透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

「足りないもの」は なにか

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「でも多分。「辛い」とか「苦しい」、「悲しい」だけじゃ、なくて。私達が見失ってしまった、分からなくなっちゃったの、手掛かりって言うか糸口って言うか。第一歩、みたいなものだと思うんだよね………触れていれば温かい、安心、その「一瞬だけ」でも、癒されたい…………みたいな。なんか、分かんないけど。」

桟橋の上、ブラブラと脚を揺らしながらとりあえず浮かんだ感覚を、なんとなく、漏らす。

しかしきちんと受け止めたレナが相槌を打ってくれる。

「そうね。なんかそれは、解るわ。だって多分、始めから。私達が「物」とか「欲」で利用されてた訳じゃ無いと思うもの。どこから、こうなっちゃったんだろ………。」

「それは私も、思うよ。なんでだろうね………弱い所を、上手く利用されたみたいな………結局、寂しいとか、一緒にいると心地いいから寄り添っていたものを?相手がいない人に、売る?うん?どうなんだろうな………でもデヴァイなんかでは勝手に結婚決められるから別に相手がいない訳じゃ、ないもんな………??」

「まあ。なんだろうね、長年一緒だと飽きるからじゃない?」

「飽きる?!そうなの????」

「夫婦だとそれはあるかもね。店に来る若い男なんかはストレス発散、くらいの感覚かも知れないし、たまにつまみ食いに来る夫もいれば、姉さんに惚れちゃう男もいる。色んな男がいるわよ~、あんたの想像を絶するわよ。」

「マジか…………分かった様な、解ってなかった様な………??」

クスクスと笑いながら、レナは言う。

「だから。あんたの言ってる、「なにかを埋める」為のものと、「その行為自体」は別物なのよ。多分ね。まあ、私も実感はまだ無いけど多分そうなんだと思う。だって、事例も多いから。」

「うん?どゆこと???」

「結構多いのよね、奥さんには惚れてるけど店に来る男。で、姉さんと「遊んで」帰るの。は、それ、はあれ、みたいな。あんたの話を聞いて逆に腑に落ちたわ。確かに「別物」だと、考えれば。解るもん。」

「うん???「なにかを埋めるため」のものと、その「もにょもにょ」が、別物…………??」

「なによ「もにょもにょ」って!」

ケタケタと笑うレナの横で、考え込む。


確かに?

「それ」が、違うもので、「似た感じがする」から、混同されている、とかなら?

「埋まりそう」だから、のめり込んでしまうけれどそれでは決して埋まらない、「なにか」。

ポッカリと空いた、穴の、様な。

一瞬は埋まり、満足するけれどすぐに漏れ出して足りなくなってしまう、もの。


では、「なにを」?

入れれば??


その、穴は埋まるのだろうか。


もの なのか

人では ないな?

「想い」?

なんだ?

でも きっと。


わたしたち の  根本的な

 根源  きっと  「真ん中」の


  エネルギーの 様な   ものだと 思う よね?





「うーーーーーーーーーーーーん??」


「なによ。すっきりは、した?多少は。」

くるりと向き直ると、鮮やかな青が照らされとても美しいレナが、いる。

うん、美しいんだ。

この、くりくりと大きな茶の瞳、大きな波を描く巻毛、今日は水色のワンピースに青の、靴。
青い髪にとても似合っているし、背景がサーモンピンクから若草へのグラデーションだからまた、堪らない。


この、美しさの根源、根底にあるもの、とは。

私達みんなが、持っているであろう、もの、とは。


多分「それ」は人間ひとが生まれながらに持つ、「大切なもの」の、一つで。

その時々で、増えたり減ったりする様な、もの。

そんな気がする。


私の中で「なにか」が満ちて、溢れ出すのと同じ様に、「それ」もきっと満ちると埋まる、そんな気がしたのだ。


「うん?…………それって??同じ?違う?かな??」

「何言ってんのよ。そろそろ、行った方がいいんじゃない?」

レナが指しているのは、魔女の店だ。

「あっ!忘れてた!!いや、覚えてるんだけど忘れてた!」

「はいはい、相変わらず意味が分からないわね。とりあえず、行きましょう。」

立ち上がり手を差し出してくれたレナの、小さな手を取る。

「相変わらず、ふわふわだね?」
「何それ。怖いんだけど。」

「いやいや、レナの手荒れが無くて良かったよ………」
「まあ、殆どレシフェの手伝いをしてるから…。」

「それなら良かった。きっと、大丈夫だね!」
「そう??」


そうして私達は、取り留めの無い話をしながらお互い顔を見合わせなんとなく、頷いた。

先に歩き出したレナの、ふわふわの髪。

青が大分侵食してきた、空の色。

そのどれもがそれぞれ、美しくて、尊くて、この瞬間を閉じ込めておけないものかと、また思うけれど。


きっとまた、「私の中」に留めておけば。

「うん。また、来れる。」

そう口の中で呟いて、勢いを付けて後を追う。


そうしてキラキラに守られた魔女の店へ向かって、くるくると回りながら歩き出したのだ。







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