ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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36.よくやったな・・・褒めてやるぞ

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大雨の中、ひたすら東に行く。この方向には、ローレリア国がある・・・


モーガン達が行方不明だ────────


ゲル様に夜明け前に呼び出されて、いい話じゃねぇなとは思っていたが・・・


「くそっ!お前達、もっとスピードを上げろ!」


馬に何度もむち打ち部下数人に激を飛ばす。徹夜で馬を変えながら走ること3日。
森を抜けたところで、目印を見つける。
俺達諜報部は必ず、通過した証拠を残すようにしている。道中に何かあった時の為だ。
森であれば、森に入る手前で染料弾を撃つ。雨が降っても暫くは落ちない代物だ。

「お前等、ここら一帯をくまなく探せ!」

そう指示を出し、俺も馬から降りた。耳を澄まし、空を見る。

数匹のカラスが何処かに向かうのが見えた。
狼に食われた後はカラスだ。
ここら一帯も雨の跡があった。と言うことは、あの大雨では鳥は早々飛べない。
まして、血肉の匂いは雨がかき消す・・。
その数羽のカラスの跡を追うと、段々とけたたましい餌の取り合いの鳴き声が聞こえだした。

剣に手を添え、草木をかき分けそこに行く。
目の前に黒い翼の集団についばまれる何かを発見する。
そこら中に居るカラスを剣で蹴散らした。


「くっ、モーガンー!!」

胴体を引き裂かれ、肉がほとんどない骨がそこにあった。
狼は柔らかい内臓から食べ、体に付いた肉に行く。硬い頭は食べ残す。
数匹のカラスが、目玉の無くなった頭部をこれでもかとつついているのを見て

「お前等こいつに触るな!!退きやがれ!!」

言葉など通じる訳もないのに、怒鳴り散らし頭部をカラスから奪いとった。

「・・・すまねぇ、遅くなった」

そう言って、マントを敷いてそこに頭部を置いた。

「・・・ちょっと我慢しろよ、モーガン。すぐ済むからな。・・・済んだらすぐに埋めてやる」

そう言って、閉じている口を剣の鞘でこじ開けた。
ガボッと顎の外れる音が聞こえ、だらけた口の中から、油紙に包まれた紙が出る。
それを見て目頭が熱くなった。

「よくやったな・・褒めてやるぞ。お前の死は無駄にしねぇ・・から・なっ・ふっ、うぅぅぅ・・・」

頭部の傍で泣いてる俺に、後から来た部下達も膝を落とし泣いていた。




こいつが死ぬ時、俺に見つけてくれよと言って死んだかと思うと、堪らなかった。
数か月前のこいつを思い出す。


"マルクス!つがいが見つかった。"


そう言って嬉しそうにつがいの話をしたこいつ。

あの時俺はこいつに何て言っただろうか・・・。
あぁ、そうだ、"部署変更の希望出しとけよ"だった・・・
これが終ったら、こいつ移動だったんだ・・・この仕事で終わりだったんだ・・・


変わり果てた同僚に、再度言葉をかけた。

「もうちょっとだったのにな、お前ついてねぇよな。………でも、この雨はついてたと思うぞ。お前が行方不明になって6日もたったのに、無事にお前を見つける事が出来たんだから…。最後に守った物が今俺の手にあるぞ。だから安心して眠れよな……モーガン」


部下と一緒に遺体を土深く埋める。墓標の代りに、こいつの剣を刺した。
そして、こいつの番の為に、モーガンの形見として鱗のネックレスをポケットに入れる。

その後、徹夜続きと、墓堀で疲れ切った部下に少し休憩をやった。その間に、俺はモーガンが残した情報に目を通す。

文章の始まりから、手が震えだした。尋常じゃねぇ内容に最後まで読まずにもう命令を出していた。


「お前等!休憩は終わりだ!!急がねぇと大変だ!!3日かかったのを2日で行くぐらい急げ。ついてこれねぇ奴は、捨ておく!」

そう言って、馬に乗りモーガンの墓に一礼して、馬を走らした。
走らせる道中、渦中の奴の事を思い出す。


常人じゃない強さ。
言葉が分かること。
そして何故・・・今の混沌とした世に召喚されたのか・・・。


「マジかよ!!ベルナールに言ったあの言葉通りで笑えねぇ」



"──────あの子、この世界を動かす爆弾ってところかな・・・"



「しかもメガトン級じゃねぇかよ!」



その後3日かかった行きより、数時間だけ早くターベルに着いたマルクスだったが、時すでに遅しで当のメガトン級爆弾はターベルから姿をくらませた後だった。

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