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XXXIV 白き大地①
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朝8時。
財閥の日本支部から多くのヘリが北海道に向かい移動していた。ヘリを操作するイプシロンとは別の機体がモニターを操作し始める。
〔では、改めて状況整理を行います。今回の作戦には魔法を使えない多くの自衛隊なども参加していますが、戦況を大きく操作するのは皆様魔法使いの方々です。今回の作戦だけでも30人以上の魔法所持者が参加していますので…。〕
「30人…そんな大人数が…!」
「残念だけど空ちゃん、コレでもかなり少ねえ方だよ。日本にいる魔法使い全体で考えても戦力として足りるかどうか怪しい。」
空はイプシロンの言葉に驚いた顔を見せるが、凛泉は暗い顔のままナイフを磨いていた。
「で、でも!こんなにたくさんの人が協力してくれてるんだもん、きっと負けないよ!」
「だと、良いんだけどね……。」
「うぅ…。」
空は凛泉の言葉を聞き悲しそうな表情を浮かべる。
「大丈夫ですよ、空様。偽神や魔人との戦いに想定外はつきもの…何事も瞬時に対応してこそですわ。」
空は顔を上げる。向かいの座席には金髪の美しい女性が座っていた。光を放っているかと錯覚しそうになるほど綺麗な青い瞳を空に向けているその女性は、メイド服に身を包んでいた。
「ルナさん…。でもやっぱり緊張しちゃいます。」
「わたくしも緊張はしています。でも、コレをやり遂げなければ北海道に住んでいらした方々は故郷に帰ることもできない…彼らのためを思えば、わたくし達が怖がっている暇はありませんわよ。」
彼女はルナ・グレース・ブラウン。イザード財閥日本支部でメイドという名の清掃員…兼、魔法少女として働いている者だ。普段は清掃や研究員へのお茶汲みなどををメインとして働いているが、今回の大規模作戦には戦力の一人として参戦した。
(ルナ氏は時々寮の掃除をしているところを見かけていたが、それ以外のメンバーは初対面のものも中々多いな娘よ。)
「それも相まって緊張しちゃうよ…(小声)」
今回の作戦は空が来る以前から計画されていたということもあり、今回の作戦のために日本に待機しつつ職務を行っていたものたちもいた。そのため、この場で初対面となる者も多くいた。
「大丈夫デスよ空サン!この右目にはが秘められしパワーがあるのデ、このパワーを持って必ずや皆サンをお守りしマース!」
「さすがはドロテア様です、頼りになりますわ。」
「そういうけどアンタの魔法、目ぇ関係ないでしょうがよ。」
ルナの隣ではしゃいでいる女性はドロテア・フォン・ガイスト。日本をこよなく愛するドイツ人の魔法少女で、北海道の奪還という内容である今回の作戦にも積極性を見せている一人である。
(中々に濃いチームでの出陣となりそうだな、娘よ。順応できているか?)
「な、なんとか…?みんな優しくて仲良くはできそうだし…。」
現在空たち魔法所持者の面々は、4人から5人のチームに分かれてヘリに乗り込んでいた。空達は『6番目の部隊』として5人でヘリに乗り込んでいる。
「ほんで……アンタはいつまでそこで縮みこんでんの?」
「あぅ…す、すいません…。」
凛泉が声をかけた少女は、室内の端の椅子に畏縮した様子で座っていた。
「大丈夫ですよ~暁子さん、さっきのお話とっても共感できますもんっ!」
「そ、そそうですかね……。」
「そーそー、気にすんなってギョーザちゃん。「私昔魚の骨が喉に刺さってそれ以来お魚が苦手なんですよ!」て話で無理に話題広げようとしてビミョ~な雰囲気になったのなんて誰も気にしてないよ。」
凛泉はヘリに乗り込んだ時の暁子の失敗を掘り返すように語る。
「……うぅ~…。」
それを聞いて暁子はポロポロと涙を流し始めた。
「凛泉ちゃんっ!!」
空は暁子のそばにより頭を撫でる。
「大丈夫ですよ、凛泉ちゃんはちょっと意地悪なだけですから!暁子さんの皆さんと仲良くしたくて頑張った姿立派でしたよ!」
「うぅ…ひぐぅ…っ。」
「今のはデリカシーがありまセーン。」
「こればかりはわたくしも凛泉様が悪いとしか言えませんわ。」
「悪かったって……。」
Fチームはこの凛泉、空、ドロテア、ルナ、暁子の5人で構成されたチームとなる。近接戦闘に特化したものが多いこのメンバーは、作戦において魔人の陽動などを担当する手筈となっている。
(娘どころか全体の関係性がぐだぐだとしているのだが、これで本当に大丈夫なのだろうか?)
