透明の「扉」を開けて

美黎

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6の扉 シャット

修復完成

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その後の授業の再開と共に、私はシャットを出る日が近付いている事を、なんとなく感じていた。

其々が、其々の事を一生懸命取り組んでいる中、ウイントフークは私がシャットを出る迄滞在する事に決めたと言っていた。
レシフェ、シェラン、リュディアと共にまじない道具の製作精度を上げる為と、何だか本部長的には「後始末をしてから次に行く」と言っていた。
ホント、「次」とか言って全部知ってるんじゃないかな?あの人。何なんだろう?
でも何となく、ウイントフークの過去って藪蛇っぽいので私は突くのは止めようと思っている。
気になるけどね。

そんな感じなので、まじない道具チームは毎日大変楽しそうだ。
ちょっと怖い時があるくらい。たまに、休憩室で盛り上がっている時のあの人達…。うーん。
扱ってるのが武器でもあるので(勿論便利道具もあるけど)ウイントフーク教かと思ってたらウイントフーク軍かな?と最近は思っている。たまにシンの防御力を借りて、あのホールで実験と称し、ドンパチやっているらしい。私は出禁をくらっているので、見に行きたいけど行けないのだ…。まぁ、どっちでもちょっと変な事には変わりない。うん。

そんなウイントフークに修復室の窓について、訊いてみたけどやっぱり「違う。でも俺の窓はアレを参考にしたがな。」と言っていた。
まさかのセフィラが先だったとは………かなり優秀だったんだな、と我がおばあちゃんながらびっくりだ。何で頭のいい所は似なかったんだろ?おかしいな。


イスファはあれから張り切ってシュツットガルトの後継ぎとなるべく、勉強を始めたようだ。シュツットガルトが喜んでいた。
専攻は工芸にしたみたいだけど、その他の事も覚えないといけないので中々大変なようだ。たまに通路や食堂で会うと、吹っ切れた顔で楽しそうだから私も嬉しい。告白の事は、二人ともの暗黙の了解で胸に収めておく事にした。
「とりあえず、想いだけ持ってって。」と言っていたから。イスファも、何か気が付いたのだろうか。


シャルムはやっぱり畑の方に結構時間がかかるので「寂しいけど、多分ラピスに帰るのは遅くなりそうだよ。」と言っていた。やっぱり糸にするまでが結構かかるらしくて、まじないを使ってどのくらい成長スピードを早められるか長老と楽しそうに相談しているのを、蚕の様子を見に行った時に見かけたのだ。
そう、長老はヘンリエッタへの助言と共に結局教師としてもやっているようだ。ヘンリエッタが長老のアドバイスを得て研究に没頭しすぎってのもあるみたいだけど。
すっかり「ファルスターって誰?」と思っていたけど、ヘンリエッタに貸し出されたのは長老だったんだねそういえば。「ファルスター」なんて、カッコいい名前だから誰かと思っちゃった…。一度は聞いたのにすっかり忘れてた。



そう、実は長老がフローレスに会ったのかどうかも私は気になっていた。でもそれを知るのはまだ先の事だったけど。



ある日の裁縫の授業。

久しぶりにエローラ、リュディアと全員揃って縫い物をしているものだから、手と口とどっちが沢山動いているかはいい勝負だ。

「いいね、そのぱーてーってやつ。」
「うん、パーティーね、パーティー。」
「まぁいいじゃない。レナの分は私が作るのでいいのよね?」
「うん。それが早くて綺麗だろうし。何しろいつもと違うレナが見たい。」
「そうだね。ベオグラード大丈夫かな………?」
「「だね。」」
「でも面白いからいいんじゃない?」

私達が勝手に相談しているのは、多分、そう遠くない日に来る「お別れパーティー」の相談だ。

各々、終了を決めた者は戻り、継続の者はそのままウィールで学ぶ。どこまで、どのくらい学ぶかはそれぞれの自由だからだ。
懐かしいな………最初にシュツットガルトさんとレシフェが言ってたっけ。

