透明の「扉」を開けて

美黎

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5の扉 再びのラピス 森へ

知る者

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「あれっ、朝。」

「なんか、予想はしてたけど。いい家、出来てるじゃない。」
「でしょう。」

ドヤ顔の私に苦笑している朝は、少しは心配していたのだろうか。

いつもならば、呆れた目をして素通りする場面で
こうして笑いながら肯定してくれるのは珍しい。


外へ出て早速、見知った色を見つけ私もなんだかホッと 自分の中身が緩むのがわかる。

 一応 久しぶりの森に。
 緊張? してた のかな ??


軽口を叩きながらも家へ向かう、そんな朝の艶々した毛並みを眺めながら。
きっとシリーと 村に上手く馴染んだんだな と
私も安心していた。




「で?私は家を見に来た訳じゃあないのよ。まあ、そうでもあるんだけど。」

「ん?」

 じゃあ なんで ??

暫く私と共に家中の探索をしていた朝は、ダイニングでくつろぎ始めた私と、いつの間にか合流していた金色に向かって そう言った。

 ん?

  もう 帰っちゃうの かな ??


しかし、その視線は金色の様子を少し伺っている様でも、ある。
その、醸し出している色は もしかして。

「えっ、もしかして外出?」

「アタリ。長老にもさ、会っておいた方がいいんじゃないかって、シリーと。」

「まあ、そうであろうな。」
「えっ。」

「なんだ。」

だって。

 この人が 素直にそう 私と人を会わせるなんて
 珍しい よね ???

きっと同じく そう思っている青い瞳と目が合う。

しかし、反対されないのは いいこと

そう結論付けた私達二人は、金色の気が変わらぬうちに村へと向かう事にした。

朝の話によると、長老自体はいつも村のみんなを見守りながらも森を彷徨いていると言う。

 それ 私と おんなじ じゃん


そう、思いながらも。
自分の出立を鏡で確認しつつ、家を出 長老の元へ向かう事にした。



 今は どのくらいの時間 時期 だろうか。

村の方向へと向かう 私達一行
先頭には 朝
その次に私と白 ナガは木の上を行ったり来たり
少し後ろに 金色が続く。


心地良い風の中
 陽に 透ける白い髪
 風に靡く羽衣は、虹色に光を反射してキラキラと美しく
 森の中を光が遊び回るのが 見える。

鏡で確認した私の姿は、「少し色着いたディー」
そんな感じだ。

 とりあえずこれなら 「まあ女神」
 
そう納得し、くるりと回ってみんなの視線を確認したが否定も肯定も やって来なくて。

「じゃあ、行きますか。」

そう言って家を出たのだ。


 なんで コメント 無し ? なの?

そんな事を考えながらも
木々の間を通り、木漏れ日の角度を確かめながら
灰色の毛並みを見失わぬ様、気を付けて進む。

きっと朝の先導だから、他の人には会わないと
思うのだけど。

とりあえず、少し離れて後をついて来る金色の気配を窺いながらも カサカサと言う木の葉の感触を楽しんでいた。

 
 今は 秋の手前 かな ??

少しだけ色着いた葉を確かめながら、振り返った朝と 目が合う。

 て、言うか。

「ねえ。」

「うん、そうなんだけど。多分、で。大丈夫じゃないかって、シリーと。」

「そう?かな??」

流石、私が疑問を口にする前に 朝からその返事が来た。

 そう、私が 長老に 会う

 それって。

 私 の 「正体」?  いや でも
 一応 前から「女神」では あるけれど

 どうなんだ ろう な ???

緑の中を歩きながらも、その 疑問が。

頭の隅をくるくると回っていたからだ。


「なんか、ねえ。多分、訊かれないと思うって、シリーとも話してて。そこ、突っ込まないと思うんだ、長老は。」

「  確 かに???」

「なんかとりあえず、そのまま話せば通じるんじゃないかしら?一応、あんたがここに居る事も言っておいた方がいいだろうしね。何かあった時に、上手くやってくれるでしょう。」

「そうだね…………。」

 確かに「何事も起きない」とは
 到底保証 できない。 うん。

それに、朝の言っていることは、よく 解るんだ。

 きっと 余計な詮索は されない
 長老は 「わかってる」だろうから。


ある意味ザフラは本当に私の事を「女神」だと、思っているかも知れないけれど
長老は それはない。

「ふむ。その辺りも訊きたいところだけど 」

 やめといた方が 無難 か ??

