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第二条:仕事は正確に、完璧に遂行せよ。
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『――――そう。今回の一件に、あの"スタビリティ"が』
「ああ、ミリィからの又聞きだが、彼女の情報なら間違いは無いと見て良いだろう。俺が保証する」
ミリィ・レイスを再び送り返した後、夜になってから監視拠点のマンション四階・402号室に帰って来たハリーは再び冴子へ連絡を取り、先刻ミリィ・レイスから告げられた、国際犯罪シンジケート"スタビリティ"が今回の一件に関わっているらしいということを冴子に伝えていた。
『…………だとしたら、厄介ね』
彼女にしてはあまりにも珍しく、至極神妙そうな口振りで冴子が唸る。
鷹橋冴子という女は常に冷静沈着にして、掴み所が無い飄々とした性格の女だ。類い希な美貌を振りまきながらも立ち振る舞いはキャリアウーマン然としていて、しかし腕っ節もかなり強く侮れない。
だが、そんな冴子をして此処まで深刻にさせるほどの相手なのだ、"スタビリティ"という巨大すぎる敵の影は。
『とにかく、晴彦? 貴方は何としてでも彼女を、園崎和葉を護り抜いて頂戴。相手が誰であろうと、仮に敵があの"スタビリティ"であろうと、貴方の仕事は変わらない』
深刻な声音でそう告げてくる冴子に、ハリーは「分かってるよ」とぶっきらぼうに頷き返す。だがその後で「……しかし」と唸り、
「一体、あんな娘に何があるっていうんだ? 言ったら悪いが、彼女は少々気が強いぐらいで、じゃじゃ馬だがタダの普通の女の子だ。少なくとも俺にはそうとしか見えないし、多分誰が見たって普通の女の子にしか見えない」
『……それは』
「いい加減教えてくれ、冴子。あの娘に、園崎和葉には何がある? 彼女の何処に、あの"スタビリティ"に狙われるような理由があるって言うんだ?」
『貴方が知る必要は無いわ』
しかし、冴子の答えは実に辛く。そして、何も真実を教えようとしてはくれない。
「勘弁してくれよ、冴子。俺と君との仲だろ?」
『昔の話よ、それもたった数週間』
「とにかく、俺は仕事は果たすさ。どうしたってあの娘は、園崎和葉は護り抜いてみせる」
『ルール第二条、仕事は正確に、完璧に遂行せよ。……だったわよね?』
「ああそうだ」と、頷くハリー。「しかし、狙われる理由も分からないんじゃあ、護るのにだって限度がある。彼女が何をしようが彼女の自由だが、生憎と俺の身体は一つしか無いんだ。このまま続けてたら、ハッキリ言って身が持たない」
『……それでも、今は貴方に教えるワケにはいかないのよ』
どれだけ説得を試みても、冴子の回答は変わらなかった。だが彼女の口振りから、何となく本当は言いたいのでは無いか、ともハリーは読み取る。
しかし、彼女が職務上、それをハリーに告げることは許されないのだと。それが故に拒み続けるのだと、ハリーも既に理解している。だからこそハリーはそれ以上の追求を諦め、「……そうか」とだけ頷き身を引いた。これ以上押したところで、冴子の答えは変わらないと心得ていたからこその退き際だった。
『とにかく晴彦、貴方は彼女を護り抜いて。彼女が狙われている理由を貴方が知る必要も無いし、考える必要もない。
…………少なくとも、今は、ね』
最後に意味深な言葉をポツリと呟いてから、冴子は一方的に通話を切ってしまった。
後に残されるのは、プーッ、プーッという無機質な信号音。そしてハリーの胸中に残された、ほんの少しの謎だった…………。
「ああ、ミリィからの又聞きだが、彼女の情報なら間違いは無いと見て良いだろう。俺が保証する」
ミリィ・レイスを再び送り返した後、夜になってから監視拠点のマンション四階・402号室に帰って来たハリーは再び冴子へ連絡を取り、先刻ミリィ・レイスから告げられた、国際犯罪シンジケート"スタビリティ"が今回の一件に関わっているらしいということを冴子に伝えていた。
『…………だとしたら、厄介ね』
彼女にしてはあまりにも珍しく、至極神妙そうな口振りで冴子が唸る。
鷹橋冴子という女は常に冷静沈着にして、掴み所が無い飄々とした性格の女だ。類い希な美貌を振りまきながらも立ち振る舞いはキャリアウーマン然としていて、しかし腕っ節もかなり強く侮れない。
だが、そんな冴子をして此処まで深刻にさせるほどの相手なのだ、"スタビリティ"という巨大すぎる敵の影は。
『とにかく、晴彦? 貴方は何としてでも彼女を、園崎和葉を護り抜いて頂戴。相手が誰であろうと、仮に敵があの"スタビリティ"であろうと、貴方の仕事は変わらない』
深刻な声音でそう告げてくる冴子に、ハリーは「分かってるよ」とぶっきらぼうに頷き返す。だがその後で「……しかし」と唸り、
「一体、あんな娘に何があるっていうんだ? 言ったら悪いが、彼女は少々気が強いぐらいで、じゃじゃ馬だがタダの普通の女の子だ。少なくとも俺にはそうとしか見えないし、多分誰が見たって普通の女の子にしか見えない」
『……それは』
「いい加減教えてくれ、冴子。あの娘に、園崎和葉には何がある? 彼女の何処に、あの"スタビリティ"に狙われるような理由があるって言うんだ?」
『貴方が知る必要は無いわ』
しかし、冴子の答えは実に辛く。そして、何も真実を教えようとしてはくれない。
「勘弁してくれよ、冴子。俺と君との仲だろ?」
『昔の話よ、それもたった数週間』
「とにかく、俺は仕事は果たすさ。どうしたってあの娘は、園崎和葉は護り抜いてみせる」
『ルール第二条、仕事は正確に、完璧に遂行せよ。……だったわよね?』
「ああそうだ」と、頷くハリー。「しかし、狙われる理由も分からないんじゃあ、護るのにだって限度がある。彼女が何をしようが彼女の自由だが、生憎と俺の身体は一つしか無いんだ。このまま続けてたら、ハッキリ言って身が持たない」
『……それでも、今は貴方に教えるワケにはいかないのよ』
どれだけ説得を試みても、冴子の回答は変わらなかった。だが彼女の口振りから、何となく本当は言いたいのでは無いか、ともハリーは読み取る。
しかし、彼女が職務上、それをハリーに告げることは許されないのだと。それが故に拒み続けるのだと、ハリーも既に理解している。だからこそハリーはそれ以上の追求を諦め、「……そうか」とだけ頷き身を引いた。これ以上押したところで、冴子の答えは変わらないと心得ていたからこその退き際だった。
『とにかく晴彦、貴方は彼女を護り抜いて。彼女が狙われている理由を貴方が知る必要も無いし、考える必要もない。
…………少なくとも、今は、ね』
最後に意味深な言葉をポツリと呟いてから、冴子は一方的に通話を切ってしまった。
後に残されるのは、プーッ、プーッという無機質な信号音。そしてハリーの胸中に残された、ほんの少しの謎だった…………。
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