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第一章「王国編」
第二十一話「救出」
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屋敷の警備をしていた暗殺者が近づいてくると、エレオノーレさんは瞬時に後退して剣を構えた。剣には聖属性の魔力が込められているのだろうか、金色の光が刃を包み込んでいる。赤い魔装を身に付けた男は、腰に差しているダガーを抜いた。
「第一王女がわざわざ出向いてくれるとは光栄じゃないか! お前ら王族は平民から搾取した金で暮らすクズだ!」
「黙りなさい! 誘拐した冒険者と妹を返して!」
「俺を倒せたら返してやるよ。まぁ、冒険者の真似事をして強がっている王女には無理だと思うがな」
「ラインハルト! 下がっていて。私が倒してみせる」
「分かりました……」
俺は魔剣を構えながらゆっくりと後退すると、エレオノーレさんが魔力を込めた突きを放った。金色の魔力を纏うロングソードは空を切り、男は瞬時にエレオノーレさんの背後に回り、ダガーの一撃を放った。
エレオノーレさんは回避が間に合わずに、背中にダガーの攻撃を受けると、痛みに顔を歪めながら地面に倒れた。ダガーは鎧を貫く事はなかったが、エレオノーレさんは強烈な一撃を喰らって咳き込んでいる。俺が助けに入ろうとすると、彼女は俺を静止した。
「私は冒険者になったの……ラインハルト。助けは要らないわ! 戦いで命を落とす覚悟で生きているのだから」
「しかし、相手は暗殺者ですよ、エレオノーレさん!」
「私だって幼い頃から王女としての教育を受けてきた……! こんな相手に負ける訳にはいかない!」
エレオノーレさんはゆっくりと立ち上がり、再び剣を構えると、暗殺者は一瞬でエレオノーレさん懐に飛び込んだ。左手でエレオノーレさんの顔を殴り、右手に持ったダガーで突きを放つと、エレオノーレさんは敵の攻撃をロングソードで受け止めた。
暗殺者は足払いをしてエレオノーレさんを転ばせると、頭上高く剣を振り上げた。瞬間、エレオノーレさんは剣を捨て、両手を暗殺者に向けた。手の平からは金色の魔力が生まれ、球状の魔力の塊が飛んだ。
『ホーリー!』
魔力の塊が暗殺者の腹部を捉えると、暗殺者は口から血を吐いて倒れた。エレオノーレさんは剣を拾い上げ、暗殺者の腹部に剣を突き立た。ロングソードが深々と暗殺者の腹部を貫き、暗殺者は命を落とした。とどめを刺す必要は無いと思うのだが、妹を拉致されて頭に血が上っているのだろうか……。
「エレオノーレさん、何故とどめを刺したのですか?」
「こういう輩は殺さなければならないの。生け捕りにしても、死刑は確定しているのだから、ここで殺してもいいのよ。今死ぬか、国に戻ってから死ぬか。大した違いはないじゃない」
「しかし、俺はエレオノーレさんに殺人を犯して欲しくありません!」
「本当に甘いわね、ラインハルト。王国を脅かす犯罪者は殺すべし。王族として、民を守るために悪を討つと決めているの」
「そうですか……」
「先を急ぐわよ」
「次の敵は俺が仕留めます。エレオノーレさん」
「わかったわ」
エレオノーレさんは強気な言葉を使っているが、剣を持つ手が震えている。初めて人を殺めたのだろう。確かに彼女は強いが、誰かを守るために命を賭けて戦うのは初めてなのだろう。エレオノーレさんを守りながら、屋敷内の暗殺者を無力化しなければならない。それに、三人の捕虜を取られている。厳しい戦いになりそうだ。
ヴォルフは屋敷の付近を回り、辺りに潜んでいた暗殺者を仕留めたようだ。暗殺者の亡骸を口に加えて運んでくると、エレオノーレさんの目の前に投げ捨てた。彼女は死体を見て震え上がっているが、恐れを隠すように剣を握り締め、俺の手を握った。体にはエレオノーレさんの優しい魔力が流れてくる。まるでフローラの様な神聖な魔力を感じる。フローラもヘンリエッテさんも無事なら良いのだが……。