「なんとかなる…と思いたいなぁ…。」
…北海道奪還作戦、開始まで…1時間。
───────────────────
同時刻、偵察及び魔人撃退部隊Bチームのヘリにて。
「俺たちは北海道に到着後、すぐに行動を開始する。周辺のクリアリングと動植物の生存状態などの確認を行い、魔人を発見次第他チームと軍隊に情報共有…なのだが。わかったか?」
「はい!もちろんです!」
「一応聞くが、なぜ写真を撮っているんだ一歩。」
「え、コレから大規模作戦なので…それにこのメンバーで集まることってあまりないので、記念に!」
一歩と呼ばれた少女はニコニコと微笑みながら、ピンクと黒のポニーテールを体と共に左右にゆらゆらと揺らす。そんな一歩に幽子が飛びついた。
「お、写真撮るの?いいねーボクもボクも!」
「良いけど、ゆうちゃん前みたいに魔法で透けないでね?心霊写真みたいだってみんなびっくりしてたんだから!」
「でもバズってたでしょ?」
「あはは、まあねー!」
一歩と幽子は二人並んで一歩のスマホで写真を撮影した。一歩はいわゆるインフルエンサーで、昔は財閥の魔人に対する注意喚起を嘘だ国の陰謀だ何だという噂が後をたたなかったのだが、それを一部鎮めたのが彼女のようなSNSで有名となっている存在だった。
「実力は確かなメンバーだが、なんとなく不安だな…。」
「キュイィッ。」
不安な表情を浮かべる碧射の頬に、ジュラが顔を擦り付ける。
「はっはっは、碧射くんとジュラくんは相変わらず仲が良い!動物との信頼関係、実に羨ましいものだ!」
「博也さん…とりあえずあなたはソレやめたらどうっスか?」
博也と呼ばれた筋肉質な男性は、ヘリの中であるにも関わらず壁に背をつけ、爽やかな笑顔のまま空気椅子でその場にいた。
「いやぁ、これから大規模な作戦に参加するんだ、ぼくもガラにもなく緊張してしまってね。こうして可能な限り鍛錬を挟んで緊張をほぐしているのさ!碧射くんもやるかい?」
「あ、いえ結構です。」
博也は武道を嗜んでおり、魔法もまた肉体強化系統であるため鍛錬をよく行っている。ソレとは別に趣味な部分もあり、やっていないと落ち着かないという。
「いいですね鍛錬、しんどそうで…オレも隣でやっていいです?」
「お、いいね!あんたも鍛錬は好きか?」
「ええ!好きですよ~。」
「麟太郎まで……作戦が始まる前に体力を使い果たしそうなことはしないでくれ…。」
「あはは、冗談ですよ流石に。これからもっとしんどい戦いがあるんですから体力は温存しますって。」
(…この人もこの人でクセが強いんだよな…不安というか、不穏というか……いや、不安だな…。)
「ありゃ?スマホが圏外になっちゃいました…。」
一歩の言葉を聞き、碧射はヘリの外を見る。空には一定の距離をまるで境界線を区切るように真っ白な雪雲が姿を表し、大量の雪が降っていた。それと同時に、ヘリを操縦しているイプシロンからヘリ内にアナウンスがかかる。
〔北海道の閉鎖区域に侵入しました。これより20分後閉鎖区域管理局へ到着し、作戦が開始します。〕
「…入ったか、北海道に。」
「えぇ、始まりますね…。」
碧射は銃のマガジンを確認しポーチにしまう。
「一歩、お前…今の『気分』はどうだ?」
「そうですね…ドキドキ緊張してます!」
「よし、なら問題はない。ここからは携帯での連絡は取れなくなる、それぞれ無線を持って行動しよう。」
碧射の言葉を合図に全員防寒着に身を包み、いつでも動けるように準備を始める。
その合間のことだった。幽子が窓から外を覗き込みながらつぶやく。
「…なにあれ。」
「幽子?」
碧射が外を見ると、少し離れた場所を飛ぶヘリに向かって何かが接近していた。碧射は超人的な視力でソレが何かを見た。
「……腕?」
ソレがヘリに到達した瞬間だった。
強烈な爆発音と共に、そのヘリは赤い炎に包まれた。
「な…っ!?」
ヘリは真っ二つに崩れ、炎に包まれながら地上へ落下していく。落下する最中で炎がさらに大きくなり、周りの空気を震わせるような轟音で再び爆発した。
「………!!」
博也が無線機を手に取り、無線を繋いで叫んだ。
