透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
246 / 2,047
7の扉 グロッシュラー

依ると豆の木

しおりを挟む

「私は最近思うんだが。」


依るが再び抱いた私を下ろして、私達はまた敷物の上に落ち着いた。

イストリアが入れてくれてるのは例の如くハーブティーだ。

落ち着く様な、柔らかい香りと少しの甘さが鼻をくすぐる。
ここのハーブ達は本当にイキイキとしているので、とてもいい匂いがするの。
農薬使ってたり、安く作られているのと違って、その本来の種がイキイキと育っているのが見ていて分かるし、香りも味もいい。

依るは案の定、まだ飲まずに匂いを嗅いでた。
私は勿論、流石にお茶まで飲まないから匂いを楽しんでただけだけどね。


そうしてイストリアは、さっきの続きを話し始めた。
依るがお茶を飲んで、落ち着くのを待って、だ。

「君があの、木を、枝を、伸ばした様に。「まじない」の強さ、それは「想い」の「純度」によると思ってる。大抵は深く考えないんだ、皆。生まれつき、で、力は持って生まれ、変わらないと、思っている。君は、どうだった?」


どう、と言われても。

チラリと依るを見ると、意外と真剣に考え込んでる。

私達の世界には勿論、まじないは無いとされているし超能力とか、長年生きてるけどは見た事無いわ。

不思議な事は、起こるけれど。




100年以上生きた私の持論で言えば、「力」を持つのは神羅万象、自然、である事が多いと思う。

あとは長く生きた?在る?モノとか。
場所、もあるけどそれは自然の中に入るかしらね?

私はおかしな猫だけれど、別に私が何か力を持ってて、依るみたいにここに来てもまじないを使える訳じゃあない。
まぁ少しおかしな猫、という部分では元の世界でもここでも、そう変わらないわね。


もしかしたら人は、昔は力を持ってたかもしれない。その、安倍晴明とかその辺り?

もう、うんと、昔よ。

でも今は。

世の中はモノとコトで溢れて本当のことなんて何なのか、よく分からなくなっているし自然も減った。
力あるものが力を失い、何か別のモノに取って代わられている、それが現代。

私は、昔の方が好きだったけど。


不便では、あった。

現代では生きられる筈なのに、昔だったから死んだ人も沢山いる。


でも、その、代わりに。


失ったものは、多過ぎた。
取り戻せるかは、わからない。

でも、イストリアの言う事って、「このこと」じゃないかと、思う。

今はもう、ダサいとか、言われてあまり残ってない、もの。
「純粋に努力すること」とか「一筋に思うこと」とか。
自然のもの、一筋のもの、なにか純粋にただそこに存在するもの、とか。

現代ではもうあまり残っていないであろう、人が入れない場所や残っている自然、遺跡や神の場所として在った、場など。

なんか、上手く言えないけど。


まぁ、要するに依るみたいなやつは「ダサい」とか「冗談通じない」とか、言われる事も多いってことよ。

この子はしのぶちゃんがいたのも、大きかったかもね。あの子も、我が道行くタイプだから。


みんなが、周りの目を気にして。
言いたいことを言わず、とりあえず合わせて。
その点はラピスなんか、似てたけどね。
だから、依るはヤキモキして首突っ込んでたんだろうけど。

つまんないのよ。
陰でぐちぐち言う奴多いし。
ちょっと言い返されたら、もう頭にきちゃって話にならない奴も、多い。
なんだろね、みんながイエスと言わなきゃ敵なのかって話じゃない?

