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9の扉 グレースクアッド
知覚 五感 約束
しおりを挟むそれにしても。
「約束」って。
なんだ ろうか。
深く、遠く広がる青を見ながら、考えていた。
「青い私」に、なってから。
どうやら私はもうアキの中にはいなかったし、きっとあれはまた別の空間だったのだろう。
この深い青に出て来てから、そう思った。
「青い私」は普通に呼吸ができていたし、何故だか瞳の解像度も上がって。
辺りの、暗いが美しい景色はハッキリと見えていた。
「水の中」なのに、匂いも、感じる。
少し青い、水草の混じった様な早朝の、匂い。
なんでか塩っぽくは、ない。
深く、呼吸をすると「全てを含んだ」匂いがしてこの「場」がやはり海だという事は、わかる。
わかるん、だけど………。
あの「まやかし」の青から出て、やって来たこの深い青の海の底。
ここに来て、はっきりと浮かび上がってきた言葉がある。
そう、チラリ、チラリと出てくる「約束」という言葉。
私の奥、何処かの「なかみ」からなのか、それとも。
なにしろ私が持つ、「約束」は沢山ある。
そもそも此処へは「不老不死」を、取りに来たし。
姫様も探している。
石だって、探しているし。
セフィラも、探してる………。
「うんん?」
少し前で、極彩色がピタリと立ち止まったのが、見える。
その、大きな体の前に。
何があるのかは、見えなかったけど。
なにしろ私が「それ」を、はっきりと自分の目に映さなければならない事だけは知っていたし。
きっと「そこ」に。
大切な「なにか」があるのは、解っていたのだ。
この空間に、「この姿」で溶け込んだ、時から。
無意識に、立ち止まる。
一旦、呼吸を整えゆっくりと息を吸い、静かに吐いて「小さな私」をもう一度、思い描く。
「ありありと」だ。
再びその細部を丁寧に、より具体的に思い描き、「細部」を自分の具現化した身体に添わせ、全体を整えていく。
ゆっくりと、頭の先から、足の先まで。
時間はかかるだろうが、「今」それが「必要だ」という事は何故だか解っていた。
そうしてジワリ、ジワリと自分の色を詳細に塗り替えて、確認する。
自分の「なかみ」と身体に呼吸を巡らせ、色の馴染みも確認する。
大丈夫。これで。
私は「小さな私」「海の観音」に、成れてる。
そうして一つ、頷くと。
ゆっくりと目を開け、正面を見た。
うっ
なに あれ
きっと。
「これまでの私」ならば、視認できなかったであろう、「闇」がある。
少し離れた、前方。
手前に立つ、極彩色の横に、「闇」は普通に、在った。
えっ?
大丈夫なの?あの人。
いや、石だけど。
極彩色は勿論、気付いている筈だ。
しかし。
なんでもない様な顔をして、そこに、そのまま立っている。
え
なにこれ
どう すんの
「闇」は。
靄の様でいて、しかしはっきりと実存がある、主張している「存在」である。
しかしその隣にあるものを見て、私の頭の中では一瞬で「全部」が繋がった。
え
あれ 「姫様」だ
なんで? どうして いや
でも 探してるから ここにいても
不思議じゃ ない?
あそこで ? なにを?
「約束」って。 なんだ ろう か
ぼんやりと、しかししっかりとそこにある闇、その隣には、座った姿の人形が、一体。
青い、砂なのか岩なのか、少し盛り上がる海底のなにかを背凭れにして、美しい人形が座っているのだ。
いや、「美しかった」人形か。
ここらか見ても大分傷みが進んでいそうな「姫様」は、子供くらいの大きさがある、精巧な人形である。
ほぼ銀色の白い髪、瞳は青く、少し金が入っているだろうか。
「青に金」を見慣れている所為か、離れたここからでもそう見える瞳は、何処かで見た様な白い睫毛に縁取られている。
「何処だったか」思い出そうとする前に、目に入るは痛んだレース、黄変が進んだ衣装。
………なんてこと。
うん?でも。服、着てるな?
私はマデイラの店で姫様の服を回収した。
だから。
今は、着ていないのかと、思ってたんだけど………??
しかしよく見ると、多分それは豪華な下着の様なものなのだろう。
レース部分の有無とシンプルな身頃のデザインから、そう思う。
そこまで考えて、逆に裸じゃなかった事に安心した。
いくら、人形と言えども。
「姫様」が裸のまま、なのはなんだかいただけないのである。
うん?
ちょっと、でも待てよ??
あの、「闇」って。
あの「いけすかないやつ」、だよね………?
微動だにしない千里、金色の手の感触を感じつつも頭の中はくるくると働いている。
なんとなくだけど。
ここは。
「私が動く」場だ、という事が私には解っていた。
この二人は私の「付き添い」なのだ。
多分。
「どう」動いて、「どうする」のかは。
私が決めないといけないに、違いない。
静かにこちらを見ている紫を確認して、そう思う。
多分、正解なのだろう。
私だって、これまでの経験から。
少しは学習してきたんだ。
「あの色」は。
多分、「肯定」。
このままとりあえず、考えていいんだ。
紫の瞳から視線を戻して、暗色を見つめ直す。
「闇」とは言うが、複雑な暗い色を幾つも含んだ「それ」は、私は嫌いな色じゃ、ない。
そう、どんな色だって。
「含みたい」私は、闇から目を逸らす事なく、見つめ、そして姫様との距離、闇が姫様に向ける色、私が姫様を見た時に闇が発する、色。
それを観察しながら、自分の「なか」で。
その、様々な色をじっくりと、分析して、いたんだ。
「 ほう 」
えっ
喋った
私の中で大体「同じ」だという、結果が出た頃。
その「いけすかない闇」は、口は無いが声を発した。
「音」なのか、「声」なのか。
なにしろきちんと私の耳に届くそれは、意味は分かるのだけど何かが普通と違うのは、解る。
しかしそれを分析する間も無く、闇は再び声を発した。
「 さて 決心が ついたのかね
姫様を 解放して
おまえが ここに 座る
その 決心 は 」
「は?」
えっ?
意味が わかんない けど
いや? わかる な??
そう、その闇が話した瞬間、自分に堕ちてくる「真実」、それは多分姫様は「なにか」を守るか、封じる為に「「そこ」に在る」と、いう事だ。
なんとなく、だけど。
少し盛り上がったものを背凭れに座っている姫様は、「なにか」を塞いでいるのだと思う。
そして。
姫様を、連れて行けばそこから「なにか」が、出てくるんだ。
だから。
闇は、姫様を退けるならば私に。
そこに、座れと言っているんだ。
自分の「なか」に、どんどん堕ちてくる「それ」が正しいのか。
それは判らない。
紫の瞳は何の色も映さないし、隣の金色も。
少し、手の力が強くなっただけだ。
それならきっと、「私が自分で」考え、答えを出すべき問題なのだろう。
そう解釈して、じっと、考えていた。
そう、きっと時間だけはたっぷりある。
「ここ」はそういう場所。
それだけは、知っていたから。
焦りはせずに、今の「最高の答え」を。
これまで拾ってきたピースを集め、考え始めたのだ。
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