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第十九話「精霊と契約者」
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部屋に戻るとフィリアはベッドに倒れ込んだ。魔法を制御出来なかった事が悔しかったのか、枕に顔を埋めてすすり泣いている。アレックスは今日もグライナーさんと冒険者を集めて宴を開くのだとか。イリスとエルフリーデはハーフェンの町を見て回るらしい。
俺は死霊の精霊・エルザを仲間にする方法を考えなければならない。一週間以内にダンジョンから出て貰わなければ、冒険者ギルドの討伐隊が魔物と共にエルザを討伐する。まずはエルザと会話し、彼女の望みを聞き出す事が重要だろう。お互い腹を割って話すために葡萄酒でも持っていこうか。
「フィリア。ちょっと町に出てくるよ」
「……」
フィリアは小さく頷くと、俺は直ぐに町に出た。町の市場で葡萄酒と乾燥肉を買う。乾燥肉は豚肉を乾燥させた大きな肉の塊で、かなり食べ応えがありそうだ。それからパンを購入した。市場で売っているパンの中で最も値段が高い物を選んだ。
食料を選び終わり、ゆっくりと町を見物しながら歩いていると、道に人だかりが出来ていた。何か催し物でもあるのだろうか。人混みをかき分けて進むと、イリスとエルフリーデを見つけた。七人の男が二人を取り囲んでおり、辺りには野次馬が集まっている。一体何があったのだろうか。野次馬をかき分けて近づくと、一人の男がエルフリーデの肩に手を置いていた。
「なぁ、良いだろう? 俺に加護をくれよ。お前は守護の精霊なんだろう?」
「嫌です……私の加護は大切な人に与えました」
「加護なんて誰に与えても同じだろうか。早く俺に加護を寄越せ!」
「助けてください……誰か!」
男達は剣を抜いてイリスとエルフリーデを取り囲んでいる。無理やり彼女達から加護を奪おうという訳か。俺は瞬時に魔剣を抜いた。
「俺の仲間に何か用ですか?」
剣に風のエンチャントを掛け、左手に炎の槍を作り上げた。爆発的な炎が左手に集まり、辺りには熱風が荒れ狂うように吹いている。
「誰だ? お前は俺達の邪魔をしようってのか?」
「俺はイリスとエルフリーデの契約者。冒険者ギルドのユリウス・ファッシュです」
「ユリウス・ファッシュって……ゴブリンロードの討伐者じゃ……?」
「お前を殺せばこの娘達の加護は俺達のものという訳だ。こいつを殺せ!」
俺の正体を知るや否や、武器を投げ出して逃げ出す者が一人。俺は逃げる男に対してソーンバインドで体を拘束した。無数の茨で体を覆い、行動を阻害する。俺の仲間を脅して加護を奪おうとする輩を見逃す訳にはいかない。
五人の男が俺を取り囲んだ。残る一人はイリスとエルフリーデに剣を向け、不気味な笑みを浮かべて俺を見つめている。敵の数は多いがここで引く訳にはいかない。
大剣を持つ男が攻撃を仕掛けてきた。男は大剣での垂直斬りを放つと、俺は魔剣で敵の剣を弾き、左手に持った炎の槍を飛ばした。男の腹部には深々と槍が刺さっている。男が大量の血を流しながら倒れると、俺は直ぐにヒールの魔法を掛けた。
契約者が精霊を守るために人間を殺める訳にはいかない。相手を殺さずに戦意を喪失させなければならない。次に襲い掛かってきたのは二本のダガーを扱う小柄な男だった。ダガーでの連撃を放ち、距離を詰めて来るが、攻撃があまりにも軽い。俺は全身から魔力を掻き集め、魔剣に風を纏わせた。
「ウィンドクロス!」
剣から放たれた十字の風の刃が男を遥か遠くまで吹き飛ばした。騒ぎを聞きつけたのか、アレックスが野次馬をかき分けて近づいてきた。アレックスは俺に襲いかかる男の胸ぐらを掴み、おもむろに地面に叩きつけた。静かな町には骨が砕ける音が響いた。
