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XVI 銀行強盗②
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「キャァァァァァッ!!」
強盗の一人の体がピースのかけらとなり爆散したことで、人質の一部が悲鳴を上げた。
「あっぶな!」「…っ!」
幽子が体を幽体化し血を浴びるのを避ける。一華は喰らったが、目元を庇ったおかげで視界を塞がれることは避けられた。
「アイツ…!?」
幽子は周りを見渡す。先ほどまでそこにいた男は姿を消していた。残りの強盗は一人は未だ動かず、奥から来た一人は銃を構えたまま動かなかった。
「おいアンタら!今あの男はどこに行った!?どこに消えたんだ!」
幽子が奥の強盗に向かって怒号を放つ。しかしその男は何も喋らなかった。
「……ッ!!」
いや、喋らなかったのではない。話すことができなかったのだ。男は背中から血を噴き出してその場に倒れた。よく見てみると、男の背中にはジグソーパズルの模様があり、背骨が引き摺り出されていた。
「な…なんでこんなことを…っ!?」
「おい!!お前の仲間はどこに行った!」
一華が銃を奪われ無力となった強盗に掴みかかる。
「しっ知らねえよ!なんで俺が知ってると思うんだよボケ!!」
「ああっ!?」
一華が男の言葉に苛立ちを覚え、男の額に頭突きをかます。痛々しい音が銀行内に響いた。
「が…っ!」
男はそのまま気絶した。
「ならそこで眠ってろ、クソが!」
「ちょ、一華落ち着いて…!」
すると、外から警察の声がスピーカー越しに聞こえてきた。
『今の銃声はなんだ!?中で何が起きている!』
「…とにかく、今は外に出よう。アイツの行方も気になるけどさ、今は人質の解放が最優先だよ。」
「…うん。」
幽子は銃を床に置き、一華は人質の縄を解き自動ドア上部分にあるスイッチを入れて自動ドアを開く。
「!!」
警察が銃を構えるが、幽子は冷静に自身のズボンの、スマホが入っていたのとは逆のポケットから何かカードのようなものを取り出す。
「あれは…イザード財閥の職員証?ではあの子たちは財閥所属の魔法使いか…!」
先ほどまでスピーカーで大声を出していた警官が何やら指示を出すと、突入隊などの構えが緩んだ。
「ありがとうございます。ボクは財閥所属の魔法少女!強盗は仲間の手で二人死亡、一人は無力化し一人は逃亡しました!」
「なんだと!?…いや、探すのも大事だが人質の解放を最優先するべきか。行くぞ!」
警察の者たちが銀行の中に入り、人質を外に連れ出す。無力化された男は手錠をかけられて連れて行かれた。
「君は怪我人かい?」
「…ええ、まあ…そうですね。」
一華は傷を抑えながらふらつく。しかし警察の元には行かず、幽子に耳打ちする。
「ねぇ…アイツがあの状況で逃げたと思う?たとえバラバラになって移動できるにしても、目的だった金を放置してかつ警察の包囲網から視線に入ることなく逃げるのは流石に無茶なんじゃ…。」
「ん、そんなの分かってるよ。だからボクは賭けに出てみたんだよ!」
「賭け?」
一華に縄をちぎられて解放された空が首を傾げる。
「………。」
幽子がじっと人質たちを見つめる。男の職員に女の職員、親子や老夫婦など多くの人が捕らえられていたようだ。それぞれが助かったことへ歓喜の声を漏らしていた。
「…やっぱり、外も中もあんな人数がいたのに誰にもバレずに脱出は無茶だ。」
「それは、そうだろうけど…一体どうやって。」
幽子達が話している時に、空がじっと人質になっていた人たちを見る。
「…?」
人質の中の、銀行職員…おそらく代表取締役だろうか?警察と何やら話しているのだが…。
「あの人…なんか変じゃないですか?」
「ん?」
幽子と空がその人物をじっと見つめる。すると、彼の背中が奇妙な動きを一瞬見せた。
「っ!ごめん借りるよおじさん!」
