魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光

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第十五話「新たな人生」

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 荷物を置いてから俺の部屋に集合すると、ギレーヌは何度も頭を下げてお礼を言った。
 しかし、あの盗賊の様な連中は、何のためにギレーヌを襲おうとしていたのだろうか。

「ギレーヌ、改めて自己紹介をしようか。俺は魔術師ギルドのアルフォンス・ブライトナー。それからこの子はドラゴニュートのリーゼロッテ」
「私はケットシーのララ。魔法剣士よ」
「俺は商人のグレゴール・アイクだ」
「みなさん、私を助けてくれてありがとうございました。私は魔法道具製作師のギレーヌ・カーフェンです。さっき皆さんが倒してくれたのは私の溶解炉を狙う盗賊です。私はこの溶解炉と共に旅をしていたのですが、旅の途中で盗賊に目をつけられてしまったのです」

 ギレーヌは寂しそうに俺を見つめると、ゆっくりと語り始めた。

「この溶解炉はモンスターの素材と金属を投入し、魔力を込めるだけで二種類の素材を溶かす事が出来る物です。このような溶解炉はどこにでもあるのですが、私が父から譲り受けたこの溶解炉は、いかなる金属、素材をも溶かす事が出来る最上級の物なのです」
「どうしてこんなに大きな溶解炉を持ちながら旅をしていたのか、聞いても良いかな?」
「ええ。実は私はグロスハイムで魔法道具の店を構えたくて、十五歳の誕生日の日に旅に出たんです」
「魔法道具の店?」
「ええ。この溶解炉の効果と魔法道具を製作する魔法、クラフトの魔法を使って店を構えようと思っているんです。この溶解炉は、一般の人が使えば金属とモンスターの素材を溶かすだけの効果しかありません。溶けた金属が自然に固まればインゴットになるでしょうが、モンスターの素材が含まれる金属というのは非常に加工が難しいのです。私のクラフトの魔法は、液体状に溶けた金属に対して魔力を込めると、自在に形を生成する事が出来るんです」
「というと、インゴットから加工する手間を省略して、自由にアイテムを作り出せるという事かな?」
「そういう事よ、アルフォンス。なので、通常のアイテム作りに掛かる手間を大幅に省略し、一瞬で新たなアイテムを作る事が出来るんです。このクラフトの魔法は、私の父から譲り受けた力なんです」

 一瞬で新たなアイテムを作れるのか。
 俺が大量にモンスターの素材を集め、ギレーヌが加工してグレゴールさんが販売する。
 役者は揃ったな。
 グレゴールさんが俺に目配せをし、静かに頷いた。

「ギレーヌ。実は俺とグレゴールさんは、ギレーヌがモンスターの素材を集めるための仲間を探しているとの情報を聞いて、ギレーヌを探していたんだよ。良かったら俺達にもギレーヌの魔法道具屋を構える夢を手伝わせてくれないかな?」
「だけど、そのためには大量のモンスターの素材と、店を構えるための土地が必要よ……私の夢は簡単に叶えられるような夢じゃないから、他の人に手伝ってもらうのは……」
「実は大量のモンスターの素材を集める事も、土地を確保する事も俺達にとっては難しい事じゃないんだ。この地図を見てくれるかな」

 俺は懐からフォスルターの地図を取り出してギレーヌに見せた。
 ギレーヌはワクワクした表情で地図を眺めている。

「この土地はフォルスターといって、魔法都市グロスハイムから南に五日の距離に位置する廃村なんだ。実はこの村の権利は俺が持っている。深い森に囲まれた素敵な土地……と言えば嘘になるんだけど、この土地には現在、闇属性のモンスターが巣食っているんだ。この土地になら、誰が家を建てようが店を構えようが、俺は大歓迎なんだ」
「え? 土地を持っているの?」
「うん。色々あって俺がフォルスターの権利を所有しているんだ」
「だけど村には闇属性のモンスターが巣食っているのね?」
「平均レベル25のグリムリーパー、それから無数のスケルトンがこの土地を棲家にしている。廃村に巣食うモンスターさえ居なければ、グロスハイムとの距離も近いし、新しく商売を始めるには良い環境だと思うんだ。どうだろう、一緒に廃村のモンスターを狩って、村を再生してみないかい? モンスターが居なくなれば、ギレーヌは俺の村で魔法道具の店を構える事が出来る」
「それはいい条件ね……廃村のモンスターを狩れば、私はフォスルターで店を出せるんだ」
「そういう事だよ。どれだけ時間が掛かるか分からないけど、挑戦してみないかい? お金を貯めてグロスハイムで新しい店を構えるよりは、フォルスターで店を構えた方が、失敗した時のリスクも少ないと思うんだ。それに、グロスハイムには魔法関係の店が多すぎる」
「それは少し意識していたけど、そうね……新たな土地で店を構えるのも良いかもしれない」

