす1980~1990年代生まれの世代が1番多いんです」
「そうなんですか。恐らく中国のショートビデオの市場は日本のそれよりもだいぶ大きいんでしょうね」
「うーん、まあそうですね。日本だけじゃなくてショート動画の市場に関しては中国は間違いなく最先端です。北京や上海の大都市の多くの人がHuawei(ファーウェイ)やXiaomi(シャオミ)のスマホでショート動画を見ています。統計では彼らのショート動画の視聴時間が微信(WeChat)の利用時間を超えて1日110分という結果が出ています」
「110分??1日に2時間近くもショート動画を見ているんですか?」
「そうです。あまり理解できない?」
「うーん、もちろん日本のユーザーでもそのくらいの時間を見てる人はいると思うけど、日本ではSNSにおいてTikTok一強って訳でもないから単純に可処分時間が足りなくて利用時間はそんなに多くないと思っていました」
「なるほど。日本においてはショート動画のプラットフォームはTikTokのシェアが1番多いの?」
「現時点ではそうですね。中国ではどうですか?」
「中国では抖音(TikTok)の他に快手(Kuai Shou)ですね。この二つは結構ユーザーやコンテンツの傾向が違うわ。抖音のユーザーは女性が多く、快手は男性が多い。また、抖音のユーザーは大都市に暮らす1980~1990年代生まれの世代で、学歴は高卒以上が中心だなのに対して、快手のユーザーの多くは地方の中小都市に住む2000年以降生まれのさらに若い世代で、学歴は中卒レベルも少なくないです」
「なるほど。私は以前一度快手を使ってみたことがあるんです。面白い動画ばかりでずっと見ていられました。でも快手を知っている日本人はあまり多くないですね~」
「そうね。まあ、YouTubeやbilibiliの需要が無くなる事はないけれどads(広告)やメディアの役割、そして純粋な娯楽としてショート動画の文化がさらに大きくなるのは明白よね」
「確かにそうかもしれないですね...。欧米でも#ShortsでYouTubeなどで短い動画コンテンツが増えてますしね」
「うん。でもそれならプラットフォームを変えちゃった方が早いのよね。YouTubeとTikTokの違いはなんだと思います?」
「うーん...。YouTubeは検索して動画探す事があるけどTikTokは殆ど受け身で自分にあった動画が永久に流れてくるところとか?」
「そう! さすがエリ先生! レコメンデーション機能です。TikTokのアルゴリズムやユーザビリティは群を抜いています。なんていうか、TikTokには言語がいらない。自分の好みや欲しい情報を自動的にリコメンドしてくれるから検索する必要すらないんです」
なるほど...。恐るべしTikTok。しかし、だからこそ個人情報やプライバシーの問題が同時に浮かび上がる。
「なるほど。プライバシーの問題はどう考えていますか?」
「うーん。正直中国はそこは筒抜けよね。全ての個人情報は政府が把握してしまっている。これを人権の侵害だと非難する声ももちろんある。だけど、皮肉なことに幅広いユーザーの個人情報が取れるという事は無尽蔵なデータを元に研究を続けられるということ。アメリカはプライバシーや権利に関する問題が浮かぶと研究がストップするけど、中国はストップしない。ユーザーの情報を元に洗練されたアルゴリズムの開発を続けられる」
うーん、なんだか複雑な問題だな...。
「やはりアメリカと中国のこれからの動向や関係性が重要になってきますね」
「そうね。どうなるのか...」
レッスンの終わりの時間
「今日はショート動画など興味がある話題について色々お話しできてよかったです」
「いえ、こちらこそ。またお話ししましょう」
「はい、もちろん」
「じゃあ、エリ先生の自己紹介の動画を後で確認してみますね」
「あ、そうだった。はい、なんかすみません。宜しくお願いします」
「はい。ではまた、さよなら」
「はい、さようなら」
今日陳さんと話した感想
TikTokを始めとする中国のショート動画の市場は本当に凄かった。この分野で時代の最先端をいく中国の動向には目が離せないと改めて思った。
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