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第二章「魔石編」
第五十二話「支配者」
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俺はドラゴニュートロードの名前をジェラルドと名付けた。第二代魔王、ジェラルド・イェーガーから名前を頂いたのだ。第二代魔王は歴代の魔王の中でも最も体が大きく、イェーガー家に伝わる書物で何度か彼の絵を見た事があるが、まるで熊の様な容姿の男だった。
ジェラルドは自分の名前が気に入ったのか、何度も小声で自分の名前を呟いた。人間の言葉は話せない様だが、知能が高いからか、自分の名前をすぐに覚え、何度か発音の練習をすると、俺達の名前を呼べる様になった。このまま言葉を教え続ければ、日常会話程度なら簡単に覚えてしまうだろう。
クリステルとフローラは既に体力の限界を迎えたのか、五階層に続く階段の前で座り込んでしまった。ダンジョン内に居るからか、現在の時間も分からない。今が夕方なのか、または深夜なのか、空が見えないから予想も出来ないのだ。
「今日はこの辺で休もうか」
「そうね。私はもう歩けそうにないし……」
「ご苦労様、クリステル」
「フローラは随分体力があるのね。同じ王女として、何だか自分が情けないわ」
「私はラインハルトと共に冒険者をしているからね。だけど、岩場を歩くのって疲れるのね」
「二人共よく頑張ったよ。すぐに夕食の用意をするからね」
「重い荷物を運んで貰って、夕食の支度まで任せるのは申し訳ないわ。ダンジョン内での食事の支度は私に任せて頂戴」
「ありがとう、クリステル」
重い鞄を降ろし、クリステルに夕食の支度を任せて、俺は魔装を脱いだ。魔物の血で汚れた魔装にウォーターの魔法を掛けて洗う。それからファイアの魔法で熱風を当てて魔装を乾かす。激しい戦闘を繰り返したからか、体からは水分が失われており、強い乾きを感じる。水を飲めるだけ飲むと、失われていた活力が徐々に回復を始めた。
塩気の強い乾燥肉を齧りながら、フローラの隣に腰を下ろす。彼女もダンジョン内の探索でかなり疲れが溜まっているのだろう。普段、フローラは決して弱音を吐く事は無いが、何度もため息をつき、疲れ切った表情を浮かべている。俺はフローラの足を時間を掛けて揉み、少しでも彼女を安心させるために、何度も励ましの言葉を伝えた。目が見えない状態でダンジョンに潜り、次々と襲い掛かる魔物を倒し続けたのだ。想像も出来ない程の緊張に耐え、俺とクリステルを支え続けてくれているのだろう。
「フローラ。あまり無理はしないようにね」
「ええ。だけど、この地面の下にレッドドラゴンが居ると思うと、何だか休んでいる時間が勿体なく感じるわ」
「気持ちは分かるけど慎重に進もう。俺達は必ずローゼマリー王女を追い抜ける。先に二十階層まで降りて、タウロスとヴォルフ、ジェラルドの力を狩りてレッドドラゴンを狩ろう」
「そうね! ついに自分の目で世界を見る事が出来る様になるのね……本当に楽しみだわ」
「俺の顔を見て幻滅しないようにね」
「大丈夫だって言ってるでしょう? 私は人の顔を見た事が無いから、基準が分からないの」
「フローラ。ラインハルトは私から見てもかなり整っている方よ。町ではラインハルトに色目を使う女性も居るんだから」
「本当? ラインハルト、私の目が見えないからって、他の女性を見たら駄目なんだからね……」
フローラは頬を膨らませて可愛らしく俺を見つめると、俺はフローラの頬に口づけをし、彼女を抱きしめた。暫くフローラの頭を撫でていると、フローラはすっかり気分が落ち着いたのか、彼女の体からは神聖な魔力が溢れ出した。
「料理が出来たわよ」
クリステルが料理を終えると、ジェラルドはクリステルから料理を受け取った。今日の夕食は、オークの肉のステーキ、それから乾燥野菜を使ったスープと堅焼きパンだ。オークの肉は意外と柔らかく、まるで豚肉の様な食感で非常に食べ応えがある。
