魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光

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第九話「新たな魔法」

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 朝食はスパゲッティだ。
 鞄から鍋を取り出し、水筒の中の水を注ぐ。
 麺を茹でるために水筒の水を全て使ってしまった。
 水は後で補充するとしよう。 
 鍋にファイアの魔法を掛けて加熱し、塩を少々入れる。
 沸騰したら麺を入れて暫く待つ。

 金属製の容器に調味料を混ぜた物を入れ、茹で上がった麺の水分を切ってから調味料と麺を絡める。
 シンプルな料理だが、腹が膨れればそれで良い。
 味は二の次で、量と栄養があれば良いのだ。

 俺はスパゲッティをララとリーゼロッテに渡すと、ララは美味しそうに食べ始めた。
 リーゼロッテはスパゲッティの食べ方が分からないのか、フォークを見つめて黙っている。
 俺はフォークにスパゲッティを巻いて渡すと、すぐに食べ方を覚えてしまった。
 俺が一口か二口食べている間に、リーゼロッテはスパゲッティを平らげた。
 信じられない食事の速度だ……。
 まだまだ栄養が必要なのだろう。

「アルフォンス。おかわり!」
「ちょっと待ってね。次の料理を作るよ」

 俺は鞄から堅焼きビスケットを取り出し、間に薄くスライスした乾燥肉とチーズを挟んだ。
 その状態でファイアの魔法を掛けると、間のチーズが溶け出して乾燥肉を包み込む。

「これはなぁに?」
「さぁね、なんだろう。俺がよく森の中で食べる食事だよ。本当は堅焼きパンで作るんだけどね」
「そうなんだ……美味しそう!」

 リーゼロッテに堅焼きビスケットを渡すと、小さな手で持ちながら大切そうに食べ始めた。
 俺達は朝食を済ませると、すぐ移動を始める事にした。
 目的地のフォルスターまではまだまだ遠い。
 昨日、予想外の出来事に巻き込まれて、本来移動すべき距離の三分の二しか進めなかったからな。
 今日は速度を上げて移動しよう。
 洞窟の入り口を塞いでいる家具をずらし、俺達をゴブリンから守ってくれた洞窟にお礼を言ってから出発した。

 卵がなくなったお陰か、体が非常に軽い。
 それに、新しい仲間が二人も居る。
 不意にゴブリンに襲われたとしても、一人で戦うより遥かに安全だろう。
 リーゼロッテは俺の肩の上に座りながら、乾燥肉を美味しそうに頬張っている。
 明らかに栄養が足りないのだろう。
 彼女は人間の様に見えるが、人間とドラゴンの中間種、ドラゴニュートだ。
 人間と同じ食事の量では、彼女を満足させる事は出来ないのだろう……。
 森の中に手頃な食料があれば良いのだが、リーゼロッテは肉を好んで食べる。
 森で肉を探すなると、食べられそうなモンスターを狩るしかなさそうだ。

「アルフォンス。もしかしたらリーゼロッテはゴブリンを食べるかもしれないよ」
「え! なんだって?」
「ドラゴンは毒を持つモンスターも平気で食べるから、きっとどんな肉でも食べられると思うよ」
「俺はリーゼロッテがゴブリンの肉に齧り付く光景なんて見たくないよ……」
「それはそうね……」

 ララは俺の手を握りながら楽しそうに歩いている。
 まさか二足歩行する猫と、空を飛ぶドラゴンの少女と旅をする事になるとは。
 人生何があるか分からないから面白い。 
 本当に旅に出て良かった。

「アルフォンス……肉が足りないよ」
「そうか……それじゃ鞄の中の乾燥肉を好きなだけ食べて良いよ」
「本当?」
「ああ。食べ足りないのだろう? 沢山食べて強く育っておくれ」
「やったぁ!」

 リーゼロッテは俺の鞄の中に入ると、乾燥肉の塊に齧り付いた。
 早急に食料を確保する必要がありそうだ。

 俺はララと自分達の故郷の話をしながらゆっくりと森の中を歩いていると、一体のゴブリンと出くわした。
 ゴブリン討伐のクエストを受けている俺は、ここでゴブリンを見逃す訳にはいかない。
 俺は左手を空に向け、魔法を唱えた。

「メテオストライク」

 瞬間、とてつもない速度でゴブリンの頭上に炎を纏う岩が落下した。
 ゴブリンは即死だった。
 俺はギルドカードを左手に持ち、右手でゴブリンの死体に触れた。
 こうすればギルドカードに討伐数が記録されるからな。