屋敷の扉を開けて薄暗い室内を進む。今は夜だから殆ど視界が無いが、火の魔法で辺りを照らせば、俺達の位置を教える事になってしまう。目を慣らすために闇の中に立ち、息を潜めて剣を握る。
入り口を抜けると大広間になっており、古ぼけた家具が埃を被ったまま放置されている。随分長い間この場所は使われていない様だが、床には血の痕が付いている。暗殺者達はこの朽ち果てた屋敷に隠れ住み、アイゼンシュタインに住む市民を襲っていたのか……。
「ラインハルト。暗殺者に拉致されたあなたの仲間はどんな人なの?」
「一人は商人ギルドのヘンリエッテ・ガイスラーという行商人です。五ヶ月程前にアイグナーで出会いました。それからもう一人は……」
屋敷の奥から小さな物音が聞こえた。瞬間、闇の中から無数の矢が放たれた。俺は咄嗟にエレオノーレさんの前に立つと、複数の矢が俺の体を捉えた。全身に激痛が走り、意識が朦朧としてきた。エレオノーレさんの叫び声が聞こえるが、今にでも気を失いそうだ。
エレオノーレさんは俺の体に刺さる矢を力任せに抜き、瞬時にヒールの魔法を掛けて回復させてくれた。矢は俺の自身の魔力の大きく失わせる物なのか、体内に温存しておいた魔力が瞬く間に消えた。これはまずい事になった……。今装備している魔装は魔力の強さによって防御力が変化する。魔力を失うという事は魔装の防御力が一時的に低下するという事だ。
闇の奥から暗殺者が姿を現すと、暗殺者に続いてビスマルク衛兵長が姿を現した。金色の鎧に身を包んだ衛兵長は、豪華な飾りが施された盾を持ち、腰に差している剣を抜いて俺に向けた。
「やはりあなたが事件の犯人だったのですね……! ビスマルク!」
「おやおや。気が付いていましたか。エレオノーレ姫殿下」
「ブラッドソードの暗殺者をアイゼンシュタインに入れ、民を襲わせるとは……」
「まぁ、そのために衛兵長になりましたからね。暗殺者が私の代わりに市民を殺してお金を稼ぎ、衛兵長の私が暗殺者を見逃す。こんなに楽に稼げるビジネスはありませんよ」
「前から怪しいと思っていた……お母様を殺したのもあなたなのでしょう?」
「随分よく喋りますね。あなたはこの状況が分かっているのですか?」
衛兵長は壁に掛かっている松明に火を付けると、闇の中から猿ぐつわを噛まされたヘンリエッテさんとフローラが姿を現した。そして、フローラの背後には銀髪の女性が立っている。暗殺者の数は五人。ダガーを構えて俺達を取り囲んでいる。
「お久しぶりですね。エレオノーレお姉様」
「ヘルガ……? それに、そこに倒れているのはフローラなの?」
「そうですよ、エレオノーレお姉様。役立たずのフローラ。私達の出来損ないの妹ですわ」
なんだって? フローラがエレオノーレさんの妹? まさか、フローラはアイゼンシュタイン王国の第三王女だったのか?
「フローラとヘンリエッテさんを離せ!」
俺が叫ぶと、ビスマルクは俺の肩に剣を突き立てた。肩に焼けるような痛みを感じ、意識が朦朧とする中、魔剣を振って反撃に出るが、俺の剣は空を切った。血を流しすぎたからだろうか、矢で出来た傷は塞がっているが、立つ事もままならない。力が全く入らない。今の俺の剣では暗殺者の剣を受ける事も、ビスマルクを倒す事も不可能。絶体絶命という訳か……。
「一体どういう事なの? どうしてあなたがフローラを拉致したの?」
「エレオノーレお姉様。どういう事なのか聞きたいのは私の方ですわ。お姉様はいつから魔王と内通していたのですか?」
「魔王? 何を言っているの?」
「第七代魔王、ラインハルト・イェーガー。冒険者ギルド・レッドストーンで出来損ないのフローラと共に冒険者の真似事をしながら、王国を転覆させる準備をしている愚かな男。ビスマルクが私に教えてくれたわ。出来損ないのフローラが魔王に力を貸しているとね」
ビスマルクは気味の悪い笑みを浮かべ、第二王女に口づけをすると、第二王女はビスマルクの腰に手を回し、見せつける様に何度も接吻をした。俺は完璧に自分の正体を隠していた筈だ。しかし、どうして第二王女とビスマルクが俺の正体を知っているのだ?
