透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

ラピス それぞれの覚悟

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「どう、した?」

いきなり現れ私を抱えて、屋根の上に出た、彼。


いや どうも?

こう も??

した いや してない

 いや 動揺は してたけど?


待って  うん?  いや 「覚悟」が

 うん。

まあ  ええ。


私の頭が混乱している中、表情を確かめ安堵したのか、懐の中に仕舞う金色。

その瞬間に、彼の纏う薄い焔が私を包んで。

ああ、緊張していたんだ と。

やっと自分で、気が付いたのだ。




なんで。

この色に包まれてるだけで、こんなに景色が。

美しく、見えるのだろうか。


さっきまで窓から見ていた景色と、全く違うその、漆黒。

その中に遊ぶ星達は、煌めきを増し「フフフ」と笑いながら私達を見ているし。

濃紺の屋根は、黒との境目こそ、はっきりしているが。
その紺と、黒を映す白い屋根との対比が何とも言えなく美しく、それに色を差す灯りの橙が星達と共に謳っている。

兎に角、このラピスの景色、全体が。

私達を祝福する様に、煌めいて見えるのだけど。

「これ」は。

私の、目が?

変に、なってしまったのだろうか。


目を擦ってみたり、しぱしぱと瞬きしてみたり。
ぐるりと周囲を見渡してみるが、どこもかしこも美し過ぎて、いけない。

これは。本格的に、いかんのではないだろうか…。


一緒に確認して貰おうと、チラリと背後を見たのがいけなかった。

うっ。
ま まず

あ うん  でも  

  ああ そう ね   やっぱり

私、疲れてたんだわ…………。


気を、遣ってくれているのか。

ゆっくりと流れ込んでくる金色に、そのまま身を委ねこの空気を味わう。


 始めの 場所

   金色  星たち  ビロードの 空

 夜  屋根の上   二人

  守る    決めた


   決断


        覚 悟  ?