幽子がそれを見て、警官の懐にあった拳銃を取り上げた。慣れた手つきで安全装置を外し、その人物に向けて構えた。
「き、君!?」
警察が止めようとするが、幽子は静止の声も無視して男性に弾丸を三発放った。
「ッ!!」
男性の背広に弾丸で穴が空いた。
「……ちっ。」
すると、弾丸の貫いた穴から血が噴き出した。すると男性の背中から大量のジグソーパズルのピースが飛び出し、全員の眼の前で組み上がる。右手には大金の入ったバッグを掴んでおり、男の左腕や足3箇所に穴が空いて血が溢れていた。
「な、なんだぁ!?私の背中から…!!」
男性は驚いてその場から離れる。
「…全身をバラけさせるのに慣れてないせいでバレちまったか…どちらにしろ、そう簡単に行くとは思ってなかったがよ…。」
「今度こそ、ボクたちの勝ちだね!」
男がニヤリと笑う。すると、男の持っていたバッグが中のお金ごとパズルピースになり、男がバラけさせて穴を開けた胴体の中にしまい込まれた。
「ウソォ、そんなことできちゃうんだ…。」
幽子が思わず関心の声を漏らす。
「俺のピースはどうやら、一枚を的確に攻撃されるとダメージがあるようだな…いっつつ、また一つ自分の能力について学んだよ…いやはやお前には世話になったな、お前のお陰で少し…俺も成長できたよ。」
「そりゃ良かった。じゃ、あとは牢屋で心の中まで更生しな!」
幽子が銃を構えてさらに発砲する。しかし男は体をピースにして地面を滑るように移動して回避した。
「逃すか!」
一華が地面を蹴って男を追う。
「無駄なことをするなよ、お嬢さん。」
男のピースの一部が違う位置に移動し、盾を持った特殊急襲部隊の一人の体に張り付いた。
「うわっ!?」
すると、ピースの張り付いた男性の腕が振り上げられ、防弾盾で一華を殴りつけた。
「ぐが…っ!」
一華はそのまま吹っ飛ばされ地面に倒れる。男性の体からピースが分離して逃亡を続けた。
「お、俺は腕を動かしてないぞ…体が勝手に動いたんだ!」
「分かってるよそんなこと!」
幽子が男性を霊体になって通り抜け、走ってパズルピースを追いかける。
「クッソ…速い!」
幽子が銃を構え狙うが、先ほどピースに命中したのは密集していたおかげであり偶然だったため、素早く移動するバラバラのピースを撃ち抜くのは困難を極めていた。
「無駄だ!」
男がピースを集めて体を再び再形成する。幽子は立ち止まり男と向き合う。
「何、逃げるの諦めたわけ?そりゃ、大人しく捕まってくれればこれ以上は痛い思いしなくて済むと思うけどね…!」
「ん?その解釈は間違ってるぜ嬢ちゃん。俺は逃げるのを諦めたんじゃねえ、もう逃げる必要がねえから止まったんだよ。」
「何?」
すると、警察の何人かが大きな声を上げ始めた。
「な、なんだぁ!?」
すると、パトカーなどの上を飛び越えてバイクが飛び出してきた。
「やっと来たか、予定より遅いぞ全く…。」
バイクに轢かれそうになり幽子はその場から飛び退いて避けた。
「まさか仲間か…っ!?」
「そういうこった。」
男が左手でシート付近を掴む。すると、バイクに乗った男が幽子の方を振り向いた。ヘルメットを被っていて顔はわからない。
「やぁお嬢さん!我らは『放浪獅子』!縄張りを持たず自らの誇りに従って生き、現代の社会を破壊する者たちだ!覚えておくんだな!!」
「は…ノマド?」
ヘルメットの男の脇腹をパズルピースの男が小突く。
「あてっ」
「んな自己紹介はいらねえんだよ、金はゲットした、逃げるぞ!」
「アイアイサー!!」
男がバイクのエンジンを動かし走り出す。だが、パズルの男はその場にいたままだった。
「アンタは足止めか!?」
幽子が銃を構えるが、男は覆面越しにニヤリと笑うだけで構えはしなかった。
「俺のピースの最大射程距離はそんなに長くないんでな。」
幽子がその言葉を聞いて、バイクのシートを掴んでいた左手を見る。そこに左手はなかった。
「な…っ!!」
