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序章
町の噂
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翌日夕刻の飽食亭には、エピーとロゼ二人の姿があった。
エピーは飽食亭自慢の肉料理に舌鼓を打ち、ロゼは最安の定食セットを死んだ目でつつく。
「まあ。あれが霊なんだかなんなんだかは知らないけど、なんかいた…か、なんかあった、って事だけは確かだわ」
ロゼは無表情でエピーにそう語りかける。
飽食亭は流行りの店なだけはあり、満席に近い盛況ぶりで二人の席の周りにも客が満ち満ちていた。
会話の音声が入り込んでくる。
自分たちにとって関係のある内容であれば、特に。
あちらこちらの座席から、
『…フレッドたちが肝試しに行って帰って来なかったらしいな…』
『…やっぱり王族の亡霊か…』
『急に舞踏会の場に居たかと思ったら、気付いたらやっぱ外で…』
めちゃくちゃ流行りのスポットになっとるやんけ、とエピーは苦笑いする。
自分たちと似たような経験?もしている者もいるようであった。
「あくまでも、なにか。な訳よ。あれが神の法を曲げるような霊?かどうかはまた別だわ。それはそれとしてそれっぽくはあったから約束は守ったけど!」
「わたしは別にあんたがそのデカパイ垂らして全裸で逆立ち街一周でも全然面白かったけど」
エピーの言葉にロゼは顔を真っ赤にして、
「こうなったらあの偽物幽霊の正体を神の名の下に暴いて晒しあげるしかないようね!」
声高に叫ぶ。エピーはそんなロゼの様子に苦笑したが、
食堂の喧騒の中から僅かに聞こえる
『…建国祭…』
という単語が妙に引っ掛かっていた。
再来週にはこの王国でもっとも華々しい祭礼、建国祭が行われる。
旧王宮での不思議な出来事、王族の亡霊、そして建国祭。
何かが繋がっているのか、ただの考え過ぎか…
「エピー!来週またあそこに行くわよ!」
「はいはい、じゃあ正体が確かめられるかどうかが今度の賭けね。やっぱり亡霊だったら…」
「良いわよ、その時は建国祭パレードの先頭に全裸で立ちはだかってやるわよ」
「意気は買うけど捕まるよ?」
「絶対暴くし!」
不退転の覚悟をロゼは口にしたのだった。
一週間後。前回と同じく深夜。
二人は旧王宮を訪れていた。が。
前回来た時よりも噂が広まった為か、夜遅くにも関わらず人の姿がやけに多い。
肝試し目的の若者やら、魔物の仕業と決め付けた冒険者やらがあちこちを探索と称して荒らし回っていた。
壁やら椅子やらを乱暴に蹴り、投げ、踏み荒らし。エピーとロゼはげんなりしてそんな蛮行を遠巻きに見ていた。
そんな時、空気がざわついた。
悲鳴が上がった。悲鳴というには野太い声の男の苦鳴だった。
そちらへ目をやると、全身鎧の何者かに斬りつけられたようだ。
斬られた男の仲間らしいのが荒々しく武器を握り、その鎧姿へと殺到する。
だが、一瞬後にはその全員が斬り伏せられていた。目にも止まらぬ剣技で、囲もうとしてきた輩全員を跳ね飛ばしたのだ。
輪唱のように苦鳴が上がる。
エピーとロゼもそちらへ向かった。
全身鎧が他の者へも危害を加えようと剣を振り上げた所へ、エピーの小剣が割って入る。ロゼは治癒の祈りを傷が深そうな者から順に捧げながら、戦局を見守る。
エピーが全身鎧の剣を跳ね上げ、その視界の前方に立ちはだかる。
そのエピーの体格と、全身鎧の体格はロゼの目には似て見えた。あまり大柄な襲撃者ではないようだ。
全身鎧はエピーに何度も斬りかかるが、エピーはそれを小剣で巧みに受け流し、治癒の祈りを一通りかけ終えてロゼが戦いに合流するまで凌ぎ切った。
ロゼの鎚鉾が空気を震わせ、全身鎧の背後から、兜目掛けて降り下ろされた、が。全身鎧は辛くもそれをかわす。
後ろが見えてるのか!?ロゼは驚きながらも鎚鉾を構え直し、全身鎧の攻撃に備えようとした…が。
