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第二章「王都編」
第五十四話「魔物の襲撃を受けてもギレーヌが返り討ちにしてくれるので、旅の生活が安全すぎる件について」
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今日も朝早くに目が覚めた。
レーネは俺よりも早くに起床していたのか、楽しそうにシュルスクの果実を齧っている。
確かイステルで買い溜めておいたシュルスクは全てレーネが平らげた筈だったが。
何故レーネがシュルスクを食べているのだろうか?
「おはよう、ラインハルト」
「おはよう。レーネ……そのシュルスクはどうしたの?」
「家の前に置いてあったの」
「え? どういう事?」
「沢山あるよ。ラインハルトも食べる?」
エステルが眠たそうに起き上がると、慌ててシュルスクを拾い上げた。
「ラインハルト君! シュルスクってブラックベアの好物なんだよ。実は……僕達の村には大きなシュルスクの木があって、時々ブラックベアがシュルスクを採りに来ていたんだ!」
「朝起きたらブラックベアの好物が家の前にある、という事は何者かがシュルスクを使って俺達にブラックベアをけしかけようとしているのか?」
「分からないけど、最近ブラックベアがやけに僕達の村を襲うんだ。シュルスクの木に宿るドライアドが何とか追い払ってくれるんだけど、それでもブラックベアの襲撃に遭って命を落とす仲間も居るんだ」
エリカ、フローラ、アナスタシアも目を覚ました様だ。
エリカは入り口に積まれたシュルスクを手に取り、静かに怒りながら握り潰した。
「この私にブラックベアをけしかけようとする輩が居るとはな……なかなか面白いじゃないか」
「エステルや、今ドライアドが村に住んでいると言ったかの?」
「うん、アナスタシア君はドライアドの事を知っているの?」
「何度か話をした事があるだけじゃ。奴らはシュルスクの木に宿って地域を守りながら暮らす木の精霊。確かドライアドの血液は生命の秘薬の材料になった筈じゃが……」
生命の秘薬。
以前旅の途中で耳にした事がある。
ドライアドとドラゴンの血液、それからシュルスクの果実を煮込んで作り上げる薬だ。
一口飲めば十歳分の若返り効果があり、二口飲めば二十歳分の若返り効果がある。
だが、三口飲めばドライアドの呪いに掛かり、たちまち命を落とす。
高齢の貴族が人生で二度使用する秘薬としても有名である。
秘薬の効果は絶大だが、ドライアドの生息数が少ないので製作は非常に困難。
ドライアドは魔物が少ない土地のシュルスクの木にしか宿らない木の精霊。
Bランクに分類される生物で、防御系の魔法陣に長けている。
慌てて外に出ると、四体のブラックベアがすぐ近くに潜んでいる事に気が付いた。
瞬間的にレーネに左手を向ける。
「レーネ・武装」
レーネの肉体が風に包まれ、ロングボウに変化すると、俺は風の弓を構えた。
ブラックベアに向けて矢を放ち、敵の肩を射貫く。
必中の効果がある風の弓は、でたらめに矢を放っても確実に相手を捉える事が出来る。
勿論、距離には限界がある。
大体二百メートル程までなら確実に相手に当てる事が出来る。
ブラックベアが激高しながら炎を吐いた瞬間、俺は右手をフローラに向けた。
「フローラ・武装!」
瞬間的にフローラを闇払いの盾に変え、ブラックベアの火炎を防ぐ。
ギレーヌはやっと目を覚ましたのか、朝からエールを一気に飲み干した。
それからエールの瓶を地面に叩きつけて割り、おもむろにメイスをひっつかむ。
魔物に起こされてご機嫌斜め、といった感じだ。
腰まで伸びた赤髪は乱れ、寝間着として身に着けている浴衣の胸元がはだけている。
「おいおい、朝から熊鍋でもしようってのか? あたしの餌になるためにわざわざ出向いて来るとは気が利く熊じゃねぇか」
ギレーヌは一気にブラックベアと距離を詰め、メイスで顔面を強打。
俺は火炎をかき消してから風の弓を地面に置いた。