幽子は即座に発砲するが、男の体は一瞬にしてピースになってバラけ、バイクを追うようにスライド移動し始めた。
「逃すか…!」
幽子の後ろから一華が走り追いかけようとするが、突然一華は何かに弾き飛ばされるように後ろに倒れた。顔面を空中に打ち付けて一華が鼻血を垂らす。
「ぐあっ!いってぇ…なんだこれ!?」
幽子も正面をよく見ると、自身と一華がうっすらと空中に映っていた。
「なんだ、これ…硝子か?」
「なら叩き割るだけだ!!」
一華が腕を振り上げ正面に張り巡らされたガラスを殴りつける。無数にヒビが入るが、完全に粉々になることはなかった。光の反射する範囲を見ると、どうやら道路の端から端までガラスが貼られているようだ。それも、とても分厚いガラスが。
「く…逃げられた…っ!!」
一華がガラスをもう一度殴ろうとする。すると、後ろから空が一華に抱きついた。
「一華ちゃん!もうやめて!」
「何すんだ!このままじゃ逃げられるぞ…っ!」
一華を静止する空を見て、幽子も一華の手を掴んで抑えようとする。
「ちょっと!逃げられてもいいの!?」
「良いわけじゃないけどさ…人質は無事に解放できたんだ、とりあえずは財閥に報告する方を優先しよう。それにこれ以上血を失ったらヤバいのはキミでしょ。」
「……ちっ。」
一華を抑え、幽子が電話を繋げる。
「ここの近くの病院ですか?イザード財閥所属の者ですけど…ハイ、そうです。怪我人が出たので救急車とかお願いできないかなって…はい。」
二人の姿を見つめて、空は拳を握りしめていた。
「私…何も、できなかった…。」
携帯を閉じた幽子が空を見る。
「二人が頑張ってるのに、私は何もできなかった…動かなきゃいけない時に何もすることができなかった…。」
「空ちゃん…。」
幽子が空の頭を撫で始める。
「大丈夫大丈夫!空ちゃんはまだ戦いにも慣れてないし、あんな状況で抵抗できる方がおかしいんだぞ?ボクだって自分の魔法に自信がなきゃできなかったしさ!」
「うぅ……。」
今にも泣き出してしまいそうな空を、幽子は優しく抱きしめる。
「だから大丈夫!ね。そんな悲しそうな顔しないのー。」
「う、幽子ちゃん~……。」
「け…っ。」
抱きしめ合う二人を見て、一華が呆れたような顔をする。
───────────────────
PM18:00頃。空たちは財閥に帰還した。一華は現在病院にいるので今すぐ戻るのは無理なので、幽子と空二人で用事を済まして戻ってきた。
「…報告は以上だよ。」
〔なるほど、新たな敵対組織ですか…厄介な連中ですね。〕
「結局あの後、別の銀行まで行って手続きしたから夕方までかかっちゃったよ。疲れた~。」
〔とかなんとか言ってぇ、空ちゃん連れてラーメン食べに行ってたのバレてますからね?〕
シエルが指を鳴らすと、空中にモニターが現れて監視カメラの映像が映り出された。
「ちょ…なんで知ってるの!?」
〔お二人が心配だったのでカメラを所々ハッキングして見張ってたんですよ。日本の監視カメラはほとんど財閥日本支部のアクセス許可ありますし。〕
「それは魔人とかの観測のためでしょ!?わざわざボク達監視のために使わないでよ!」
「ラーメン美味しかったです~。」
空がニコニコ微笑むのを見て、シエルは小さくため息を漏らす。
〔ま、お昼頃は忙しかったでしょうし仕方ありませんね。でも…お夕飯食べられます?〕
「あ~…怪しいかも、ボク。」
お腹をさすりながら幽子が目を泳がせる。
〔も~、今日はバイキングのメニューにカニクリームコロッケが追加されるそうですよ。〕
「え!そんなぁ~食べたかったぁ!」
〔ふふん、残念でしたねぇ。〕
幽子が残念そうな声を漏らすと、背後からお腹が鳴るような音が聞こえた。シエルと幽子が背後を見ると、呆けた顔をした空がいた。
「ん…今の音、キミ?」
「えへへ、コロッケ楽しみです!」
空の笑顔を見て、幽子は困惑していた。
