透明の「扉」を開けて

美黎

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22の扉 生成の場

しるし

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    真夜中よりは もう少し後

    明け方よりは だいぶ 前。


 温かな手と声に揺り起こされた私は
  半分夢心地のまま 黒い廊下を歩いて いた。


「ねえねえ」
「どうしたの?こんな時間に」
「わっ 珍しい」
「何処行くの二人とも」
「こんばんは」

 
  夜の廊下は昼間よりも格段に賑やかで
 いつもはじっと黙って私を見ている調度品達の声が
  大きく聞こえている。


 それも これも「子供の頃の夢みたい」で。

なんだか楽しくなってくるけれど、私の手を引く温もりは沈黙のままで
何処へ連れて行こうとしているのかはわからないけれど
 まあ 彼のことだから。

何処であろうと安心なのは間違いないし、
 なんとなくの雰囲気から 私の勘は「あそこじゃない?」とこたえを弾き出した様だ。

だけど この空気が心地よいから。

 そのまんま 黙って
 「優しく引く手」に ついて行く。



  暗い
  黒い
  静寂の廊下

 いつの間にか調度品達はお喋りを止めていて
  静かだからなのか
 さっきよりも「黒さ」が澄んだ気がする、廊下の 空気。

 昼の間は明るく燃えている照明も
  今は「ほんのりと灯る」だけで。

 それがまた「特別感」を醸し出し
 私のスペースもまた「準備段階」に 入る。


    珍しくもこんな時間に
    起こされたのは何故か

   そして無言のまま私に羽衣を巻き
   連れ出した金の瞳は優しく強い眼をしていた

  その「いろ」が 映し出していたのは
   「ある種の区切り」


   「区切り」とは?

    なんだろうか

   この辺りで「区切り」
 
     この道  この先にあるもの


  ああ


     なるほど



   そういうこと?


   でも  「なんで」だろうか 。



「私の想像」が そこまで行き着いた ところで。

 丁度「大きな茶の扉前」に立ち止まった背中は
 「やっぱりそうだ」という私の顔を見る為にくるりと振り返り
 静かに頷いて大きな扉へ 手を 掛ける。

するとまるで 重さなど無い様にスッと開いた観音扉は
 静かに私達を 礼拝堂へ招き入れて。

 再び音もなく閉まると パッと小さな蝋燭だけが 
  通路を照らし灯った。



   ふうむ

    ここで?


   うん?  でも まだ 喋んないの?


  まあ  いいけど

    え? 奥?


無言のまま私を見つめている金色の瞳は
 「この中身の声」
それがきちんと聞こえている様で
 眼で返事だけは返してくるのだけど やはり声は出さずに私を奥へとそのまま引っ張ってゆく。

 そして 中央祭壇前に立ち止まると。

  「二人」がある台の前に私を立たせ
  静かな声で こう言ったんだ。


「これから正式にここの神として、これらを祀る事になる。今現在も手を触れる者はいないが。お前はどうしたい?これをあそこ、奥へ置く事もできるし、ケースで覆う事もできる。あの上の扉の中へしまってもいいし、姿形を変える事だってできる。」

 そこまで言うと 彼は。

私に決断を任せ、自分は壇上の彫刻まで歩いてゆき
 そこをパカリと開けて見せて、「ここもある」と示している。

 そして私の眼を見て ニコリとすると。

トントンと階段を降り、一番前の銀の長椅子へ腰掛けた。


   うん

   なるほど?

  私が 考えて決めろって ことね 


     ふむ?


   てか「正式に祀られる」?

  確かに「これ二人」は 
  私が「守り神になるといい」と思って設置したもの だけど

    ふむ

  みんながよく拝んで?祈ってくれてるのは
  確かに伝わってた

   でも「長」のことは?

   
   ある程度周知できたってことなのかな
   
    どう伝わってるのかはわかんないけど

  ふむ


    まあ  なにしろ。


   「祀る」 そうね

   「守り神」  うん
  確かに私はそう思って置いた

   だから 「そうなって」ふむ

  でも ねぇ

    それも どれもなに 「仰々しく」

   「敬う」とかじゃなくて

    ただ「敬意を持ち 共にあるもの」


   あ~  成る程


   だから  うん


   「場所」はこのまんまがいいよね?


  ね?  

   「服」も これでいいしね?

   そうね あの時 綺麗になったし
   うん 腕輪も ふふ お揃いだしね私達と


  てか 観てはいたけど会いに来るのは久しぶりだもんね?

   うん ありがとう

  お陰様で元気にやってます
   
   ふふ  しかし

  いつ見てもやっぱり「クオリティ 高~」


久しぶりに「まじまじと見る人形神」は。

 相変わらず 美しくて
初めに見たシンラが段々と綺麗になってきた頃の驚きの感覚が
 自分の中に沸々と蘇って くる。

あの時は これ人形神より大きかったけれど。

 小さな今も迫力は健在であり
 「今の二人」は「起きて」「動いて」「私と普通に話す」ことはないけれど
 「二人が世界を見守っているのはわかるし」
 「これ人形神は依代で」
 「と同じ「器である」のが ようく わかる」。

そう
 望めば「彼等はここへ帰って来て入り」
 「いつでも私と話してくれるから」、
今は ただ私がやるべきことをやるだけでいいし
「この場所のしるし守り神に相応しく座すこと」
 それが 今の私の仕事だ。

だから 改めて「その眼」で 二人を観て。

 そのまんまぐっと 上を見て
 「やっぱり」と確認すると 「場所はここでいい」と決め
 「全体の確認」に入る。



   そう、「場所」は「皆から遠くなくていい」

  「触れられない威厳」を放ってるから
   そこら辺は大丈夫

 
   それに「ここ」って
    「天窓の真下」なのよね 
  控えめに言って それ最高じゃん


   だから あ~成る程

  なんか「空」見えてた時 あったよね?
   あれ何処だった?
   いつだった?

    これは「記憶」か「記録」か

  成る程「いずれそうなる」時  ふむ


  まあ 「それ」は「自然になる」として

   えっ じゃあなに


   とりあえず「このまんまでいい」って こと


  ふむ


   「安全」「安心」「環境」「バランス」


  そうね

   どれを取っても 「今のまま」で

    ベストじゃん 流石私



「    っ」

「 ちょ 今笑ったでしょ」

「いいや?」

 だがしかし、明らかに面白そうな顔を隠していない彼は
私の独り言をまるっと聞いていたに違いなくて。

「挨拶は済んだか?それなら帰ろうか。」

 そう言って立ち上がり、手を差し出している。

「  てか。 なんでわざわざ連れて来たの?」

 その手を見ながら ふと 口に出して
 「自分の中からこたえが来た」けれど。


 これは「押印」で
    「節目の区切り」
    「位置をはっきりさせる為の行動」であり
   「私にとっての必要だから」、彼はここへ連れて来たんだ。


「ま、そういうことだな。」

 そう言ってコツコツと歩み寄ると
 私の横へふと屈み耳元へ「フッ」と息を吹きかけ
 そのまんま扉の方へ 歩いて行く。

「   ちょ 」

 だから「一瞬 ブルリときたゾクゾク」に
  耳を押さえると
 瞬時に浮かんだ「悔しい」を ポイとして。


「   じゃ、またね。」

 きちんと二人に手を振り 振り返ると

 待っている金色の元へ 歩いて行ったので ある。












 
 
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