死んだら妹が設定だけ練って本文は冒頭で挫折した創作BL小説の世界だった

音成さん

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第3章

30.ただのドリム

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他の皆が戦っているとわかっていて、そんな時に玲奈は呑気に一人で出かけたりしないーー皆の意見は、一致していた。

よほどの事がなければ通らない情報開示請求も、刻印を与えたシェロリアなら、シェロリアから刻印を与えられた玲奈と御幸の分は割りと容易に通るらしい。

居場所を特定して、駆けつけた先でーー






『*****』
「うん……」
『********』
「そうだな」

とある山奥の廃墟に、彼女達はいた。

「玲奈……!」
「兄貴…………」

振り向いた玲奈は、まるで全てわかっていたような悟った顔をしている。

「玲奈……それ、」
「……うん」
「手鏡を、使ったのか」
「うちにジェイスが置いてったのを、持ち出した。今がチャンスだと思って」
「それで、生み出したのか、」

玲奈の向こうに立つそれを、御幸は指差す。

「ドリムをっ」
「お母さんだよ」

確かに、そのドリムは。玲奈が生み出したドリムは。御幸達の母親の姿をしていた。

「お母さんじゃないだろ……ドリムだ」
「お母さんだ」
「ドリムだよっ」
「ーー何故、」

同行していたシェロリアが、口を挟む。

「何故、結界が反応しない。俺達は強制休暇で情報を遮断されているとはいえ、非公認の掃除屋達にはドリムの情報が入るはずだ。ここにいるのに、何故、誰も駆けつけて来ない」

御幸はハッとして、玲奈を見た。
確かに、おかしい。ドリムが出現すると、ラララララナラナに張ってある結界が反応し、公認を得ている掃除屋に一斉に情報が通達されるのだ。強制休暇中はドリムの情報が公認掃除屋には遮断される代わりに、非公認掃除屋に渡るようになっているはず。それなのに。目の前にドリムがいるのに。非公認掃除屋が誰一人駆けつけてこない。

「ラララララナラナの結界は。外からの侵入者と、害意に反応するんだ。その中から、ドリムの情報だけを選り分けて掃除屋に通達する」

玲奈が、もしかしたら彼女しか知らなかったかもしれないことを、口にする。

「内で生まれたものは、たとえドリムであっても、害意さえなければ結界は反応なんかしねえ」

そして母の姿をとったドリムの手を、優しく握った。

『*******』

ドリムが、玲奈に笑いかける。

「……うん、お母さん」

玲奈が、はにかんで応える。
御幸の目には、生前の母娘の姿、そのままに見えた。本当に、本物みたいだった。お母さんが、今、そこに、いるんじゃないかってーー

「それはおまえのお母さんじゃない」

そんな錯覚を、シェロリアがたたっ斬った。

「それはドリムだ。レナ」

言い切って、マリキの剣を手にすると、一直線にドリムに向かっていく。

『************!!!』
「お母さん……!」

ドリムは見覚えのあるゴルフクラブを構えて、応戦した。
強くてたくましかったお母さんを象ったドリムもまた、強敵だった。
剣とゴルフクラブが激しくぶつかり合う。
火花が散った。
ドリムが唸り声をあげる。
互いに飛び退って、一瞬のうちにまた衝突している。

「ーー無事か!?」

突如、第三者が割り込んできた。

「加勢する!」

そう言って、ドリムと戦うシェロリアに味方する。
非公認の掃除屋だ。
害意に結界が反応し、玲奈の生み出したドリムの情報が通達されたのだ。
続々と、非公認の掃除屋達が加勢に現れる。

御幸は玲奈の腕を強く引いて、その場を離れた。

黙々と足を動かして、廃墟を出る。
戦いの場から距離を取って、妹に向き合った。

「玲奈……どうしてこんなことしたんだ」

玲奈は黙っている。

「ドリムの脅威を、知らないわけじゃないだろ?」
「…………うん」
「いつも皆が、どれだけ大変な思いをして戦ってるか、玲奈だって知ってるだろ」
「……知ってる。でも、」
「でも?」
「どうしても、お母さんに、会いたかった……っ」
「玲奈……」

御幸は震える玲奈の肩を抱いた。なんと声をかけてやればいいのかわからなかった。二十年余りしか生きていなかった女の子が、母親を求めることの何が悪いのかわからなかった。でも、それでも、今回玲奈がしたことは、もしかしたら大勢の人を危険に晒す行為だった。してはいけないことだった。

「ーーあのドリム、お母さんそっくりだったな」
「…………うん」
「ゴルフクラブも、お父さんが使ってたやつまんまだったし」
「……うん、でも」
「うん」
「でも、そっくりなだけだった」
「うん」
「お母さんを象ってても、本物のお母さんじゃない。本当はわかってた」
「……うん」
「あれは、ただの、」
「ただのドリムだよ、玲奈」

玲奈は俯いて、肩を震わせ、静かに泣いた。
御幸は何も言わず、寄り添った。

兄妹二人、支え合って立っていた。
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