「大丈夫か? ユリウス!」
「ああ。俺は大丈夫だ。こいつらを任せても良いかな?」
「いいだろう! おい雑魚共! 相手をしてやるから掛かってこい!」
アレックスが挑発すると、男は恐れおののいた表情で剣を振り上げた。瞬間、炎を纏うアレックスの拳が男の腹部を捕らえていた。男の体が宙を舞うと、アレックスは高く飛び上がり、上空で拳を振り下ろして男を叩き落とした。
「弱すぎるわ! こんな雑魚では俺とユリウスを殺す事はできんぞ」
イリスとエルフリーデに剣を向けていた男が切りかかってきた。俺は敵の剣を受けると、足元に茨を出現させた。男が足に絡みつく茨に目を落とした瞬間、俺は男の剣を叩き落とした。
男の背後からは戦闘を終えたアレックスが近づいてきた。アレックスが男を羽交い締めにすると、直ぐに守衛が駆けつけてきた。野次馬が守衛に一部始終を説明すると、守衛は直ぐに男達を拘束した。
「イリス、エルフリーデ。大丈夫かい?」
「ええ、私達は大丈夫」
「どうして反撃しなかったんだい? イリスのゴーレムならあんな奴等には負けないだろう?」
「そうだけど、精霊である私達が人間を傷つける訳にはいかないと思ったの。だから助けてくれる人が来るのを待っていた。だけど町の人は誰も助けてくれなかった……」
イリスは目に涙を浮かべると、俺の胸に顔を埋めた。俺はイリスとエルフリーデを強く抱きしめた。
「大丈夫。俺が君達を守るよ」
「ありがとう、ユリウス……」
「頼りにしているわ」
アレックスは彼女達の肩に手を置いて微笑んでいる。全く頼もしいミノタウロスだ。今回の騒動で、人間と精霊を助けたアレックスは町の人達から賞賛された。熱狂的な拍手が送られている。アレックスは顔を赤らめながら、そそくさと酒場に戻った。
「私達も戻りましょうか」
「そうだね。イリス、エルフリーデ。次から外出する時はウィンドゴーレムを連れて行ってくれるかな?」
「わかったわ」
宿に戻るとアレックスはグライナーさんとお酒を飲んでた。グライナーさんはアレックスの肩にもたれ掛かりながら嬉しそうに微笑んでいる。何だか良い雰囲気だから邪魔しないでおこう。部屋に戻るとフィリアが魔法の練習をしていた。小さな炎の球を浮かべ、杖で球を制御している。
「なんだか町が騒々しかったわね。魔力の乱れを感じた……何かあったの?」
「イリスとエルフリーデが襲われていたんだよ」
俺は町での出来事をフィリアに伝えると、フィリアは「よくある事ね」と言い、魔法の訓練を再開した。よくある事で済ませる気は無い。俺は更に強くなって精霊達を守れる人間にならなければならない。
「フィリア。俺は外で訓練をしてくるよ」
「魔法の訓練をするの?」
「そうするつもりだよ」
「私も一緒に行くわ。良いでしょう?」
「勿論だよ」
冒険者ギルドで頂いたマナポーションを持ち、ウィンドゴーレムにイリスとエルフリーデの警護を任せると、俺とフィリアはユニコーンに乗って町を出た。ハーフェンの南口を出てから廃村の方面に向かう。
何だか二人で出かけるのも久しぶりな気がする。フィリアはこれから毎晩俺の訓練に付き合うと言ってくれた。自分自身の魔法を完璧に制御できる様になるのが目標なのだとか。
フィリアが数日前にファイアストームで燃やし尽くした廃村に来た。ここならどれだけ強力な炎を使用しても問題はない。スライムやゴブリンが数匹湧いていたが、フィリアがフレイムランスの魔法で駆逐した。
「早速訓練を始めようか」
「そうね。私は今新しい魔法を学んでいるの。さっき部屋で見たでしょう?」
「炎の球を作る魔法?」
「そう。ファイアボールって言うの。炎の球を飛ばし、爆発させる。この魔法を私のものにしてみせるわ」
