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第2章
24.キスはした
しおりを挟む「いや、帰ってなかったんかーい」
食卓には当然のようにジェイスが参加していた。
「作るって言ったでしょう、ぶり大根」
この男、わざわざスーパーまで材料を買い揃えに行って、御幸が腹を空かせるのを見計らってキッチンに立っていたのである。
「ミユキくん、もう大丈夫なのかな」
「おじさん、心臓止まるかと思ったよ」
「大丈夫大丈夫。全然問題なし」
心配の声をかけてくれるハーナードとトーガスに笑い返し、じーっとこちらを睨み据えている妹に向き合う。
「なんだよ、玲奈」
「…………べつに」
「れーなっ」
「…………あたしのせいかって、思っただけ」
「なんで玲奈のせいなんだよ」
本当は、わかっている。
玲奈は御幸を取り巻く環境を、そういう世界に設定した責任を感じている。
「まあ普通に、セックスの最中に気ぃ失ったら心配するわな」
あえて、あっけらかんと口にする。
「三人続けてだったしな。ちょっと俺の浄化能力が追いつかなかったんだよ」
「……無理すんなよ、ばか兄貴」
「うん、ありがとな、玲奈」
でも、もうちょい、頑張らないといけないかなって、思ってる。
御幸の視線を感じたのか、シェロリアはすっと目を逸らし、キングスカルは表情を強張らせた。
二人の容態は、性交渉を必要とするほどではなかった。
いつもよりちょっと濃いめにキスしとけばなんとかなる。
「だから、ほら!」
しかし、キスを迫る御幸を、キングスカルは頭鷲掴んで拒絶した。腕を突っ張られてしまうと、全く届かない。
「いい。ミユキ、無理するな」
「無理じゃないって~~~」
「気を失ったんだぞ」
「もう回復したし」
「だめだ」
気遣ってくれるのは嬉しいが、こっちだって心配なのだ。
「シェロリア!」
静観していた男にヘルプを出すも、首を振られる。
「俺もいい。ミユキは少し休め」
「平気なのに~~~」
壁に背中を預けていたシェロリアが、ふと歩み寄ってくる。
「心配してるんだ」
憂いの表情で頬を撫でられ、御幸は一時停止した。
「俺だって」
口だけがひとりでに動き、徐々に一時停止が解けていく。
「俺だって、心配なんだ。今日ほど怖いと思ったことはないよ」
初めての浄化は、重度のツォットだった。
「ツォットの時は、そもそもセックスが初めてで、いっぱいいっぱいで、よくわかってなかった。でも、ジェイスと。ハーナードさんと。トーガスさん。ラインを超えてしまった三人の浄化を引き受けて、ああ、こんなに……って」
キングスカルも、シェロリアも、真剣に聞いている。
「浄化が追いつかないくらい、身体を蝕む毒素って、本当に、本当に、辛いんだよ。苦しいんだよ。おかしくなりそうなんだよ」
いつの間にか、鷲掴まれていた頭が解放されていた。
「皆、こんな思いして、それでも、ラララララナラナを守るために、戦ってる。すごいよ。力になりたいよ。放っとけないよ。俺にできること、してあげたいよ」
だから、今。キスさせて。
シェロリアもキングスカルも、口を開かない。
でも、心は揺れている。
だから、御幸は容赦なく、その背を押した。
「それに。今浄化しないでこのまままたマリキ使って、セックスが必要になるほど重度になられる方が、よっぽど負担なんだけど」
二人はぐうの音も出ないようだった。
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