透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

小さなこと

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 「大きな事である 必要はない」

あの時、そう言っていた金色。

私も、そう思う。
でも。

じゃあ、私が今、できる。
やりたい、「小さなこと」ってなんだ、ろうか。


「うーーーん。」

今日も麗かな午後、青空と舞う黄緑の鳥達を見ながら。

唸っているのは、いつもの事である。

「いい」「いい ね」

「「また」」 「うん 」「ふえた」
「いろ」「もっと 」
「そうね」「おいしい」

今日も花達はフワフワと揺れながらお喋りをして、私の目を楽しませてくれている。

何が「おいしい」のかは、あまり気にしない事にしておこう。
うん。


そう、先日白の区画から帰って来て、すぐ。
本部長に捕まった私は、なにやら怪し気な事情聴取を受けた。

「ちょっと、これと、これだな。」

そう言って真っ直ぐ書斎の小部屋へ引っ張って来た本部長は、私が力を込める石とガラスをテーブルの上に並べ始めたのだ。

そして、力を込めたそのそれぞれのものを秤に乗せ何やら調べている。
とりあえずは大人しく、その様子を見ていた。

だって、確実に。
気の済む結果が出るまで、返事が返ってこない事は分かっているからだ。


斯くして目の前にあった自分のヴェールを手に取り、解れが無いか、チェックしてなんなら持ち帰ろうとしていた時。

「やっぱりな。」

そう怪しいセリフを吐いた本部長は「千里は?」と顔を上げた。


「知りませんよ。帰って来たらすぐ、どっか行っちゃうからな…。」

「呼んだか?」
「ああ、丁度いい。何があった?…このガラスなんだが…… 」

「ああ、か。」

なんだか納得した様子の極彩色、二人は既に私の事など忘れているに違いない。

しかし。
ウイントフークが持っているのは、今し方私が力を込めた、石とガラス、それに以前私が創った石だ。

私の 石と ガラス

を、其々比べる、ということは。

なんでだろう………。


この部屋を出ても気付かれないだろうが、結果が気になってそのまま座っていた。
手元のヴェールを、弄びながら。


「ふぅん。でも、なんだ?銀へはまだ行っていないだろう?」

「ああ、茶もまだだしな。しかし………繋がりが戻る事で、どこまでどう、なるのか。」
「どうする?とりあえず続けはするのだろう?」

「まあ、そうだな。上手くすれば、その力で扉間が繋がるかも知れん。」

「えっ。」

扉が?
繋がる???

いきなりの私の声が、大きかったのか。

「まだいたのか」という目がこちらへ向けられて、文句を言いながら訊いてみる。
だって、きっと。

、原因は私の筈なのだ。


「えっ、教えて下さいよ。ん?祈った、から?あの祈りの場へ行ったから繋がったって、事なんですか?」

しかし紫の瞳は何も言う気はないらしく、チラリと白衣へ視線を飛ばす。
私も、本部長を見たけれど。

案の定、再び秤を弄り始めたこの人は私の質問を聞いていなかったのだろうか。

「ウイントフークさん………力込めませんよ…。」

その、私の言葉で、なのかは分からないけど。

やっとこ顔を上げたウイントフークは、眼鏡を上げながら逆に質問を返して来た。

「お前、やって祈った?何か、純度が上がる様な事を考えていなかったか?」

え?

純度??

「うーん??何を、考えてたか?………て、言うかそもそも祈ってないですけどね………。」

「そうなのか?」
「まあな。」

なにやら話し始めた二人を横目に。

私は「なにが違ったか」を、考え始めた。


でも?
「純度が上がる」?

そりゃ、上げたいとは、思いましたけど??
別に………   特に   これと いって?

 何を どう 


「あ?」

「ん?どうした?思い出したか?」

「あー、うん、分かんないですけど。「純度」って、言いましたよね?それって、「はっきりした」的な事でも、ありますよね?」

「まあ、そうだな。何が違うのかと言えば、お前が帰って来た時「何かがすっきりしてる」と思った。それで多分まじないだと思って試したんだが。」

「はい。」

「所謂、「純度が上がる」という事は。まじないに於いては「より強度が上がる」とか「特化する」にも、近い。色はまだ見ていないから分からないが、多分「棲み分け」がよりはっきりしたのだろう。」