そんな感慨にふけりながら、手を動かしていく。

エローラはラピスに戻る事が決まっている。もう納める服も出来上がったし、今はそのパーティーに着る為の自分の服とレナの服も作ってくれている。
レナは普段可愛い系の服を着ている事が多い。例えるとソフトなゴスロリっぽい感じ………。最初見た時は懐かしさを感じたくらい。いや、人形みたいなレナにはとっても似合うんだけど。今回違う雰囲気が見たい!と私とリュディアが言ったので、エローラと言えば、のちょっとモードにしてもらう予定だ。
「レナっぽいモードね…。」って考えてたから、多分可愛いカッコいいになるんじゃないかと、めちゃくちゃ楽しみにしている。

リュディアは「派手なのが嫌」って言って、私達の意見は取り入れてくれなかった。絶対、大人っぽいの似合うと思うのに………。普段とそんなに変わらない、ちょっといいお仕着せみたいなデザインを描いてたので仕方ないから眼鏡を貸そうと思っている。リュディアの眼鏡は優等生眼鏡だから、私の眼鏡にすればちょっと可愛いメイドコスっぽくなるんじゃないかと思っている。多分、そう。

そんなリュディアとベオ様はまだウィールに残るそうだ。
「まだ実になっていない。」というベオ様の言葉により、まだもう少し勉強するらしい。ていうか、まだデヴァイに帰らないで色々考えたいんだって。一応、父親には建前を言って了承してもらったらしい。リュディアは喜んでたけど。
私としてもウィールにいてくれ方が連絡が取りやすくていいと思う。ラジオ電話もあるし。

結局、移動するのは私とレナ、エローラだけになるようだ。何だか寂しいけど、シェランに関して言えばグロッシュラーに居ればいずれ帰ってくるし、レシフェは一緒に移動してくれるようだ。
何だかんだで今回レシフェに頼っていた所は大きい。そして次に行くのはある意味レシフェのホームなので、かなり心強い事は確かだ。
ウイントフークも始めからそのつもりだったみたいだし。


そんな事を考えつつも、私は一人遅れている製作を必死で間に合わせようとしていた。
いや、そんな厳密な期限は無いんだけどね?
ちょっと私待ちみたくなってるんだよね…………。

シンの服、気焔のパンツ、自分のワンピース、更に修復。
私の抱えている課題は多い。しかし欠席期間も多い私は一人必死に縫っていた。いや、口も動かしてるんだけどね、…うん。



最初に取りかかったのは自分のワンピースだ。
ある意味、気負いも無いし自由に縫えるのでどんどん思うように手を動かしていけば完成するから。

「やっぱりその色は素敵ね。ヨルにピッタリ。」

フローレスも太鼓判を押してくれたオーロラのような夜空色に七色が踊る生地に、どんな装飾をするか相談してみた。

「ビーズを付けちゃうとゴテゴテすると思うんですよ。だけど何も無いのも味気ないし…でも生地色自体が華やかなんですけどね。もう一手間入れたいんだよなぁ。」
「じゃあやっぱりこれじゃないかしら?」

そう言ってフローレスが持って来たのは、この前私と気焔が巻き取った糸だ。絹糸なので、また染めて使えば綺麗な光沢が出る。それに、服の生地と同じ畑の蚕糸なので馴染みがいい筈。
確かに良さそう。
私が集中し出したのを認めてフローレスはまた他の生徒を見回りに行く。
その後は、黙々と染めて、縫ってを繰り返した。



生地が夜空の色だから、銀糸にするか…。でも同じくオーロラっぽくしても、見る角度によって変わって可愛いよね…。うーん。でもあの二人と同じ生地だから、ちょっとお揃いっぽくするのもいいな。そうするとやっぱり銀糸かなぁ。
でも逆に銀糸のが浮いて目立つかもね?うーん。

一応、二つ染めてある。オーロラの方はそのまま力を込めれば良かったので簡単だった。銀糸はちょっと調整が難しい。あの金属感を出すのが、ちょっとコツが要るのだ。結構色々試行錯誤して、やっと出来た。ちなみに気焔のパンツは金糸にしたかったので、呼び出して力を込めてもらった。
やっぱりそのままは楽そうだよね………気焔が手をかざすと、綺麗にヒラリと金に塗り替えられた糸は今日も光を当てなくても、なにやら光っている気がする。
とりあえず、生地に当ててみて部分的に変える事にした。折角染めたし?

