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第一章「迷宮都市フェーベル編」
第三十四話「英雄の帰還」
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死のダンジョンから生還し、久しぶりの外の空気を吸う。全身に朝日を浴びて幸福感を覚えながらも、ギレーヌの手を握り締めた。ギレーヌは初めて見るフェーベルの町を呆然と眺め、見る物全てが新鮮といった様子ではしゃいでいる。
ギレーヌの姿を見ても驚く市民は居ない。というのは、実際にギレーヌの姿を見て生還出来た者が少ないからだ。ギレーヌの特徴として伝わっているのは、薔薇色のドレスに長い黒髪。ルビーの瞳に、黒い魔力から作られた大鎌を持つという事だけ。
実際のギレーヌは美しい少女で、町を歩いているだけで大勢の男がギレーヌの美貌に見とれている事に気がついた。ギレーヌは俺の手を強く握り締めながら、見る物全てに感動しながら町を見て回った。
まずは冒険者ギルド・レグルスに赴き、マスターのダニエル・ハインさんにデーモンの討伐と死のダンジョン攻略を報告しなければならない。ギレーヌはパン屋の前に立ち止まると、暫く外から店の様子を眺め、目を輝かせながら店の扉を開いた。
「レオン。ここは天国なの? こんなに沢山の食べ物を見るのも初めて。全部食べてみたいわ。レオン、パンを買ってもいいでしょう?」
「勿論、好きなだけ買うんだよ。お金を渡すから、自分で払ってごらん」
「お金を使うのも初めてだわ。店員が私に気が付いて精霊狩りを呼ばないかしら」
「大丈夫。誰もギレーヌに気が付いていないみたいだし。俺が傍に居るから心配しなくていいよ」
「そうね。幻獣のデーモンにも立ち向かえるレオンが居るのだから安心だわ。さぁ入りましょう」
店内では紅茶を飲みながらパンを食べられるらしく、俺達は暫くギレーヌの食事に付き合った。ギレーヌは様々な種類のパンをまんべんなく選ぶと、物凄い勢いで食べ始めた。パンを六個食べると、流石に満足したのか、大量のパンを持ち帰るために包んで貰った。
十体のスケルトンが金銀財宝を抱えながら俺達の背後を付いて来るから、市民達は何事かと駆け付けてきた。瞬く間に人だかりが出来て、俺達はそのまま冒険者ギルド・レグルスに入った。
マスターのダニエルさんが俺達の姿を見るや否や、満面の笑みを浮かべて駆け付けてきた。俺はデーモンの魔石をギレーヌに持たせると、ギレーヌは緊張した面持ちで俺を見上げた。
「ダニエルさん。死霊の精霊・ギレーヌと共に、死のダンジョンの支配者である幻獣のデーモンの討伐に成功しました。これが討伐の証明です」
「これは……、間違いなく幻獣の魔石! まさか……! レオン達が死のダンジョンを攻略したのか!? 八十年以上も攻略者が現れなかった最高難度の死のダンジョンを、死霊の精霊と共に攻略してしまうとは! 若干十四歳で幻獣のグレートゴブリンを討伐した英雄は、またしても幻獣の討伐を成功させた!」
冒険者達が一斉に集まり、デーモンの魔石を一目見ようと押し合いへし合いしながら魔石を見つめた。幻獣討伐は冒険者の憧れ。自分自身の強さを証明するのはレベルではなく、モンスターの討伐履歴だ。
幻獣を討伐すれば様々な冒険者ギルドからオファーを貰う。中には多額の契約金を支払っても幻獣の討伐者をギルドに引き入れようとする事もある。
「これが幻獣の魔石か……。魔獣クラスの魔石とは比較にならない程の力を感じる」
「それに、死霊の精霊ってこんなに可愛いんだな。確か精霊狩り以外は襲わないんだよな……。レオンさんとも随分親しいみたいだし、魔族との戦いで精霊が味方に居れば、俺達はより安全に任務を遂行出来るだろう」
「十五歳で幻獣討伐か。俺、今年で四十にもなるのに、まだ一度も幻獣を討伐出来た事ないし、冒険者引退しようかな……」
様々な感想が飛び合いながらも、レグルスは大いに盛り上がった。魔族との戦闘を控えた冒険者達は、俺達パーティーの死のダンジョンの攻略を聞いて一気に士気が上がったのだろう。それからすぐに宴の準備が始まった。
ダニエルさんは職員を集め、レグルスから死のダンジョン攻略者が現れた事を街中に伝えて回る様にと命令した。ギルドの知名度が上がれば加入者も増え、クエストも他のギルドより多くこなす事が出来る。
