精霊物語 - 精霊の最強パーティーで成り上がり -

花京院 光

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第十話「ささやかな宴」

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 部屋に戻るとエルフリーデとフィリアが楽しそうに会話をしていた。もう仲良くなったのだろうか。葡萄酒と肉料理をテーブルに置くと、俺達のささやかな宴が始まった。

 フィリアは俺のために肉を切ってくれ、料理が載った皿を俺に差し出した。この子も随分変わったんだな。少しずつだが俺とフィリアの仲は深まりつつある。やはりこの町に来たのは正解だった。フィリアだけではなく、イリスとエルフリーデとも出会えたのだからな。

 肉を口に入れてからゆっくりと噛む。それから葡萄酒を口に含んで風味を味わった。やっと帰って来られた……。ドラゴンを目にした時、俺は自分自身の生命の終わりを感じた。ブレスを直撃すれば死ぬと確信した。だが俺はこうして生きている。

 手には痛々しい傷が残っているが、日常生活に支障はない。だが、赤く腫れ上がった手の傷は見栄えが良いものではない。明日にでもガントレットを購入しようか。

「ユリウス。沢山食べてね。足りなかったら酒場から料理を買ってくるわ」
「ありがとう、フィリア」

 俺はフィリアのために肉を小さく切って差し出すと、彼女は恥ずかしそうに料理を口に運んだ。ブラックウルフの肉だろうか。甘ダレで味付けがされている濃厚な肉の塊だ。

「フィリアとユリウスって付き合ってるの? 私、ここに居ても大丈夫かな……?」
「いや、付き合ってる訳じゃないよ。勿論大丈夫さ」

 俺はフィリアと付き合いたいのだろうか? 人生で初めて異性を好きになった。まだ自分自身がフィリアとどうなりたいか分からない。しかし、これからの人生を彼女と共に歩みたいとは思う。契約者は精霊を守りながら生きる義務があると俺は考えている。

「エルフリーデ。廃城、いえ……お城には戻らなくても大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ。元々私はあの城が嫌いだった」
「そうなんだ……それじゃあこれからも私達と一緒に居ましょう。勿論イリスも一緒にね」
「そうしたいわ。だけどユリウス、精霊が三人も居れば、私達を守りながら暮らすのも大変じゃない?」
「確かにそうかもしれないね。だから俺はもっと強くなるよ。冒険者として成り上がるためにも、仲間を守るためにも」

 俺はこの町で最高の冒険者になると決意して田舎の村を出てきた。ハーフェンに来てフィリアと出会い、反則的な加護を手に入れたが、慢心せずに鍛錬を積まなければ技術は定着しない。ウィンドクロスは既に習得したが、まだ自分自身の技術として定着している訳ではない。今は借り物の力だが、いつか俺はこの力を使いこせなるようになってみせる。

「明日からもクエストを受けて魔物を狩ろう。少しずつ地域に貢献しながら、俺はいつかこの町に精霊と共に暮らせる環境を作るよ」
「楽しみにしているわ。私は攻撃魔法は使えないから、サポートしか出来ないと思うけど」
「エルフリーデの氷の盾、あれは素晴らしい魔法だね、ドラゴンのブレスを止められるんだから」
「ありがとう! 私もこれから魔法を練習するわ」

 エルフリーデは嬉しそうに微笑むと、食事には満足したのか、フィリアを連れて浴室に入った。素敵な仲間が増えて何よりだ。

 俺は葡萄酒を飲みながら武具の点検をした。守護の加護か……フィリアのファイアストームを体に浴びても死ななかったのは、エルフリーデの加護の効果なのだろう。自分自身の魔法防御力がどこまで上昇しているのか、確かめたい気はするが、調べる方法は無い。

 明日からは早朝に起き、ギルドでクエストを受け、フィリアとエルフリーデが起きるまでに魔物を十体討伐しよう。加護の力でどこまで成長出来るか、正直俺はワクワクしている。まずは風の魔力を自在に操れるようになりたい。それからヒールの魔法も更に使い込んで回復効果を上げたいところだ。