よし。これで行こう。
時間は無いけど、妥協が出来ないのが辛い所だ。
修復以外の服は、部屋でも出来る時はせっせと縫った。気焔の服は、内緒にしたかったから教室でやってたけどね。多分、最初作るって言った時嬉しそうだったから内緒にして驚かせるつもりなのだ。………でも糸は染めてもらったけど。




そうして色々並行しながら、修復の日になった。

その日、仕上がった自分のワンピースをフローレスにチェックしてもらう為に持って修復の部屋に向かった。姫様の服はやっぱりあそこに置きっぱなしだ。
だいぶ進んで、あと少し、補修と手直しが必要なくらい。今日出来るか、次回か、という所。
実は私は、姫様の服を少しアレンジしようと企んでいた。

最終的に自分のワンピースは割と大人っぽく、仕上がった。ラピスでも服が可愛らしい系統だってので、その反動でいくつかシンプルな服と今回のワンピースを作った。欲望のまま作ったら、何だかかっこいい感じになったのだ。
夜空色のそのワンピースは胸元、袖口、裾には銀糸の刺繍を入れて、全体にはオーロラっぽく色が変わる糸で星の様な刺繍を散らしてある。かなり細かく入れたのでパッと見はシンプルなワンピースだ。
細部を注意して見ると、凝っているような作り。
私の、好きなやつだ。

袖のボリュームだけタップリ取って、あとは割とスリムなシルエットに仕上げた、そのワンピースは私にしては結構大人っぽい。でもここの所、女子陣からやたらと「何だか大人っぽくなった」と言われるので一応、合わせて作ったような形だ。
レナのような可愛らしい顔立ちじゃないから、こういうデザインの方が自分でもしっくりくる。
そこに、姫様の服の修復が来たので「可愛いものを作りたい」熱がドーンと溢れたのだ。

私だって、可愛いものは好きだ。似合わないだけで。うん…。
姫様の服は、基本白ベースのレースと刺繍、一見シンプルだがよく見ると豪華、という形の品の良いものだ。何だか自分の服の色違いに近いそのデザインを修復ついでにちょっと可愛くしよう、と思ったのは出来心だった。
まだ、綸子も余ってたし。
姫様の服はサテンっぽい生地なので綸子も合う。ちょっと、スカートを重ねてボリュームを出して…………胸元を少しだけ広くして、その分レースで覆う形にしよう。うんうん、一から作るよりやっぱりアレンジは楽だね…あとここももうちょっと付けよう…。

アレコレやってたら、やっぱりその日には終わらなかった。

それからまた、シンの服を縫ったり気焔の仕上げをしたりして、また2日後に修復の部屋へ行った。




ガチャ

ん?少し暗いな?
灯りをつけて、窓を見ると何でか朝方のような景色になっている。いつも、早起きをしてお茶を飲んで寛ぐ私の時間。
何だか懐かしくなって、裁縫の部屋に行ってわざわざお茶を入れてきてしまった。いいのよ、たまにのんびりしなきゃ。

そうして、ちょっと休憩してから仕上げをしようと窓の景色を眺める。そう、私の部屋からのラピスの景色。

「やっぱり…………。」

思った通り、朝の景色だ。殆ど白い空が少しずつ黄色の光と水色に染まっていく。この瞬間が好きで、朝起きるのはやめられないのだ。
やっぱり、一度帰ろう。
そのままグロッシュラーに行くか、悩んでたけどイオスのクッキーもレナに食べさせたいし、みんなにも会いたい。一度帰ろう。それから、行こう。

そう決めると、残りのお茶をぐっと飲んで最後の仕上げに取り掛かった。



あとちょっと…………。
ここ、もう少しやって…これ付けて…………。
どうかな?   うん、可愛い!
完璧じゃない?