「フィリアなら出来るよ。攻撃魔法に特化した破壊の精霊なんだからね。自分なら出来ると信じて魔法を学ぶんだよ」
「ええ。今まで魔法の練習なんてした事が無かったけど、これからは魔法を制御出来る様に毎日練習するわ」
俺とフィリアの魔法訓練が始まった。まずはウィンドクロスから練習しよう。魔力を使い果たすまでひたすら風の刃を飛ばし続け、魔力が枯渇すればマナポーションを飲んで回復させる。魔力が枯渇する瞬間は、まるで貧血の様に意識が遠くなるが、魔力が回復すれば元に戻る。
魔剣にエンチャントを掛けながら、リビングデッドやゴブリンの動きを頭でイメージし、剣の稽古をする。剣での攻撃と魔法攻撃を交互に使用する練習もしなければならない。左手でソーンバインドを放ち、右手に持った魔剣でウィンドクロスを放つ。これが今日の練習内容だ。
左右の手で異なる属性の魔法を使用する事は難しく、単発で使用するよりも魔力の消費量が多い。左手の地属性に意識が集中しすぎれば、魔剣に掛けた風のエンチャントが消える。両手の魔力を均一に保つだけでも、瞬く間に体内の魔力を使い果たして仕舞う。
時間が許す限り、俺達はひたすら訓練を続けた。深い森に囲まれた廃村には、フィリアの魔法の爆発音が響く。深夜まで訓練を続けると俺達の疲労は限界に達した。ユニコーンにもたれ掛かるように座りながら、ハーフェンまでの道ゆっくりと戻った。
宿に戻るとフィリアは直ぐに眠ってしまった。俺は酒場で肉料理とミルクを買うと、酷使した筋肉を癒やすためにひたすら食べた。体内を栄養で満たし、傷ついた筋肉の修復するために食べ続けた。
部屋に戻り、浴室で体を洗うと、俺はフィリアの隣に倒れ込んだ。随分忙しい一日だった。朝はオークの要塞を落とし、昼にはダンジョンでリビングアーマーと戦い、夕方にはイリスとエルフリーデを襲う人間と戦い、夜はフィリアと訓練をした。
「ユリウス……」
フィリアが寝ぼけて俺の体に抱きついた。フィリアの豊かな胸が俺の体に触れる。俺はそのままフィリアに抱かれていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
俺は死霊の精霊・エルザを仲間にする方法を考えなければならない。一週間以内にダンジョンから出て貰わなければ、冒険者ギルドの討伐隊が魔物と共にエルザを討伐する。まずはエルザと会話し、彼女の望みを聞き出す事が重要だろう。お互い腹を割って話すために葡萄酒でも持っていこうか。
「フィリア。ちょっと町に出てくるよ」
「……」
フィリアは小さく頷くと、俺は直ぐに町に出た。町の市場で葡萄酒と乾燥肉を買う。乾燥肉は豚肉を乾燥させた大きな肉の塊で、かなり食べ応えがありそうだ。それからパンを購入した。市場で売っているパンの中で最も値段が高い物を選んだ。
食料を選び終わり、ゆっくりと町を見物しながら歩いていると、道に人だかりが出来ていた。何か催し物でもあるのだろうか。人混みをかき分けて進むと、イリスとエルフリーデを見つけた。七人の男が二人を取り囲んでおり、辺りには野次馬が集まっている。一体何があったのだろうか。野次馬をかき分けて近づくと、一人の男がエルフリーデの肩に手を置いていた。
「なぁ、良いだろう? 俺に加護をくれよ。お前は守護の精霊なんだろう?」
「嫌です……私の加護は大切な人に与えました」
「加護なんて誰に与えても同じだろうか。早く俺に加護を寄越せ!」
「助けてください……誰か!」
男達は剣を抜いてイリスとエルフリーデを取り囲んでいる。無理やり彼女達から加護を奪おうという訳か。俺は瞬時に魔剣を抜いた。
「俺の仲間に何か用ですか?」