ああ、なんだか私の愚痴っぽくなってきたわね…………。


でも、古来人の愚痴を聞く事が多かった私としては、「じゃあ好きなようにやれば?」って思う事ばかりだった。
特に、ここ50年くらい。いや、80年かな…。
まぁそこはいいけど。


だから、私にとっては。

イストリアの話は、至極当然の、内容だった。

依るは目を丸くしたり、照れたりしてたけど。
まぁこんだけ真っ直ぐなやつも今時中々いないからね。
飼い猫が保証するわ、うん。



そうして私があーだこーだと考えていると、やっと考えが纏まったのか依るが話し始めた。

ポツリ、ポツリと、考えを纏めながら話している感じだ。

「どう、思うかって言うと。どう、でしょうね?」

「私はに来てから。「何も」、してないんですけど。ただ、人の話を聞いてアドバイスしたり、お手伝いしたり、勝手に首突っ込んだりして。」

「たまには怒られて…………。フフッ。」

なんか、笑ってるけど。
大丈夫かしら。

「その、途中でこの子達が手伝ってくれる様になって。あ、イストリアさんにはまだ見せてないですよね?これが、私を手伝ってくれるみんなです。あまり知っている人はいないけどウイントフークさんは勿論知ってます。普段は隠す様、言われてますから。」

案の定、イストリアも食い付いて、この後の依るの話を聞けるのか心配だわ。

でも、依るが一応じっと待ってた。
ウイントフークよりは、マシな観察の仕方だったからかもね。

そうしてイストリアが腕を離してから、また話し始めた。

「多分、私の力なんて微々たるものなんですよ。あるのかな??この子達が、何しろ凄い、石らしいですから。あの、モンセラットさんもお墨付きですよ。知ってます………よね、はい。」

オタク同士の繋がり、ハンパないわね。

「だから、力がどうこう、っていうのはどうなんだろうな??私としては、「想像力」かな?と思ってたんですけど。妄想は得意なんで。」

変な所で胸を張り出したこの子に、イストリアはなんかウケてたけど、やっぱりこう言った。


「まじないの力は、本来人なら誰でも持つものだ。気付くか、気が付かないか。それはあるかも知れん。それに、上手く使えない者も、多い。なんでもアレやこれや思い込む奴が多いからな。」

「私も、他人よりは力は強い方だが「こんなものかな」と、決めてしまっていたんだな。やはり、君が木を伸ばすのを見て、そう思ったよ。君はアレだな、加減を知らんな。ハハッ!」

「そうなんです、この子は力が強いというよりかは常識が無いんです。「いい意味で。」」

皮肉を込めて言っておいたけど、なんか照れてるわ。
オカシイな?


、木は。ラピスの森の長老達の枝なのだろう?それならいい木になるだろう。アレはなぁ…………、多分だけれど「上」に迄、届いているのではないかと思う。帰りに彼と、確認してから帰った方がいい。もしかしたら、騒ぎになるかもしれんからな。」

「えっ。ここ、見つかったりしませんか?」

「大丈夫。そう、ヤワじゃないよ。それに、アレは島の両端、崖の下から這い上がっているだろうよ。追おうにも、飛ぶ事でも出来なきゃ、難しいだろうよ。」

ふぅん?

まぁ気焔が飛べる事はみんな、知らないから大丈夫か。

依るは一人、とっても楽しそうだけど、あの子気焔が迎えにくるって事、分かってるのかしら。

「その問題」は、何一つ、解決してないんだけど。


スッキリは、したかも知れないけどね。



「さあ、今日はどうする?彼は、いつ頃迎えに来るかな?」

ププッ、固まってるわ。
ま、忘れてたんでしょうけど。

気焔はどこまでアリバイ工作したかなぁ?

礼拝は、一日おきでもいいから…………うん?そうすると今日出てないから、やっぱり明日は出なきゃいけないわよね?
なんかウェストファリア辺りに手を回してるといいけど…………。

ないか…………姫様関連だしね。


「依る、何しろ明日の礼拝は出なきゃいけないわ。とりあえず、相談の続き、したら?」


そういや、なんで木を植えてたんだっけ??
最初相談してたよね??


頭の中には?が沢山浮かんでいたけど。

とりあえず、再びの恋愛相談が始まって私はまた欠伸が出ていた。

うん、今度こそ…………。
ちょっと、寝かせて…………。










そうして次に目が覚めた時は、既にいつもの出窓だった。

うん?

あの二人は?

どこ行ったんだろ?


とりあえず、穏便に仲直りして欲しいわよね。
そう、目立たない様に。
うん。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...