透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

青の家の事情

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「…金と銀、やはりなのか…。」

俺が聞き取れたのは、それだけだった。


現、青の家当主だというその女性は扉を開け、ヨルを見て崩れ落ちると、そのまま侍女に付き添われ別室へ連れられて行った。

「で?何が、どうなってるのか。あなたは知ってますか?」

ウイントフークが尋ねたのは、その現当主の息子だと言う男。

「とりあえず、こちらへ。」

そうして俺達は、やっと部屋の奥へ案内された。



「ちょっと、来るなら僕に連絡下さいよ。」

その部屋で俺たちを待っていたのは、聞き慣れた声のあいつだ。

「フン、いつになるか分からん奴を待つ訳は無いだろう。」

「まあそうだと思ったから、急いで来たんですけどね?」

軽口を叩きながらお茶の支度を指示するラガシュ、ウイントフークはソファに座り千里は部屋の様子を観察している。
こいつはヨルに付いていくかと、思ったが。

どうやら気焔が行ったからか、こちらで話を聞く様だ。
敵では無いのは判るが、結局こいつもなんなんだろうな?


ウイントフークの肩に留まり、向かいに座る男の話を一緒に聞き始めた。

見た目はウイントフークよりも年上のこの男は、あの婆さんの跡継ぎなのだろうか。
「イオデル」と名乗った男は、その母親の「メディナ」について話し始めた。


「私も、詳しくは聞いていません。しかし、本当だったとは…。」

「叔父さんはどちらかと言えば家の存続、という点で予言を見てましたからね。」

皮肉っぽく茶々を入れてくるラガシュ。

青の家も、一枚岩では無いという事か。
そのままラガシュは、簡単に現状を話し始めた。

「まあでも、実際問題青の本に沿って予言を調べている者はこの家でも少ないです。僕はウェストファリアがいる向こうにいた、というのもある。あの人に訊いた方が早い部分もありますからね。」

ふぅん?

ラガシュが言うには、元々新解釈での予言を調べている者はこの家でも若者数人らしい。
その他は「青の家の責任をどう果たすか」、それを中心に動いているらしいのだが。

「お前は以前からその話をしているが。ここまで来たからには、そろそろ話す気はあるという事だろうな?」

ウイントフークがその「青の家の責任」について、切り込む。

この口調だと、ある程度は答えを見越しているのだろう。
確認の為に訊いているウイントフークと違って俺には想像もつかないが、ここデヴァイにおいて、青の家は最下位だと言われている。

その最下位の青の家が、負う、責任とは。

一体、どういう事なのだろうか。


「金の家については、ご存知でしょうか。」

「多少はな。しかし、俺は殆どここにはいない。説明してくれると、助かるのだが。」

「実際、詳細を知る者はもう長老陣だけでしょうが。」

そう言って、イオデルはポツリポツリと話し始めた。



「ふん、概ね予想通りだな。」

「そんな予想をしてる事が、恐ろしいですね。」

それには俺も、同感だ。

ラガシュにキラリと背中を光らせて見せたが、俺の同意に気付いてくれただろうか。

その、ウイントフークが予想していた、内容。

それは以前、俺も小耳に挟んでいた「生贄」という言葉が浮かんでくる内容でしかなく。
凡そ、この場の誰もが、納得出来る内容では無かった。

いや、イオデルを除いては、か。


「しかしお前、次の「軸」が見つからなければこの世界ですら、存続できなくなるんだぞ?」

「だからと言ってヨルをその「軸」にして良い訳が無いじゃないですか。もう、この連鎖を断ち切るべきなんです。こんな事、続けていける訳がないし、続けて良い訳が無いんだ。」

「しかし実際問題、するんだ。既に綻びは始まっているのだぞ?」


腕組みのまま、考え込んでいるウイントフークの前で何やら揉め始めた青の家の二人。

案の定、ウイントフークは聞いちゃいないし千里は楽しそうにその様子を見ているだけ。
本当、何しに来たんだコイツは。


「馬鹿言ってんじゃないよ。」

その時、扉が開く音がして俺はソファの背もたれに飛び移った。

その、凛と響く声の主は。

さっき迄とは、打って変わった、この家の現当主だ。
その、ピンと伸びた背筋と声、仁王立ちしている様子からは別人かと思ってしまう程、熱い何かが煮えたぎっている様に見える。

「しまった」という顔のイオデル、引き攣った笑いのラガシュ。

とりあえず俺は、ウイントフークの隣に座っていた朝の足元に隠れる事にした。
なんとなくだが、「母親に叱られる男子」の気分に、俺もなったからだ。


そうして朝の足元で嵐が過ぎ去るのを待って顔を出したのだが、勿論その間もウイントフークは通常運転で止まったまま。

千里も変わらず、壁際で事の成り行きを見守っていて。

「これ、俺達出直した方がいいんじゃないか?」

「まあ………でも、終わりそうよ?多分。」

朝の言う通り、次第に収まってきたメディナの雷はどうやら「青の家の在り方」に対しての様で。

その場に俺達がいていいのか、分からなかったがラガシュの一言で風向きが変わった。

「だから。雨の祭祀で、でしょう?」

その一言で、ピタリと部屋が静かになる。


そう言えば祭祀前。
ラガシュは「あの人が来る」と、おかしな顔をしていたが、それがこのメディナだったと、いう事か。

未だ入り口に立ったままのメディナは、やっとこちらへ来てイオデルの隣に座った。

そうしてやっと、俺達の目的、青の家との話が始まったのだ。



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