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第一話「虚無のアルフォンス」
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いつの頃だろうか、俺が魔術師になるという夢を抱いたのは。
俺が住むユルゲン大陸では、十五歳で成人し、独り立ちをする。
冒険者としてモンスター討伐を生業にする者も居れば、農民として一生を終える者も居る。
今日は俺の十五歳の誕生日だ。
魔術師を目指す人生が始まる……。
「アルフォンス! 出発の支度は出来たか?」
「ああ、父さん。もう支度は出来たよ。と言っても荷物なんてほとんど無いけどね」
俺の両親は村で魔術師向けの道具屋を営んでいる。
店には魔法の杖や魔導書、魔石等が並んでいる。
父は元々冒険者をしており、若い頃は剣士としてパーティーで前衛を任されていたのだとか。
母は魔術師で、父と出会ってからフリッツ村で店を構えた。
俺が暮らすフリッツ村は農民が多く、村人の半数は農業を営んでいる。
元冒険者の村人達は、農業を営みながら村の防衛をしている。
「アルフォンス。魔法都市グロスハイムに向かうのだろう?」
「そうだよ。徒歩で十日の距離だから、着いたら手紙を出すよ」
「気をつけるのだぞ。グロスハイムまでの道中にはモンスターが湧くからな。どのモンスターもレベル5以下だから、アルフォンスが負ける事は無いと思うが……」
「確かスライムやゴブリンが湧く地域を通らないとグロスハイムには行けないんだよね」
フリッツ村は深い森に囲まれており、森の中には低レベルのモンスターが潜んでいる。
どのモンスターもレベル5前後。
力も魔力も弱いモンスターしか生息してないが、たまに強力なモンスターが村を襲う事がある。
俺は魔術師になると決めた日から、魔法の練習をしているのだが、魔法は一度も成功した事が無い。
この世界に住むモンスターや人間等、全ての生命は魔力を持って生まれる。
生まれつき魔力が強い者も居れば、魔力が弱い者も居る。
体内の魔力を体外に放出する、それが魔法だ。
どんな人間でも一種類は魔法が使えて当たり前なのだが、俺は未だに魔法が成功した事が無い……。
「しかしアルフォンス……本当に魔術師になるのか? 魔術師は魔法が使えないとなれないぞ」
「それは分かってるけど、俺は魔術師になると決めているんだよ。どうしても魔術師になりたいんだ」
「剣士の俺としては、息子のお前にも剣士になって欲しかったがな。アルフォンスよ、俺が若い頃に使ってた剣をお前に譲ろう。白金のブロードソードだ」
「それって父さんが大事にしていた剣じゃないか……本当に貰っていいの?」
「うむ。まぁ魔術師になるなら剣は必要無いかもしれないが、護身のためにな」
「ありがとう、父さん!」
父が俺に一振りの剣を差し出した。
これは父が冒険者時代に使っていた剣だ。
鞘には美しい装飾が施されており、魔力を高める効果がある魔法道具だ。
剣を抜くと心地良い魔力が家の中に流れた。
この魔力が聖属性なのだとか。
暖かい日差しの様な雰囲気だ。
「アルフォンス。私からも一つプレゼントをあげるわ。これは私のお婆さんが使っていた首飾りよ。私のお婆さんもアルフォンスと同様に、魔法は一切使えなかったの。だけど、お婆さんはこの首飾りの力を使って大魔術師になったのよ」
「お婆さんが大魔術師だって? 確かレベル70以上の魔術師が、大魔術師の称号を得るんだよね」
「そうよ。この首飾りは、魔法が使えない者のために精霊の錬金術師が作った物。きっとアルフォンスなら使いこなせるはず……十五歳を迎えたら渡そうと思っていたの」
「ありがとう……」
俺は母から美しい首飾りを頂いた。
銀製だろうか、中央にはブルーサファイアが嵌っている。
果たしてこの首飾りにはどんな効果があるのだろうか。
そろそろ出発しよう。
俺は父から頂いた剣を腰に差し、母から頂いた首飾りを身に付けた。
どちらのアイテムも非常に強い魔力を秘めている気がする。
俺は旅の荷物を持つと、家の扉を開けた。
「それじゃ行ってくるよ。いつか魔術師になったら帰ってくるからね」
「ああ。気をつけて行って来い」
