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7の扉 グロッシュラー
危険な、作戦
しおりを挟む「でも、ウェストファリアの話を聞いてからでいいと思うけど。何か、他にいいアイディアがあるかもしれないからね?まぁ、これよりいい案私が思い付かないのも、あるが。」
確かに。
本当に私も、そう、思うのだ。
だからこそ、この案が現実的に思える。
だって。
私が思い付く事と言えば、「ウェストファリアが実験で作った石を配る」という誰でも思い付きそうなものだけ。
でも。
あの人、絶対それはやらないと思うんだよねぇ………。
だって、面倒くさいもん。間違いない。
自分が面倒になりそうな事、絶対、やらないと思う。
「うん。」
一人納得して頷いていると、いつの間にか気焔が隣に来ていた。
ありゃりゃ。
案の定、睨んでる。
対してイストリアは、余裕の表情だ。
楽しそうな瞳のまま、気焔を見ている。
この人、凄いな……………………。
金色の、「あの瞳」に睨まれて。
てか、いつの間にか金だけど??!
まあ、イストリアだから………。うん………。
怯まない人なんて、そうそういない。
クイクイと袖を引っ張るが、こっちを見ない金の瞳。
仕方がないので、袖を掴んだまま私は思っている事を話し始めた。
「私も、正直その方がいいです。ウェストファリアさんの話を聞いてからになると思うけど………。」
ぶっちゃけ、反対理由が「自分が危険」しかない私は、それ以上の名案が全く思い付かない。
むしろ、何だか少し、ワクワクし始めたくらいだ。
そんな私の気配を察してか、頑なにこちらを見ようとしなく、イストリアを睨んだままの気焔。
そんな中、少し挑発する様にまた口を開くイストリア。
私はそんな二人のやり取りを、ただドキドキしながら見ているだけしか出来ない。
「君は。この子をこのまま、隠しておけると思うか?どうやったって、遅かれ早かれ、表舞台へ立たざるを得ない、この子を。君が、守りたいだけが為に。」
「あのね、多分。君が思っているより、この子は強いし周りには仲間も、いる。それは、君の問題だよ。解るか?」
ヤバい。
イストリアが。
私はただただ、聞いている事しか出来ない。
気焔の問題が「何か」もよく分からないけど、そもそもこの空気が、ヤバい。
ピクリとも、動いてはいけない緊張感、張り詰めた空気。
それに何だか押されている気がする、私。
なんだろう、これ。
しかし、そんな事はお構い無しに話は続いていく。
「この子は君と共にある事を望んでいるが、それは閉じ込める事とは違う。守らなくてはならないが、守り過ぎても、いけないんだ。沢山のもの、人と関わりその都度都度で、この子自身が、判断していかなければならないこと。まだ、どんどん色々なものを吸収して大きくなる、成長するんだ。現に、この子自身も。「変わりたい」と、感じている筈だ。」
「時には手を、離すこと。それを恐るな。それは、君の恐れだ。」
袖を握る手に、力が入った。
誰も、何も喋らない。
静かな、店の中で動くのは何処からか差し込む光だけ。
緩りとテーブルからカップに移り、店の方へ去って行く。
室内にはまた静寂が訪れたが、さっきまでよりは幾らか空気が緩んだ。
薄暗くなってきた店内にパッと灯りを着ける。
立ち上がり、自分の茶器を片付けながらイストリアは言った。
「さあ。後は、君達の話だ。暗くなる前に帰った方がいい。」
私も立ち上がり、金の瞳を確認しようとしたが既に目は入り口に向けられていて読めない。
兎に角、何だか気焔が心配で、挨拶もそこそこに店を出る。
「大丈夫、心配ない。」
チリンと、扉のベルが鳴る時そう言ったイストリア。
無言で頷きながら、手を振り扉を閉めた。
桟橋を歩きながら金の後ろ姿を眺めていたが、どう声を掛けていいものか、私は全く思い付かなかった。
そうしている間にも、藤色から紫紺に変化している空間は小さな星を瞬かせる。
「わ、ぁ、。」
ぐるりと空を見上げ、星の数を数えた。
「1,2,3,4…」
「………さんじゅ、ご??あっ!」
そう、ずーーっと上を向いて数えていたから。
足元を見てなくて、落っこちそうになったのだ。
「キャッ!」
「ご、めん……………。」
私が叫ぶのと、ふわりと受け止められるのと、謝るのがほぼ、同時で。
逸らされていた、目が合ってしまった。
しかし、意外な程落ち着いた色をしている、その金の瞳の真意は見えない。
なんだろうな………。
燃えて、いるのか迷っているのか。
何らかの、色が出ているのだと思ってたけど。
何とも言えない不思議な色になっているその瞳を目にして、思わずまじまじと見つめてしまった。
初めて、かも知れない。
この空間だからなのか、複雑な青や紫が混ざる金の瞳が美し過ぎて、私は目が離せなかった。
「「美しい、な。」」
心の中で声が聞こえて、「ダメダメ」と慌てる私。
駄目よ、今は。
私の、ターン。ここは外せない。
私の動きが分かったのだろう、やっと彼は口を開いた。
「お前、は。」
うん。
「?」
また、口が閉じた。
何だろうな?そんな、言い澱む様なこと、あった??