「棲み分け???」

「お前の中は、色が多い。その、それぞれが。はっきりと「その色」で存在する様になったという事だ。…………これは中々………」

ブツブツ言い始めた本部長は、既に自分の世界に入って、いて。

なんだか分かった様な、分からない、様な。

微妙な気分になった私は、くるりと紫の瞳を見た。


「とりあえず、終わりだ。」
「えっ。」

そうして、なんとなく中途半端なまま。
その日は、書斎を追い出されたのだ。



「しかし。」

なんでだ、ろうか。

「色がはっきりした?今迄は?ハッキリ、してなかったのかな…?」

「緩く混ざり合っていたのですよ 」

「あっ。………そう、なの??」

「ええ、共存していた、それが其々で輝き出した、ということ 」

「喜ばしいこと 」

おまけのセリフも付けて、私に返事をしたのはフォーレストだ。

今日も一緒に魔女部屋へ来て、隅で昼寝をしていたフワフワは私の話に付き合ってくれるらしい。

それに。

なんか、重要なこと言ってませんでした………?
フォーレスト、物知りなの??


「でも、確かに。これまではずっと、乳白色に遊色、オパールみたいな感じだったもんね??それが?」

ハッキリ?

した、の??
なんで???


「そう 思ったでしょう 」

「ん?…………ああ、確、かに。」

そうだ。

あの、祈りの空間で。

透明な、水の様な空の中に。


 それぞれが ビロードの中に光り輝く

   美しい  星だと。


「えっ?うん?それ??」

それで?

私の、まじないが??

「色」が、変化したって、こと???


「 決まっていることなど 何も無いのですよ 」


優しく細まる、青緑の瞳。

確かに、それは。

この頃思う、私の中にもある言葉だ。


 「決めつけているのは 誰」

 「自由」
       「緩やか」  「柔軟」

    「跳べる」    「柔らかい」


そう、私達は、もっと、自由で、良くて。

きっと「決まっている」事なんて本当は、なんにも無くて。

その時その時で、「選べば」。

きっと、「本当の道」ならば。

そこへ行ける、進めると、思うのだ。


だからきっと、まじないの色だって変えたければ変えられるし。

空間だって、世界だって。

繋ごうと「思えば」。
きっと、繋がるんだろう。

でも?
その為に?

足りないものは、沢山あって。

しかしそれも。

もし、「足りなくない」のだと、すれば?



「うーーーーーーーん???」


  今の私が できる  小さい  こと


なんでも、いい。
おまじない、みたいな。

小さなことで、いいんだ。

 
 光  繋ぐ   ある   降る


    どこでも   きっと  そう 「思えば」



目を閉じ、ゆっくりと黒い廊下を、想像する。

両手を広げ、空から。

今は見えない、空から降る、光を。

想像するんだ。

 うん、できる 多分。


想像は得意だ。
「夢の中で生きてる」って、揶揄われる位には。

だから  多分………


暗い廊下、豪華な調度品達が並ぶ黒の廊下を思い浮かべ、そこに。

何色が、良いだろうか。
でもな?

豪華な色がいいかな………
やっぱり、金?
ゴテゴテし過ぎ?

じゃあ………… うん、とりあえずは白金ならまぁいいで、しょう………

そこに  綿毛みたいな

 フワフワ  ポワポワ?  小さな 星

   星屑を  降らせる

 フワリ フワリ  と  うん


 みんな に   降らせるんだ


   どんな  人にも。

   届く  様に。



暫く、気の済むまで。

両手を広げ、そうして、それをまた振り撒く様に手を動かしていく。

 うん いい感じ!

 こんなもん  かな…………


「よし、オッケー!」

パッと、目を開けた。

勿論、場所はいつものバーガンディー、目の前には満足そうな、フワフワの羊。


そう、こんな風に。

イメージだけど、光を、チカラを、「なにか」を、降らせたならば?

いつか、きっと。

世界は。


「みんなが、毎日。ちょっとずつ、「なんかいい感じ?」って。そう、思えれば、それでいいんだよ。」

そう、贅沢な事は言ってないんだ。

日々の、少しの、幸せ。

それを、感じる、感じられる時間や余裕。


「今日、ツイてるかも」

そんな感じで、いい。

とりあえずは。


「よし、とりあえずやれる事から、やりますか。」

「喜ばしいこと 」

フォーレストがまた、そう言って隅へ戻って行く。

それ見て安心した私は、再びバーガンディーへ沈み込んで。

そう、うっかりと自分もうたた寝をしてしまったので、ある。
うむ。
















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