デーモンズブラッド - 「自己再生」と「魔力強奪」で成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
58 / 78
第二章「王都への旅」

第五十八話「勝者達の宴」

しおりを挟む
 ティファニーとヴィルヘルムさんに挟まれる様に席に座り、エールを飲みながらレッドドラゴンのステーキを頂く。食感は牛肉に近いだろうか、濃厚なソースが掛けられたステーキを大きく切って口に放り込み、敵の肉を噛みながらエールで流し込む。

 ララは料理を終えたのか、俺の膝の上に乗ると、肉を切って欲しいと言ったので、彼女のために肉を小さく切った。それから彼女は小さな銀のフォークに肉を刺すと、豪快に食事を始めた。

「ララ、ヴェルナーに駆け付けてくれてありがとう。バラックさんと共にブラックウルフを狩ってくれたんでしょう?」
「私もラサラスの一員なのだから当たり前の事よ。それに、ブラックウルフ程度の魔物なら杖一振りで仕留められるからね。ヴェルナーの防衛は然程大変ではなかったわ」
「これからも頼りにしているからね。ララ」
「任せて頂戴。私に居場所をくれたマスターは、私が守るから……」

 ララは恥ずかしそうに俯くと、小さなゴブレットに入ったエールを飲んだ。どうやらこの食器は彼女専用の物らしく、自分のお皿やナイフ、フォークも持っているらしい。アドルフィーネさんがララの十五歳の誕生日に贈ってくれた物なのだとか。人間サイズの食器ではフェアリーのララには大きすぎるから、自分用の物を持ち歩いているらしい。

「クラウス、遂にデーモンを仕留めたな。今、どんな気分だ?」
「最高ですよ。レーヴェを襲ったデーモンを仕留められたのですから」
「俺も、ゴブリンロードが死んだ時は最高の気分だったが、復讐をしてもゴブリンロードに殺されたローゼは蘇らない。だが、彼女の仇は討てたから、前向きに生きる事にしたんだ……」
「そうですね。デーモンを仕留めたとしても、殺された村人が蘇る訳ではありませんし、エルザの呪いが解ける訳でもありません。まずは国家魔術師試験を一位で合格しなければなりません。それからは魔王を探すために旅をするのも良いかもしれません」
「そうだな。来年の二月一日。国家魔術師試験が楽しみだ」

 ヴィルヘルムさんは愉快そうにエールを飲むと、隣の席に座っているリーゼロッテさんと談笑を始めた。ティファニーは俺が贈ったグラディウスを何度も見つめている。

「グラーフェ会長がこの武器を渡してくれた時、クラウスが私の力を求めていると思ったの。グラーフェ会長がデーモンとレッドドラゴンがヴェルナーに向かって進行していると仲間達に告げた時、レベッカさんとフェリックスさんはためらいもなく出発の支度をした。だけど私は恐ろしくて動けなくなってしまったの。何度もクラウスに守られてきたこの命が惜しかったのかもしれない。レッドドラゴンの炎に燃やされるかもしれないし、デーモンに切り裂かれて命を落とすかもしれない。本当に恐ろしかったけど、クラウスが私を求めていると思ったから、動き出す事が出来た……」
「その武器があればティファニーは更に強くなれると思ったんだ。レベッカさんとフェリックスさんは国家魔術師だから、王国の命令で出動する義務があるけど、ヴィルヘルムさんとリーゼロッテさん、ティファニーとクラウディウスさんは国家魔術師ではないから、俺と共に戦う義理はないからね。勿論、俺自身も一介の冒険者だから、ヴェルナーのために命を掛ける義務はなかった。だけど、俺にはヴェルナーを守る力がある。冒険者は民を守る力だから、たとえ義務じゃなくても魔物の群れが進行していると知れば、俺は何が何でも喰い止めるよ」
「本当にクラウスは偉大な冒険者ね。どんな敵が現れても恐れずに敵を仕留める事が出来るのだから」
「戦う力を持つ俺達冒険者が魔物との戦闘を恐れたら、市民達を守る事は難しいからね。ヴェルナーは俺を認めてくれた。レーヴェを出て一人で生きていた俺を歓迎してくれた町だから、絶対に守り抜きたいと思ったんだ」

 勿論、俺の力を求める人が居れば、どんな都市でも防衛するつもりだ。たとえレマルクの様に、闇属性を持つ者を認めない都市でも、城壁をよじ登ってでも市民達を助ける。

 きっと俺は心の底から魔物が嫌いなのだろう。人間を襲う魔物を全て狩る事が出来たら良いのだが、この広い大陸中の魔物を狩り尽くす事は到底不可能。だから自分が暮らすアドリオンや、ファステンバーグ王国内の村や町が襲われたと分かれば、直ちに急行して地域を守るつもりだ。