猿ぐつわを噛まされたヘンリエッテさんは静かに涙を流し、俺を軽蔑する様な目で見つめた。こんな形で俺の正体がバレるとは……。ヘンリエッテさんにも、フローラにも、いつか自分の正体を話すつもりだった。
「ラインハルト……どういう事なの? 魔王……?」
「エレオノーレさん。俺は第七代魔王、ラインハルト・イェーガーです。しかし、俺は民を傷付ける気はありません。俺はこの大陸に住む民を守りながら生きると誓った男です……」
「まさか、あなたが魔王だったなんて! ビスマルクとグルになって私をハメたのね? 信じられない!」
エレオノーレさんは俺を蹴り飛ばし、ロングソードを握り締めると、俺の太ももに剣を突き出した。彼女は何度も俺の体に剣を突き立てると、フローラが縄を引きちぎり、強烈な雷を炸裂させてエレオノーレさんを吹き飛ばした。
フローラは何度も転びながら俺の方に近づいて来ると、俺の唇に唇を重ねた。彼女の神聖な魔力が俺の体に流れ、体中の傷は瞬時に塞がり、失われた魔力が回復した。
「ラインハルトは私と共にアイゼンシュタインを守る冒険者です! 私は彼が魔王であろうがなかろうが、そんな事はどうでも良いのです。彼はアイゼンシュタインを襲う暗殺者を守るために、報酬すら受け取らずに夜警をしています。私に生きる希望を与えてくれたのも、何も出来ない私を受け入れてくれたのも彼でした! ラインハルトを傷付けるのは許しませんよ、エレオノーレお姉様!」
「あらあら、エレオノーレお姉様。出来損ないのフローラの魔法を受けるなんて、随分弱くなったのですね。お父様とお母様から愛され、一人で強くなっていくお姉様の事が大嫌いでした。ここで決着を付けましょうか。私は『最も国民に貢献した者が次期国王になる』などという茶番に付き合う気はないのですよ。ビスマルク! フローラとエレオノーレを殺しなさい! 私を勝たせられたら、あなたを私の夫にしてあげますわ!」
「はっ! お任せ下さい! 姫殿下」
フローラは既に魔力を全て使い果たしたのか、力なく床に倒れ込んだ……。
「第一王女がわざわざ出向いてくれるとは光栄じゃないか! お前ら王族は平民から搾取した金で暮らすクズだ!」
「黙りなさい! 誘拐した冒険者と妹を返して!」
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「ラインハルト! 下がっていて。私が倒してみせる」
「分かりました……」
俺は魔剣を構えながらゆっくりと後退すると、エレオノーレさんが魔力を込めた突きを放った。金色の魔力を纏うロングソードは空を切り、男は瞬時にエレオノーレさんの背後に回り、ダガーの一撃を放った。
エレオノーレさんは回避が間に合わずに、背中にダガーの攻撃を受けると、痛みに顔を歪めながら地面に倒れた。ダガーは鎧を貫く事はなかったが、エレオノーレさんは強烈な一撃を喰らって咳き込んでいる。俺が助けに入ろうとすると、彼女は俺を静止した。
「私は冒険者になったの……ラインハルト。助けは要らないわ! 戦いで命を落とす覚悟で生きているのだから」
「しかし、相手は暗殺者ですよ、エレオノーレさん!」
「私だって幼い頃から王女としての教育を受けてきた……! こんな相手に負ける訳にはいかない!」
エレオノーレさんはゆっくりと立ち上がり、再び剣を構えると、暗殺者は一瞬でエレオノーレさん懐に飛び込んだ。左手でエレオノーレさんの顔を殴り、右手に持ったダガーで突きを放つと、エレオノーレさんは敵の攻撃をロングソードで受け止めた。
暗殺者は足払いをしてエレオノーレさんを転ばせると、頭上高く剣を振り上げた。瞬間、エレオノーレさんは剣を捨て、両手を暗殺者に向けた。手の平からは金色の魔力が生まれ、球状の魔力の塊が飛んだ。
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魔力の塊が暗殺者の腹部を捉えると、暗殺者は口から血を吐いて倒れた。エレオノーレさんは剣を拾い上げ、暗殺者の腹部に剣を突き立た。ロングソードが深々と暗殺者の腹部を貫き、暗殺者は命を落とした。とどめを刺す必要は無いと思うのだが、妹を拉致されて頭に血が上っているのだろうか……。
