レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

浦野影人

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2章:運送テイマー(仮)

48話:復帰

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 ……よし、そろそろ体力も回復してきたか。

 憑き物と言われる、異形の存在が憑依した地竜との激戦から、はや数日が経過していた。
 
 自分で思っていたよりも、魔力と体力を消費していたようで、ここ数日はフラフラの状態が続き、まともに歩くこともできなかったが、霞たちのおかげで生活に不便はなかった。

 ただの日本人である俺が、どうしてこんな目に遭っているかというと……。


 宝くじで十億円を当てたあの日、俺は異世界に召喚され、勇者じゃないってことで危険なこの森に棄てられたのが始まりだった。


 テイマーというクラスらしい俺は、赤いアラクネのアトラ、水の女神の眷属である大精霊ウンディーネの霞、チャリオットヒポポタマスのベヒーモス、クイーンノーブルビーのエリザベス、鳥人のアル、天災のヴリトラと呼ばれていたアスラ、そして赤い地竜をテイムして従魔にすることができた。

 そしてなんやかんやでダークエルフの村へたどり着き、そこで自分の持っていたテイマーのスキルを知り、その内の一つ、魔物を人型に進化させるという呪いのようなスキル、<エヴォリューション・オブ・オールティングス>……別名<万物進化>によって、一部従魔たちは人型へと進化してしまった。

 聞けばダークエルフもエルフも、元はあのゴブリンと同じ祖を持つ存在であり、極端な話だと、ゴブリンが進化した姿がダークエルフやエルフらしいのだが……その進化の原因が、<エヴォリューション・オブ・オールティングス>という非常識過ぎるスキルらしい。
 長いな……これから<万物進化>で呼んでいこう。
 
 過去にも俺と同じスキルを持つテイマーが存在したようで、そいつはレジェンドテイマーと呼ばれていたようだが、それ以上の情報は残されていないようだ。

 ただでさえ異世界に召喚されるという異常事態に、それに輪をかけるように非常識過ぎるスキルを持たされ、俺にテイムされたことで俺に強い忠誠を誓うような従魔たち。
 
 俺はこの非常識から抜け出すため、当選した十億円を手にするためにも、なんとしても元の世界に帰ることを心に誓っているのだが、未だ帰る術は分からない。


 そんなこんなでなんやかんやあって今に至る……という訳だ。


「よっ……と」
 ベッドから降りて一人で立つ。久しぶりの感覚だ。異世界にきて……十五日目か。
 
 今まではアトラたちに介護されてるような状態だったからな……本当にあのスキル……<モンスターカーニバル>は厄介過ぎる。

 なんやかんやのところで憑き物の地竜六体の相手をして、決戦スキルの<モンスターカーニバル>を使うことになったしな……。
 こうして生き残ったはいいが、反動がデカ過ぎるのはどうしたもんか。大きい力には相応の代償、か。
 
 それが生きる為の対価というなら、決して高くはないな。むしろ安いと考えるべきか。

「ふぅ……」

「おや、もう起きて大丈夫なのかえ?」
 玄関扉を開けてアスラが入ってきた。どうやら採取から帰ってきたみたいだな。背負い籠いっぱいに果物を持って帰ってきているが……。

 お城の姫様みたいなアスラが、そんな平民がやるような採取作業していると思うと、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。

「オレンジの実をたくさん収穫してきた。今剥くから待っておられよ」
 アレはオレンジの実か。形がラフランスのような変わった見た目をしているせいで、なんだったか即座に出てこなかった。

 アスラが剥いたオレンジを受け取る。
 味は美味い。日本で食べてたオレンジと変わらない味のする果物だ。

 甲斐甲斐しく世話をしてくれるアスラには頭が上がらない。
 蛇の魔物だったアスラは進化、いや、人間の女性の姿に変化できるようになった。

 身長は百七十ほどで、大学生くらいに見える顔立ちをしている。

 健康的な肌色で、肩まで伸びた白い髪に、黄色い爬虫類のような瞳が特徴的だ。
 端的に行って美女だろう。
 
 そして異彩を放っているのが、その身に着けている白い着物だ。
 裏地は赤色になっている紅白みたいな着物だな。似合っていると思う。
 
 蛇から人に進化して、身に着けていたのがその着物なのだが、何故それを着ているのかは分からない。
 恐らく変化する際に、俺の記憶の影響が強く出てしまった可能性がある。何故なら似たような着物を漫画で知っているからだ。
 本人は気に入ってるようだからいいが、着物姿で動きづらくないのか?
 
