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かわいいあの子の将来の夢
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次の日もいつものように、春真と悠斗は贈悟の家を訪ねた。
「ぞうごさーん!」
悠斗は贈悟を見つけると、走り寄ってきた。
抱きついてくる前に、贈悟は悠斗の身体を抑えた。
「……こんにちは悠斗君」
「……?」
いつもと違う行動に、悠斗は不思議そうにしている。
春真は気付かず話しかけた。
「ゆーと、今日はトランプするって」
「そうかい、なら取って来よう」
先程悠斗を拒否したばかりだと言うのに、気分は高揚していた。
また、一緒に時間を過ごせる。
嬉しい。拒否してしまって悪かった。
今はいつものように、君に抱きしめられたい。
そう思い我に返る。自分は犯罪者ではない。
心を落ち着かせ、戸棚のトランプを取った。
七並べやページワン等を二十戦くらいして、贈悟は疲れ果て、
切りのいい所でお茶とお菓子を出すための休戦を申し入れた。
小さなものではすぐ食べてしまいそうなので、
彼らにとっては少し大きめのどら焼きを二つずつ差し出す。
「そういえば学校はどうだい?」
春真が、どら焼きを頬張りながら答えた。
「普通だよ。あ、今日将来の夢書いた」
「へえ、なんて書いたんだい?」
「お婿さん」
飲みかけていたお茶を、零しそうになったが耐えた。
悠斗が話す。
「オレもそれ書いたら先生に『ダメだ』って言われたんだよなー」
当然だろう。クラスに二人も『お婿さん』では、あまりに味気ない。
「先生に『人のマネするな』って怒られた。
初めに『お婿さん』って書いたのオレなのに……」
シュンとしている悠斗だったが、
贈悟としては注意する所はそこでいいのか、と感じた。男として。
これが時代の違いというものか。
だとすると悠斗には悪い事をしてしまった。
どうやら春真は、悠斗の真似をしただけのようだ。
「まぁ……悠斗君は運動もできるからもっといいのがあるってことじゃないかな?
それで、結局はなんて書いたんだい?」
「えっうん……」
黙ってしまった。まだ書いていないんだろうか。
そう思ったが、何だか照れているように見える。
「ゆーとはね、おじーちゃんの介護するんだって」
悠斗が唖然としている。
「言われた……ッ」
「内緒だったの? なんで?」
悠斗は頭を抱えている。
態とではないとはいえ、孫のせいで困っているようなのでフォローを入れた。
「いい夢だね、将来はおじいちゃんの介護をするのかい?」
「ううん。書いただけ。大人になったらぞうごさんをお嫁さんにするんだ」
「……ん?」
「春真に言われちゃったけど、オレと結婚してよ」
思考が停止する。聞き間違いだろう。
「最近耳が遠くなって」
悠斗は立ちあがると傍まできて大きな声で言った。
「オレと結婚して!」
頭がくらくらする、耳元で大きな声を聞いたせいか、
それとも喜びで満ち溢れたこの気持ちのせいなのかは分からない。
「おじいちゃん泣いてるの?」
「え?」
春真が駆け寄ってきて、泣き始めた。
「ゆーとが泣かしたーっ」
慌てて袖で顔を拭き、春真を膝の上に乗せあやした。
「泣いてな……春真、おじいちゃんほら、泣いてないよ」
「本当?」
顔をぺちぺちと触ってたしかめる。
春真は落ち着いてきた。悠斗が心配そうに覗き込んでくる。
「ごめん。俺が大きな声出したから耳、痛かったよね」
耳に触れる。
「っ!?」
こそばさに身体が反応する。悠斗はますます不安な顔をする。
「痛かったよね? ごめんぞうごさん」
耳の淵を大人の一回り小さい指でなぞられる。
「……いや、いいんだ大丈夫だから」
焦り耳を抑える。
「ああ、そうだ、もう少し落ち着いたらトランプの続き、しようか?」