ジェラルドは意外と少食なのか、ステーキを何枚か食べると、俺の隣に横になり、静かに眠り始めた。まさかドラゴニュートの支配者と食事を共にする事になるとは思わなかった……。しかし、魔王の加護によって彼の召喚石を入手出来た事は本当に運が良かった。召喚石や魔法石は魔石化の確率が非常に低く、通常は強化石しか手に入れる事が出来ないからだ。
「ラインハルト。明日はどこまで進むつもり?」
「そうだね。明日は十階層を目指そうか。明後日は早朝から下層を目指して進み、十二階層付近に居るローゼマリー王女のパーティーを一気に追い抜く」
「十階層まで辿り着けたら、ついにローゼマリーを追い抜けるのね」
「俺の予想ではね。ダンジョンに生息している魔物の種類が分からないから何ともいえないけど。ジェラルドが加わったから、パーティーの戦闘力が格段に上がった訳だし」
「そうね。彼の存在はとても大きいわ」
フローラがジェラルドの頭を撫でると、ジェラルドは薄っすらと目を開けて微笑んだ。まるで俺達の会話を理解している様だ。どうやらフローラには心を許しているみたいだ。彼も賢者の素質を持つフローラの神聖な力を感じているのだろう。
「フローラ、クリステル。今日は早めに休むんだよ。寝る前にマナポーションを飲んで魔力を回復させておいてくれるかな。いつ敵の襲撃を受けるか分からないからね」
「いつもありがとう、ラインハルト。いつかこのお礼は必ずするわ」
「お礼なんて要らないよ。クリステル、俺達はレッドストーンさえ手に入ればいいんだ」
「ラインハルトは本当に欲がないのね……」
「俺達は仲間なんだから、報酬なんて水臭い事は言わないでくれよ。金銭のためにこの場に来ている訳ではないからね」
「ありがとう。ラインハルト……」
クリステルは満面の笑みを浮かべると、俺は彼女の美しさに心が高鳴った。フローラよりも先にクリステルと出会っていたら、俺はクリステルに恋をしていただろう。だが、俺はフローラを心から愛している。
岩場の中でも、地面が平らな場所を探し、クリステルが毛布を敷くと、フローラは毛布の上に横になった。クリステルはフローラを抱きしめると、フローラはクリステルの豊かな胸に顔を埋めて、心地良さそうに眠りに就いた。
俺はそんな彼女達を見つめながら、魔剣を抱いて地面に座り込んだ。常に辺りを警戒し、敵の気配を感じれば瞬時に抜刀して周囲を見渡す。こうしていると、ブラッドソードの襲撃に備えて夜警をしていた頃を思い出す。適度な緊張感が俺の精神を研ぎ澄ませ、ほんの少しの物音にも敏感になり、俺達の姿を影から監視する敵が居れば、一撃で敵を切り裂く。
レッサーデーモンとの楽しい遠足によって俺の全身の筋肉は大幅に増え、魔装を身に付けた状態なら、高速で駆ける事が出来る。魔剣は魔力を込めれば羽根の様に軽くなり、敵が一歩動く前に、敵の脳天に魔剣を叩き込む事が出来る様になった。
まだファイアボルトの速さに追いつく事は出来ないが、炎の矢と近い速度で移動が出来る様になったのだ。これも師匠の地獄の様な訓練で魔力と筋力を大幅に強化したからだ。魔装は俺の身体能力に合わせて性能が上昇し、俺の移動速度を大幅に強化してくれる。父が愛用していた魔装と魔剣を使って戦っている時は、まるで自分の中に父が居るのではないかと錯覚する事がある。それほど俺は生前の父、第六代魔王の戦い方を忠実に再現出来る様になったのだ。
出来る事ならもう一度父と剣を交えたい。父を失った寂しさはあるが、彼の魂は俺の体の中で生き続ける。先祖代々受け継いできた魔王の加護を駆使し、俺は最強の冒険者になってみせる。彼は大陸を支配してくれと言っていたが、俺は大陸を支配せずに、冒険者が大陸に住む民を守る世界を作るつもりだ。
ジェラルドは睡眠時間が少なくても活動出来るのか、二時間ほど眠ってから目を覚ますと、俺の隣に腰を掛けた。俺は彼のためにゆっくりとハース大陸語を使い、フローラとの出会いや、アイゼンシュタインで帰りを待つ仲間の事を話した。