「敵襲だ!!」
───────────────────
「ぎゃっははは!命中だゼェ~!何人死んだかなぁ!?」
ヘリから遠く離れた北海道の大地で、白い獣が笑い声を上げる。ソレはキツネによく似た顔をしていた。ソレは笑い声を上げながら、そばにあった仲間の魔人の死体から右腕をちぎり取った。
「騒ぐんじゃネーヨ、ハッパ。まだ奴ら全員撃ち落としてないダロ。」
「安心しろって、もう奴らは終わるさ…。」
ハッパ、そう呼ばれた獣は引きちぎった仲間の腕を握りしめる。すると、腕はグロテスクに肉の形を変え、手首から丸い肉塊が生えたような形状に変化する。さらに、肉塊から血管が2本、ねじれて紐のように飛び出した。
「んじゃ二投目、頼んだゼェ~。」
「リョーカイ。」
その不気味な肉塊を渡された獣は、古びた望遠鏡を片手に持って覗き込み、空たちの乗るヘリをじっと見つめる。
「マーク、完了。」
そう言って獣は受け取った肉塊から生えた血管の紐を、横にある焚き火の炎に触れされる。先に火がつき、火花を散らしながら燃え始めた。
「行ってコイ。」
獣がゴミでも捨てるように目の前に肉塊を放る。…ソレは地面に落ちる寸前でふわりと浮き、直線状にヘリに向かって飛んでいった。
「ぎゃーははは!当たったら100点だなぁ!?」
「せいぜい10点ダ。」
───────────────────
『敵襲だ!!』
「ッ!?」
ヘリの爆発音が周囲に響いた後、空たちの無線から博也の声が響く。ルナは無線を手に取り繋ぎ返す。
「博也様、先ほどのヘリの爆発は…!」
『その声、ルナか!間違いなく向こうからの襲撃だ!ヘリに何かが飛んできて爆発しやがった!』
「皆様、おそらく魔神からの襲撃と考えられます!警戒を!」
「おいイプシロン!近くの生体反応とかサーチできねえか!?」
凛泉は防寒着を羽織り、ヘリの操縦席に声をかける。
〔現在行っています……こちらのヘリに向かって直線状に接近する飛翔物を感知しました。〕
「くっそ、もう狙ってきやがった!」
「私にお任せ下サイ!」
ドロテアは凛泉を中に引き戻し、ヘリの操縦席の後ろに立つ。
「この位置なら、ヘリの外側まで発動するハズ!」
〔飛翔物の到達まで残り、10m。〕
操縦席の窓から迫るその物質が肉眼でも見える距離まで迫ってきた。
「…『色即是空』!!」
ドロテアがそう叫んだ瞬間、その飛翔物の軌道が大きく逸れヘリを避けるように吹っ飛んだ。
「ヨシっ!」
空たちのヘリの後ろ側まで飛んだ肉塊は、数秒経った後轟音を響かせながら爆発した。
「爆弾…爆弾を作る魔法か!?こんな急に襲ってきやがるとは…!」
〔ルートを変更し、これから地上へ向けて降下を開始します。〕
「おう!早くしてくれよ!ドロテアちゃん、次のヤツは回避できる!?」
「同じ言葉を連続発動はできまセン!誰か、次の手を!!」
空たちは全員武器を構えるが、まだ地上からは距離があった。そのまま無抵抗で構えていては再び爆弾が飛んできた際に対処ができない。
「…碧射様。あなたの目で対象を見つけられますか?」
ルナは無線に向けてそう呟く。
『飛んできた方向を今確認しているが…雪で地上がはっきりと見えない!このままでは次が…。』
すると、イプシロンの音声が無線に繋げられた。
〔現在、飛翔物の飛行角度から射出距離と場所を演算し、管理局に待機している魔法使いに情報を共有しました。〕
その言葉を聞き、凛泉は袖をまくって手首をナイフで切り付ける。そこから溢れた血がナイフにまとわりつき、剣となって凝固した。
「予定より早いが…一匹残らず『獣狩り』してやるよ!!」
〔飛翔物、再び接近しています。起動は先ほど同様ヘリの正面へ接近…〕
イプシロンがその言葉を通達したとほぼ同時に、窓から体を乗り出したルナがハンドガンを発砲する。弾丸は本来なら届かないであろう距離まで加速し、飛翔物を貫いて空中で爆破させた。
「どうやら、躾が必要なようございますね。」
財閥の日本支部から多くのヘリが北海道に向かい移動していた。ヘリを操作するイプシロンとは別の機体がモニターを操作し始める。