剣に風のエンチャントを掛け、左手に炎の槍を作り上げた。爆発的な炎が左手に集まり、辺りには熱風が荒れ狂うように吹いている。
「誰だ? お前は俺達の邪魔をしようってのか?」
「俺はイリスとエルフリーデの契約者。冒険者ギルドのユリウス・ファッシュです」
「ユリウス・ファッシュって……ゴブリンロードの討伐者じゃ……?」
「お前を殺せばこの娘達の加護は俺達のものという訳だ。こいつを殺せ!」
俺の正体を知るや否や、武器を投げ出して逃げ出す者が一人。俺は逃げる男に対してソーンバインドで体を拘束した。無数の茨で体を覆い、行動を阻害する。俺の仲間を脅して加護を奪おうとする輩を見逃す訳にはいかない。
五人の男が俺を取り囲んだ。残る一人はイリスとエルフリーデに剣を向け、不気味な笑みを浮かべて俺を見つめている。敵の数は多いがここで引く訳にはいかない。
大剣を持つ男が攻撃を仕掛けてきた。男は大剣での垂直斬りを放つと、俺は魔剣で敵の剣を弾き、左手に持った炎の槍を飛ばした。男の腹部には深々と槍が刺さっている。男が大量の血を流しながら倒れると、俺は直ぐにヒールの魔法を掛けた。
契約者が精霊を守るために人間を殺める訳にはいかない。相手を殺さずに戦意を喪失させなければならない。次に襲い掛かってきたのは二本のダガーを扱う小柄な男だった。ダガーでの連撃を放ち、距離を詰めて来るが、攻撃があまりにも軽い。俺は全身から魔力を掻き集め、魔剣に風を纏わせた。
「ウィンドクロス!」
剣から放たれた十字の風の刃が男を遥か遠くまで吹き飛ばした。騒ぎを聞きつけたのか、アレックスが野次馬をかき分けて近づいてきた。アレックスは俺に襲いかかる男の胸ぐらを掴み、おもむろに地面に叩きつけた。静かな町には骨が砕ける音が響いた。
「大丈夫か? ユリウス!」
「ああ。俺は大丈夫だ。こいつらを任せても良いかな?」
「いいだろう! おい雑魚共! 相手をしてやるから掛かってこい!」
アレックスが挑発すると、男は恐れおののいた表情で剣を振り上げた。瞬間、炎を纏うアレックスの拳が男の腹部を捕らえていた。男の体が宙を舞うと、アレックスは高く飛び上がり、上空で拳を振り下ろして男を叩き落とした。
「弱すぎるわ! こんな雑魚では俺とユリウスを殺す事はできんぞ」
イリスとエルフリーデに剣を向けていた男が切りかかってきた。俺は敵の剣を受けると、足元に茨を出現させた。男が足に絡みつく茨に目を落とした瞬間、俺は男の剣を叩き落とした。
男の背後からは戦闘を終えたアレックスが近づいてきた。アレックスが男を羽交い締めにすると、直ぐに守衛が駆けつけてきた。野次馬が守衛に一部始終を説明すると、守衛は直ぐに男達を拘束した。
「イリス、エルフリーデ。大丈夫かい?」
「ええ、私達は大丈夫」
「どうして反撃しなかったんだい? イリスのゴーレムならあんな奴等には負けないだろう?」
「そうだけど、精霊である私達が人間を傷つける訳にはいかないと思ったの。だから助けてくれる人が来るのを待っていた。だけど町の人は誰も助けてくれなかった……」
イリスは目に涙を浮かべると、俺の胸に顔を埋めた。俺はイリスとエルフリーデを強く抱きしめた。
「大丈夫。俺が君達を守るよ」
「ありがとう、ユリウス……」
「頼りにしているわ」
アレックスは彼女達の肩に手を置いて微笑んでいる。全く頼もしいミノタウロスだ。今回の騒動で、人間と精霊を助けたアレックスは町の人達から賞賛された。熱狂的な拍手が送られている。アレックスは顔を赤らめながら、そそくさと酒場に戻った。
「私達も戻りましょうか」
「そうだね。イリス、エルフリーデ。次から外出する時はウィンドゴーレムを連れて行ってくれるかな?」
「わかったわ」