「レーネ・封印解除!」
レーネをウィンドホースに戻し、瞬時にエリカとアナスタシアに目配せをする。
「アナスタシア、エリカ・武装!」
アナスタシアが妖狐の魔装に変化して俺の体を覆い、エリカが黒竜刀に変化した。
レーネの背中に乗ってブラックベアに接近する。
同時に鞘から黒竜刀を引き抜き、ブラックベアの肩を切り裂く。
敵の図体が大きいので、刀でも移動と同時に切りつける事が出来る。
太刀や槍があればもっと戦いやすかったのだが……。
エステルは地面に両手を付け、冷気を発生させた。
ケットシーは水と氷属性に特化した魔物。
何か魔法を使用するつもりなのだろうか。
「アイスゴーレム!」
瞬間、エステルの目の前に氷のゴーレムが現れた。
体の大きさは俺よりも僅かに大きいくらいだろう。
ゴーレムにしてはスリムで少し頼りない。
それからエステルが右手を上空に掲げた。
強い冷気が発生した瞬間、彼女は俺を見つめて微笑んだ。
「アイスジャベリン!」
エステルが魔法を唱えた瞬間、氷から作られた槍が生まれた。
まさか、ウィンドホースに乗った状態でジャベリンを使えというのだろうか。
だが、刀よりは接近しなくても済むから都合が良い。
「ラインハルト君! これを使って!」
「わかった!」
エステルが氷のジャベリンを寄越すと、俺はブラックベアから一気に離れた。
それから狙いを定め、急接近しつつ全力でジャベリンを投げる。
氷の槍がブラックベアの皮膚を貫き、心臓に到達すると、敵は静かに命を落とした。
ギレーヌは既にブラックベアを二体仕留めた様だ。
残る一体のブラックベアはアイスゴーレムが相手している。
ブラックベアがファイアボールの魔法を放ち、アイスゴーレムの腕を吹き飛ばした。
そして鋭利な爪でアイスゴーレムの体を切り裂くと、ギレーヌが敵の背後に回った。
アイスゴーレムはただの囮だったのだろう、背後からメイスの一撃を背中に放つ。
静かな森にはブラックベアの骨が砕ける音と、悍ましいうめき声が響いた。
「エステル! お前さんのゴーレムはなかなか役に立つじゃねぇか。見直したぞ」
ギレーヌは戦闘中に余裕の笑みを浮かべてから、メイスを投げ捨てた。
それから拳に雷のエンチャントを掛け、助走をつけて渾身のストレートを放つ。
強烈な爆発音と共に巨体のブラックベアの体が宙に浮いた。
驚異的な物理攻撃力の高さだ。
これがギレーヌの本気の一撃という訳か……。
ブラックベアの体が吹き飛び、木々をなぎ倒して遥か彼方まで飛んで行った。
あまりにも強すぎるギレーヌの一撃に、思わず鳥肌が立つ。
「強すぎるだろ……ギレーヌ」
「あたしの実力を今頃知ったのか? ブラックベア程度の魔物なら簡単にぶっ飛ばせるぞ」
流石にオーガ達の頭を務めていた酒呑童子は強さの次元が違う。
エステルはギレーヌの戦いぶりに感動したのか、ギレーヌの事を師匠と呼んだ。
戦いが終わると、ギレーヌは地面に座り込み、すぐに酒を催促した。
彼女に葡萄酒を渡すと、瓶に口を付けて一気飲み。
酒の飲み方も戦い方も豪快すぎる彼女に惹かれている自分に気が付く。
「戦いの後の酒は格別だな! ラインハルト、あたしとの約束を忘れてないだろうな?」
「次の街に着いたら一週間酒を飲み続ける、だったかな」
「そうだ。お前さんのおごりでな」
「分かってるよ、それじゃシュターナーで宴にしよう。まずは俺達にブラックベアをけしかけた犯人を捜す」
まずはアナスタシア、エリカ、フローラの武装を解除する。
石の家は残しておくと魔物のたまり場になりそうなので破壊。
仲間達が馬車の家に入ると、俺はエステルと共に御者台に乗った。
「エステル、案内を頼める?」
「任せてよ」
早速シュターナーを目指して移動を始めるとしよう……。
レーネは俺よりも早くに起床していたのか、楽しそうにシュルスクの果実を齧っている。
確かイステルで買い溜めておいたシュルスクは全てレーネが平らげた筈だったが。
何故レーネがシュルスクを食べているのだろうか?