 ギレーヌは決心した表情で俺を見つめた。

「アルフォンス。私もあなたのパーティーに入れてくれる? フォスルターのモンスター狩りを手伝うわ」
「ありがとう。俺達も君の夢をサポートするよ。俺はフォスルターのモンスターを狩るだけではなく、再生しなければならないんだ。時間は掛かると思うけど、一緒に頑張ろう」
「ええ、よろしくね。皆さん」

 俺達は正式にパーティーとして行動する事が決まった。
 グレゴールさんは嬉しそうに涙を流した。
 久しぶりに商人として仕事が出来るからだろうか。

 間髪容れずに今後の計画を立てる事にした。
 まずは明日の朝に魔術師ギルドに行き、借金の件についてアンジェラさんと相談する。
 その後、モンスター屋に行って、何か手頃なモンスターが居ないか探すつもりだ。

 借金を返済するために、俺達は協力しあってお金を稼ぐ事になった。
 ギレーヌは、グロスハイムの商業区の土地を買うよりも、フォルスターの借金を返済する方が、遥かに金銭的な負担が少ないと歓喜した。

 グリムリーパーを倒すために更に訓練を積み、モンスターの素材を集め、ギレーヌにアイテムを作ってもらう。
 グレゴールさんがグロスハイムでアイテムを販売し、失った信頼を取り戻しながらお金を稼ぐ。
 良質なアイテムを地道に販売し続ければ、ギレーヌの知名度も上がり、グレゴールさんの信用も戻るだろう。
 今後の方針が決まると、俺達はすぐに解散し、明日の朝からパーティーとして動く事が決定した。

「二人共部屋に帰ったみたいね」
「そうだね。リーゼロッテもララも何か意見は無かったのかい?」
「私は特に無いわ。アルフォンスの決定に従う。だってあなたと居たら退屈しないんだから」
「退屈しないか……俺の無茶に付き合ってくれてありがとう」

 俺はララの頭をモフモフすると、彼女は心地よさそうに目を瞑った。
 リーゼロッテとララは話し合いの間、静かに会話を聞いていただけで、特に意見を言う事も無かった。

「アルフォンス。早く借金を返せたら良いね」
「そうだね。これから仲間を増やせば一日に狩れるモンスターの数も増える、そうすればクエストの報酬額も増え、ギレーヌが製作出来るアイテムの数も増える」
「私達はモンスターを狩れば良いんだよね」
「そういう事だよ、リーゼロッテ。これからも俺を支えてくれるかい?」
「もちろん。私は一生アルフォンスと共に居るつもり」
「俺はリーゼロッテのためにも、ララのためにも、一流の魔術師になるよ。レベル25だってすぐに越してみせる」

 俺はリーゼロッテの小さな体を抱きしめた。
 驚異的な速度で成長しつつあるが、彼女はまだ生まれたばかりの子供だ。
 俺が大切に育てなければならない。
 俺は仲間が全員裕福に暮らせる未来のために働く。
 これが仲間への恩返しだ。
 俺が今出来る事は、仲間が誇れるリーダーになる事だ。

「リーゼロッテ、お風呂に入ろうか」
「お風呂?」
「ああ、温かいお湯が出るんだ。今までは行水をしていただろう? 人間は温かいお湯に浸かって疲れをとるんだよ」

 リーゼロッテは自然の中で生まれたから、お風呂を見た事すらない。
 俺はリーゼロッテを抱えて浴室に入った……。
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