透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
406 / 2,047
8の扉 デヴァイ

そのままの食堂

しおりを挟む

結局、あの洞窟の様な場所は。

何だったのだろうか。

まだ朽ちたままの廊下を歩きつつ、つらつらと考えていた。


「お前、洗面室も創ったんだろう?」

「いいえ、明日にして下さい?私も、そっちを見に行きますけど?ちゃんと、しました?」

「まぁな。」

怪しい………。

私の方を見ずに歩くウイントフークを見つつ、廊下の様子もチラチラと確認していた。


あの、「誰か」の中で。
実は、私の部屋よりも廊下の方がよく見えていたからだ。

ぶっちゃけこっちのが、リアルに再現できそう………。

そう、思いつつも水色の髪について行った。



食事をする部屋は、この廊下の始まり近くに位置していた。

ホールに繋がる大きな扉が見えて、「ここから出るのかな?」と思ったのも束の間、右側の扉を開けたウイントフーク。

「わ、ぁ………。」

開けた瞬間、いい匂いがして期待が高まる。

しかし、部屋は「そのまま」だった。

ただ、美味しそうな食事が。
辛うじて残っていたであろうテーブルに、並んでいたけれど。



「明日からは、ぼちぼち他の部屋も頼む。俺は特にこのままでもいいんだがな?しかし、誰も来ない訳でもない。ブラッドフォードでなくても、ラガシュや、あとお前の友達も。来るんじゃないのか?」

「友達………。」

「こっちに帰ってくるだろう?」

「ああ、そうか!そうですよね!じゃあそれ迄にはなんとかしないと………。」

ぶつぶつ言い始めた私に構わず、ハクロに何やら指示をし始めたウイントフーク。

そう、友達とはパミールやガリア、トリルの事だろう。
確かに「お客様」ならば、応接室でも創っておけば安心だろうけど。

「友達」ならば。

勿論、私の部屋やお泊り?うーん、それもいい。
ご飯だって一緒に食べたいし?
あの、美しい礼拝室でまったり寛ぐのも、いいかも。
いや、眩しいかな………。


「フフフ………それなら張り切って創らないとですね…。」

「ん?ああ。俺も手伝ってもいいんだが………。」

「あ、はい。気持ちだけ頂いておきます。」

いつの間にかデザート代わりのアイプを食べているウイントフークは、「ほらな」と言う顔をして肩をすくめている。

いや、この人に任せておいたならば。

全くもって、このお屋敷に合わない部屋が出来上がるに違いないからだ。


そうして白いお皿のスープを啜りながら、今日のメニューを改めて、見る。

少ない種類の野菜サラダ、スープは具なしである。
パンは、美味しい。
そしてウイントフークが食べているアイプが、私の分も運ばれてきて。

ハクロとマシロが給仕をしていて、奥の部屋に人の気配がする。
もしかして、リトリが作っているのだろうか。
イリスが料理をしている姿は。
想像、できないのだけれど。

いや、それは失礼かもしれない。
うん。


しかし、途中でマシロに確認すると料理はやはりシリーとリトリ、マシロで作ったのだと言う。

成る程、シリーに訊いて作ったなら。
スピリット達の、この慣れた味も頷ける。
材料は多分、イストリア経由だろう。
殆ど、あそこに滞在していた時と食材は変わっていない。
ちょっと、品数は少ないけれど。



「て、言うか。贅沢はどこですか、贅沢は?まあ、でもは。ずっと誰も居なかったから、こうなんでしょうけど。」

私の言葉を聞いたウイントフークは、チラリと茶の瞳を向けると再び手元に視線を戻した。

さっきから、手元を見ているけれど。
何か、手に持っているのだろうか。

「なんだ、別に贅沢がしたい訳じゃないだろう。」

「まあ、そうですけど。折角ここまで来たなら、片鱗くらいは味わいたかったと言うか………。」

「まあ、まだ暫くはこの生活だろうな?もう少し経って屋敷も完成して、お前もここに慣れたら。嫌でも、外での生活になるんだ。今のうちにこの質素さを満喫しておくんだな。」

「え?」

また?
イマイチ意味が分からないんですけど??