「アルフォンス……頑張ってね……」
俺は父と母を強く抱きしめてから家を出た。
まずは魔術師が多く住んでいる、魔法都市グロスハイムに向かう。
グロスハイムはフリッツ村から西に十日程の場所に位置する。
グロスハイムに着いたら、魔術師として登録するために、魔術師ギルドに行かなければならない。
ギルドで登録をする時に、自分自身の魔力を計らなければならないのだとか。
魔力の強さがレベルとしてギルドカードに表示されるらしい。
レベルは冒険者として、魔術師としての鍛錬の度合いを現すもの。
ちなみに俺の父はレベル25、母はレベル30だ。
フリッツ村の中では抜群にレベルが高い。
しかし、グロスハイムまで十日も歩かなければならないのか。
かなりの長旅になりそうだ。
俺は予め用意しておいた荷物を背負い、ついに村を出た。
旅の食料は保存が利くタイプの物を中心に、タンパク質やビタミンのバランスを考えて準備した。
・堅焼きパン 日持ちするパンで砂糖がたっぷりと練り込まれている。
・堅焼きビスケット 保存が利く栄養価の高い小さなビスケットだ。
・チーズ 日持ちするホールチーズ。堅焼きパンに挟んで食べる事にしよう。
・乾燥肉 脂分が少ないモンスターの肉。ニキロ以上ありそうな巨大な塊だ。
・瓶詰めのドライフルーツ 母が果物を乾燥させて作ってくれた物だ。大きなビンの中には色とりどりの果物が入っている。
・食器類 軽量化された金属製のコップと皿、鍋、スプーンとフォーク。
・洗面道具 石鹸にタオル、着替え。
・炎の杖 魔力を込めるだけで小さな火を起こす事が出来る杖だ。
荷物はかなり減らしたつもりだが、俺は鞄には今にもはちきれそうな程の荷物で溢れている。
馬で荷物を運べたら良いのだが、俺は馬を買うお金は持っていない。
自力で荷物を運ぶのも体力作りになって良いだろう。
深い森に囲まれたフリッツ村を出て、ゆっくりと歩き始めた。
今は四月だからだろうか、暖かい春の風が心地良い。
フリッツ村から十日ほど道なりに進めば、目的地である魔法都市グロスハイムに到着する。
グロスハイムまでの道にはモンスターが湧く。
俺は幼い頃から父さんと共に森に入り、モンスターを狩っていた。
俺と父さんの獲物はスライムとゴブリンだった。
スライムは液体状のモンスターで、知能が低く、攻撃もほとんど仕掛けて来ない。
しかし、中には特殊な魔法を使うスライムもおり、油断出来ないモンスターだ。
確かこの森には、メテオスライムという、岩を落とす魔法を使うスライムが居る。
名前は強そうだが、メテオスライムが落とすメテオは、炎を纏う小さな岩だ。
ゴブリンは小さな人間の様な見た目をしており、身長は大体百センチ程度。
緑色の皮膚に、長い鼻と耳が特徴的だ。
知能は高く、武器や防具を身に着けている者も多い。
深い森の中を、大きな荷物を担ぎながら進んでいる。
重いな……。
食料を持ち過ぎたからだろうか。
俺は早めの休憩を取る事にした。
荷物を置いて草の上に寝そべった。
魔法を使えない俺が魔術師を目指すなんて無謀だと、村の人達は言っていた。
モンスターですら魔法を使えるのに、俺は人生で一度だって魔法が使えた事はない。
だが、俺は魔法都市グロスハイムの魔術師ギルドに登録し、モンスター討伐を生業としながら魔法の練習をするつもりだ。
若き日の父と母の様に、自分自身の力でモンスターを狩り、生計を立てる。
フリッツ村を出発して間もないが、早めに昼食を摂る事にしよう。
俺は鞄の中から堅焼きパンとチーズ、乾燥肉を取り出した。
堅焼きパンを割いて間にチーズと乾燥肉を挟む。
それから炎の杖の力を借りて加熱する。
炎の杖に魔力を込めれば、ファイアの魔法を使う事が出来る。
これは魔法を使う感覚を覚えるための、幼児が使う玩具の様な魔法道具だ。
ファイアは小さな炎を出す魔法だが、威力を弱めれば食べ物を熱する事も出来る。
杖を構えて魔法を唱えた。
「ファイア」
堅焼きパンに熱が加わると、チーズが溶け、乾燥肉に絡みついた。
堅焼きパンに大きくかぶりつくと、口の中に濃厚なチーズの香りが広がった。
美味しいな……。
俺が食事を始めた瞬間、背後で物音が聞こえた。
モンスターか?