二人は戸惑いながら、承諾したのでカードを配り直し、その場を乗り切った。
「ぞうごさーん!」
悠斗は贈悟を見つけると、走り寄ってきた。
抱きついてくる前に、贈悟は悠斗の身体を抑えた。
「……こんにちは悠斗君」
「……?」
いつもと違う行動に、悠斗は不思議そうにしている。
春真は気付かず話しかけた。
「ゆーと、今日はトランプするって」
「そうかい、なら取って来よう」
先程悠斗を拒否したばかりだと言うのに、気分は高揚していた。
また、一緒に時間を過ごせる。
嬉しい。拒否してしまって悪かった。
今はいつものように、君に抱きしめられたい。
そう思い我に返る。自分は犯罪者ではない。
心を落ち着かせ、戸棚のトランプを取った。
七並べやページワン等を二十戦くらいして、贈悟は疲れ果て、
切りのいい所でお茶とお菓子を出すための休戦を申し入れた。
小さなものではすぐ食べてしまいそうなので、
彼らにとっては少し大きめのどら焼きを二つずつ差し出す。
「そういえば学校はどうだい?」
春真が、どら焼きを頬張りながら答えた。
「普通だよ。あ、今日将来の夢書いた」
「へえ、なんて書いたんだい?」
「お婿さん」
飲みかけていたお茶を、零しそうになったが耐えた。
悠斗が話す。
「オレもそれ書いたら先生に『ダメだ』って言われたんだよなー」
当然だろう。クラスに二人も『お婿さん』では、あまりに味気ない。
「先生に『人のマネするな』って怒られた。
初めに『お婿さん』って書いたのオレなのに……」
シュンとしている悠斗だったが、
贈悟としては注意する所はそこでいいのか、と感じた。男として。
これが時代の違いというものか。
だとすると悠斗には悪い事をしてしまった。
どうやら春真は、悠斗の真似をしただけのようだ。
「まぁ……悠斗君は運動もできるからもっといいのがあるってことじゃないかな?
それで、結局はなんて書いたんだい?」
「えっうん……」
黙ってしまった。まだ書いていないんだろうか。
そう思ったが、何だか照れているように見える。
「ゆーとはね、おじーちゃんの介護するんだって」
悠斗が唖然としている。
「言われた……ッ」
「内緒だったの? なんで?」
悠斗は頭を抱えている。
態とではないとはいえ、孫のせいで困っているようなのでフォローを入れた。
「いい夢だね、将来はおじいちゃんの介護をするのかい?」
「ううん。書いただけ。大人になったらぞうごさんをお嫁さんにするんだ」
「……ん?」
「春真に言われちゃったけど、オレと結婚してよ」
思考が停止する。聞き間違いだろう。
「最近耳が遠くなって」
悠斗は立ちあがると傍まできて大きな声で言った。
「オレと結婚して!」
頭がくらくらする、耳元で大きな声を聞いたせいか、
それとも喜びで満ち溢れたこの気持ちのせいなのかは分からない。
「おじいちゃん泣いてるの?」
「え?」
春真が駆け寄ってきて、泣き始めた。
「ゆーとが泣かしたーっ」
慌てて袖で顔を拭き、春真を膝の上に乗せあやした。
「泣いてな……春真、おじいちゃんほら、泣いてないよ」
「本当?」
顔をぺちぺちと触ってたしかめる。
春真は落ち着いてきた。悠斗が心配そうに覗き込んでくる。
「ごめん。俺が大きな声出したから耳、痛かったよね」
耳に触れる。
「っ!?」
こそばさに身体が反応する。悠斗はますます不安な顔をする。
「痛かったよね? ごめんぞうごさん」
耳の淵を大人の一回り小さい指でなぞられる。
「……いや、いいんだ大丈夫だから」
焦り耳を抑える。
「ああ、そうだ、もう少し落ち着いたらトランプの続き、しようか?」
二人は戸惑いながら、承諾したのでカードを配り直し、その場を乗り切った。
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