ゆっくりと離れた金色、その美しい瞳に映る自分の姿を見て。

「ああ、彼も「覚悟」を決めてくれてたんだ」と。

とっくの昔に、そう決めていたであろう、金の瞳を見ていたら。

案の定、涙が出てきて、しまった。


「もう、大人になるし覚悟したし、しっかり芯のある………うん  」

「分かっている。」

何も訊かずに私を収めたまま、ただ髪を梳き始める金色。

言い訳めいた事を呟きながらしかし、鼻水で喋れなくなった私は。
そのまま鼻を啜りながら、腕の隙間からの夜空を再び眺め始めた。

この美しさを前に、私の涙腺君はきっとじき戻って来る筈だ。

そんな中、私の頭の中は以前ラピスへ戻った際に決めたであろう、「彼の覚悟」の事を思い返していた。


ウイントフークに、「何故」話したのか。

訊いたことは、無かった。

彼には彼の、考えがあるのだろうし、姫様のことや色々については私の知らない事も多いから。

訊いても、教えてくれないだろうと思っていたのも、ある。

でも。

多分。

自分が「覚悟を決める」と、決めてから。


そう、ぶっちゃけ私は自分で「覚悟した」と、いるけれど実際「覚悟できている」のか、どうかは。

分からないと、思っている。

なんとなくだけど。

「覚悟」って、決めたとしても。

「それ」を「やる」のか「できる」のか、どうかは。

「その場」にならないと、分からないと思うからだ。

「覚悟した」と、思っても。

もしかして逃げ出してしまうかも知れない。
それは、分からないと思っている。

口で言うのは、簡単なんだ。
でも。

「本当に やる」のか、どうかは。

そこじゃないんだ。
口だけじゃ、なくて。

「これからの私」が、示していくものだからだ。


だから。

とりあえず「決めた」けれど。


目の前にある、温かい胸の匂いを嗅いで、また安心に包まれる。

でもこの人のした「覚悟」は、少し私とは違う。

だって、私は一人で決めて、実行していく類いの「覚悟」なのだ。
でも、金色が自分の「最も大切であろう秘密」を本部長に打ち明ける「覚悟」とは。


私には、想像もできない。

いや、あの人は信用できるけれど。

結局全貌は知らない「計画」なのか、なんなのか。

「それ」を、話すんだ。

他人ひとに。人間他人に。

一体全体、何が、どうして。
彼は、そう決心して覚悟もしたのだろうか。


フワリと包まれる色が変化した気がして、顔を上げた。

私を見つめる、金の瞳には今では沢山の色が含まれる様になった。

その、影響せいなのか。

私を包む焔の色は、青緑の様な綺麗なグリーンに変化し、漆黒の中、美しいオーロラの様でもある。

ふと思い付いて、腕を押し上げ懐から出た。

「ちょ、そのまま。待ってて。」

ジリジリと後ろへ下がり、金の眉が上がるギリギリまで、離れる。


うん、いい感じ。

少し離れて見る彼は、やはりオーロラに包まれた美しい金色である。

うーーん、これはヤバいね………。

「コラ」

「はぁい。」

心配させても、いけない。

きっと私と千里でここへ来る事も、「よし」とは思っていないだろう。
ハーシェルとは会って帰るだろうか。

そんな事を考えつつ、再び懐に収まる。

そうしてすぐに、こんな声が出て降って来た。


「お前も。沢山の「色」を、含んで。変わったろう。中身も、瞳も。その、「変化を受け入れる覚悟」だと、思えばいい。」

「………なる、程。」

いいこと、言う………。

確かに。

「覚悟」と言うと、大仰だけれど。

「みんな」を、受け入れるならば。

それは、私にとって当然のことだし。
「みんな」、一緒に。

進むならば、やはり覚悟も要るのだろう。

そうして思った、「纏う」、様に。

チカラに、護りに、鎧と言えば言い過ぎか。
フワリと纏う、ヴェールの様にしなやかに。

進んで行ければ。


「いいって、事だよね………。だって。結局。し、んだから。」

真っ直ぐ、金の瞳を確認しながらそう、言った。


しかしあの時見た様には、揺らがなかったその、色は。

パッと強い赤を燃え上がらせて見せ、ニヤリと私に微笑んだ。


ぐっ!
やだ!この顔………。

滅茶苦茶カッコいい、とは。

口が裂けても、言えない私。

その代わりに手でしっかり顔を隠しながらも指の隙間から、揺らがないその焔を眺める。


こんな、美しいものは。

なかなか、見られないから。


フン、私だって?
負けない、もんね??

急に悔しくなって、パッと手を離し「キラン」と瞳を輝かせて瞬きする。

今、アキは外しているから。

私の瞳はきっと、虹色に輝く筈なのだ。


「どう?」と、口には出していないけど。

そんな顔で、金色をじっと、見た。


ん?
あれ???

しかし、わたしのドヤ顔は何故だかパッと捕まえられ、ぐっと流し込まれた金色に絡め取られていったので、ある。


おかしい。

何故だ。


思惑とは違った展開、それに、どちらかと言えば私が押され気味の、金色が流れ込む勢い。



 いや  まっ て

わたし が

  いやいやいやいやいやいや


そうして抵抗虚しく、いつもの様に金色でたっぷりと満たされてゆく、私のなかみ。

でも。
それが。

心地良いのが、いけない………。
うん。


そうして、結局。

星よりも派手にキラキラを溢す私を屋根から回収し、部屋へ返すと消えた金色。
そのまま、帰ってしまったのだろうか。

床に落ちた彼の残り香の様な、金の星屑をじっと見つめる。

「ううっ、流石に寒…。」

慌ててフワフワのベッドの中へ、滑り込んだ。

そうして最後の夜の温もりを充分味わおうと、ベッドでニマニマしているうちに、ラピス最後の夜は更けていったのであった。

うむ。





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