瞬時にブロードソードを抜いて構えると、俺の背後にはメテオスライムが潜んでいた。
ゴツゴツした岩の様なモンスターで、体は非常に小さい。
ブロードソードを握り締め、メテオスライムとの距離を取る。
メテオスライムは何やら魔法を唱えると、俺の頭上には小さな岩が現れた。
岩は炎で包まれており、力強い魔力を感じる。
俺はブロードソードで岩を弾き飛ばし、メテオスライムとの距離を詰めると、メテオスライムの脳天に剣を突き立てた。
勝負は一撃で決まった。
メテオスライムは死の瞬間、弱い魔力を放った。
メテオスライムが放った魔力は、小さな球に姿を変え、魔力は俺の首に掛かっている首飾りの中に吸収された。
何が起こったんだ?
首飾りからはメテオスライムの魔力を感じる。
もしかしてこの首飾りは、倒したモンスターの魔力を吸収するアイテムなのだろうか。
確かお母さんは、『私のお婆さんはこの首飾りの力を使って大魔術師になった』と言っていた。
どんな効果があるか分からないが、俺は右手を森の中に向けて、首飾りに意識を集中させた。
メテオスライムの魔力を放出してみよう……。
首飾りの力を借りて、全身から集めた魔力を放出する!
「メテオストライク!」
瞬間、遥か上空には直径二十センチ程の岩が現れた。
岩は強い炎を纏っており、物凄い速度で森に落下した。
岩が地面に激突する爆発音が轟いた。
「本当にメテオストライクが撃てた……」
まさか、この首飾りは倒したモンスターの魔法を習得するアイテムなのか?
信じられない!
魔法が一切使えなかった俺が魔法を使えたんだ。
しかし、森の中で炎を纏うメテオを落としては山火事になってしまうかもしれない。
俺は森の中の開けた場所に移動して、何度も何度もメテオを落とし続けた……。
俺が住むユルゲン大陸では、十五歳で成人し、独り立ちをする。
冒険者としてモンスター討伐を生業にする者も居れば、農民として一生を終える者も居る。
今日は俺の十五歳の誕生日だ。
魔術師を目指す人生が始まる……。
「アルフォンス! 出発の支度は出来たか?」
「ああ、父さん。もう支度は出来たよ。と言っても荷物なんてほとんど無いけどね」
俺の両親は村で魔術師向けの道具屋を営んでいる。
店には魔法の杖や魔導書、魔石等が並んでいる。
父は元々冒険者をしており、若い頃は剣士としてパーティーで前衛を任されていたのだとか。
母は魔術師で、父と出会ってからフリッツ村で店を構えた。
俺が暮らすフリッツ村は農民が多く、村人の半数は農業を営んでいる。
元冒険者の村人達は、農業を営みながら村の防衛をしている。
「アルフォンス。魔法都市グロスハイムに向かうのだろう?」
「そうだよ。徒歩で十日の距離だから、着いたら手紙を出すよ」
「気をつけるのだぞ。グロスハイムまでの道中にはモンスターが湧くからな。どのモンスターもレベル5以下だから、アルフォンスが負ける事は無いと思うが……」
「確かスライムやゴブリンが湧く地域を通らないとグロスハイムには行けないんだよね」
フリッツ村は深い森に囲まれており、森の中には低レベルのモンスターが潜んでいる。
どのモンスターもレベル5前後。
力も魔力も弱いモンスターしか生息してないが、たまに強力なモンスターが村を襲う事がある。
俺は魔術師になると決めた日から、魔法の練習をしているのだが、魔法は一度も成功した事が無い。
この世界に住むモンスターや人間等、全ての生命は魔力を持って生まれる。
生まれつき魔力が強い者も居れば、魔力が弱い者も居る。
体内の魔力を体外に放出する、それが魔法だ。
どんな人間でも一種類は魔法が使えて当たり前なのだが、俺は未だに魔法が成功した事が無い……。
「しかしアルフォンス……本当に魔術師になるのか? 魔術師は魔法が使えないとなれないぞ」
「それは分かってるけど、俺は魔術師になると決めているんだよ。どうしても魔術師になりたいんだ」