彼は柔和な笑みを浮かべて俺の話を聞き、覚えたての言葉で俺の話に相槌を打っている。やはり幻獣という生き物は非常に知能が高いのか、一度聞いた言葉は完璧に覚え、習得した言葉を使って簡単な会話まで出来る様になった。
フローラとクリステルを守りながら、俺はジェラルドと共に夜の一時を過ごし、紅茶を飲みながらゆっくりとお互いの将来を語り合った……。
ジェラルドは自分の名前が気に入ったのか、何度も小声で自分の名前を呟いた。人間の言葉は話せない様だが、知能が高いからか、自分の名前をすぐに覚え、何度か発音の練習をすると、俺達の名前を呼べる様になった。このまま言葉を教え続ければ、日常会話程度なら簡単に覚えてしまうだろう。
クリステルとフローラは既に体力の限界を迎えたのか、五階層に続く階段の前で座り込んでしまった。ダンジョン内に居るからか、現在の時間も分からない。今が夕方なのか、または深夜なのか、空が見えないから予想も出来ないのだ。
「今日はこの辺で休もうか」
「そうね。私はもう歩けそうにないし……」
「ご苦労様、クリステル」
「フローラは随分体力があるのね。同じ王女として、何だか自分が情けないわ」
「私はラインハルトと共に冒険者をしているからね。だけど、岩場を歩くのって疲れるのね」
「二人共よく頑張ったよ。すぐに夕食の用意をするからね」
「重い荷物を運んで貰って、夕食の支度まで任せるのは申し訳ないわ。ダンジョン内での食事の支度は私に任せて頂戴」
「ありがとう、クリステル」
重い鞄を降ろし、クリステルに夕食の支度を任せて、俺は魔装を脱いだ。魔物の血で汚れた魔装にウォーターの魔法を掛けて洗う。それからファイアの魔法で熱風を当てて魔装を乾かす。激しい戦闘を繰り返したからか、体からは水分が失われており、強い乾きを感じる。水を飲めるだけ飲むと、失われていた活力が徐々に回復を始めた。
塩気の強い乾燥肉を齧りながら、フローラの隣に腰を下ろす。彼女もダンジョン内の探索でかなり疲れが溜まっているのだろう。普段、フローラは決して弱音を吐く事は無いが、何度もため息をつき、疲れ切った表情を浮かべている。俺はフローラの足を時間を掛けて揉み、少しでも彼女を安心させるために、何度も励ましの言葉を伝えた。目が見えない状態でダンジョンに潜り、次々と襲い掛かる魔物を倒し続けたのだ。想像も出来ない程の緊張に耐え、俺とクリステルを支え続けてくれているのだろう。
「フローラ。あまり無理はしないようにね」
「ええ。だけど、この地面の下にレッドドラゴンが居ると思うと、何だか休んでいる時間が勿体なく感じるわ」
「気持ちは分かるけど慎重に進もう。俺達は必ずローゼマリー王女を追い抜ける。先に二十階層まで降りて、タウロスとヴォルフ、ジェラルドの力を狩りてレッドドラゴンを狩ろう」
「そうね! ついに自分の目で世界を見る事が出来る様になるのね……本当に楽しみだわ」
「俺の顔を見て幻滅しないようにね」
「大丈夫だって言ってるでしょう? 私は人の顔を見た事が無いから、基準が分からないの」
「フローラ。ラインハルトは私から見てもかなり整っている方よ。町ではラインハルトに色目を使う女性も居るんだから」
「本当? ラインハルト、私の目が見えないからって、他の女性を見たら駄目なんだからね……」
フローラは頬を膨らませて可愛らしく俺を見つめると、俺はフローラの頬に口づけをし、彼女を抱きしめた。暫くフローラの頭を撫でていると、フローラはすっかり気分が落ち着いたのか、彼女の体からは神聖な魔力が溢れ出した。
「料理が出来たわよ」
クリステルが料理を終えると、ジェラルドはクリステルから料理を受け取った。今日の夕食は、オークの肉のステーキ、それから乾燥野菜を使ったスープと堅焼きパンだ。オークの肉は意外と柔らかく、まるで豚肉の様な食感で非常に食べ応えがある。
ジェラルドは意外と少食なのか、ステーキを何枚か食べると、俺の隣に横になり、静かに眠り始めた。まさかドラゴニュートの支配者と食事を共にする事になるとは思わなかった……。しかし、魔王の加護によって彼の召喚石を入手出来た事は本当に運が良かった。召喚石や魔法石は魔石化の確率が非常に低く、通常は強化石しか手に入れる事が出来ないからだ。
