レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第十三話「魔術師ギルド」

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〈フローラ視点〉

 一年前に最愛の母を亡くし、私は無気力な毎日を送っていた。生まれた時から目が見えず、魔法や剣を学びたくても、お父様は決して許さなかった。食事をするにも、お風呂に入るにも家族に手伝って貰い、家族に守られながら生きてきた。

 私は幼い頃から冒険者になりたかった。誰かを守るための力を身に着け、他人に貢献できる人間になりたかった。しかし、目も見えず、世間を知らない私が冒険者になる手段は無かった。ずっと家の中で暮らしていた。

 十五歳で成人を迎えてから、何度もお父様に家を出たいと頼み続け、私の願いはついに叶ったのだ。お父様は私が生涯生きていくのに十分なお金を与えてくれ、アイゼンシュタインに小さな家を買ってくれた。私はこの古ぼけた喫茶店を冒険者ギルドとして登録し、地域を守るために生きていくと誓った。

 しかし、家の外での生活は想像以上に過酷だった。町に出た事が無かった私は、食料品を買うための店の位置も分からず、パンを買うのに二時間以上町を歩いた事もあった。冒険者ギルドとして活動をしたくても、ギルドの知名度がないから、クエストの依頼も無く、ギルドを訪れる人は少なかった。

 私に出来る事から始めようと思い、私はお母様が生前に教えてくれたシュルスクのパイを焼く事にした。一人暮らしを始めてから毎日シュルスクのパイを焼き、興味本位でギルドを訪れる冒険者さんや町の人に配っていた。しかし、誰もパイを食べようとはしなかった。

 シュルスクは、『王妃様の命を奪った果実』と呼ばれ、シュルスクのパイは誰も不気味がって食べてくれなかった。ギルド設立から二週間、毎日パイを焼き続け、ついに私のパイを食べてくれる人が現れたのだ。彼は三体の魔物を連れてレッドストーンに入り、楽しそうに私に話しかけてくれ、シュルスクのパイを仲間と分けて食べてくれた。

 心が温かくなった。涙がこぼれそうになった……。私はまだ必要とされているのだと思った。私を見放す人も居れば、私を求める人も居る。ラインハルトの事をもっと知りたいと思った。彼は冒険者ギルドを探しているみたいだったので、私のギルドに入って貰う事にした。

 ついにギルドメンバーが増えたのだ! 一人暮らしを始めても、家の中でパイを焼くだけの生活が続き、気が滅入りそうだった。そんなある日、ラインハルトが私を外に連れ出してくれた。目も見えない、世間も知らない私を一人の女性として認めてくれているみたいで、心から嬉しかった。

 彼の温かい手を握りながら、私は人生で初めて、酒場に入った。ラインハルトやロビン、ダリウス、ヴォルフとの楽しい時間は矢の様に過ぎ、酒場で異変が起こった。私は目が見えなくても、周囲で起こる出来事を感じ取る事が出来る。微妙の魔力の異変を感じたのだ。

 店内で男達が店主を暴行したと、ラインハルトから聞いた時、私は震え上がった。こんなに恐ろしい場所で暮らしていたとは思わなかった。私は今まで家族に守られて生きてきた。誰かを守るために冒険者ギルドを設立したけれど、仕事も無かった。今、目の前で行われている悪を止めなければ、私が生きている意味なんて無いと思った。

 震えながら男達に近づくと、禍々しい魔力が流れてきた。殺意に満ちた悍ましい魔力が体に流れると、私は恐ろしくて泣き出しそうになってしまった。そんな時、ラインハルトが私を守るために、男達を挑発してくれた。

 店内に強い魔力が発生したと思ったら、男が悲鳴を上げた。感じた事も無い程の強い魔力だった。これがラインハルトの力……。他人を守るために鍛え続けた、真の冒険者の力を感じた。それからヴォルフが強い冷気を発生させて男達を凍らせ、ラインハルトが戦いを終わらせた。

 私は自分の弱さを実感した。やはり他人を守るためには力が必要なんだ。すぐにでも魔法を学び、強い人間になろうと誓った。早朝から魔術師ギルドのマスターが尋ねてきて、ラインハルトはブラッドソードの討伐を決めた。敵が暗殺者だと言うのに、ラインハルトは恐れる様子も無かった。彼の魔力は常に穏やかで、力強く、優しさに満ち溢れている。

 私は魔法を学ぼうと思った。私を信じてギルドに加入したラインハルトのためにも、お父様や家族に恩返しをするためにも。私はこれから魔法を学び、愛する者を守るための力を身に付けるんだ……。

 ダリウスとロビンの手を握りながら冒険者区を歩き、私達は『魔術師ギルド・ユグドラシル』に到着した。ロビンの説明によると、背の高い木造の建物なのだとか。いつか目が見える様になったら、自分の目で世界を見て回りたい。ラインハルトと共に……。

 木製の扉を開けると、優しい魔力が流れてきた。私は目が見えないからか、音や魔力の雰囲気にはとても敏感だ。相手の魔力を感じ取る事に長けていると、お父様は言っていた。ロビンとダリウスは私の手を優しく握り、私をギルドに導いてくれた。