「剣士の俺としては、息子のお前にも剣士になって欲しかったがな。アルフォンスよ、俺が若い頃に使ってた剣をお前に譲ろう。白金のブロードソードだ」
「それって父さんが大事にしていた剣じゃないか……本当に貰っていいの?」
「うむ。まぁ魔術師になるなら剣は必要無いかもしれないが、護身のためにな」
「ありがとう、父さん!」
父が俺に一振りの剣を差し出した。
これは父が冒険者時代に使っていた剣だ。
鞘には美しい装飾が施されており、魔力を高める効果がある魔法道具だ。
剣を抜くと心地良い魔力が家の中に流れた。
この魔力が聖属性なのだとか。
暖かい日差しの様な雰囲気だ。
「アルフォンス。私からも一つプレゼントをあげるわ。これは私のお婆さんが使っていた首飾りよ。私のお婆さんもアルフォンスと同様に、魔法は一切使えなかったの。だけど、お婆さんはこの首飾りの力を使って大魔術師になったのよ」
「お婆さんが大魔術師だって? 確かレベル70以上の魔術師が、大魔術師の称号を得るんだよね」
「そうよ。この首飾りは、魔法が使えない者のために精霊の錬金術師が作った物。きっとアルフォンスなら使いこなせるはず……十五歳を迎えたら渡そうと思っていたの」
「ありがとう……」
俺は母から美しい首飾りを頂いた。
銀製だろうか、中央にはブルーサファイアが嵌っている。
果たしてこの首飾りにはどんな効果があるのだろうか。
そろそろ出発しよう。
俺は父から頂いた剣を腰に差し、母から頂いた首飾りを身に付けた。
どちらのアイテムも非常に強い魔力を秘めている気がする。
俺は旅の荷物を持つと、家の扉を開けた。
「それじゃ行ってくるよ。いつか魔術師になったら帰ってくるからね」
「ああ。気をつけて行って来い」
「アルフォンス……頑張ってね……」
俺は父と母を強く抱きしめてから家を出た。
まずは魔術師が多く住んでいる、魔法都市グロスハイムに向かう。
グロスハイムはフリッツ村から西に十日程の場所に位置する。
グロスハイムに着いたら、魔術師として登録するために、魔術師ギルドに行かなければならない。
ギルドで登録をする時に、自分自身の魔力を計らなければならないのだとか。
魔力の強さがレベルとしてギルドカードに表示されるらしい。
レベルは冒険者として、魔術師としての鍛錬の度合いを現すもの。
ちなみに俺の父はレベル25、母はレベル30だ。
フリッツ村の中では抜群にレベルが高い。
しかし、グロスハイムまで十日も歩かなければならないのか。
かなりの長旅になりそうだ。
俺は予め用意しておいた荷物を背負い、ついに村を出た。
旅の食料は保存が利くタイプの物を中心に、タンパク質やビタミンのバランスを考えて準備した。
・堅焼きパン 日持ちするパンで砂糖がたっぷりと練り込まれている。
・堅焼きビスケット 保存が利く栄養価の高い小さなビスケットだ。
・チーズ 日持ちするホールチーズ。堅焼きパンに挟んで食べる事にしよう。
・乾燥肉 脂分が少ないモンスターの肉。ニキロ以上ありそうな巨大な塊だ。
・瓶詰めのドライフルーツ 母が果物を乾燥させて作ってくれた物だ。大きなビンの中には色とりどりの果物が入っている。
・食器類 軽量化された金属製のコップと皿、鍋、スプーンとフォーク。
・洗面道具 石鹸にタオル、着替え。
・炎の杖 魔力を込めるだけで小さな火を起こす事が出来る杖だ。
荷物はかなり減らしたつもりだが、俺は鞄には今にもはちきれそうな程の荷物で溢れている。
馬で荷物を運べたら良いのだが、俺は馬を買うお金は持っていない。
自力で荷物を運ぶのも体力作りになって良いだろう。
深い森に囲まれたフリッツ村を出て、ゆっくりと歩き始めた。
今は四月だからだろうか、暖かい春の風が心地良い。
フリッツ村から十日ほど道なりに進めば、目的地である魔法都市グロスハイムに到着する。
グロスハイムまでの道にはモンスターが湧く。
俺は幼い頃から父さんと共に森に入り、モンスターを狩っていた。
