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5の扉 ラピスグラウンド
石たちのミッション
しおりを挟む「あーあ、依る可哀想。今あの子がきちんと頼れるのなんて、アンタしかいないのよ。あんな目されちゃって。泣いてるわよ、今頃お風呂で。」
帰ってきて部屋に入ると、気焔を正座させたわ。
ちょっと反省させないと。あの子が、みんなの運命なんて重いものを背負っているのはあの子のせいじゃない。
分かるんだけど、みんな不器用なのよねぇ。
まあ石だから仕方が無いのかもしれないけど。
「いや、吾輩はそんなつもりは無くてだな。ダメだと言いたかっただけで。あまり依るに甘くするとあるじに締められるでな。あまり吾輩に頼らせるのもな…………。」
言い訳しちゃって。
まぁ可哀想だと思うけどね。気焔は気焔で依るの事かわいいだろうし。
でもあんまり可愛がると消されるしね。マジで。
私は自慢じゃないけど人間と一緒に100年近く過ごしているわ。
沢山の人間を見てきた。人間が、他人に言えないような事も聞いてきたの。
みんな、意外と猫にはなんでも話すのよね。
私が分かってるなんて、思ってないんでしょうけど。
ま、その秘密を持ったまま、何処かに行かれる恐怖は知らない方がいいわね。
猫が、死ぬ時にいなくなる話って、聞いたことあるかしら?それね、1割くらいは私と同じだから。
長く生き過ぎるとね。移動しなくちゃいけないし。
人間という種族は未知のものを嫌うから。自分が理解できないものだ、と認識した途端手のひら返すなんて日常茶飯事よ。
長い間生きてると色々あるわ。
でも、あの子は違ったけど。
依るに初めて言葉が通じた時、あの子の目は変わらなかった。今まで生きてきて、初めてよ。
何度かバレた事は、ある。昔はもっと、人は怪異に寛容だったしね。
そんな事もある、くらいの人もいた。
でもあそこまで変わらないのは、あの子だけ。
それだけで、私があの子に協力したくなる理由にはなるわ。しかも生まれた時から一緒だから、お母さんかお姉さんという感じなんでしょうね。
そんなあの子が可愛いのは当然。
気焔はまだまだね。
まあ問題は気焔というより、その主なんでしょうけど。
あの時もねぇ…………。
私は依るがウイントフークの家で寝ていた時のことを思い出した。
あの時も、ねぇ。
あの日は依るが気焔の全身を初めて出して、疲れて寝ていたのよね。そこへ、シンがやって来た。
多分、気焔が全部出たから心配でやって来たんでしょうけど。
シンはシンでもうウイントフークにはバレてるからって、なんでもいいってワケじゃないんだけどね。ホイホイ現れても困るわよね、ウイントフークも。
まぁ、ただの人じゃない事は勿論気が付いているでしょうけど。
ウイントフークだからよ、ウイントフークだから。他の人なら、…………でも返り討ちだわね。
考えたくないわ。
あの瞳で本気出されたら、私も命は無いでしょうし。一瞬でお陀仏よ。
ま、依るに味方してる限りは大丈夫でしょうけど。
そして依るが寝ている間に、ここぞとばかり見ていたわね。
母か姉としては、ちょっと咎めたくなるくらいに。絶対触ったりはしないだろうから、言わなかったけど。
でも、あれだけオーラ出してて気付かない依るも凄いけどね。ウイントフークだって、気付いてるでしょ、アレ。
あんなにあの子にだけ焦がれるオーラ出してるのに。色々考えたけど私が思うに「焦がれる」が近いわね。あの感じ。
見てるこっちが恥ずかしいわ。
多分人間には分からないと思うけど、本人には伝わるように出して欲しいわよね。ホント。
私も、蓮の具体的なミッションを知ったのはその時だったわ。
「主。あれじゃ全然無理ですよ!もうちょっと何とかなりませんか?」
「…………。」
「…。一番メインの石が寡黙なんだもんなぁ。どうしたらいいと思う?みんな。私だけじゃ無理だよ~。」
「こればっかりはねぇ。わたしたちが出来るのは、本当に蓮がやったみたいに光るくらいでしょう?」
「そうですよね。他の石に変えられないんですか?」
「多分、ここでの核は決まっちゃってるんじゃない?そもそも主様が社交的な石を持っていたかが疑問ですが。」
「「それはある。」」
「あの時。私頑張って光ったのに、主は無言だし。」
あの時とは夏の祭りの時ね、きっと。
蓮はなんとかきっかけを作ろうとして光ったみたいだけど、結局何も言わずに去ったらしいからね。確かに酷いわ。
2人になれる事なんて、殆ど無いでしょうに。
勿体無い。一体どうやって、依るに恋心なんて持たせるのかしら。
なんなら今は気焔の方がリードしてるくらいよね。消されそうだから、言わないけど。
そもそも、シンラ様である事を隠して計画を実行しなきゃいけないって無理ゲーじゃない?