「おはよう、ラインハルト」
「おはよう。レーネ……そのシュルスクはどうしたの?」
「家の前に置いてあったの」
「え? どういう事?」
「沢山あるよ。ラインハルトも食べる?」
エステルが眠たそうに起き上がると、慌ててシュルスクを拾い上げた。
「ラインハルト君! シュルスクってブラックベアの好物なんだよ。実は……僕達の村には大きなシュルスクの木があって、時々ブラックベアがシュルスクを採りに来ていたんだ!」
「朝起きたらブラックベアの好物が家の前にある、という事は何者かがシュルスクを使って俺達にブラックベアをけしかけようとしているのか?」
「分からないけど、最近ブラックベアがやけに僕達の村を襲うんだ。シュルスクの木に宿るドライアドが何とか追い払ってくれるんだけど、それでもブラックベアの襲撃に遭って命を落とす仲間も居るんだ」
エリカ、フローラ、アナスタシアも目を覚ました様だ。
エリカは入り口に積まれたシュルスクを手に取り、静かに怒りながら握り潰した。
「この私にブラックベアをけしかけようとする輩が居るとはな……なかなか面白いじゃないか」
「エステルや、今ドライアドが村に住んでいると言ったかの?」
「うん、アナスタシア君はドライアドの事を知っているの?」
「何度か話をした事があるだけじゃ。奴らはシュルスクの木に宿って地域を守りながら暮らす木の精霊。確かドライアドの血液は生命の秘薬の材料になった筈じゃが……」
生命の秘薬。
以前旅の途中で耳にした事がある。
ドライアドとドラゴンの血液、それからシュルスクの果実を煮込んで作り上げる薬だ。
一口飲めば十歳分の若返り効果があり、二口飲めば二十歳分の若返り効果がある。
だが、三口飲めばドライアドの呪いに掛かり、たちまち命を落とす。
高齢の貴族が人生で二度使用する秘薬としても有名である。
秘薬の効果は絶大だが、ドライアドの生息数が少ないので製作は非常に困難。
ドライアドは魔物が少ない土地のシュルスクの木にしか宿らない木の精霊。
Bランクに分類される生物で、防御系の魔法陣に長けている。
慌てて外に出ると、四体のブラックベアがすぐ近くに潜んでいる事に気が付いた。
瞬間的にレーネに左手を向ける。
「レーネ・武装」
レーネの肉体が風に包まれ、ロングボウに変化すると、俺は風の弓を構えた。
ブラックベアに向けて矢を放ち、敵の肩を射貫く。
必中の効果がある風の弓は、でたらめに矢を放っても確実に相手を捉える事が出来る。
勿論、距離には限界がある。
大体二百メートル程までなら確実に相手に当てる事が出来る。
ブラックベアが激高しながら炎を吐いた瞬間、俺は右手をフローラに向けた。
「フローラ・武装!」
瞬間的にフローラを闇払いの盾に変え、ブラックベアの火炎を防ぐ。
ギレーヌはやっと目を覚ましたのか、朝からエールを一気に飲み干した。
それからエールの瓶を地面に叩きつけて割り、おもむろにメイスをひっつかむ。
魔物に起こされてご機嫌斜め、といった感じだ。
腰まで伸びた赤髪は乱れ、寝間着として身に着けている浴衣の胸元がはだけている。
「おいおい、朝から熊鍋でもしようってのか? あたしの餌になるためにわざわざ出向いて来るとは気が利く熊じゃねぇか」
ギレーヌは一気にブラックベアと距離を詰め、メイスで顔面を強打。
俺は火炎をかき消してから風の弓を地面に置いた。
「レーネ・封印解除!」
レーネをウィンドホースに戻し、瞬時にエリカとアナスタシアに目配せをする。
「アナスタシア、エリカ・武装!」