俺がデーモンの魔石をレグルスに持ち込む事によって、フェーベルの市民達はレグルスの冒険者が死のダンジョンを攻略したと考えるだろう。これから魔族との戦いで戦力を借りるのだ、せめてもの恩返しをしておきたい。
それから俺達はデーモンの魔石を換金し、デーモン討伐の報酬を頂いた。多くの冒険者を殺し続けたデーモンに対し、フェーベルは多額の懸賞金を掛けていた。デーモンの魔石の買い取り価格が百万ゴールド、デーモン討伐の懸賞金が百二十万ゴールド、宝物庫から持ち帰った財宝と、デーモンの素材の買取価格を精算すると、全部で六千八百万ゴールドにもなった。
ミスリルやオリハルコン等の希少な金属は武具の制作のために保管しておく。俺とクリステルさんで報酬を山分けにすると、俺は三千四百万ゴールドものお金と、死のダンジョン攻略者の称号まで授かった。
ダンジョンの攻略者は称号を授かる事が出来る。ギルドで冒険者登録をする際等に、称号を持つ者は優先的にクエストを受ける事が出来るとの説明を聞いた。
今日は久しぶりにフェーベルに戻ってきたので、ギレーヌのための新しいドレスを買いに行き、ティナの防具の制作を依頼し、エミリアのためにオリハルコンから首飾りとサークレットを作る事にした。
最高の金属と宝石を使ってエミリアにプレゼントを用意したい。再会した時に渡すために、今から彼女への贈り物を用意しておく。俺はギルドの職員達に、ギレーヌの協力があったからデーモンを仕留める事が出来たと力説し、職員達は街中にギレーヌの善行が届く様に計らうと言ってくれた。
これで長年誤解され続けたギレーヌに対する意識が変わってくれれば良いと思う。ギレーヌは人間を守る精霊なのだ。他の精霊と比べた時に精霊狩りから狙われる回数が多かった。彼女は大勢の精霊狩りを殺してきたが、今回、俺達を守りながらデーモンとの戦いに力を貸してくれた事を知って欲しい。
それから俺はギレーヌとティナを連れて町を見て回った。既にシュルツ村のレオン・シュタイナーのパーティーが死霊の精霊と共に死のダンジョンを攻略した事が噂になっているのか、町を歩くだけで大勢の市民に囲まれた。
俺はその度にギレーヌのお陰でデーモンの討伐が出来たと話し、美しいギレーヌを市民達に紹介し続けた。市民達も人間とは異なる魅力を持つギレーヌの美貌に見とれた。すぐにギレーヌの評判が良いものに変わるだろう。あとはエミリアとシャルロッテさんを開放すれば良いのだ。今日から魔族の砦攻略のために準備を始める……。
ギレーヌの姿を見ても驚く市民は居ない。というのは、実際にギレーヌの姿を見て生還出来た者が少ないからだ。ギレーヌの特徴として伝わっているのは、薔薇色のドレスに長い黒髪。ルビーの瞳に、黒い魔力から作られた大鎌を持つという事だけ。
実際のギレーヌは美しい少女で、町を歩いているだけで大勢の男がギレーヌの美貌に見とれている事に気がついた。ギレーヌは俺の手を強く握り締めながら、見る物全てに感動しながら町を見て回った。
まずは冒険者ギルド・レグルスに赴き、マスターのダニエル・ハインさんにデーモンの討伐と死のダンジョン攻略を報告しなければならない。ギレーヌはパン屋の前に立ち止まると、暫く外から店の様子を眺め、目を輝かせながら店の扉を開いた。
「レオン。ここは天国なの? こんなに沢山の食べ物を見るのも初めて。全部食べてみたいわ。レオン、パンを買ってもいいでしょう?」
「勿論、好きなだけ買うんだよ。お金を渡すから、自分で払ってごらん」
「お金を使うのも初めてだわ。店員が私に気が付いて精霊狩りを呼ばないかしら」
「大丈夫。誰もギレーヌに気が付いていないみたいだし。俺が傍に居るから心配しなくていいよ」
「そうね。幻獣のデーモンにも立ち向かえるレオンが居るのだから安心だわ。さぁ入りましょう」
店内では紅茶を飲みながらパンを食べられるらしく、俺達は暫くギレーヌの食事に付き合った。ギレーヌは様々な種類のパンをまんべんなく選ぶと、物凄い勢いで食べ始めた。パンを六個食べると、流石に満足したのか、大量のパンを持ち帰るために包んで貰った。
十体のスケルトンが金銀財宝を抱えながら俺達の背後を付いて来るから、市民達は何事かと駆け付けてきた。瞬く間に人だかりが出来て、俺達はそのまま冒険者ギルド・レグルスに入った。
マスターのダニエルさんが俺達の姿を見るや否や、満面の笑みを浮かべて駆け付けてきた。俺はデーモンの魔石をギレーヌに持たせると、ギレーヌは緊張した面持ちで俺を見上げた。
