透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

祭祀前にやることは

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アラルとも話したし、ローブも石も、リボンも渡した。

自分のワンピースも完成したし。

本部長からの注意事項は一つだけ。

お兄さんとの事も………なんとなく、大丈夫。

エルバの所には行けてないけれど、レシフェから話を聞いている。
今は、あまりウロウロしない方がいいという事になったらしい。

エルバも、心配するから、と。

それなら大人しくしていようと、もうカウントダウンが始まった祭祀までの期間、私は自分の中を整理する事に集中していた。



大体、物の準備は整っている。

場所は、「あの場所」で祈ろうと思っているが、どうだろうか。
円窓の下の方が、いいかな?


でも。

多分。

「あそこ」を見て、祈った方が。


きっとみんながきちんと見つけられそうだし、「どう、したいのか」も。

きちんと、話が聞けそうだから。


肉体が無くなってしまった人と、どのくらい話ができるのか、分からない。

そもそも、私は幽霊はいる、と思っているクチだが、実際に見た事はない。

でも。

多分、「それ」は所謂幽霊とかお化け、とかいうものではなくて。

この大地が、知っているものたち。

繋がりがあるもの。

ここで生きて、ここで、死んで。
未だここへ残っている、「ひと」なのだ。


かたちは、どうあれ。



「でも幽霊だって、「そうだ」って事だよね………?」

世の中の不思議について考えるのは、楽しい。


見えるもの、見えないもの。

「あると言われているもの」

「見えないからない」とされているもの。


「本当」は、「在る」のか「無い」のか。


「正解」は、あるのか。

それは神のみぞ知る、なのかそれとも。



「ま、私が。」


決める、けどね………。

皆まで言わずに、ゴロリとベッドに横になる。



「私」は他の何者にもなれないし、他人の頭を覗く事はできない。

他の、誰が。

どんな偉い人が、そう、もし本部長が「それは無い」と言ったと、しても。


「あるよ、ある。」

多分、ウイントフークは私の意見を否定はしないだろう。

本当のところ、どう思うのかは。
分からないけど。


だから、結局のところ「どう、するか、何を信じるか」というのは「自分」が決める事であって。

「誰かに」決めてもらうことでは、ないのだ。


ここ最近思うのが、私の探している「本当のこと」と、みんなの「本当のこと」は、違うのかもしれないということだ。

でも、それもきっと当然なのだろう。

違う、人間なのだから。


そうして見つけた「本当のこと」が、一致する、若しくは近い、人達と志を共にして進む事になるのだろう。

そう、きっと今「自分の利益だけのために動いている」人達の、「本当のこと」は私とは、違う。

それが、分かる様になってきたのだ。




深く、長く息を吐いて準備をする。

そろそろかな?

考え事をしつつも、私がベッドでゴロゴロしているのには、理由があった。

それは、祭祀前にやっておきたい事の一つを遂行するため。

あの、彼を待っているところなのである。



「カチリ」と扉が開く音がして、噂をすればなんとやら金色が入ってきた。

灯りをつけていない部屋、いつもの様に薄明かりに光る金の瞳と縁取られた金髪が何とも言えなく、美しい。


自分の決心が揺らぐのを感じたが、始めに言ってしまわないと無理な事が分かっている私は、何も考えずに口を開いた。


「あの、ね。ちょっと、ちょっとだけ。行って、きたいんだけど。」


多分これで私の意図は通じている筈だ。

ベッドでゴロついている私を嫌なものを見る目で見ながら、出窓へ腰掛ける気焔。


しかし、ここで怯んではいけない。
私には、行く必要があるのだ。

祭祀前の憂いは、できるだけ取り除いておかなければ、ならない。


パッと身体を起こすと、窓の外を見始めた彼の元へ近づく。


解ってるくせに。

まぁ、逆なら?
嫌かも、だけど………??


そうは思いつつも、譲れない事も、ある。

なるべく、満たしてから行きたいとは、思うのだけど………。


うーーん?

基本的に、「私が」金色で満たされる事は多いのだが、この人は。
「私で」満たされる、なんて事が、あるのだろうか。


無意識のまま、彼の向かいに座り顔を両手で挟んでいた。

じっと、金の瞳を観察する。


何を、求めているのか。

どう、すれば。

安心、するのか。


しかしやはり、見ているだけでは分からない。

とりあえず立ち上がり、いつもの様に金髪を撫で始めた。


うーーーーーーん??

全然、全く。
思い、付かないな?


仕方が無いので、そのまま彼の膝の中に座り再び瞳を観察し始めた。

なんとなく「仕方ないか」的な色になってきたのが、解る。

きっと、彼の中でも。

「あちら」へ行く、必要があるのは解っているのだろう。


それなら。

少しでも、チカラになれば。


そう、思って私の色を流し込む。

今日は何色だろうか。


お風呂の後は、ピンクやマスカットグリーン、少し紫だったりするけれど。

うん?もしか、して?

この頃、違う色があるのって、私の所為???


背中にまわる腕に安心して、身を預けなんだか「私が」流している色よりも流れ込んでくる、金色が多くなってきた事に、気が付いた頃。


「………っ、もう。」

ぐい、と胸を押して抜け出そうとするが腕は外れない。

未だ少し心配そうな色の瞳を見て、不意に口から漏れる言葉。


「好き。」


わぁ。

私が発した言葉で、変化する彼の瞳と焔の色。

取り巻く焔ですら変化する彼を心底愛しいと思った瞬間、あのザワリとする感覚が身体の中を巡る。

ギュッと、自分から懐に飛び込んでぬくぬくとこの場所を味わって。



少し経って、顔を上げると柔らかい焔が私を待っていた。

多分、大丈夫。


今夜行こうと思っていた私は、再び金色を流し込まれながらも「さて、どうやって行こうか」と考え始めたのであった。

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