アナスタシアが妖狐の魔装に変化して俺の体を覆い、エリカが黒竜刀に変化した。
レーネの背中に乗ってブラックベアに接近する。
同時に鞘から黒竜刀を引き抜き、ブラックベアの肩を切り裂く。
敵の図体が大きいので、刀でも移動と同時に切りつける事が出来る。
太刀や槍があればもっと戦いやすかったのだが……。
エステルは地面に両手を付け、冷気を発生させた。
ケットシーは水と氷属性に特化した魔物。
何か魔法を使用するつもりなのだろうか。
「アイスゴーレム!」
瞬間、エステルの目の前に氷のゴーレムが現れた。
体の大きさは俺よりも僅かに大きいくらいだろう。
ゴーレムにしてはスリムで少し頼りない。
それからエステルが右手を上空に掲げた。
強い冷気が発生した瞬間、彼女は俺を見つめて微笑んだ。
「アイスジャベリン!」
エステルが魔法を唱えた瞬間、氷から作られた槍が生まれた。
まさか、ウィンドホースに乗った状態でジャベリンを使えというのだろうか。
だが、刀よりは接近しなくても済むから都合が良い。
「ラインハルト君! これを使って!」
「わかった!」
エステルが氷のジャベリンを寄越すと、俺はブラックベアから一気に離れた。
それから狙いを定め、急接近しつつ全力でジャベリンを投げる。
氷の槍がブラックベアの皮膚を貫き、心臓に到達すると、敵は静かに命を落とした。
ギレーヌは既にブラックベアを二体仕留めた様だ。
残る一体のブラックベアはアイスゴーレムが相手している。
ブラックベアがファイアボールの魔法を放ち、アイスゴーレムの腕を吹き飛ばした。
そして鋭利な爪でアイスゴーレムの体を切り裂くと、ギレーヌが敵の背後に回った。
アイスゴーレムはただの囮だったのだろう、背後からメイスの一撃を背中に放つ。
静かな森にはブラックベアの骨が砕ける音と、悍ましいうめき声が響いた。
「エステル! お前さんのゴーレムはなかなか役に立つじゃねぇか。見直したぞ」
ギレーヌは戦闘中に余裕の笑みを浮かべてから、メイスを投げ捨てた。
それから拳に雷のエンチャントを掛け、助走をつけて渾身のストレートを放つ。
強烈な爆発音と共に巨体のブラックベアの体が宙に浮いた。
驚異的な物理攻撃力の高さだ。
これがギレーヌの本気の一撃という訳か……。
ブラックベアの体が吹き飛び、木々をなぎ倒して遥か彼方まで飛んで行った。
あまりにも強すぎるギレーヌの一撃に、思わず鳥肌が立つ。
「強すぎるだろ……ギレーヌ」
「あたしの実力を今頃知ったのか? ブラックベア程度の魔物なら簡単にぶっ飛ばせるぞ」
流石にオーガ達の頭を務めていた酒呑童子は強さの次元が違う。
エステルはギレーヌの戦いぶりに感動したのか、ギレーヌの事を師匠と呼んだ。
戦いが終わると、ギレーヌは地面に座り込み、すぐに酒を催促した。
彼女に葡萄酒を渡すと、瓶に口を付けて一気飲み。
酒の飲み方も戦い方も豪快すぎる彼女に惹かれている自分に気が付く。
「戦いの後の酒は格別だな! ラインハルト、あたしとの約束を忘れてないだろうな?」
「次の街に着いたら一週間酒を飲み続ける、だったかな」
「そうだ。お前さんのおごりでな」
「分かってるよ、それじゃシュターナーで宴にしよう。まずは俺達にブラックベアをけしかけた犯人を捜す」
まずはアナスタシア、エリカ、フローラの武装を解除する。
石の家は残しておくと魔物のたまり場になりそうなので破壊。
仲間達が馬車の家に入ると、俺はエステルと共に御者台に乗った。
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