「ダニエルさん。死霊の精霊・ギレーヌと共に、死のダンジョンの支配者である幻獣のデーモンの討伐に成功しました。これが討伐の証明です」
「これは……、間違いなく幻獣の魔石! まさか……! レオン達が死のダンジョンを攻略したのか!? 八十年以上も攻略者が現れなかった最高難度の死のダンジョンを、死霊の精霊と共に攻略してしまうとは! 若干十四歳で幻獣のグレートゴブリンを討伐した英雄は、またしても幻獣の討伐を成功させた!」
冒険者達が一斉に集まり、デーモンの魔石を一目見ようと押し合いへし合いしながら魔石を見つめた。幻獣討伐は冒険者の憧れ。自分自身の強さを証明するのはレベルではなく、モンスターの討伐履歴だ。
幻獣を討伐すれば様々な冒険者ギルドからオファーを貰う。中には多額の契約金を支払っても幻獣の討伐者をギルドに引き入れようとする事もある。
「これが幻獣の魔石か……。魔獣クラスの魔石とは比較にならない程の力を感じる」
「それに、死霊の精霊ってこんなに可愛いんだな。確か精霊狩り以外は襲わないんだよな……。レオンさんとも随分親しいみたいだし、魔族との戦いで精霊が味方に居れば、俺達はより安全に任務を遂行出来るだろう」
「十五歳で幻獣討伐か。俺、今年で四十にもなるのに、まだ一度も幻獣を討伐出来た事ないし、冒険者引退しようかな……」
様々な感想が飛び合いながらも、レグルスは大いに盛り上がった。魔族との戦闘を控えた冒険者達は、俺達パーティーの死のダンジョンの攻略を聞いて一気に士気が上がったのだろう。それからすぐに宴の準備が始まった。
ダニエルさんは職員を集め、レグルスから死のダンジョン攻略者が現れた事を街中に伝えて回る様にと命令した。ギルドの知名度が上がれば加入者も増え、クエストも他のギルドより多くこなす事が出来る。
俺がデーモンの魔石をレグルスに持ち込む事によって、フェーベルの市民達はレグルスの冒険者が死のダンジョンを攻略したと考えるだろう。これから魔族との戦いで戦力を借りるのだ、せめてもの恩返しをしておきたい。
それから俺達はデーモンの魔石を換金し、デーモン討伐の報酬を頂いた。多くの冒険者を殺し続けたデーモンに対し、フェーベルは多額の懸賞金を掛けていた。デーモンの魔石の買い取り価格が百万ゴールド、デーモン討伐の懸賞金が百二十万ゴールド、宝物庫から持ち帰った財宝と、デーモンの素材の買取価格を精算すると、全部で六千八百万ゴールドにもなった。
ミスリルやオリハルコン等の希少な金属は武具の制作のために保管しておく。俺とクリステルさんで報酬を山分けにすると、俺は三千四百万ゴールドものお金と、死のダンジョン攻略者の称号まで授かった。
ダンジョンの攻略者は称号を授かる事が出来る。ギルドで冒険者登録をする際等に、称号を持つ者は優先的にクエストを受ける事が出来るとの説明を聞いた。
今日は久しぶりにフェーベルに戻ってきたので、ギレーヌのための新しいドレスを買いに行き、ティナの防具の制作を依頼し、エミリアのためにオリハルコンから首飾りとサークレットを作る事にした。
最高の金属と宝石を使ってエミリアにプレゼントを用意したい。再会した時に渡すために、今から彼女への贈り物を用意しておく。俺はギルドの職員達に、ギレーヌの協力があったからデーモンを仕留める事が出来たと力説し、職員達は街中にギレーヌの善行が届く様に計らうと言ってくれた。
これで長年誤解され続けたギレーヌに対する意識が変わってくれれば良いと思う。ギレーヌは人間を守る精霊なのだ。他の精霊と比べた時に精霊狩りから狙われる回数が多かった。彼女は大勢の精霊狩りを殺してきたが、今回、俺達を守りながらデーモンとの戦いに力を貸してくれた事を知って欲しい。
それから俺はギレーヌとティナを連れて町を見て回った。既にシュルツ村のレオン・シュタイナーのパーティーが死霊の精霊と共に死のダンジョンを攻略した事が噂になっているのか、町を歩くだけで大勢の市民に囲まれた。
俺はその度にギレーヌのお陰でデーモンの討伐が出来たと話し、美しいギレーヌを市民達に紹介し続けた。市民達も人間とは異なる魅力を持つギレーヌの美貌に見とれた。すぐにギレーヌの評判が良いものに変わるだろう。あとはエミリアとシャルロッテさんを開放すれば良いのだ。今日から魔族の砦攻略のために準備を始める……。
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