チラリと辺りを見渡し、意外と直ぐ側の木に凭れていた金色と 目が合って。

 いかん。

くるりと向き直り、大きく息を吐いた。

「うん、よし。」

「なにが「よし」なんだか。とりあえず「女神」は、しててよ、一応。」

「うん。」

 一応 ね、  一応
 
 なんで 朝も「一応」を  付ける かな??


そうしてとりあえず。

「ここで待ってて」と言われた木陰に陣取った私達は
そのまま長老を待つ事にしたのである。




少し 離れた木の上から太陽が見えてきた。

目を細めると、虹が拡散している様に見える 日の光
「空にかかる虹」と違って いつでも見える、その虹の祝福
「美しいもの」を齎してくれるお日さまと
 森の木々 その間から見える 青い空。


 日の 動き  時間の 経過
 
 風の変化と 新しく齎される 匂い
 水の匂い と「人間ひと」の匂い。


「あ 長老かも」そう、思いながらも
その空気が微細に含み始めた新しい匂いを 鼻を拡げて確かめて、いた。

でも 向こうから来た朝と目が合って。
「何やってんのよ」という視線を受けた私は、笑いながら鼻穴を縮めたけれど。

きっと朝は長老を伴ってここへ現れた筈だ。

まだ姿の見えないあの白髪を想像しながらも、体裁を整え白とナガを確認する。
 
 うん これなら うんきっと「女神」
 「神使」?「眷族」?
 なんだろう か

 でも 「私的女神」ならば この子達は「分身」
 「私の光の 一部」だから。

 うーーん なんだろうか  
 まあ なにしろ「分身」には違いないからそれで。


私が一人、「なか」でぐるぐるしている間に。

いつの間にか目の前まで来ていた長老は、恭しく傅こうとしていた所を朝に止められていた。

 なんか このやり取り。
  懐かしく ない ??

そう思いながらも微笑みをつくり、手を差し出したのだが
長老は逆にそれで立ったままの方がいいと思った様だ。

そのまま、真っ直ぐに私の目を 見て。

久しぶりの姿を確かめる様に、暫く黙ったまま
私の姿を見つめていた。




 この人にとって 私は 「なに」で
 「どう」見えて いるのだろうか。

どのくらい、時が過ぎたのか
変化の風が私に草の匂いを運んで来た、頃。


そんなことを考えていたら、顔に出ていたのかも 知れない。
徐ろに口を開いた長老は、長い髭を揺らしながら一言
こう言った。

「貴女は。ありのままの世界を、ありのまま、見つめられるそんな存在なのでしょうな。」

「   」

いきなり始まったその話はしかし、私の「なか」に ストンと落ちてきて。
何も言えず、ただその白い髭をじっと見つめていた。

「皆、誰しもが生まれてから幾つもの枠、しがらみ、その中にあり、また何重もの目隠しを足されてゆき、育つもの。その目隠しが、元々薄いのか。それとも?………いや、詮索は無粋じゃ。それ即ち「そうあるもの」、それだけでしか、ない。」

「   」

無言の私を見て、大きく頷く 瞳。

その瞳は何もかもを見透かす色に見え、白い魔法使いに手を 握られるのと。
同種の雰囲気が、する。

「押し付けられた枠組みや縛りに、人を強制させる力は、本来は無いのです。事実、真実ありのままの姿を冷静に理解する目と智慧を持つ事。それを受け止め受け入れる、器の有無。本来、人は心からの敬いや尊敬、お互いの尊重、それがあれば世界は回るもの。その、「自然と湧きあがらせるなにか」、それを貴女は持っている。それはそのありのままを見つめる瞳であろうし、深く両方を理解する心、何者をも否定せず光を見つけようとする姿勢。それが滲み出、解る、ものじゃ。」