「…ボクと同じ時間にラーメン食べて、しかも餃子とかも食べさせたのに…確実にボクより大食いじゃん…?」
〔これは意外ですねぇ。〕
「食べるの大好きです!」
───────────────────
同時刻、東京のどこかの廃ビル。
「…帰還ー。」
『放浪獅子』と名乗っていた男がバイクを止めて廃ビルの中に入る。後ろに乗せてあったバッグのチャックを開けると、中からパズルのピースが飛び出し人型を形成する。
「まったくよぉ…テメェら、もっと早く迎えに来いってんだよ。予定より1分24秒は遅かったぞ。」
「相変わらず細かいねぇキョーちゃんは。1分も10分も変わらないってぇ。」
「キョーちゃん言うなボケが。わざわざ意味もなく名乗りやがるしよ…。」
「たまには目立つこともしたくなるのさ~。」
ビルの中に戻る男の背を見つめたままパズルの男がため息をつくと、バイクの方からメキメキと何か音が鳴り始める。そちらを男が振り向くと、バイクがどんどん変形し人型になり始めた。
「あてて……肩凝ったぁ、次僕休んで良い?」
「だめだ。お前の魔法あってこその逃走経路なんだからな。あと次からは予定に合わせて動け。」
「はいはい~…っとぉ。」
先程ビルに入った男が、2人に向かって缶ビールを投げて渡した。
「今日の勝利に?」
「…はぁ。」「にひひ。」
3人がビールを互いに揃えて、一斉にプルタブをひねる。
「乾杯。」
強盗の一人の体がピースのかけらとなり爆散したことで、人質の一部が悲鳴を上げた。
「あっぶな!」「…っ!」
幽子が体を幽体化し血を浴びるのを避ける。一華は喰らったが、目元を庇ったおかげで視界を塞がれることは避けられた。
「アイツ…!?」
幽子は周りを見渡す。先ほどまでそこにいた男は姿を消していた。残りの強盗は一人は未だ動かず、奥から来た一人は銃を構えたまま動かなかった。
「おいアンタら!今あの男はどこに行った!?どこに消えたんだ!」
幽子が奥の強盗に向かって怒号を放つ。しかしその男は何も喋らなかった。
「……ッ!!」
いや、喋らなかったのではない。話すことができなかったのだ。男は背中から血を噴き出してその場に倒れた。よく見てみると、男の背中にはジグソーパズルの模様があり、背骨が引き摺り出されていた。
「な…なんでこんなことを…っ!?」
「おい!!お前の仲間はどこに行った!」
一華が銃を奪われ無力となった強盗に掴みかかる。
「しっ知らねえよ!なんで俺が知ってると思うんだよボケ!!」
「ああっ!?」
一華が男の言葉に苛立ちを覚え、男の額に頭突きをかます。痛々しい音が銀行内に響いた。
「が…っ!」
男はそのまま気絶した。
「ならそこで眠ってろ、クソが!」
「ちょ、一華落ち着いて…!」
すると、外から警察の声がスピーカー越しに聞こえてきた。
『今の銃声はなんだ!?中で何が起きている!』
「…とにかく、今は外に出よう。アイツの行方も気になるけどさ、今は人質の解放が最優先だよ。」
「…うん。」
幽子は銃を床に置き、一華は人質の縄を解き自動ドア上部分にあるスイッチを入れて自動ドアを開く。
「!!」
警察が銃を構えるが、幽子は冷静に自身のズボンの、スマホが入っていたのとは逆のポケットから何かカードのようなものを取り出す。
「あれは…イザード財閥の職員証?ではあの子たちは財閥所属の魔法使いか…!」
先ほどまでスピーカーで大声を出していた警官が何やら指示を出すと、突入隊などの構えが緩んだ。
「ありがとうございます。ボクは財閥所属の魔法少女!強盗は仲間の手で二人死亡、一人は無力化し一人は逃亡しました!」
「なんだと!?…いや、探すのも大事だが人質の解放を最優先するべきか。行くぞ!」
警察の者たちが銀行の中に入り、人質を外に連れ出す。無力化された男は手錠をかけられて連れて行かれた。
「君は怪我人かい?」
「…ええ、まあ…そうですね。」
一華は傷を抑えながらふらつく。しかし警察の元には行かず、幽子に耳打ちする。