「お待たせ、ユリウス」
「ああ、エルフリーデ」

 エルフリーデとフィリアがタオルを巻いて浴室から出てきた。エルフリーデもフィリアに負けず劣らずスタイルが良い。身長はエルフリーデの方が二十センチ程高く、タオル越しでも豊かな胸が分かる。

「もう、ユリウスはいやらしいんだから」
「おっと……つい見とれてしまった」

 フィリアが俺の頬を軽く叩くと、彼女は微笑みながら俺の頭を撫でた。なんだか子供扱いされているみたいで恥ずかしいな。

「ユリウスもお風呂に入ったら?」
「ああ、そうするよ。二人は先に休んでいてくれ」
「わかったわ」

 それから俺はゆっくりと湯に浸かった。手の傷は多少痛むが、ユニコーンのリジェネレーションによって傷は塞がっている。今は夜の十時頃だろうか。明日は朝五時に起きて町を出よう。それから二時間程魔物を狩り、フィリアとエルフリーデが起きる前に宿に戻る。

 ドラゴンの討伐、ゴブリンロードの討伐でフィリアの知名度は上がっている。もしかすると俺からフィリアを奪おうとする輩も現れるかもしれない。そんな人間が現れた時に、敵を退けられる力が無ければ、俺は大切な存在を失ってしまうだろう。好きな女を守る力を身に付けるために、徹底的に鍛え込むんだ……。

 風呂から上がると、既にフィリアとエルフリーデはベッドで眠っていた。フィリアがエルフリーデの豊かな胸に顔を埋めている。今朝のフィリアとの一時を思い出すな。フィリアはどうしてソファで眠っていたのだろうか。

 俺は部屋に備え付けてあった羊皮紙に明日の予定を書いた。羊皮紙を二人の目の付く場所に置き、ソファに倒れ込んだ。今日も忙しい一日だったな。明日からは再び魔物との戦闘に身を置く事になる。常に動き続けるんだ……努力を続ければ、いつか一流の冒険者になれるはずだ……。


 早朝に目が覚めた俺は、すぐに魔装を身に着け、魔剣を背負った。今は朝の五時頃だろうか。眠気を堪えながら一階に降りると、ギルベルトさんが酒場でお酒を飲んでいた。まさか、朝までお酒を飲んでいたのだろうか? 信じられないな……。

「おはよう、ユリウス。昨日はドラゴンの討伐を祝う宴を開いていたのに、ユリウスもフィリアも居ないから盛り上がらなかったよ。今度一緒に酒を飲もう」
「おはようございます、ギルベルトさん! そうだったんですか……昨日は少し疲れていたので早めに休んだんですよ。また誘って下さいね」
「ああ。今日はこれからどこに行くんだ? こんな早朝からフル装備で……」
「魔物を狩りに行きますよ」
「まさか……今は朝の五時だろう? 全く信じられないな。ドラゴンを倒した翌日くらいゆっくりしていたら良いのに」
「そう出来たら良いんですが、俺はもっと強くなりたいんです」
「うむ。俺も負けていられないな。気をつけて行ってくるんだぞ」
「はい。それでは行ってきます! ギルベルトさん」

 朝のハーフェンの町は静かだった。まだ住民は眠りに就いているのだろう、酒場だけが賑やかで、店は全て締まっている。早すぎたか……ギルドは開いているのだろうか。

 宿の前に待たせておいたユニコーンに飛び乗ると、俺はすぐにギルドに向かった。どうやらまだギルドには職員の姿は無い様だ。スノウウルフが巣食う墓地に行って魔物を狩ろう。

「ユニコーン。魔物を狩りに行こうか」

 ユニコーンは静かに頷くと、西口に向けて走り始めた。スノウウルフが巣食う墓地は西口から徒歩で二時間程だったが、ユニコーンの移動速度なら三十分以内に辿り着けるだろう。

 町を出て墓地に向けて走り出した。通常の馬よりも脚力が強いのだろうか、俺とユニコーンはあっという間に墓地に到着した。やはり馬での移動は楽だ。

 ユニコーンから飛び降りると、墓地には悍ましい魔物がスノウウルフを狩っていた……。
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