「レッドストーンのフローラさん。ラインハルト様は一緒ではないのですか?」
「はい、フリートさん。ブラッドソード討伐の件とは別件なのですが、頼みがあって来ました」
「そうでしたか。フローラさん、何かお手伝い出来る事があれば何でも言って下さいね」
「はい。実は魔法を学ぼうと思いまして。どの様に魔法を習得すれば良いのか分からなくて……」
「魔法を? フローラさんは今まで魔法を学んだ事は無いのですか?」
「はい……」
「まさか、フローラさんからは随分強い魔力を感じますよ。天性の才能でしょうか。兎に角、ここは魔術師ギルドですから、魔法を教える事自体は構いませんよ。フローラさん、魔法を学ぶ前に、魔法能力を確かめてみませんか?」

 フリートさんは私の手を握り、椅子に座らせてくれた。一体どの様に魔法能力を確かめるのだろうか。

「テーブルの上には魔法石が載っています。闇属性以外の全ての魔法石を用意しましたので、一つずつ触れてみて下さい。属性に対して適正がある場合、魔法石は強く反応します」

 私はフリートさんから魔法石受け取ると、魔法石の形状を確かめるように触れ、魔力を感じ取った。火属性、水属性、氷属性、風属性、地属性。どうやらこの五種類には適正が無いらしい。氷属性に適性がある人は少ないらしく、ヴォルフの様に氷の魔法を使用できる魔物は珍しいのだとか。

「雷属性と聖属性を試してみましょうか。雷属性に適性がある魔術師は、千人に一人と言われています。非常に攻撃性が高い属性で、破壊力の高い攻撃魔法の大半は雷属性なんですよ。ちなみに、火属性が雷属性に続いて攻撃力が高い属性です」

 小さな魔法石を受け取ると、爆発的な魔力が体内に流れた。まるでラインハルトの剣の様な強い魔力を感じる。どうやら私は雷属性に適性があるみたいだ。

「雷属性に適性があるとは……フローラさんは攻撃魔法と相性が良いのかもしれませんね」
「そうなんですか? 攻撃魔法……確かに攻撃手段は欲しいと思っていました」
「はい。次は聖属性を試してみましょう。聖属性は最も使用が難しい魔法。癒やしの属性とも呼ばれており、攻撃魔法の種類は少ないのですが、全属性の中で唯一、他者を癒やす事が出来る属性です。この属性は最も適正を持つ者が少なく、一万に一人居るか居ないか、と言われていますよ」

 私はフリートさんから魔法石を受け取ると、魔法石は優しい魔力を辺りに放出した。全てを癒す様な神聖な力を感じる。私のお母様も、聖属性の魔術師として活躍していた。

「これは素晴らしいですね……雷属性の聖属性に適正を持つ方は初めてみました。フローラさんは攻撃魔法と回復魔法を使いこなす、優れた魔術師になれるでしょう!」
「雷と聖属性に適性が? 信じられないな……攻撃魔法と回復魔法に適性があるなんて! 普通はどちから一種類。回復魔法に適性がある者は、攻撃魔法を習得出来る可能性は極めて低いのだが……」
「賢者の素質……攻撃魔法と回復魔法に適正を持つ少女か。マスター、俺達はフローラさんの魔法訓練を応援しますよ。彼女は間違いなく偉大な魔術師になります」

 魔術師達が私の肩に手を置いて賞賛してくれた。私が偉大な魔術師になれるなんて。本当に夢の様だわ。これから毎日魔法を学んで、ラインハルトを支えられる力を身に着けてみせる。

「フローラさん。魔術師ギルド・ユグドラシルは、フローラさんの魔法訓練を全力でサポートします」
「ありがとうございます! フリートさん!」
「私の事はどうぞ、レーネと呼んで下さいね。今日は本当に幸せな日です! ラインハルト様がブラッドソード討伐クエストを受けてくださり、賢者の素質を持つフローラさんとも出会えたのですから!」
「レーネさん。それでは私の事もフローラと呼んで下さい。私は民を守る最高の魔術師になるために、これから毎日訓練を積みます。皆さん、私は目も見えませんし、迷惑を掛けてしまうと思いますが、どうぞこれから宜しくお願いします」

 私が深々と頭を下げると、魔術師達は私を歓迎してくれた。私を受け入れてくれる人が、ラインハルト以外にも居たんだ。勇気を出してユグドラシルに来て良かった……。

「フローラ。魔法とは民を守る力。他人を傷つける事も出来ますが、同時に傷づいた者を癒やす事も出来る技術です。フローラが魔法を学べば、必ず優れた魔術師になるでしょう。どうか魔法の力でアイゼンシュタインを守る偉大な魔術師、いいえ、賢者を目指して訓練を積んで下さいね」
「はい。レーネさん! よろしくお願いします!」

 レーネさんが私の頭を撫でてくれると、私の目からは涙が溢れた。幼い頃から、『盲目のフローラは役立たず』と言われ続けてきた。私には二人の姉が居るが、私以外の二人は幼少期から剣と魔法を学び、私だけが戦う手段を学ぶ事を許されなかった。姉達は非常に優秀で、二人共レベル45を超える魔法剣士だ。

 私だけが何も出来ない落ちこぼれだった。そんな私は幼い頃から、強い劣等感を抱きながら生きてきた。だけど、私は変わると決意して家を出た。私はこれから魔法を学び、ブラッドソードをも倒せる魔術師になってみせる……。

「さて、早速魔法の練習を始めましょう!」
「はい、宜しくお願いします! レーネさん」

 こうして私とレーネさんの魔法訓練が始まった……。
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