召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第二章「王国を目指して」

第百二話「仲間との時間」

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 今日はゆっくりと宿で休もう。魔王との戦いで仲間を死なせるつもりは無いが、もしかすると今日が仲間と過ごせる最後の日になるかもしれない。何の力も無い村人だった俺が、魔王に挑むんだ。魔王と戦って死なない方が奇跡だと思う。俺達は夕食までの間、各々の部屋で休む事にした。

 シルフとルナ、クーデルカとアイリーンを連れて部屋に戻る。シルフは初めて見る宿に興奮しているようだ。楽しそうに羽根を広げて飛んでいる。

「部屋は気に入ってくれたかな?」
「うん……!」

 シルフが初めて返事をしてくれた。透き通る様な美しい声だ。俺はシルフの綺麗な髪を撫でた。シルフは心地良さそうに目を瞑っている。体は小さいが、強力な魔力を体内に秘めている様だ。魔王城までの移動の間、シルフとも戦闘の訓練を積み、パーティーとして戦える様にならなければならない。これから更に忙しくなりそうだな。

 俺がシルフの頭を撫でていると、アイリーンが俺に頬ずりをした。暫く会えなくなるからだろうか、寂しそうに俺を見つめながら、何度も頬ずりをしている。アイリーンとも別れる事になるのは寂しいな。魔王との戦いに連れて行きたいところだが、彼女にはゲルストナーの補佐を頼む事にしている。アルテミシア防衛パーティーの生存率を上げるためにも、敵の動きに敏感なアイリーンをゲルストナーのパーティーに入れる必要があるからだ。

「サシャ。必ず帰ってくるの。魔王なんかに殺されたらだめなの……」
「勿論だよ、アイリーン。必ず魔王を倒して戻って来る」
「あたしはサシャまで失いたくないの……もう大切な人を失うのは嫌なの」
「大丈夫。必ず戻ってくるよ」
「約束なの……」
「ああ、約束だ」

 必ず魔王に勝てるという保証は無い。勇者の様な魔法と剣に精通した者でなければ、魔王を倒す事は不可能。十五歳の元村人の俺がどこまで戦えるのだろうか……。

 ルナは新しい装備を楽しげに眺めている。明日から魔王城に向けて出発するというのに、少しも恐れている様子は無い。まだ幼いからだろうか。デュラハンさえも倒した魔王と戦わなければならないのに……。

 ルナはレイピアを抜いて、新しい装備の性能を確かめている。疾風のエンチャントが掛かっている魔装だ。攻撃速度と移動速度を大幅に上昇させている。ルナは目にも留まらぬ速度で突きを放つと、攻撃が早すぎて、剣を目で追う事も出来なかった。もはや俺ではルナの剣を受け止める事は不可能だろう。

「サシャはルナが守る。だから大丈夫だよ。サシャ」
「ありがとう。いつも頼りにしているよ」

 俺はルナを抱き寄せると、ルナは俺の頬に口づけをした。魔王との戦いが終わったら、仲間達と休む時間を作ろう。村を出てから随分忙しく生きてきたからな。

 それから、出発する前にクリスタルの召喚を許可しよう。無事に王国に着いたんだ。約束していた召喚魔法の許可をしなければならない。一体どんな魔物を召喚すれば良いか、ゲルストナーと相談して考えなければならないな。

 今日はせっかくの休みなんだ。明日の出発のための荷物をまとめてから、俺達は早い時間から葡萄酒を飲む事にした。生まれたばかりのシルフに、仲間達の事や、これまでの旅の話をしながら、夕方まで部屋でくつろぐと、俺達は一階に降りてゲルストナー達と夕食を頂く事にした……。
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