「その、対象が人から自然へ、また広く拡大したものですな?良い旅をされてきたのでしょう、また違った視点でここを楽しまれると、良い。」

「 は い」

まだ、なんの会話もしていない私達の間
しかし長老の話は私がずっと思ってきた、感じてきた、物事の「本質」を表す 言葉で。

 まさか 長老が  「神様」か「仙人」なんじゃ  
 という私の想像
 それを否定できないその出立

その姿を想像すると、自分の視点が離れ
「女神」と「神様」が向かい合って 話している

そんな場面が思い浮かんで。

私は一人、笑っていた。


そんな私を静かに見つめる長老、やや冷たい目をしている朝
見えないけれどきっと「呆れた目」をしていそうなあの色を想像して。

とりあえず体裁を整え、背筋を伸ばし女神らしく 立ってみる。

 さて?
 はて?  なんの 話を?

 しに? 来たんだっけ

自分の「なか」を浚ってみるも、私の思いつく言葉は長老に言われた「違う視点」「森」「自然」。

確かに、私は新しい私でこの森を見て。
また何かを学ぼうと、やって来たんだ。

そう思ってもう一度、長い眉毛と睫毛の奥にある瞳を確認した。
なんだか長老が またヒントを持っていると感じたからだ。


「ふむ。「生きる」と、言う事ですな。」

「はい。」

予想通り、この人は私が「なんの為に」ここへ来たのか 解っている。

そう感じながらも、髭を撫で考えているその様子を改めて目に映す。

  あの頃 見えなかった皺
  絡まりそうな 長い白髪は意外と量が多い
  少しくたびれてはいるが 上質なローブ
  きっと 元の色は「白」

 えっ 白い魔法使いと知り合い だよね? 
 多分
 イストリアさん は?

 これ 訊いていい話 かな??


そう思っている私の頭の流れと同じ方向に、どうやら長老の考えも流れている様だ。

 これはなんの チカラ
 シンクロ ?

 もしかして  森の 魔法 かな ?


その閃きに応える様に 風が頬を撫で
木の葉がサワサワと揺れる。

それにピタリと重なる、長老の 声。

「私がここへ来て、学んだのは。いつからであっても、人はまた生まれ変わる事ができる。安全、安心の環境、ありのままでいていい空間、空気。始めこそ何もしなくとも、皆。そうであれば、自然と「その中」へ溶け込めるものですじゃ。その、輪の中の一部となり共に生きることを、きちんと自ら、選び始める。そういう姿を何度も、見てきた。」

「 はい。」

胸に ジワリとくる 暖かさ
あの頃の森の様子 囲んだ炎とみんなの笑顔が浮かぶ。

「私がある意味、この扉を周りここまで来たのは。そういう意味だったのかも知れないと今は、思うのですよ。」

「? 」 扉を 周り?

 確かに、だけど?
 元々、長老はデヴァイの人 だったんだよ ね??

私の頭のハテナに頷きながらも、話を続ける彼
再び揺れる髭に ついつい視線がそこに留まる。

「「知る」「知識」というものを驕りにしない事。「知らぬ」という事は「無知」にも通ずるが、それは共に「敬い」も連れてくる為お互いを尊重し共存する事ができる事。だが一方で、知り、理解したとそれを支配しようとする事。それのなんと、愚かな事よ。ここでは知らぬ者も、多いが。それは優劣ではなく段階の話。扉間の違いはそこかも知れんと考えていた所です。」

「今、もしやるべき事があるとするならば。それは葉を剪定する事ではなく、根を切る事なのでしょうな。………何事も。」


    きっと 「知ってる」んだ。

言葉を切り、真っ直ぐに私を見つめるその瞳に、確信を持つ。


 私が 見てきたこと それと同じ様な 経験

 現実と 理想の差  歪な仕組み 
 扉間の 「本当ではない」格差
 まじないの弱り 
 変化してきている 世界。



そうして 回り始めるカケラ

   くるくる  キラキラと 

 その齎された
 「言葉カケラ」から 派生した光

 それらが また 私のカケラと「反応」して。

 森の木々の間を くるくると回り始めた。


きっと 長老には。

 見えて いないだろうけど。

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