「「変わり、たい」のか?」
ああ、そうか。
「違うの。いや、違くないんだけど………。」
咄嗟に口が動く。
誤解されたくない。
でも、誤解でもない。
私は、実際「変わりたい」と。
思ったんだ。
そう、ここの所色々な人達の考えや祭祀、歴史や柵に、触れて。
私はいつも、「変わらなくていい。そのままでいい」と。
「そのまま、真っ直ぐ、進め」と言われてきたけど。
もっと。
もっと、柔軟に。
色々な考えを知って、きちんとこの目で、見て。
泣かずにちゃんと、自分で考えて決めたい。
そう、思っていたんだ。
今だって真剣に考えては、いるつもりだ。
自分なりに考え、誠実に対応しているつもりだけど。
地階の事、祭祀の事、女の子達の話で出た危険性の事。クテシフォン始め、石を配るという事。
アラルエティーの事、銀の家やミストラスの事、貴石の、事も。
もっともっと、大変な事はこれからきっと、沢山ある筈で。
泣いてちゃ、いられない場面だってきっといっぱい、あるんだ。
だから。
「そのままでいい所」と。
「成長したい所」、それをきちんと見極めて。
一皮、剥けたいんだ。
私も。
みんなと一緒に、成長、したいんだ。
もしかしたら、ついさっきそう認識したのかも知れない。
クテシフォンの、前で。
誠実に悩む、真剣な彼を見て。
「私だって、変わりたい、変わらなくちゃいけない」と。
だって今の私は、隠されて守られているだけなんだ。
多分、アラルエティーが隠れ蓑になろうとも狙われているのは私なのは明白だ。
「それ」は、彼女の為に、なること?
それも「否」だ。
敵とか味方とかは関係なくて、だって「青の少女」としてとばっちりをくらっているのは、彼女だ。
自分から、知っていて利用されていると、しても。
それが、いいかどうかで言うならば私的には「×」なのだ。
「そう、なんだよ………どっちかだけじゃ、駄目なの………。」
ブツブツ言い出した私を、ストンと下す気焔。
いつの間にかぐるぐるに突入していた私を見守りつつ、答えを待っているのだろう。
その、彼の姿を見ながらまだ纏まっていない考えを話し始めた。
「あの、ね?みんな、私に「そのままでいい、変わらなくていい」って言うけど。そのままでいい部分と、変わらなくちゃいけない部分が、あると思って。」
「聞いている」という色の、瞳を確認して続ける。
「きっと、パミール達が私に言ってくれる所もそうだし、私が知らない危険なんていっぱいあるんだと思う。デヴァイに行ったらきっと、もっと大変なんだろうしいっぱいぐるぐるもすると思う。でもやっぱり、大事な所では守られてばっかりとか、気焔とかレシフェにだけやらせるとか、あっちはレナに頼るとか、そんなのも嫌なの。そりゃ、全部は出来ないんだけど。でも、出来る事は、やりたいんだよ。初めっから、「出来ない」のは嫌なの。危険があるなら、尚更。」
「私は、私の「なりたい私」を目指さなきゃ。もっとね、オトナになりたいの。え?ちょっとなんで笑ってるの?!」
私、まじめに話してるんだけど??
でも、気焔が嬉しそうに笑っているのは私も嬉しい。
その、笑顔を見て「こんなんじゃ、まだだ。」「ダメダメ」と思っていた心が。
「私だってできる」に、変わって行くのが分かる。
「だから。イストリアさんみたいに、軽やかに、笑って、進みたいんだよ。問題は山積みだし、根深いし、一筋縄じゃ到底どうにもならない。だからこそ。上を向いて行きたいし、いつだって目標、目的を見失わずにキラキラ、進みたいの。気焔が。飛ぶ時みたいに。」
そうして空を、見上げた。
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