「ねぇ…アイツがあの状況で逃げたと思う?たとえバラバラになって移動できるにしても、目的だった金を放置してかつ警察の包囲網から視線に入ることなく逃げるのは流石に無茶なんじゃ…。」
「ん、そんなの分かってるよ。だからボクは賭けに出てみたんだよ!」
「賭け?」
一華に縄をちぎられて解放された空が首を傾げる。
「………。」
幽子がじっと人質たちを見つめる。男の職員に女の職員、親子や老夫婦など多くの人が捕らえられていたようだ。それぞれが助かったことへ歓喜の声を漏らしていた。
「…やっぱり、外も中もあんな人数がいたのに誰にもバレずに脱出は無茶だ。」
「それは、そうだろうけど…一体どうやって。」
幽子達が話している時に、空がじっと人質になっていた人たちを見る。
「…?」
人質の中の、銀行職員…おそらく代表取締役だろうか?警察と何やら話しているのだが…。
「あの人…なんか変じゃないですか?」
「ん?」
幽子と空がその人物をじっと見つめる。すると、彼の背中が奇妙な動きを一瞬見せた。
「っ!ごめん借りるよおじさん!」
幽子がそれを見て、警官の懐にあった拳銃を取り上げた。慣れた手つきで安全装置を外し、その人物に向けて構えた。
「き、君!?」
警察が止めようとするが、幽子は静止の声も無視して男性に弾丸を三発放った。
「ッ!!」
男性の背広に弾丸で穴が空いた。
「……ちっ。」
すると、弾丸の貫いた穴から血が噴き出した。すると男性の背中から大量のジグソーパズルのピースが飛び出し、全員の眼の前で組み上がる。右手には大金の入ったバッグを掴んでおり、男の左腕や足3箇所に穴が空いて血が溢れていた。
「な、なんだぁ!?私の背中から…!!」
男性は驚いてその場から離れる。
「…全身をバラけさせるのに慣れてないせいでバレちまったか…どちらにしろ、そう簡単に行くとは思ってなかったがよ…。」
「今度こそ、ボクたちの勝ちだね!」
男がニヤリと笑う。すると、男の持っていたバッグが中のお金ごとパズルピースになり、男がバラけさせて穴を開けた胴体の中にしまい込まれた。
「ウソォ、そんなことできちゃうんだ…。」
幽子が思わず関心の声を漏らす。
「俺のピースはどうやら、一枚を的確に攻撃されるとダメージがあるようだな…いっつつ、また一つ自分の能力について学んだよ…いやはやお前には世話になったな、お前のお陰で少し…俺も成長できたよ。」
「そりゃ良かった。じゃ、あとは牢屋で心の中まで更生しな!」
幽子が銃を構えてさらに発砲する。しかし男は体をピースにして地面を滑るように移動して回避した。
「逃すか!」
一華が地面を蹴って男を追う。
「無駄なことをするなよ、お嬢さん。」
男のピースの一部が違う位置に移動し、盾を持った特殊急襲部隊の一人の体に張り付いた。
「うわっ!?」
すると、ピースの張り付いた男性の腕が振り上げられ、防弾盾で一華を殴りつけた。
「ぐが…っ!」
一華はそのまま吹っ飛ばされ地面に倒れる。男性の体からピースが分離して逃亡を続けた。
「お、俺は腕を動かしてないぞ…体が勝手に動いたんだ!」
「分かってるよそんなこと!」
幽子が男性を霊体になって通り抜け、走ってパズルピースを追いかける。
「クッソ…速い!」
幽子が銃を構え狙うが、先ほどピースに命中したのは密集していたおかげであり偶然だったため、素早く移動するバラバラのピースを撃ち抜くのは困難を極めていた。
「無駄だ!」
男がピースを集めて体を再び再形成する。幽子は立ち止まり男と向き合う。
「何、逃げるの諦めたわけ?そりゃ、大人しく捕まってくれればこれ以上は痛い思いしなくて済むと思うけどね…!」
「ん?その解釈は間違ってるぜ嬢ちゃん。俺は逃げるのを諦めたんじゃねえ、もう逃げる必要がねえから止まったんだよ。」
「何?」
すると、警察の何人かが大きな声を上げ始めた。
「な、なんだぁ!?」
すると、パトカーなどの上を飛び越えてバイクが飛び出してきた。
