レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

浦野影人

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1章 棄てられたテイマー

42話:惨劇

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 結界が破壊されていたおかげで、アトラたちに乗って高速で移動できるのは助かった。
 だが、それは同時に、魔物の侵入を許すという意味だ。
 結界に頼り切っていたあの村じゃあ侵入してきた魔物に対抗する術が無い。

「アトラ、俺のことは気にするな。もっとスピードを上げてくれ!」
「キ」
 あの村には助けた獣人の娘たちもいる。無事でいてくれよ……!



 ▽   ▽   ▽



 ダークエルフの村に到着した――が。

「……マジかよ」
 地上にあった建物は黒く焼け焦げ、無残な姿で倒れている者、泣き叫ぶ子供……地獄かここは。
 木の上にあった建物も破壊されてるものが多い。

「くっ……」
 その場に力なく崩れ落ちるベルカ。この惨状を見れば無理もない。

 黒く焼け焦げた割には燃えている場所が見当たらないが――なるほど、ツインテウンディーネが消火にあたっていたようだ。俺たちに気がついてこっちにやってきた。

「ちょっとアンタ!」

「な、なんでしょう?」

「ここをこんな風にしてくれた奴に報いを与えるわ! 手を貸しなさい!!」
 どうやらツインテウンディーネはだいぶご立腹のようだ。気持ちは理解できる。

「お、俺は構いませんが?」

「主がやると言うのなら、私はそれに従うだけだ」

「キ」
 霞もアトラたちも同じ考えのようだ。助かる。
 ここで更に借りを作ったり見返りを求めれば、後々楽にできそうだが……今はそんなことを考えている場合じゃないな。俺はそこまで恥知らずな強欲ではない。

「助かるわ。私一人じゃ手が回らなかったから、霞だっけ、アンタも頼んだわよ」

「……他の村もやられたのか」

「……そうよ、私たちの結界を軽々と破壊してくれて、本当に忌々しい奴だわ!」
 どうやら被害はここだけじゃなかったようだな……。そりゃ手が回らないか。

「わかりました。それで、やった奴……カシウスの居場所は?」

「周辺の村を潰し終えて、どうやら山のほうに向かったみたいね。何が目的か知らないけど、憑き物に憑かれた地竜と同化してたみたいだから、気をつけなさいよね」

「地竜……」
 竜というだけあって、ドラゴンの仲間だろうか。それと同化って、一体何があったんだ?
 いや、一人だけの力で同化できるのか? あのゴブリンキングを見た限りだと、例えばアレと同化できるかと考えると、無理に思える。
 地竜だから可能なのか? なんにせよ、油断できない相手であることは間違いない。

「それじゃアタシはまだ行く場所が残ってるから、ここは任せたわよ。他のウンディーネに借りを二つも作るなんて癪すぎるけど、この際仕方ないわ。本当に頼んだからね!」
 そう言ってツインテウンディーネはその姿を水たまりに変えて気配が消えた。別の場所に向かったようだ。

「主よ、すぐに向かうか?」

「いや、もう少し村を見回るぞ」
 無事な人達はいるのか? ……いたところで俺に何かができる訳でもないが、見ておきたい。

 少し歩き、族長宅の裏に無事なダークエルフや獣人の娘たちがいたが……圧倒的に数が少ない。

 地面には五体満足で横たわっている……死体か。物言わぬ骸に泣き崩れているダークエルフたちがいる。
 決して弱い人達じゃなかったはずだ。少なくともただの人間である俺よりも強いダークエルフ達が、無残にも殺されてしまっている。

「っ……」
 部位を欠損して横たわる死体が自分の姿と重なってしまった。

 俺もこんな風に無残に死ぬのか……?
 涙目になって吐きそうになるが、霞や周囲の目もある。歯を食いしばって気合で吐き気を抑える。抑えろ。

 不幸中の幸いは、ここに族長やバルトンの姿がなかったことだ。どこかで怪我を治療しているのかもしれないな。どこだ?

 ……ん? 獣人たちが集まっている場所には――あれはッ!?

 大怪我や瀕死の重体に陥っている獣人たちが横にされていた。

「うっ、うっ……」
 獣人の少女が泣きつくようにすがっていた死体は、俺に料理をくれたあの子だ――
 辛うじて息はしているようだが……。

「主……」
 今の俺はきっと酷い顔をしているんだろうな。それも仕方ない。

 今の俺は、自分が死ぬ恐怖よりも、知り合いを殺された怒りが勝っている。

 他のダークエルフよりも俺と距離が近かったからだろう。
 あんな良い子が殺された無力感と、殺した奴への怒りの感情が一気に湧き上がってきた。

「霞、アトラ、そして全員聞いてくれ」

「ああ」

「キ」

 今は有事だ。やれることをやるべきだ。

「全員の全力を持って、この惨劇を起こした奴を屠る。その力、存分に発揮してもらうぞ……!」
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