〔では、改めて状況整理を行います。今回の作戦には魔法を使えない多くの自衛隊なども参加していますが、戦況を大きく操作するのは皆様魔法使いの方々です。今回の作戦だけでも30人以上の魔法所持者が参加していますので…。〕
「30人…そんな大人数が…!」
「残念だけど空ちゃん、コレでもかなり少ねえ方だよ。日本にいる魔法使い全体で考えても戦力として足りるかどうか怪しい。」
空はイプシロンの言葉に驚いた顔を見せるが、凛泉は暗い顔のままナイフを磨いていた。
「で、でも!こんなにたくさんの人が協力してくれてるんだもん、きっと負けないよ!」
「だと、良いんだけどね……。」
「うぅ…。」
空は凛泉の言葉を聞き悲しそうな表情を浮かべる。
「大丈夫ですよ、空様。偽神や魔人との戦いに想定外はつきもの…何事も瞬時に対応してこそですわ。」
空は顔を上げる。向かいの座席には金髪の美しい女性が座っていた。光を放っているかと錯覚しそうになるほど綺麗な青い瞳を空に向けているその女性は、メイド服に身を包んでいた。
「ルナさん…。でもやっぱり緊張しちゃいます。」
「わたくしも緊張はしています。でも、コレをやり遂げなければ北海道に住んでいらした方々は故郷に帰ることもできない…彼らのためを思えば、わたくし達が怖がっている暇はありませんわよ。」
彼女はルナ・グレース・ブラウン。イザード財閥日本支部でメイドという名の清掃員…兼、魔法少女として働いている者だ。普段は清掃や研究員へのお茶汲みなどををメインとして働いているが、今回の大規模作戦には戦力の一人として参戦した。
(ルナ氏は時々寮の掃除をしているところを見かけていたが、それ以外のメンバーは初対面のものも中々多いな娘よ。)
「それも相まって緊張しちゃうよ…(小声)」
今回の作戦は空が来る以前から計画されていたということもあり、今回の作戦のために日本に待機しつつ職務を行っていたものたちもいた。そのため、この場で初対面となる者も多くいた。
「大丈夫デスよ空サン!この右目にはが秘められしパワーがあるのデ、このパワーを持って必ずや皆サンをお守りしマース!」
「さすがはドロテア様です、頼りになりますわ。」
「そういうけどアンタの魔法、目ぇ関係ないでしょうがよ。」
ルナの隣ではしゃいでいる女性はドロテア・フォン・ガイスト。日本をこよなく愛するドイツ人の魔法少女で、北海道の奪還という内容である今回の作戦にも積極性を見せている一人である。
(中々に濃いチームでの出陣となりそうだな、娘よ。順応できているか?)
「な、なんとか…?みんな優しくて仲良くはできそうだし…。」
現在空たち魔法所持者の面々は、4人から5人のチームに分かれてヘリに乗り込んでいた。空達は『6番目の部隊』として5人でヘリに乗り込んでいる。
「ほんで……アンタはいつまでそこで縮みこんでんの?」
「あぅ…す、すいません…。」
凛泉が声をかけた少女は、室内の端の椅子に畏縮した様子で座っていた。
「大丈夫ですよ~暁子さん、さっきのお話とっても共感できますもんっ!」
「そ、そそうですかね……。」
「そーそー、気にすんなってギョーザちゃん。「私昔魚の骨が喉に刺さってそれ以来お魚が苦手なんですよ!」て話で無理に話題広げようとしてビミョ~な雰囲気になったのなんて誰も気にしてないよ。」
凛泉はヘリに乗り込んだ時の暁子の失敗を掘り返すように語る。
「……うぅ~…。」
それを聞いて暁子はポロポロと涙を流し始めた。
「凛泉ちゃんっ!!」
空は暁子のそばにより頭を撫でる。
「大丈夫ですよ、凛泉ちゃんはちょっと意地悪なだけですから!暁子さんの皆さんと仲良くしたくて頑張った姿立派でしたよ!」
「うぅ…ひぐぅ…っ。」
「今のはデリカシーがありまセーン。」
「こればかりはわたくしも凛泉様が悪いとしか言えませんわ。」
「悪かったって……。」
Fチームはこの凛泉、空、ドロテア、ルナ、暁子の5人で構成されたチームとなる。近接戦闘に特化したものが多いこのメンバーは、作戦において魔人の陽動などを担当する手筈となっている。
(娘どころか全体の関係性がぐだぐだとしているのだが、これで本当に大丈夫なのだろうか?)