俺と父さんの獲物はスライムとゴブリンだった。
スライムは液体状のモンスターで、知能が低く、攻撃もほとんど仕掛けて来ない。
しかし、中には特殊な魔法を使うスライムもおり、油断出来ないモンスターだ。
確かこの森には、メテオスライムという、岩を落とす魔法を使うスライムが居る。
名前は強そうだが、メテオスライムが落とすメテオは、炎を纏う小さな岩だ。
ゴブリンは小さな人間の様な見た目をしており、身長は大体百センチ程度。
緑色の皮膚に、長い鼻と耳が特徴的だ。
知能は高く、武器や防具を身に着けている者も多い。
深い森の中を、大きな荷物を担ぎながら進んでいる。
重いな……。
食料を持ち過ぎたからだろうか。
俺は早めの休憩を取る事にした。
荷物を置いて草の上に寝そべった。
魔法を使えない俺が魔術師を目指すなんて無謀だと、村の人達は言っていた。
モンスターですら魔法を使えるのに、俺は人生で一度だって魔法が使えた事はない。
だが、俺は魔法都市グロスハイムの魔術師ギルドに登録し、モンスター討伐を生業としながら魔法の練習をするつもりだ。
若き日の父と母の様に、自分自身の力でモンスターを狩り、生計を立てる。
フリッツ村を出発して間もないが、早めに昼食を摂る事にしよう。
俺は鞄の中から堅焼きパンとチーズ、乾燥肉を取り出した。
堅焼きパンを割いて間にチーズと乾燥肉を挟む。
それから炎の杖の力を借りて加熱する。
炎の杖に魔力を込めれば、ファイアの魔法を使う事が出来る。
これは魔法を使う感覚を覚えるための、幼児が使う玩具の様な魔法道具だ。
ファイアは小さな炎を出す魔法だが、威力を弱めれば食べ物を熱する事も出来る。
杖を構えて魔法を唱えた。
「ファイア」
堅焼きパンに熱が加わると、チーズが溶け、乾燥肉に絡みついた。
堅焼きパンに大きくかぶりつくと、口の中に濃厚なチーズの香りが広がった。
美味しいな……。
俺が食事を始めた瞬間、背後で物音が聞こえた。
モンスターか?
瞬時にブロードソードを抜いて構えると、俺の背後にはメテオスライムが潜んでいた。
ゴツゴツした岩の様なモンスターで、体は非常に小さい。
ブロードソードを握り締め、メテオスライムとの距離を取る。
メテオスライムは何やら魔法を唱えると、俺の頭上には小さな岩が現れた。
岩は炎で包まれており、力強い魔力を感じる。
俺はブロードソードで岩を弾き飛ばし、メテオスライムとの距離を詰めると、メテオスライムの脳天に剣を突き立てた。
勝負は一撃で決まった。
メテオスライムは死の瞬間、弱い魔力を放った。
メテオスライムが放った魔力は、小さな球に姿を変え、魔力は俺の首に掛かっている首飾りの中に吸収された。
何が起こったんだ?
首飾りからはメテオスライムの魔力を感じる。
もしかしてこの首飾りは、倒したモンスターの魔力を吸収するアイテムなのだろうか。
確かお母さんは、『私のお婆さんはこの首飾りの力を使って大魔術師になった』と言っていた。
どんな効果があるか分からないが、俺は右手を森の中に向けて、首飾りに意識を集中させた。
メテオスライムの魔力を放出してみよう……。
首飾りの力を借りて、全身から集めた魔力を放出する!
「メテオストライク!」
瞬間、遥か上空には直径二十センチ程の岩が現れた。
岩は強い炎を纏っており、物凄い速度で森に落下した。
岩が地面に激突する爆発音が轟いた。
「本当にメテオストライクが撃てた……」
まさか、この首飾りは倒したモンスターの魔法を習得するアイテムなのか?
信じられない!
魔法が一切使えなかった俺が魔法を使えたんだ。
しかし、森の中で炎を纏うメテオを落としては山火事になってしまうかもしれない。
俺は森の中の開けた場所に移動して、何度も何度もメテオを落とし続けた……。
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