封魔剣舞 - 倒した魔物を魔石化する剣技と「魔石ガチャ」で冒険者無双 -

花京院 光

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第一章「迷宮都市ベーレント編」

第二話「魔石を求めて」

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 討伐したゴブリンの数は全部で十五体。その内魔石持ちの個体が二体居た。魔力の回復を待ちながら、未知なる箱の使い道を想像し、美しい魔石砲を何度も磨いて手入れした。

 青白く輝くミスリル製の魔石砲はいつまで見ても飽きる事はない。一目見て最高の魔法道具だと分かるのは、魔法道具屋の息子として生まれ、幼い頃から数多くの魔法道具に触れて育ったからだろう。

 ゴブリン達が使っていたダガーをマジックバッグに仕舞い、旅行鞄に詰めた荷物をマジックバッグに移した。今日の旅のために購入した新品の鞄も、マジックバッグがあるからもう使う事もないだろう。

 小さなバックパック型のマジックバッグは大きな荷物も際限なく収納する事が出来る。物体を鞄に入れる瞬間に大きさが変化するのだ。

 錬金術師の指環に精神を集中させると、指環の形状が変化して箱に変わった。今度はどんな魔法道具が手に入るのだろうか。俺は興奮しながらゴブリンの魔石を投入した。再び『Eランク 初級冒険者シリーズ』と表示されると、俺はすぐにレバーを回した。

 透明なカプセルが地面に落ちると、俺は異変に気が付いた。最初にこの箱が出したカプセルは金色に輝いていた。カプセルの色によって中に入っている道具の種類が変わるのだろうか?

 慌てて透明のカプセルを開けると、中から木刀が出てきた。

「木刀……? 最初がマジックバッグだったのに、今回はハズレなのか?」

 それから俺は再び魔石を投入し、レバーを回した。今度は銀色のカプセルが地面に落ちた。透明のカプセル、銀のカプセル、金のカプセル。恐らくカプセルは全部で三種類なのだろう。

 銀のカプセルを開けると、革製の防具一式が地面に落ちた。レザーガントレット、レザーメイル、レザーフォールド、レザーグリーヴ。実家は魔法道具屋だったから、こういった防具は売ってなかったが、箱は武具も作り出す力があるのだろう。

「こういう装備に憧れたんだよな……」

 俺はすっかり興奮して革製の防具を全身に装備した。一気に防御力が上がり、俺の気分も最高に盛り上がった。

「やれやれ、これくらいで喜んでどうするんだい?」
「誰だ!? この声はどこから聞こえるんだ!?」

 ホルスターから魔石砲を引き抜いて構える。森を見渡しても声の主は居ない。確かに幼い少年の様な声が聞こえた筈なのだが……。

「下だよ。ここ」

 視線を落とすと、オリハルコン製の小さな箱が俺を見上げていた。俺は夢でも見ているのだろうか? 箱が自在に言葉を操り、俺に話しかけているのだ。

「お前は何者だ……!?」

 箱に魔石砲を向けると、箱は両手を上げて固まった。さっきまでは手なんて生えてなかったが、確かに細い金属から出来た手が生えているのだ。それに、足まで生えている。箱の前面には二つの魔石がまるで目の様に嵌っており、オリハルコン製の箱なのに生物の様にも見える。

「僕は魔石ガチャだよ。錬金術師のジェラルド・ベルギウスに作られたんだ」
「魔石ガチャ?」
「そうだよ。魔石から道具を作り出す力を持っているんだ。僕の事はガチャって呼んでくれよ。ギルベルトから君に魔法道具の事について教授する様にと頼まれているんだよ」

 父、ギルベルト・シュタインは旅の途中で魔法道具を作り出す力を得たと言っていた。俺はてっきり父自身が直接魔法道具を作っていたと思っていた。というのは、父は魔法道具を作り出すための工房には立ち入りを禁じていたのだ。

 俺も母も父が魔法道具を制作している姿は一度も見た事がない。父は魔石ガチャの力によって様々な魔法道具を作り出し、魔法道具屋として俺を育ててくれた。俺も偉大な父の様に魔法道具の販売を生業とするのも良いかもしれないな。

「それにしても、君は随分弱いんだねぇ。ギルベルトならゴブリン相手にてこずる事もなかったのに。まぁ、ガチャが作り出す道具を使えば、君も少しは強くなれると思うよ」
「ガチャは生きているのかい?」
「勿論。魔石を糧に生きているんだよ。錬金術を応用した魔法が僕の体内に仕組まれていて、僕は魔石の強さに比例した魔法道具を作り出す事が出来るんだ」
「それなら、どうしてゴブリンの魔石を投入したのに、木刀が出てきたり、マジックバッグが出てきたり、作り出す道具にムラがあるんだい?」
「僕には力を制御出来ないからだよ。ハズレの道具もあれば当たりの道具もある。ちなみに、透明のカプセルはノーマルカプセル、銀色はレアカプセル、金色はスーパーレアカプセル。その上に虹色に輝くレジェンドカプセルが存在する」
「カプセルは全部で四種類という訳だね」
「そうだよ。そしてギルベルトはSランクの魔石を投入し、見事魔石砲を引き当てた。そして彼は満足して僕を君に託したんだ」

 魔石砲はSランクの魔石から作り上げた最高の魔法道具。Sランクの魔物と言えば、一体で一国を壊滅させる程の力を持つバハムートやエンシェントドラゴン等だ。俺の父はラース大陸の歴史上初、魔法道具屋にしてSランクの称号を得た冒険者だ。

「ギルベルトは魔法道具に精通していたからね。魔力は他のSランクの冒険者に比べれば高くないけど、状況に応じて的確に魔法道具を使い分け、どんな魔物にも負ける事はなかった。僕の理想の魔法道具屋だよ。僕とギルベルトは大陸中を旅した。今度は息子であるユリウス、君と旅を出来る事を光栄に思うよ」

 ガチャはわざとらしく頭を下げてみせると、俺は小さなガチャを抱き上げて頭を撫でた。

「正直、一人の旅は心細かったんだよ。これからよろしく頼むよ」
「ああ。僕には寿命の概念がないから、ユリウスが死ぬまで共に居よう」

 ガチャが再び指環の姿に戻ると、俺は魔石を集めるために森を駆け回ってゴブリンを狩り続けた。ゴブリンの固有魔法であるアースウォールの魔法は使い勝手が良く、敵の攻撃に合わせて土の壁を作り出し、壁で攻撃を防いでからファイアボルトを撃つという戦い方を身に着けた。

 魔石砲は六種類の魔石を装填し、状況に合わせて自在に弾を打ち出す事が出来る。魔法名を唱えるだけで弾倉が自動的に回転し、対応した魔石を打ち出す仕組みになっているのだ。

 森でゴブリン狩りを始めて三時間ほど経過したが、魔石持ちの個体とは出会えなかった。魔石砲に頼るばかりではすぐに魔力が枯渇してしまうので、俺は木刀やダガーを使ってゴブリンを討伐した。

 もう少しまともな武器を用意しておけば良かった。なるべくお金を貯めておきたかったから、隣町に着くまではファイアの魔法だけで乗り切ろうと思っていたのだ。予想以上にゴブリン討伐が捗り、魔力が圧倒的に足りないのだ。

 そうして俺は魔石を求めてゴブリンを狩りながら、故郷のギーレン村からほど近い迷宮都市ベーレントを目指して移動を続けた。
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