 俺には冒険者という仕事が天性の職業だと確信している。悪魔の血を飲んで自己再生と魔力強奪の力を得た。魔物と戦う事すら出来ない村人の俺を変えたのは、忌々しいデーモンの力だった。仇の血が俺を悪魔に変え、悪魔の力が俺をここまで育ててくれた事は事実。これからもこの力を活用し、冒険者として民を守りながらこの地で暮らす……。

 目指すは国家魔術師試験一位合格。これから更にレベッカさんの訓練は激しいものになるだろう。ラミアの集団に囲まれて命を落としかけたのだ、まだまだ俺は未熟。大型の魔物の集団を一人で殲滅する力が欲しい。

 敵の数が多かったから、敵が強かったから負けましたという言い訳はしたくない。俺は将来、地域を守る国家魔術師になるのだから。敗北は許されないのだ。

「レベッカさんなら、無数のラミアに囲まれた時、どうやって対処しますか?」
「ラミア……? そうね、私なら氷漬けにするかな。大型の魔物の群れに対して剣で切りかかっても一度の攻撃で倒せるのは一体。物理攻撃に頼るよりも、広範囲の攻撃魔法を使用してラミアを殲滅するのが正解だと思う」
「おいおい、レベッカ。それはレベル百三十を超えるお前だから出来る戦い方だろう? 今のアドバイスは誰の参考にもならないぞ」
「広範囲の攻撃魔法ですか、ファイアストームを使用すれば、何とか切り抜けられたかもしれませんね」
「クラウスのファイアストームは魔力の消費が激しいから、ラミアを討伐した後にレッドドラゴンと戦わなければならない状況では、ファイアストームの使用はかえって不利になったかもしれないわ。魔力が大幅に低下した状態で幻獣と戦う事になっていたから」
「そうですね。魔力の消費も少なく、広範囲に攻撃が出来る魔法があれば良かったのですが」

 俺がもっと強かったら、ラミアの群れだって倒せたかもしれない。ヴィルヘルムさんが咄嗟にアイシクルレインを使用していなかったら、俺はラミアの巨大な斧で首を切り落とされていただろう。

「何にせよ、クラウスはよくやったわ。私達の到着を待ってから三人で魔物討伐に乗り出す事も出来たのに、国家魔術師よりも先に戦場に出て、敵の数を大幅に減らしてくれたのだから。もしかしたら私とフェリックスだけでは魔物群れを狩り尽くす事は難しかったかもしれない」
「そうだな。あれだけの数をたった二人で狩るのは不可能だったかもしれん。俺達は国家魔術師、強力な魔力を持っているが、クラウスの様に敵から魔力を強奪出来る訳ではないから、魔力を失えば物理攻撃を行うしかなくなる。敵の数が多いと、たとえ雑魚でも魔力を消費して狩る事になるから、レッドドラゴンやデーモンを相手にする頃には魔力が枯渇していたかもしれん」
「今度からは皆さんの到着を待って敵に挑みますね」
「状況に応じて自分が正しいと思った事をすれば良い。俺もレベッカも、クラウスを援護出来る力がある。それに、ヴィルヘルムもリーゼロッテも、ティファニーもララも。剣聖クラウディウスもクラウスの味方なのだ。剣鬼として存分に戦場で暴れろ。お前が窮地に陥っても、俺達の誰かが必ずお前を助ける」

 フェリックスさんは片目を瞑ってエールを一気に飲んだ。何と素晴らしい仲間に出会えたのだろう。彼らが居ればどんな敵にも勝てるのではないかと錯覚している自分が居る。しかし、慢心せずに更に強さを求めなければならない。目標は、幻獣を一撃で倒せる様になる事だ。

 これからの仲間達との生活や、レベッカ師匠との訓練が楽しみだ。素晴らしい仲間と出会えて、デーモンに復讐を果たす事が出来て幸福を感じている。やっと自分が求めていた生活を手に入れる事が出来た。十五歳で居場所を失って冬の森を彷徨い、魔物を狩りながら暮らしていた頃が懐かしい……。

 ギルドでお酒を飲んでいた市民がゴブレットを掲げて叫んだ。

「冒険者達に乾杯!」

 レーヴェを出て冒険者になり、様々な仲間と出会った。これからも冒険者として地域を守りながら生きてゆこう……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...