レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

浦野影人

文字の大きさ
21 / 74
1章 棄てられたテイマー

21話:白い大蛇とのエンカウント

しおりを挟む



「よし、ここで昼飯にするぞ」

 あれから途中途中で休憩を挟み、日も天に上りつつある。
 まだ昼時には早いが、早めに食べさせておこう。

「やっと昼食だ……」

「朝食が早かったからもうお腹ぺこぺこよ」
 倒れ込んだジェニスに、ベルカがぼやくように話しかけていた。
 途中で軽食休憩を挟んでも良かったかもしれないな。小休憩は挟んでいたが、無理をさせてしまったか。
 バスと言わないまでも、大人数が乗れる馬車があれば、移動も少しは楽になりそうだが、無い物は仕方ない。

「キ?」

「あぁ、いや、大丈夫だ」
 人が増えると問題も増える。上手くやっていきたいものだ――

「「「「「キャーーーーー!!!!」」」」」
 叫び声に振り返ろうとしたら、真横に、白い化け物がいる――

「なっ、いつの間に!? うわっ!!」

「キ!」
 そのまま食われそうだったが、間一髪のところでアトラが糸で引っ張って助けてくれた!

「主!」

「クエッ!!」
 危なかったな……アトラがいなかったら白い大蛇に食われていたところだった。
 
 しかしなんだコイツ、ドラゴンのような顔をしてると思ったら、体は手も足も翼もない……蛇だな。しかも白い。白蛇ってことは、神聖な生き物だったりしないか?

「霞、こいつは!?」

「ヴリトラだ! 私が相手をする! 主は女たちを守れ!」

「――わかった! アトラ、ベヒーモス、エリザベス、アル! 俺たちは女たちを守るぞ!!」

「キ!」

「ブモォォォォ!!」

「クエーーッ!!」

 霞が相手をするというほどの相手なら、俺たちがいるのは邪魔になるだろうな。
 ここは大人しく霞の言う通りに動いておくべきだ。ここで間違って俺も戦うなんて言い出せば、霞の足を引っ張りかねない。それ程までに霞の雰囲気は切羽詰まっているように見えた。

「大将……どうすんだ?」
 ジェニスが不安そうな顔をしている……どうすんのか俺が知りたいくらいだ。
 そんなことを聞き返したら恰好悪すぎるよな。だからどうするか考えろ。

 どうする? このまま霞に任せたままで大丈夫か?

 霞とヴリトラと呼ばれた蛇は睨み合ってる状態だ。迂闊に動いて余計なことはしたくない。
 ……仮にも霞の主である俺が何もできず、従魔の指示を待つなんて情けなさ過ぎるだろ。
 クソッ、俺にもっと力があれば……なんて考えも虚しいだけだな。
 俺はまだ未熟な新米テイマーだし、こっちにきたばかりの状態では仕方のないことだと割り切る。

 何もできなくても、やれなくても、現状の最良を考えろ。

「……霞がなんとかしてくれるはずだ。お前たちは俺の後ろに下がって、他の魔物の警戒を頼むぞ」
 とりあえず現状で怖いのは、他の魔物の横やりや不意打ちだ。ジェニスたちにはそれに備えてもらう。

「あ、ああ、わかった……」

 白き大蛇ヴリトラの大きさは、人一人簡単に飲み込めるほどに大きい。馬車ですら一飲みできるんじゃないか?
 そんな存在が俺たちに気づかれず、あんな接近していたなんてな……。
 もし霞が負けたら、間違いなく全滅するだろう。
 
 だがなんだ……? かなり傷ついているようだが、何かと戦って逃げてきたのか?

「まさかこんなところで話しに聞いていたヴリトラと出逢うとは、なっ!!」
 霞が最初に動いて飛び出した。

 あんな巨体相手にも接近戦を挑むのか……いや、巨体だからこそ、飲み込まれないように懐に入って叩くのか?
 
 霞が地面を蹴って左右にフェイントを入れながら接近して――

「ふっ!」
 横っ腹に右フックを入れた。
 
 ――いやいや、どんだけ威力があるんだよ……ヴリトラの浮いて体がズレたぞ。流石に俺もドン引きだぞ。

「!?」
 凄い威力だとドン引きしていたら、ヴリトラの体がしなって――弾かれた。

「ぐっ……!!」

「霞!!」
 凄い勢いでスウィングされたヴリトラの体に衝突して、霞がふっ飛ばされた!

 ヴリトラの体は木々をものともせず巻き込んでいたし、吹き飛ばされた霞も木々を薙ぎ倒しながら飛んでいったぞ……!
 
 あんなものがこっちにきたらシャレにならない。霞ならそうならないように上手く立ち回れるだろうが、俺たちも気をつける必要があるか……。
 
 と、ヴリトラがこっちを睨んでるな……。

 ヤバイ、蛇に睨まれたカエルってこんな気持ちだったのか?

「お前の相手は私ッ、だッッ!!」
 復帰した霞の右ストレートがヴリトラの顔面にヒットした!
 
 だがヴリトラも鞭のように体をしならせ反撃してくる……!
 霞は上手く避けて戦えているが、ヴリトラの一撃が重すぎるだろ……。

「霞! 何か手伝えることはないか!?」

「主たちはッ! そのまま待機していてッ……くれッ!!」
 霞が返事をしながら連打を決めていっている……やはり今の俺たちにやれることは何もない、か……。

 いや――

「引き続きアルは空から他の魔物がこないか索敵を頼む。エリザベスは周辺の警戒を任せる。ベヒーモスは女たちの壁になって、飛んでくる障害物から守ってくれ!」

「クエッ」
「ブモ」
 だが何もできない訳じゃない。

「アトラ! 飛んできた木や岩を網で防げ!」

「キ!!」
 俺たちは俺たちにできることをやればいい。
 
 だから絶対に勝ってくれよ、霞……!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...