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「しかし、俺はエレオノーレさんに殺人を犯して欲しくありません!」
「本当に甘いわね、ラインハルト。王国を脅かす犯罪者は殺すべし。王族として、民を守るために悪を討つと決めているの」
「そうですか……」
「先を急ぐわよ」
「次の敵は俺が仕留めます。エレオノーレさん」
「わかったわ」
エレオノーレさんは強気な言葉を使っているが、剣を持つ手が震えている。初めて人を殺めたのだろう。確かに彼女は強いが、誰かを守るために命を賭けて戦うのは初めてなのだろう。エレオノーレさんを守りながら、屋敷内の暗殺者を無力化しなければならない。それに、三人の捕虜を取られている。厳しい戦いになりそうだ。
ヴォルフは屋敷の付近を回り、辺りに潜んでいた暗殺者を仕留めたようだ。暗殺者の亡骸を口に加えて運んでくると、エレオノーレさんの目の前に投げ捨てた。彼女は死体を見て震え上がっているが、恐れを隠すように剣を握り締め、俺の手を握った。体にはエレオノーレさんの優しい魔力が流れてくる。まるでフローラの様な神聖な魔力を感じる。フローラもヘンリエッテさんも無事なら良いのだが……。
屋敷の扉を開けて薄暗い室内を進む。今は夜だから殆ど視界が無いが、火の魔法で辺りを照らせば、俺達の位置を教える事になってしまう。目を慣らすために闇の中に立ち、息を潜めて剣を握る。
入り口を抜けると大広間になっており、古ぼけた家具が埃を被ったまま放置されている。随分長い間この場所は使われていない様だが、床には血の痕が付いている。暗殺者達はこの朽ち果てた屋敷に隠れ住み、アイゼンシュタインに住む市民を襲っていたのか……。
「ラインハルト。暗殺者に拉致されたあなたの仲間はどんな人なの?」
「一人は商人ギルドのヘンリエッテ・ガイスラーという行商人です。五ヶ月程前にアイグナーで出会いました。それからもう一人は……」
屋敷の奥から小さな物音が聞こえた。瞬間、闇の中から無数の矢が放たれた。俺は咄嗟にエレオノーレさんの前に立つと、複数の矢が俺の体を捉えた。全身に激痛が走り、意識が朦朧としてきた。エレオノーレさんの叫び声が聞こえるが、今にでも気を失いそうだ。
エレオノーレさんは俺の体に刺さる矢を力任せに抜き、瞬時にヒールの魔法を掛けて回復させてくれた。矢は俺の自身の魔力の大きく失わせる物なのか、体内に温存しておいた魔力が瞬く間に消えた。これはまずい事になった……。今装備している魔装は魔力の強さによって防御力が変化する。魔力を失うという事は魔装の防御力が一時的に低下するという事だ。
闇の奥から暗殺者が姿を現すと、暗殺者に続いてビスマルク衛兵長が姿を現した。金色の鎧に身を包んだ衛兵長は、豪華な飾りが施された盾を持ち、腰に差している剣を抜いて俺に向けた。
「やはりあなたが事件の犯人だったのですね……! ビスマルク!」
「おやおや。気が付いていましたか。エレオノーレ姫殿下」
「ブラッドソードの暗殺者をアイゼンシュタインに入れ、民を襲わせるとは……」
「まぁ、そのために衛兵長になりましたからね。暗殺者が私の代わりに市民を殺してお金を稼ぎ、衛兵長の私が暗殺者を見逃す。こんなに楽に稼げるビジネスはありませんよ」
「前から怪しいと思っていた……お母様を殺したのもあなたなのでしょう?」
「随分よく喋りますね。あなたはこの状況が分かっているのですか?」
衛兵長は壁に掛かっている松明に火を付けると、闇の中から猿ぐつわを噛まされたヘンリエッテさんとフローラが姿を現した。そして、フローラの背後には銀髪の女性が立っている。暗殺者の数は五人。ダガーを構えて俺達を取り囲んでいる。
「お久しぶりですね。エレオノーレお姉様」
「ヘルガ……? それに、そこに倒れているのはフローラなの?」
「そうですよ、エレオノーレお姉様。役立たずのフローラ。私達の出来損ないの妹ですわ」
なんだって? フローラがエレオノーレさんの妹? まさか、フローラはアイゼンシュタイン王国の第三王女だったのか?
