召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第三章「魔王討伐編」

第百十五話「新たな仲間」

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 薄暗い室内を松明で照らしながら、小さなシルフを抱いて座る。まずは魔力を回復させ、魔王城攻略の作戦を練らなければならない。敵の正体は分からないが、幻魔獣のスケルトンキングが手を貸す程の実力者だという事は想像出来る。

 鞄から乾燥肉を取り出して齧る。それから水分を補給し、海賊が焼いてくれたパンを食べる。栄養を摂りながら心を落ち着かせよう。仲間の死を意識せず、魔王を倒すために、前向きな思考に切り替えなければならない。

 本来ならパーティーで魔王城に入り、魔王を野外に誘き出してから、メテオストームで仕留めようと思っていた。それがまさかシルフと二人だけで魔王を倒しに行く事になるとは。予想外すぎる展開に焦りを感じているが、俺が倒すしか無いんだ。

 せめてあと一人でも強い仲間が居れば良いのだが。この機会に新たな魔物を召喚してみようか? 俺とシルフだけでは、魔王の元にまで辿り着けない可能性もある。俺は手持ちの素材を確認する事にした。

 素材:「幻獣・デーモンの頭骨」「幻獣・レッドドラゴンの頭骨」「幻魔獣・デスの頭骨」「幻獣・ブラックライカンの牙」「幻獣・ブラックドラゴンの牙」「幻獣・ブラックドラゴンの心臓」

 強力な素材はこれだけだ。ドラゴン系の魔物は体の大きさの問題上、城中では召喚出来ない。この場で召喚出来るのは、幻獣のデーモンか幻魔獣のデス、それか幻獣のブラックライカンだ。ブラックライカンには嫌な思い出がある。クーデルカを幽閉していた忌々しい幻獣だ。それに、魔王との戦いで幻獣程度の魔物が役に立つとも思えない。きっと俺達の戦いに付いてくる事は出来ないだろう。

 仲間の数が多すぎても統制が取れない。ここは一番強力な魔物を一体だけ召喚する事にしよう。俺は幻魔獣のデスを召喚する事に決めた。幻魔獣なら生まれたばかりでも、俺達の戦闘をサポート出来る力があるだろう。それに、俺自身の魔力も上がっているんだ。今の俺が召喚魔法を使用すれば、知能も魔力も高い魔物を召喚出来るだろう。

 しかし、気になるのは以前アルベルトさんが言っていた「この魔物は性格に問題がある」という言葉だ。きっと、以前召喚された幻魔獣のデスが攻撃的な性格だったのは、邪悪な心を持つ召喚士達が、世界を征服するために召喚したからに違いない。召喚獣は召喚士の魔力によって生まれる。召喚士の魔力の質や、召喚時の思考が悪質なものであれば、邪悪な魔物が生まれる。気をつけて召喚に臨まなければならない。

 マジックバッグから素材と召喚書を取り出した。召喚のイメージは、民を守るために己の力を使う心優しい魔物。召喚書の上に素材を載せ、両手から魔力を放出する。デュラハンの力、ヘルフリートの力。そして最高のグラディエーターだった父の力。何の力も無い村人だった俺が、死ぬ気で鍛え続けた魔力を融合させ、爆発的な魔力を注ぐ。

『デス・召喚!』

 魔力を注ぐと、素材と召喚書は辺りに激しい光を放った。ワイバーンを召喚した時よりも強い魔力を感じる。体内の全ての魔力を使い果たすつもりで魔力を注ぐ。

 強い光の中からは一体の魔物が姿を現した。銀色の長く伸びた髪。宝石の様に透き通る赤い目。肌は白く、一糸まとわぬ姿で俺を見つめている。体つきはクーデルカの様に豊満で、形の良い大きな胸に釘付けになった。

 見た目の年齢は二十歳ほどだろうか。ルナやクーデルカの様に美しく、神聖な魔力を辺りに放っている。体から感じる魔力の強さは一流だ。きっとクーデルカをも上回る魔法能力を持っているだろう。

「俺は召喚士のサシャ・ボリンガー。この子は風の精霊、シルフだよ」
「私はデスよ……」

 透き通る様な声が魅力的だ。まずは服を渡さなければならないな。ルナが以前装備していた白銀装備が良いだろう。俺はマジックバッグから装備を取り出してデスに着させた。

「ありがとう。素敵な装備ね」
「よく似合っているよ」
「気に入ったわ」

 デスは嬉しそうに微笑んでいる。召喚の瞬間はいつも感動する。自分自身の力で、新たな魔物を仲間に出来るのだからな。今の召喚でほぼ全ての魔力を消費してしまった。俺は以前ゲルストナーがアレラ山脈で作ってくれたポーションを飲む事にした。

 ドラゴンの血液を混ぜたポーションを飲むと、枯渇していた魔力が瞬く間に回復した。すぐにでも魔王討伐に乗り出したいところだが、まずは現状をデスに説明しなければならない。

「召喚してくれてありがとう。私はあなたの物よ……」
「生まれてきてくれてありがとう。実は今、最悪な状況の中で君は生まれたんだけど、俺達に力を貸してくれるかな?」
「勿論。私はあなたの召喚獣……」

 デスは上目遣いで俺を見つめると、俺は彼女の美しさに釘づけになった。しかし……こんな劣悪な環境で生まれても、平気で居られるのは凄いな。魔大陸の魔力を体に受けている筈なのに、恐れている様子はなく、完璧に落ち着いている。

 柔和な笑みを浮かべ、キラキラとした目で俺を見つめている。デスとはこれ程までに美しい魔物なのか。どうやらまた素晴らしい仲間が増えたみたいだ。本当なら生まれてすぐに戦闘には参加して欲しくないが、今はデスの力が必要だ。

 俺はギルドカードを取り出して、デスのステータスを確認する事にした。
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