 しかし、メテオストライクは便利な魔法だ。
 相手に気づかれずに一瞬で仕留める事が出来るのだからな。

「アルフォンス……? 今の魔法ってメテオストライク……?」
「ああ、そうだよ。メテオスライムが使っていた魔法を習得したんだ」
「メテオストライクは地属性魔法と火属性魔法の複合魔法。とても駆け出しの魔術師が使いこなせるような魔法ではないのに……これがベルギウスの加護の力なのね」
「ああ。俺はベルギウスの加護によって、どんなモンスターの魔法でも覚えられるんだ。ただし、俺は自力では魔法が一切使えない。この加護が無ければ、魔力を魔法として体外に放出できないんだ」
「それは可愛そうね……今まで大変な思いをしてきたでしょう。魔法は誰でも使えて当たり前なのだから……」

 ララは猫耳を垂らして寂しそうに俺を見上げた。
 可愛すぎるな……この子は。
 俺はララのモフモフした頭を撫でると、彼女は嬉しそうに俺の手を握った。

「だけど、俺はベルギウス氏から頂いた加護によって魔法が使えるようになったから、これからは前向きに生きるつもりだよ。村の友達と狩りに行く時も、魔法が使えない俺はいつも荷物持ちだった。それから食事の支度を押し付けられた事もあったな」
「荷物持ちに食事の支度……アルフォンスに雑用を任せるなんて、許せないわ」
「だけど、俺はモンスターと戦う力を持たない、非常に弱い存在だったんだ。仕方が無かったんだよ。モンスターを倒すための討伐隊を編成する時にも、俺はいつも荷物持ちだった。幼い頃からそうして生きてきたから、お陰で体力もついたし、栄養の管理の方法も覚えたんだ。討伐隊の食事の準備は全て俺が担当していたからね」
「それでそんなに重い荷物も平気で持っていられるのね」

 ゴブリンやスライムの様な、低レベルのモンスターならなんとか勝てるのだが、レベルが10以上のモンスターなら、俺は仲間の足手まといにしかならなかった。
 だから討伐隊で雑用をしていたのだ……。

「環境に鍛えられたんだよ。剣の練習をしても、魔法が使えない俺はエンチャントを掛ける事も、魔法でシールドを作る事も出来なかった。何をやっても上手く行かなかったんだ。だから基本的な体力作りだけをしてきた」
「今はもう魔法が使えるのでしょう? それなら、魔法を応用すればバリエーションを増やせるはずよ」
「え? どういう事だい?」
「メテオストライクは岩に炎を纏わせる魔法。岩を落とすロックストライクの魔法と、対象に炎を纏わせるエンチャントの魔法、二種類の魔法から構成されている複合魔法なの。既にメテオストライクが使えるのだから、ロックストライクとファイアのエンチャントが使えるはずよ」
「まさか……」

 試してみようか。
 俺はブロードソードを抜いて、剣に火の魔力を込めた。

「エンチャント・ファイア」

 魔法を唱えると、ブロードソードは強い炎に包まれた。
 新たな魔法が成功した!
 既に覚えた魔法を応用すれば、新たな魔法を使う事も出来るのだ。 
 ベルギウスの加護は偉大だ……。
 続いて俺はロックストライクを試す事にした。
 左手を掲げて魔法を唱える。

「ロックストライク!」

 魔法を唱えると、空中には小さな岩が現れた。
 岩は高速で地面に落下すると、心地良い衝突音が静かな森に劈いた。
 これは良い……。
 複合魔法を使うモンスターを狩れば、一度に三種類の魔法を習得出来るという訳だ。
 様々な種類のモンスターを狩れば狩るほど、俺の魔法のバリエーションが増える。
 徹底的にモンスターを狩って魔法を覚えよう。

 その前に……双剣のゴブリンとの決着を付けなければならない。
 少し前から敵の視線を感じるのは気のせいだろうか。
 森の茂みの中から強烈な殺気を感じる。
 ゴブリンに尾行されているのだろう。

「アルフォンス……尾行されているみたい」
「そうみたいだね。こちらから攻めようか」
「ええ、もう付き纏われるのはうんざりだわ」

 ララがレイピアを抜いた。
 レイピアには強い風の魔力が纏っている。
 ララもエンチャントを使うのだろう。
 俺の鞄の中で楽しげに乾燥肉を食べていたリーゼロッテが、俺の肩に飛び乗った。

「アルフォンス。ゴブリンと戦うの?」
「ああ、そのつもりだよ。リーゼロッテは俺の鞄の中に居ておくれ」
「いや! 私も戦う!」
「なんだって?」
「私も一緒に戦う!」

 リーゼロッテはそう言うと、両手をゴブリンが潜んでいる茂みに向けた。

「ブリザード!」

 リーゼロッテが魔法を唱えた瞬間、ゴブリンの悲鳴が聞こえた。
 何があったんだ?
 急いでゴブリンが隠れている茂みに近づくと、ゴブリンの下半身が氷漬けになっていた。
 これは良い……。
 俺は身動きが取れなくなったゴブリンから、双剣のゴブリンの居場所を聞き出す事にした。
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