宿に戻るとアレックスはグライナーさんとお酒を飲んでた。グライナーさんはアレックスの肩にもたれ掛かりながら嬉しそうに微笑んでいる。何だか良い雰囲気だから邪魔しないでおこう。部屋に戻るとフィリアが魔法の練習をしていた。小さな炎の球を浮かべ、杖で球を制御している。
「なんだか町が騒々しかったわね。魔力の乱れを感じた……何かあったの?」
「イリスとエルフリーデが襲われていたんだよ」
俺は町での出来事をフィリアに伝えると、フィリアは「よくある事ね」と言い、魔法の訓練を再開した。よくある事で済ませる気は無い。俺は更に強くなって精霊達を守れる人間にならなければならない。
「フィリア。俺は外で訓練をしてくるよ」
「魔法の訓練をするの?」
「そうするつもりだよ」
「私も一緒に行くわ。良いでしょう?」
「勿論だよ」
冒険者ギルドで頂いたマナポーションを持ち、ウィンドゴーレムにイリスとエルフリーデの警護を任せると、俺とフィリアはユニコーンに乗って町を出た。ハーフェンの南口を出てから廃村の方面に向かう。
何だか二人で出かけるのも久しぶりな気がする。フィリアはこれから毎晩俺の訓練に付き合うと言ってくれた。自分自身の魔法を完璧に制御できる様になるのが目標なのだとか。
フィリアが数日前にファイアストームで燃やし尽くした廃村に来た。ここならどれだけ強力な炎を使用しても問題はない。スライムやゴブリンが数匹湧いていたが、フィリアがフレイムランスの魔法で駆逐した。
「早速訓練を始めようか」
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「炎の球を作る魔法?」
「そう。ファイアボールって言うの。炎の球を飛ばし、爆発させる。この魔法を私のものにしてみせるわ」
「フィリアなら出来るよ。攻撃魔法に特化した破壊の精霊なんだからね。自分なら出来ると信じて魔法を学ぶんだよ」
「ええ。今まで魔法の練習なんてした事が無かったけど、これからは魔法を制御出来る様に毎日練習するわ」
俺とフィリアの魔法訓練が始まった。まずはウィンドクロスから練習しよう。魔力を使い果たすまでひたすら風の刃を飛ばし続け、魔力が枯渇すればマナポーションを飲んで回復させる。魔力が枯渇する瞬間は、まるで貧血の様に意識が遠くなるが、魔力が回復すれば元に戻る。
魔剣にエンチャントを掛けながら、リビングデッドやゴブリンの動きを頭でイメージし、剣の稽古をする。剣での攻撃と魔法攻撃を交互に使用する練習もしなければならない。左手でソーンバインドを放ち、右手に持った魔剣でウィンドクロスを放つ。これが今日の練習内容だ。
左右の手で異なる属性の魔法を使用する事は難しく、単発で使用するよりも魔力の消費量が多い。左手の地属性に意識が集中しすぎれば、魔剣に掛けた風のエンチャントが消える。両手の魔力を均一に保つだけでも、瞬く間に体内の魔力を使い果たして仕舞う。
時間が許す限り、俺達はひたすら訓練を続けた。深い森に囲まれた廃村には、フィリアの魔法の爆発音が響く。深夜まで訓練を続けると俺達の疲労は限界に達した。ユニコーンにもたれ掛かるように座りながら、ハーフェンまでの道ゆっくりと戻った。
宿に戻るとフィリアは直ぐに眠ってしまった。俺は酒場で肉料理とミルクを買うと、酷使した筋肉を癒やすためにひたすら食べた。体内を栄養で満たし、傷ついた筋肉の修復するために食べ続けた。
部屋に戻り、浴室で体を洗うと、俺はフィリアの隣に倒れ込んだ。随分忙しい一日だった。朝はオークの要塞を落とし、昼にはダンジョンでリビングアーマーと戦い、夕方にはイリスとエルフリーデを襲う人間と戦い、夜はフィリアと訓練をした。
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