でも、なんか足りないな………ちょっと、ズレてるっていうか馴染んでないっていうか…?
プレス…はしない方がいいよね。あ、ちょっとポワっとすればいいんじゃない?そうすれば馴染んでバランスが取れそう。

そう、新しく修復した部分と古い部分が殆ど同じ素材を使っているにも関わらずやはりどうしても少しのズレが生じるのだ。仕方がない事とはいえそれが気になっていた。でも、多分まじない力を全体に通せば均一に出来るのではないか。
多分、そうなる。
本能で、分かる。

そうして私は姫様の服に力を込め始めた。少しずつ、ポワっとだ。

「よし、行くぞ?」

一人だけど、誰にともなく声を掛け力を込める。首元から触れて、そのまま胸、袖、ウエスト、スカート…………順に力の青い遊色が巡ってゆき、一通り全てを満たすと光が消える。

「で…きた。」

そう、その姫様の服は私が「できた」と口にした瞬間スッと手元から消えた。

「え?!」

思わず大きな声が出る。
ちょ、ちょっと、私の血と汗と涙の結晶?!どこ!?えーーーーー!!?

「ちょ、どこ?!!クレーム!!」

「何を騒いでる。」

「へ?」

声がして、振り向く。
私が一人ジタジタしている所へ現れたのは、やっぱり気焔だった。






え…………なんか固まってるんですけど?

そう、多分私がピンチだと思って来てくれたであろう、気焔は戸口で固まっていた。
飛んできたのではなく、多分普通に迎えにきてくれたと思しき彼は扉を開けて私を見てから微動だにしない。
どういう事?何かのまじない??

思ったよりも集中していたらしい私は、窓の景色が橙になっている事を確認してお昼を食べ損ねている事に気がつく。ヤバい…また裏工作してもらわなきゃ…。でも気焔がここにいるという事は私がお昼を食べていないのを把握して、迎えにきたのだろう。それならクマさんは大丈夫…と。
でも、どうしたのかな?最近よく固まるよね、この人…………。え?石になっちゃうとか?いやいや…………。

とりあえず、見渡しても服は見当たらない。気焔にも一緒に探してもらうとして…。取り急ぎ、私は片付けを始めた。何にせよ、この狭い部屋にないのだ。じゃあ違う所を探さなきゃ。
私のワンピースは置いてってもいいかな…。

「依る?」

あ、やっと喋った。
振り向くと、気焔はさっきと同じ顔をしていて、でも部屋に入って扉を閉めていた。
良かった、動いてる。そんな理由で安堵して、自然と笑みが出る。

「どうしたの?心配するよ?」

ちょっと気焔に手を伸ばしながら、近づいた私は姫様の服の行方に気が付いた。

そう、靴と同じ。

私にぴったりくっついている。着て、いたのだ。



何で?え?!小さかったよね???でっかくなっちゃった!??
腕を上げて、袖を見る。スカートも。胸元のレース、スカートの足したボリューム。
どれも、私には可愛過ぎると、姫様のならいいと思ってアレンジした、可愛くて品のいい、姫様の服だ。

「え…ええ??ちょっと、可愛過ぎない?」

一人呟くと、気焔を見る。
何か言ってよ…だから固まってたの…?
でも気焔は何も言わずに私の所へ来ると、ヒョイと抱えてパッと飛んだ。
煙突の、上に。





「え!高!凄!」

気焔が飛んだのは、多分ウィールの屋上にある二本煙突のうちの一本の上。
隣にもう一本低いのがあるし、下にはガラスの様なドームが見える。
うわぁ~高い。こうして下を見るとヤバいね…………。

下を見ると怖いし、今まで来た事のある、どの場所より高くてしかも手すりも無い、そして、狭い。私は絶対気焔を離さない様に、でも、少しずつ慣れてきて辺りをぴょこぴょこ見回し出した。
「これ。出過ぎだ。」と言われながら。