なんでそんな事になったのかは知らないけど、まぁ事情があるんでしょうね。
きっと、そうしないといけないような事が。
私には神達の話は分からないけどね。
きっと怖しい話よ。経験から言って知らない方がいいわ。
「でも、なんとか依るに主の事を好いてもらわないと私が預かっているものが依るに返せないのよ。」
「返せないとまずいのかい?」
「うーん。まぁまずいでしょうね。主は対を失うし。後の影響は知らないけど。」
「じゃあ最悪好きになってもらえなかったら、主が寂しいだけで依るには影響がないって事かしら?あの子が大丈夫ならそれでも…………」
「ちょ、藍!まずい。」
あー確かにまずいわね。シンが今にも消しそうな目で見てる。
藍が依るに肩入れするのも分かるけど、所詮あの子らは神の石。神のものだからね。逆らえるわけがない。
そもそもあの子達は姫の石なんだから、姫が戻らなきゃ困るのは自分達でしょうに。
しょうがないからちょっと手助けしてあげましょう。
「藍。依るの味方なのはいいけど、あくまであなた達は姫様の腕輪。シンラ様と対の腕輪よ。そもそも姫様はシンラ様を助ける為に出かけたのよね?」
「そうよ。」
「でも、何らかの理由があってあなた達はまたシンラ様に預けられ蓮には想いが封印された。それで合ってる?」
「そうなの!絶対無くしちゃいけないからって、私に預けたのよ姫様が。私は愛の石だしね。フフン。」
「私が思うに、扉を巡って石を探すのよね?気焔。」
「如何にも。」
「そうする事で姫様に近づくんでしょう?で、その中で蓮は頑張って好いてもらう計画を実行すると。」
「そうそう!」
「結構時間かかるわよね?まだ扉2つ目だし。」
「「「「「まあ。そうね。だな。」」」」」
「気長にいきましょ、気長に。そもそもあの子、人を好きになった事ないと思うわよ。誰それが好き!とか聞いた事ないもの。もしかしたら…余分に蓮に入っちゃってるのかもね。あの子の気持ちも。」
「ガーン!それって難易度上がったって事??」
「そうとも限らないわよ。頑張って!」
何にせよ、頑張るのはあなた達じゃないんだけどね…………。
頑張らなきゃいけない本人はしれっと私達の話を聞いてるけど。
でも、まだ誰も好きになってないって言った時、ちょっと表情出したわよ。私は見逃さない。
そんなに好きならもうちょっと何とかならないものかしらね。
そして別の日には気焔から愚痴を聞かされたわ。
「聞いてくれるか、朝どの。主は酷いのだ。依るを護れと言うくせに、あまり触るなだとか無茶な事を言う。格好つけたらダメだとかな。どうしろというのだ。」
「まぁ、ねぇ。」
「しかも、口に出すのではなく吾輩に報告させて、その時の話の内容とあるじの反応で分かるのだ。何をしたら駄目なのか。表情が少し変わる。そして目が。目がまずい。一瞬消えるかと思ったぞ。」
あらあら。仕方が無いわね。出来るだけ協力はしてあげたいけど、流石に限界はあるわ。
見てるだけって…………。
今時幼稚園児でももっと積極的よね。
「ま、基本神様って嫉妬深いものだからね。私としては誰が地雷を踏むのか、心配だわ。依るの事を気に入ってる人間も多いしね。」
「それはあるな。なるたけ接触は避けんといかん。いきなり人間1人消える、とかはまずい。」
「1人ならまだいいけどね…………。」
「止めろ、朝どの。本当になりそうだ。」
私達は頭を抱えたわ。
本人は一途なだけなんでしょうけど。
神の恋なんて、厄介極まりないわ。
ただ、それだけ1人の事を深く想えるのは羨ましいわよね。
基本的に神の対は決まってる。
文字通り、何でもするでしょうから。あの子の為ならね。
私もあの子の幸せの為なら協力するけど、とりあえず接点持ってくれないかしら。ホント。
でも想う相手がいるって幸せな事よね…………。
恋心、1日にしてならず。焦らずいきましょう。
とりあえず、好きだって言ってみたらいいのにね。フフッ。
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