「ラインハルト。明日はどこまで進むつもり?」
「そうだね。明日は十階層を目指そうか。明後日は早朝から下層を目指して進み、十二階層付近に居るローゼマリー王女のパーティーを一気に追い抜く」
「十階層まで辿り着けたら、ついにローゼマリーを追い抜けるのね」
「俺の予想ではね。ダンジョンに生息している魔物の種類が分からないから何ともいえないけど。ジェラルドが加わったから、パーティーの戦闘力が格段に上がった訳だし」
「そうね。彼の存在はとても大きいわ」
フローラがジェラルドの頭を撫でると、ジェラルドは薄っすらと目を開けて微笑んだ。まるで俺達の会話を理解している様だ。どうやらフローラには心を許しているみたいだ。彼も賢者の素質を持つフローラの神聖な力を感じているのだろう。
「フローラ、クリステル。今日は早めに休むんだよ。寝る前にマナポーションを飲んで魔力を回復させておいてくれるかな。いつ敵の襲撃を受けるか分からないからね」
「いつもありがとう、ラインハルト。いつかこのお礼は必ずするわ」
「お礼なんて要らないよ。クリステル、俺達はレッドストーンさえ手に入ればいいんだ」
「ラインハルトは本当に欲がないのね……」
「俺達は仲間なんだから、報酬なんて水臭い事は言わないでくれよ。金銭のためにこの場に来ている訳ではないからね」
「ありがとう。ラインハルト……」
クリステルは満面の笑みを浮かべると、俺は彼女の美しさに心が高鳴った。フローラよりも先にクリステルと出会っていたら、俺はクリステルに恋をしていただろう。だが、俺はフローラを心から愛している。
岩場の中でも、地面が平らな場所を探し、クリステルが毛布を敷くと、フローラは毛布の上に横になった。クリステルはフローラを抱きしめると、フローラはクリステルの豊かな胸に顔を埋めて、心地良さそうに眠りに就いた。
俺はそんな彼女達を見つめながら、魔剣を抱いて地面に座り込んだ。常に辺りを警戒し、敵の気配を感じれば瞬時に抜刀して周囲を見渡す。こうしていると、ブラッドソードの襲撃に備えて夜警をしていた頃を思い出す。適度な緊張感が俺の精神を研ぎ澄ませ、ほんの少しの物音にも敏感になり、俺達の姿を影から監視する敵が居れば、一撃で敵を切り裂く。
レッサーデーモンとの楽しい遠足によって俺の全身の筋肉は大幅に増え、魔装を身に付けた状態なら、高速で駆ける事が出来る。魔剣は魔力を込めれば羽根の様に軽くなり、敵が一歩動く前に、敵の脳天に魔剣を叩き込む事が出来る様になった。
まだファイアボルトの速さに追いつく事は出来ないが、炎の矢と近い速度で移動が出来る様になったのだ。これも師匠の地獄の様な訓練で魔力と筋力を大幅に強化したからだ。魔装は俺の身体能力に合わせて性能が上昇し、俺の移動速度を大幅に強化してくれる。父が愛用していた魔装と魔剣を使って戦っている時は、まるで自分の中に父が居るのではないかと錯覚する事がある。それほど俺は生前の父、第六代魔王の戦い方を忠実に再現出来る様になったのだ。
出来る事ならもう一度父と剣を交えたい。父を失った寂しさはあるが、彼の魂は俺の体の中で生き続ける。先祖代々受け継いできた魔王の加護を駆使し、俺は最強の冒険者になってみせる。彼は大陸を支配してくれと言っていたが、俺は大陸を支配せずに、冒険者が大陸に住む民を守る世界を作るつもりだ。
ジェラルドは睡眠時間が少なくても活動出来るのか、二時間ほど眠ってから目を覚ますと、俺の隣に腰を掛けた。俺は彼のためにゆっくりとハース大陸語を使い、フローラとの出会いや、アイゼンシュタインで帰りを待つ仲間の事を話した。
彼は柔和な笑みを浮かべて俺の話を聞き、覚えたての言葉で俺の話に相槌を打っている。やはり幻獣という生き物は非常に知能が高いのか、一度聞いた言葉は完璧に覚え、習得した言葉を使って簡単な会話まで出来る様になった。
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