「フローラとヘンリエッテさんを離せ!」
俺が叫ぶと、ビスマルクは俺の肩に剣を突き立てた。肩に焼けるような痛みを感じ、意識が朦朧とする中、魔剣を振って反撃に出るが、俺の剣は空を切った。血を流しすぎたからだろうか、矢で出来た傷は塞がっているが、立つ事もままならない。力が全く入らない。今の俺の剣では暗殺者の剣を受ける事も、ビスマルクを倒す事も不可能。絶体絶命という訳か……。
「一体どういう事なの? どうしてあなたがフローラを拉致したの?」
「エレオノーレお姉様。どういう事なのか聞きたいのは私の方ですわ。お姉様はいつから魔王と内通していたのですか?」
「魔王? 何を言っているの?」
「第七代魔王、ラインハルト・イェーガー。冒険者ギルド・レッドストーンで出来損ないのフローラと共に冒険者の真似事をしながら、王国を転覆させる準備をしている愚かな男。ビスマルクが私に教えてくれたわ。出来損ないのフローラが魔王に力を貸しているとね」
ビスマルクは気味の悪い笑みを浮かべ、第二王女に口づけをすると、第二王女はビスマルクの腰に手を回し、見せつける様に何度も接吻をした。俺は完璧に自分の正体を隠していた筈だ。しかし、どうして第二王女とビスマルクが俺の正体を知っているのだ?
猿ぐつわを噛まされたヘンリエッテさんは静かに涙を流し、俺を軽蔑する様な目で見つめた。こんな形で俺の正体がバレるとは……。ヘンリエッテさんにも、フローラにも、いつか自分の正体を話すつもりだった。
「ラインハルト……どういう事なの? 魔王……?」
「エレオノーレさん。俺は第七代魔王、ラインハルト・イェーガーです。しかし、俺は民を傷付ける気はありません。俺はこの大陸に住む民を守りながら生きると誓った男です……」
「まさか、あなたが魔王だったなんて! ビスマルクとグルになって私をハメたのね? 信じられない!」
エレオノーレさんは俺を蹴り飛ばし、ロングソードを握り締めると、俺の太ももに剣を突き出した。彼女は何度も俺の体に剣を突き立てると、フローラが縄を引きちぎり、強烈な雷を炸裂させてエレオノーレさんを吹き飛ばした。
フローラは何度も転びながら俺の方に近づいて来ると、俺の唇に唇を重ねた。彼女の神聖な魔力が俺の体に流れ、体中の傷は瞬時に塞がり、失われた魔力が回復した。
「ラインハルトは私と共にアイゼンシュタインを守る冒険者です! 私は彼が魔王であろうがなかろうが、そんな事はどうでも良いのです。彼はアイゼンシュタインを襲う暗殺者を守るために、報酬すら受け取らずに夜警をしています。私に生きる希望を与えてくれたのも、何も出来ない私を受け入れてくれたのも彼でした! ラインハルトを傷付けるのは許しませんよ、エレオノーレお姉様!」
「あらあら、エレオノーレお姉様。出来損ないのフローラの魔法を受けるなんて、随分弱くなったのですね。お父様とお母様から愛され、一人で強くなっていくお姉様の事が大嫌いでした。ここで決着を付けましょうか。私は『最も国民に貢献した者が次期国王になる』などという茶番に付き合う気はないのですよ。ビスマルク! フローラとエレオノーレを殺しなさい! 私を勝たせられたら、あなたを私の夫にしてあげますわ!」
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