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ヴァイオレット
しおりを挟む「──。おや……♡君が今日のお相手かい?」
「ん、ぉ゙♡そう……ッ♡ね、はやく……ッ♡オレ、もう、限界、なの……ッ♡」
「ああ。それなら、すぐに……ッ♡──ぁッ。ゔ……ッ!?」
ベッドに乗り、ゆっくりと身体を抱き締めてきた相手のこめかみを、ヴィオ──いや、ヴァイオレットは素早く小銃で撃ち抜く。パシュッ、と静音設計された小さな射撃音が響き、相手は、目を開いたまま──ベッドへと、崩れ落ちる。
「──フン。流石に腕前は衰えていないか」
「うッせぇ。これで食ってんだよ、こっちは」
相手が動かなくなったのを確認して、入口から悠々と男が現れる。その姿に、黒いままの髪をガシガシと乱雑に掻いたヴァイオレットは、荒っぽく吐き捨てた。
男とのセックスが終わり、彼の手筈でこの部屋に例のターゲットを招き入れ。あまりにあっさりと、組織の「任務」は遂行された。後は仲間に連絡を取り、この場所を離れれば完了だ。どちらにしろあまり時間はない。ヴァイオレットはまだ床に捨てられていたままのウィッグとヘアバンドを手に取り、埃を払って頭に装着する。派手なピンク色のウィッグに黒目のままの姿はアンバランスで、それはヴァイオレット自身の不完全さを、表しているようだった。
死体を地面へ転がし、ベッドから立ち上がって部屋を出ようとすると、またも男が手首を掴んでくる。
「──おい。待てよ」
「ッ。なんだよ……。テメェはもう関係ねぇだろ」
「あるだろう。元恋人だ」
「チッ」
本当にしつこい男だ、とヴァイオレットは憚りなく舌打ちをする。しかし男は退かず、まっすぐにヴァイオレットを見つめるだけだ。鬱陶しい。喧しい。どこか真剣な光を、湛えて。
「ヴァイオレット。早く俺の物になれ。お前みたいなどうしようもない淫乱の殺し屋、俺ぐらいしか手に負えないからな」
「誰が、テメェなんかのモンになるかよ……ッ。寝言は寝て言え、クソ野郎」
「あれだけ人のチンポでヨガってたくせにか?」
「ッ……うるせぇ。」
ああ、嫌いだ。もうすべては終わったのに、こちらを繋ぎ止めて離さない。そこが嫌いだ。物事も関係も、なにもかもは終わってもう決して戻れはしないのに、なにも終わりにはしてくれない。この男の、そんな所が、大嫌いだ。
「オレは、テメェなんか……大ッ嫌いなんだ」
もう一度。確かな想いを口にして、乱暴に手を振り払い店を後にする。男は、追ってこなかった。
裏口から外へ出ると、同じ組織の一員であるサニーが明るい金髪を揺らして手を振っている。
「お疲れさまです、ヴァイオレットさん!クルマ、奥に用意してありますから……アレっ。目、どうしたんですかっ?」
「トラブった。先……戻ってる」
「あっ。は、はい……っ」
朗らかに迎えたサニーに素っ気ない返事をし、用意されていた車へ乗り込む。するとそこには、実の兄であるヴィクトールが先客として座っていた。
「あ。兄さん……」
「お疲れ様、ヴァイオレット。少し時間が掛かったね」
「っ……。」
どこか意味深な、見透かすようなヴィクトールの視線。店での一部始終を覗かれていたようで気まずく、ヴァイオレットは目線を外して俯く。血の繋がりがあるせいか、ヴィクトールに対しては嘘が通じない気がする。いつも優しい態度も、今日はなんだか居心地が悪い。
「ちょっと……色々、あっただけ。依頼は、ちゃんと終わったし」
「そう?それなら、いいけど……、」
「あっ」
伏し目がちに誤魔化すと、横に座っていたヴィクトールはそっとヴァイオレットの肩を引き寄せる。変わらずに暖かい優しさ。こつん、と甘えるようにぶつかる頭に、抱いた肩を、柔らかく撫でられる。
「俺はお前が大切なんだ。いつまでも、こんな危険な仕事をしなくたっていいんだからね」
「っ。し、知らない。オレ、この仕事、好きだもん。みんなのことだって、好きだもん。だから……それで、いいもん」
「そう?」
「そ、そう……。」
「……そうか。でも不安があるなら、なんでも俺に話してくれよ?」
「ん……。うん。」
ちいさく頷き、兄からの優しさを、どこまでも不器用に受け止めるヴァイオレット。しかし脳裏には大嫌いなあの男の面影がちらつき、離れてはくれなかった。あの男から与えられた屈辱的で甘美な快感が、その身体から、こころから。
いつまでも──離れては、くれなかった。
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かなたさん、ご感想ありがとうございます!
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