「何だか一番初めに屋根に連れてってくれた時みたい。」

何の気無しに、そう言った。でも見上げた金の瞳がそうだ、と言っている。やっぱり。
でも、どうして?
多分私の言いたい事が分かったのだろう、気焔は「なぁに、初心に戻っただけよ。」と言った。


橙の空はもうすぐ日暮れになる事を示していて少しずつ灰がかってきている。
真っ暗にはならない、シャットの夜。でも、それはそれで。ここから川が光るのを見るのもいいかもね?と思いつつもずっとここにいるのは怖いかも…とも思う。

そう言えば、あの時は「いつでもそばで守って」って言ったんだよね…。

屋根の上に登る前、呪文を唱えて言った言葉。
無意識でも、スルリと口から出たその想いは今でも変わっていないし、気焔は側にいてくれる。

たとえ、姫様の事が好きだとしても。



もう、誰を好きでもいいかぁ…………。
赤味がかってきた空を見ながら、そう、思う。

側の気焔は光を受けて、金色から橙に染まっているし、私は………。
キョロキョロと辺りを見渡して、誰も、何もいない事を確認する。どこよりも高い、この煙突は他所からはよく見えないだろう。何より多分、光を受けて私も橙になる筈だから。

そう思って、髪留めをスルリと外した。
気焔は目をパチクリさせているけど、私は気焔の髪と私の髪が同じ色に染まったのを見て何だか嬉しくなって、笑う。

もう、何もいらないな…………。


風の音だけが聞こえる。
二人で橙の空に取り残された様な、この時間。
ここに、こうして一緒にいられるだけで。

あ。この展開…。何処かで?
そう思って気焔を確認した時には、彼はあの瞳になっていた。





ん?なに?やだよ?その目。駄目。
でもあの時の事はよく、覚えていない。どうして…?
とりあえず今回は現状打破を試みた私は、気焔に声を掛ける。この、緊張感を打ち破ってやる。少し、緊張しながらもやっと口から言葉が出た。

「…………嫌だ。」
「何が?」
「その瞳。怖いの。」
「ん?ああ、…それでか…………?」

何がそれで?でも気焔の瞳は戻らない。少し、会話した事で緊張が薄れた私は、もう少し訴えてみる。

「何か。緊張する。嫌じゃ無いけど、怖い?なんだろう…………。」

でも、そんな私の言葉を聞きながらも気焔はぐいと私を引き寄せて、顔をいつもの様に手で挟む。
全然やめる気、無いじゃん!怖いって言ってるのに!

額が触れるほどの距離で、こう訊いてくる。

「…………嫌か?」

「…嫌じゃ無いけど………何か怖い。いつもと違う。」
「それはな………仕方が無い。こっちにも慣れろ。」

ええ?!何それ?私の心臓の心配もしてよ!!

さっきから早鐘の様になっている心臓は、やっぱり苦しい。でも、確かに心地がいいのも、分かるのだ。何故か。
だから、気焔の言葉を否定出来ない。

そのまま彼は私の髪と頬を撫で始める。
ちょっと猫になった気分で、気持ちいい。



撫でられるのに慣れてきて、気持ち良さに、ついもう一方の頬に当てられている手に頬擦りする。
ピクッと、撫でている手が止まり何故か「しまった」と思った。

いつの間にか、瞑っていた目を開けるともう気焔の髪しか見えなくて首筋に吐息を感じる。
あ…でもこの展開…………?

そう、すぐに「バチン」と弾かれて次の瞬間私は煙突から放り出された。

「キャ………!」


ウソでしょ?!死ぬ!

そう思った瞬間、もう金色の炎に包まれて気焔の腕の中だった。でも何故か気焔は珍しく「ハハッ」と声を出して笑っていて、何だかつられて私も笑ってしまった。
どうしたんだろう?でも、楽しいならいいか?ん?いいかぁ??

そのまま、何だか楽しそうにまた私を見た気焔をチロリと睨みながら私達はフワッと部屋に戻ったのだった。




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