 ドラゴンの顔を持つ蛇の姿のほうが気に入っていた俺としては、やや複雑な気持ちだが、そうなったのは俺の持つスキルのせいだ。やっぱ呪いのスキルだな……。

「おぉ主よ、もう体は大丈夫なのか」
「キョータロー♪」
 今度はウンディーネの霞と、アラクネのアトラが帰ってきたか。

 霞はウンディーネという水を司る大精霊で、元から人型の姿で俺たちの前に現れた。
 水の女神の眷属らしいのだが、気まぐれでテイムミートを食べて俺の従魔となった変り者だ。

 ヴリトラだったアスラは変化したようだが、上位種、大精霊、水の女神の眷属という括りだからか、ウンディーネの霞は変化や進化はしないのか?
 まぁ進化するにしても、一体何に進化するのか見当もつかないがな。

「なんだ主、そんなに私の体を見て。欲情でもしたのか?」
「むっ」
 霞は冗談交じりに話しているが、横でアトラが不満そうに睨み、もの凄い勢いでアスラが振り向いてきたのが目の端に映った。気づかないフリだ。

「……いや、先に出会ったアスラは進化してるのに対して、霞が進化していないのが気になってな」

「既にこの姿が完成されたものだからな。これがエレメントならそこからの進化もあるだろうが……ん、美味いな」

「こら霞っ!、それは京太郎の物だ!」

「そう堅いことを言うな、アスラ――お?」

「勝手にキョータローの物を食べるなんておしおきよぉ!」
 アトラが霞を簀巻きにして外に放り出した。

 アトラは最初は拳サイズのシャドウスパイダーだったが、今ではアラクネの美少女に進化してしまった

 一番最初に出会って従魔にしただけあって、思い入れは一番大きい従魔だ。

 ……アトラもそうなのだろうか。俺に対するあたりがヤケに強い気がする。

「勝手に人の物を食べるからそうなるのじゃ」
 そう言いながらアスラは新しくオレンジを剥いてくれている。
 こう言っているアスラも以前に霞同様簀巻きにされて外に放り出されていたんだがな……。
 それに対して抗議も怒ることもしていない二人を見るに、多分従魔たちの中で、アトラが一番上の存在なんだろう。
 
 格としては霞やアスラのほうが上に見えるが、先に俺にテイムされていたということで、二人はアトラに敬意を持って接している。

「はい、あーん♪」
 アスラが剥いたオレンジを、アトラが木の串に刺して口元に運んでくる。
 この行為はアトラの好意があるだけに断りづらい。

「……ん」
 不承不承ながら口の中にオレンジを入れる。

「ふふっ」
 アトラはご満悦のようだ。

 アトラも格上の二人に気後れせず、霞もそれを気にせず、雰囲気は良い感じだ。
 
 簀巻きにされて放り出された霞も、アトラやアスラが言葉を話せるようになったことで、進化前のときよりも楽しそうに話しているように見える。それだけでも人化したメリットはあったかもしれないな。


 俺が元の世界に帰るためにはアトラたち仲間たちの力は必須だ。

 俺はあいつらを戦わせ、あいつらも俺のために戦ってくれている。

 そんな仲間たちが十二分に力を発揮できるよう、俺もあいつらに尽くしていかないとな。

 しかしアトラとアスラ……馴染みのないやつが聞いても間違えそうなくらい似てるよな。
 いっそのこと、アト子とアス美にするか?

 ……いや、とりあえず保留だな。
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