「やっと来たか、予定より遅いぞ全く…。」
バイクに轢かれそうになり幽子はその場から飛び退いて避けた。
「まさか仲間か…っ!?」
「そういうこった。」
男が左手でシート付近を掴む。すると、バイクに乗った男が幽子の方を振り向いた。ヘルメットを被っていて顔はわからない。
「やぁお嬢さん!我らは『放浪獅子』!縄張りを持たず自らの誇りに従って生き、現代の社会を破壊する者たちだ!覚えておくんだな!!」
「は…ノマド?」
ヘルメットの男の脇腹をパズルピースの男が小突く。
「あてっ」
「んな自己紹介はいらねえんだよ、金はゲットした、逃げるぞ!」
「アイアイサー!!」
男がバイクのエンジンを動かし走り出す。だが、パズルの男はその場にいたままだった。
「アンタは足止めか!?」
幽子が銃を構えるが、男は覆面越しにニヤリと笑うだけで構えはしなかった。
「俺のピースの最大射程距離はそんなに長くないんでな。」
幽子がその言葉を聞いて、バイクのシートを掴んでいた左手を見る。そこに左手はなかった。
「な…っ!!」
幽子は即座に発砲するが、男の体は一瞬にしてピースになってバラけ、バイクを追うようにスライド移動し始めた。
「逃すか…!」
幽子の後ろから一華が走り追いかけようとするが、突然一華は何かに弾き飛ばされるように後ろに倒れた。顔面を空中に打ち付けて一華が鼻血を垂らす。
「ぐあっ!いってぇ…なんだこれ!?」
幽子も正面をよく見ると、自身と一華がうっすらと空中に映っていた。
「なんだ、これ…硝子か?」
「なら叩き割るだけだ!!」
一華が腕を振り上げ正面に張り巡らされたガラスを殴りつける。無数にヒビが入るが、完全に粉々になることはなかった。光の反射する範囲を見ると、どうやら道路の端から端までガラスが貼られているようだ。それも、とても分厚いガラスが。
「く…逃げられた…っ!!」
一華がガラスをもう一度殴ろうとする。すると、後ろから空が一華に抱きついた。
「一華ちゃん!もうやめて!」
「何すんだ!このままじゃ逃げられるぞ…っ!」
一華を静止する空を見て、幽子も一華の手を掴んで抑えようとする。
「ちょっと!逃げられてもいいの!?」
「良いわけじゃないけどさ…人質は無事に解放できたんだ、とりあえずは財閥に報告する方を優先しよう。それにこれ以上血を失ったらヤバいのはキミでしょ。」
「……ちっ。」
一華を抑え、幽子が電話を繋げる。
「ここの近くの病院ですか?イザード財閥所属の者ですけど…ハイ、そうです。怪我人が出たので救急車とかお願いできないかなって…はい。」
二人の姿を見つめて、空は拳を握りしめていた。
「私…何も、できなかった…。」
携帯を閉じた幽子が空を見る。
「二人が頑張ってるのに、私は何もできなかった…動かなきゃいけない時に何もすることができなかった…。」
「空ちゃん…。」
幽子が空の頭を撫で始める。
「大丈夫大丈夫!空ちゃんはまだ戦いにも慣れてないし、あんな状況で抵抗できる方がおかしいんだぞ?ボクだって自分の魔法に自信がなきゃできなかったしさ!」
「うぅ……。」
今にも泣き出してしまいそうな空を、幽子は優しく抱きしめる。
「だから大丈夫!ね。そんな悲しそうな顔しないのー。」
「う、幽子ちゃん~……。」
「け…っ。」
抱きしめ合う二人を見て、一華が呆れたような顔をする。
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PM18:00頃。空たちは財閥に帰還した。一華は現在病院にいるので今すぐ戻るのは無理なので、幽子と空二人で用事を済まして戻ってきた。
「…報告は以上だよ。」
〔なるほど、新たな敵対組織ですか…厄介な連中ですね。〕
「結局あの後、別の銀行まで行って手続きしたから夕方までかかっちゃったよ。疲れた~。」
〔とかなんとか言ってぇ、空ちゃん連れてラーメン食べに行ってたのバレてますからね?〕