夜の闇に溶けるように、全身鎧はすっ、と透けるように消えた。
後にはエピーとロゼと怪我人、そして野次馬だけが残された。
エピーは飽食亭自慢の肉料理に舌鼓を打ち、ロゼは最安の定食セットを死んだ目でつつく。
「まあ。あれが霊なんだかなんなんだかは知らないけど、なんかいた…か、なんかあった、って事だけは確かだわ」
ロゼは無表情でエピーにそう語りかける。
飽食亭は流行りの店なだけはあり、満席に近い盛況ぶりで二人の席の周りにも客が満ち満ちていた。
会話の音声が入り込んでくる。
自分たちにとって関係のある内容であれば、特に。
あちらこちらの座席から、
『…フレッドたちが肝試しに行って帰って来なかったらしいな…』
『…やっぱり王族の亡霊か…』
『急に舞踏会の場に居たかと思ったら、気付いたらやっぱ外で…』
めちゃくちゃ流行りのスポットになっとるやんけ、とエピーは苦笑いする。
自分たちと似たような経験?もしている者もいるようであった。
「あくまでも、なにか。な訳よ。あれが神の法を曲げるような霊?かどうかはまた別だわ。それはそれとしてそれっぽくはあったから約束は守ったけど!」
「わたしは別にあんたがそのデカパイ垂らして全裸で逆立ち街一周でも全然面白かったけど」
エピーの言葉にロゼは顔を真っ赤にして、
「こうなったらあの偽物幽霊の正体を神の名の下に暴いて晒しあげるしかないようね!」
声高に叫ぶ。エピーはそんなロゼの様子に苦笑したが、
食堂の喧騒の中から僅かに聞こえる
『…建国祭…』
という単語が妙に引っ掛かっていた。
再来週にはこの王国でもっとも華々しい祭礼、建国祭が行われる。
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「エピー!来週またあそこに行くわよ!」
「はいはい、じゃあ正体が確かめられるかどうかが今度の賭けね。やっぱり亡霊だったら…」
「良いわよ、その時は建国祭パレードの先頭に全裸で立ちはだかってやるわよ」
「意気は買うけど捕まるよ?」
「絶対暴くし!」
不退転の覚悟をロゼは口にしたのだった。
一週間後。前回と同じく深夜。
二人は旧王宮を訪れていた。が。
前回来た時よりも噂が広まった為か、夜遅くにも関わらず人の姿がやけに多い。
肝試し目的の若者やら、魔物の仕業と決め付けた冒険者やらがあちこちを探索と称して荒らし回っていた。
壁やら椅子やらを乱暴に蹴り、投げ、踏み荒らし。エピーとロゼはげんなりしてそんな蛮行を遠巻きに見ていた。
そんな時、空気がざわついた。
悲鳴が上がった。悲鳴というには野太い声の男の苦鳴だった。
そちらへ目をやると、全身鎧の何者かに斬りつけられたようだ。
斬られた男の仲間らしいのが荒々しく武器を握り、その鎧姿へと殺到する。
だが、一瞬後にはその全員が斬り伏せられていた。目にも止まらぬ剣技で、囲もうとしてきた輩全員を跳ね飛ばしたのだ。
輪唱のように苦鳴が上がる。
エピーとロゼもそちらへ向かった。
全身鎧が他の者へも危害を加えようと剣を振り上げた所へ、エピーの小剣が割って入る。ロゼは治癒の祈りを傷が深そうな者から順に捧げながら、戦局を見守る。
エピーが全身鎧の剣を跳ね上げ、その視界の前方に立ちはだかる。
そのエピーの体格と、全身鎧の体格はロゼの目には似て見えた。あまり大柄な襲撃者ではないようだ。
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ロゼの鎚鉾が空気を震わせ、全身鎧の背後から、兜目掛けて降り下ろされた、が。全身鎧は辛くもそれをかわす。
後ろが見えてるのか!?ロゼは驚きながらも鎚鉾を構え直し、全身鎧の攻撃に備えようとした…が。
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