溜息を吐いたウイントフークは、手のひらにあったものをテーブルにコロリと転がした。

私の、石だ。

が、調ったら。ブラッドフォードとの披露目があるだろう。うちに招待する気は無いが、あっちには行かなくてはならない。向こうでは、贅沢三昧だぞ?胃の調子がおかしくならない様に何か調合しておいた方がいいかもな………。」

ん?
んん?

「俺は今のうちに仕事の算段を付ける。」

「ん?ウイントフークさんの、仕事?」

「そうだ。ここではどの家も、「家業」と言うか流通の分野を持っている。独自で手を入れている家もあれば、流通だけをやっている家もある。「ウチ」は。まあ、相変わらずまじない屋だけどな。」

「また、まじない道具をやるんですか?」

ウイントフークはラピスでも石とまじない道具専門だった。

そういえば。
デヴァイでも、何やら道具で有名だったとかなんとか、言っていた様な気がするな?

「簡単に説明すると、昔はデヴァイでもスピリット達にこうして色々手伝ってもらっていたらしい。しかし、まじないが落ち、「気が悪く」なってくると。」

「居なくなっちゃった?」

「そうだ。だから、こいつらはここに集まってはいるが、向こうにはいない。その代わりに、まじないと石を動力とした人形がいるんだ。昔は俺より優れた研究者が沢山いたからな。そんなモノも造れた。ほぼ、見た目は人と変わらない「まじない人形」が。それが、使用人を担っている訳だ。」

「だが、それももうガタが来ていてな。核になる石の力が弱まったりして、壊れる事が多い。以前から頼まれてはいたんだが、今回生業とするには丁度よく稼げるって事だ。どの、家にも。は、不可欠だからな。」

「ふぅむ?」

神の、一族の。

世話をするのは、誰なのか。

どっかでチラッと、思った様な………?


「私、あの人達のところにはロウワがいるんだと思ってました。」

確か、地階で。
そんな事を、思った気がする。
あの、シリーの恐ろしい、話を聞いた時に。

それを聞いて頷くウイントフーク。
やはり、昔はそうだったらしい。

「しかし、どこの家だかが「ロウワを入れると穢れる」と言い出して、そこから人数がぐっと減った。いない訳じゃ無いが、少ないな。きっと各家に数人、いるかいないか程度だろう。」

「………いつ聞いても。嫌なセリフですね。」

「お前、少しはポーカーフェイスも身に付けろよ?特に爺さん連中は。お前の顔を、知っている者も多いだろう。」

「ん?あれ?」

そう、言えば。

私の「そっくり」の件は、どうなったんだっけ??

「まだ、考え中だ。「あの絵」は。常時、見える様にしてしている訳じゃ無いらしいが。まあ、古参連中は、見た事があると思っていていいだろうな。」

私の顔を読んだウイントフークは、そう言って。

面倒くさそうに、手を振りお皿を下げる様に指示している。

この人、ここにいた事、あるんだっけ?
そう言えば。

堂に入った、あるじ振りを見せているウイントフークは確かデヴァイに滞在していた事がある筈だ。

その時は。
どういった、立ち位置だったのだろうか。

「ウイントフークさんって?白の、家って事になってたんですか?そこでまじない道具を?」

「話すと長いんだが。」

面倒くさそうだけど。

「いや、そこは説明して下さいよ。これから、私達の事とか、ウイントフークさんの事とか。訊かれる可能性も無いとは言い切れないですよね?」

「まあ。そうだな………。」

いや、観念して下さいよ………。


そうこうしているうちに、空になった食器は下げられシリーがお茶を持ってきてきてくれる。

「あれ?シリーは食べた?」

「はい。」

「ホントに~?ちゃんと食べた?ウイントフークさん、スピリット達はご飯、食べますか?」

「いや?多分、お前が撒き散らしているから。採ってるんだろうな。」

「ちょ、撒き散らしてるって…人聞きが悪いな…。じゃあ明日からは一緒に食べよう!」

「いえ、私は………」
「いいですよね?ウイントフークさん?」

「構わない。」

「ほら!はい、決まり。」

シリーはなんだか、まだまごまごしているけれど。

だって、三人しかいないんだから。
寂しいじゃん。
みんなで食べた方が?美味しいし??


そうしてやっと頷いたシリーが、片付けの為に厨房に戻ると。

「さて。じゃあ、お願いします。」

そう言って、嫌な目をしているウイントフークをガッチリと捕らえたのだ。

うむ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...