シエルが指を鳴らすと、空中にモニターが現れて監視カメラの映像が映り出された。
「ちょ…なんで知ってるの!?」
〔お二人が心配だったのでカメラを所々ハッキングして見張ってたんですよ。日本の監視カメラはほとんど財閥日本支部のアクセス許可ありますし。〕
「それは魔人とかの観測のためでしょ!?わざわざボク達監視のために使わないでよ!」
「ラーメン美味しかったです~。」
空がニコニコ微笑むのを見て、シエルは小さくため息を漏らす。
〔ま、お昼頃は忙しかったでしょうし仕方ありませんね。でも…お夕飯食べられます?〕
「あ~…怪しいかも、ボク。」
お腹をさすりながら幽子が目を泳がせる。
〔も~、今日はバイキングのメニューにカニクリームコロッケが追加されるそうですよ。〕
「え!そんなぁ~食べたかったぁ!」
〔ふふん、残念でしたねぇ。〕
幽子が残念そうな声を漏らすと、背後からお腹が鳴るような音が聞こえた。シエルと幽子が背後を見ると、呆けた顔をした空がいた。
「ん…今の音、キミ?」
「えへへ、コロッケ楽しみです!」
空の笑顔を見て、幽子は困惑していた。
「…ボクと同じ時間にラーメン食べて、しかも餃子とかも食べさせたのに…確実にボクより大食いじゃん…?」
〔これは意外ですねぇ。〕
「食べるの大好きです!」
───────────────────
同時刻、東京のどこかの廃ビル。
「…帰還ー。」
『放浪獅子』と名乗っていた男がバイクを止めて廃ビルの中に入る。後ろに乗せてあったバッグのチャックを開けると、中からパズルのピースが飛び出し人型を形成する。
「まったくよぉ…テメェら、もっと早く迎えに来いってんだよ。予定より1分24秒は遅かったぞ。」
「相変わらず細かいねぇキョーちゃんは。1分も10分も変わらないってぇ。」
「キョーちゃん言うなボケが。わざわざ意味もなく名乗りやがるしよ…。」
「たまには目立つこともしたくなるのさ~。」
ビルの中に戻る男の背を見つめたままパズルの男がため息をつくと、バイクの方からメキメキと何か音が鳴り始める。そちらを男が振り向くと、バイクがどんどん変形し人型になり始めた。
「あてて……肩凝ったぁ、次僕休んで良い?」
「だめだ。お前の魔法あってこその逃走経路なんだからな。あと次からは予定に合わせて動け。」
「はいはい~…っとぉ。」
先程ビルに入った男が、2人に向かって缶ビールを投げて渡した。
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天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記
逢神天景
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とある村の平凡な娘に転生した主人公。
「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」
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しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった!
そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……!
「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」
「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」
これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
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