「なんとかなる…と思いたいなぁ…。」
…北海道奪還作戦、開始まで…1時間。
───────────────────
同時刻、偵察及び魔人撃退部隊Bチームのヘリにて。
「俺たちは北海道に到着後、すぐに行動を開始する。周辺のクリアリングと動植物の生存状態などの確認を行い、魔人を発見次第他チームと軍隊に情報共有…なのだが。わかったか?」
「はい!もちろんです!」
「一応聞くが、なぜ写真を撮っているんだ一歩。」
「え、コレから大規模作戦なので…それにこのメンバーで集まることってあまりないので、記念に!」
一歩と呼ばれた少女はニコニコと微笑みながら、ピンクと黒のポニーテールを体と共に左右にゆらゆらと揺らす。そんな一歩に幽子が飛びついた。
「お、写真撮るの?いいねーボクもボクも!」
「良いけど、ゆうちゃん前みたいに魔法で透けないでね?心霊写真みたいだってみんなびっくりしてたんだから!」
「でもバズってたでしょ?」
「あはは、まあねー!」
一歩と幽子は二人並んで一歩のスマホで写真を撮影した。一歩はいわゆるインフルエンサーで、昔は財閥の魔人に対する注意喚起を嘘だ国の陰謀だ何だという噂が後をたたなかったのだが、それを一部鎮めたのが彼女のようなSNSで有名となっている存在だった。
「実力は確かなメンバーだが、なんとなく不安だな…。」
「キュイィッ。」
不安な表情を浮かべる碧射の頬に、ジュラが顔を擦り付ける。
「はっはっは、碧射くんとジュラくんは相変わらず仲が良い!動物との信頼関係、実に羨ましいものだ!」
「博也さん…とりあえずあなたはソレやめたらどうっスか?」
博也と呼ばれた筋肉質な男性は、ヘリの中であるにも関わらず壁に背をつけ、爽やかな笑顔のまま空気椅子でその場にいた。
「いやぁ、これから大規模な作戦に参加するんだ、ぼくもガラにもなく緊張してしまってね。こうして可能な限り鍛錬を挟んで緊張をほぐしているのさ!碧射くんもやるかい?」
「あ、いえ結構です。」
博也は武道を嗜んでおり、魔法もまた肉体強化系統であるため鍛錬をよく行っている。ソレとは別に趣味な部分もあり、やっていないと落ち着かないという。
「いいですね鍛錬、しんどそうで…オレも隣でやっていいです?」
「お、いいね!あんたも鍛錬は好きか?」
「ええ!好きですよ~。」
「麟太郎まで……作戦が始まる前に体力を使い果たしそうなことはしないでくれ…。」
「あはは、冗談ですよ流石に。これからもっとしんどい戦いがあるんですから体力は温存しますって。」
(…この人もこの人でクセが強いんだよな…不安というか、不穏というか……いや、不安だな…。)
「ありゃ?スマホが圏外になっちゃいました…。」
一歩の言葉を聞き、碧射はヘリの外を見る。空には一定の距離をまるで境界線を区切るように真っ白な雪雲が姿を表し、大量の雪が降っていた。それと同時に、ヘリを操縦しているイプシロンからヘリ内にアナウンスがかかる。
〔北海道の閉鎖区域に侵入しました。これより20分後閉鎖区域管理局へ到着し、作戦が開始します。〕
「…入ったか、北海道に。」
「えぇ、始まりますね…。」
碧射は銃のマガジンを確認しポーチにしまう。
「一歩、お前…今の『気分』はどうだ?」
「そうですね…ドキドキ緊張してます!」
「よし、なら問題はない。ここからは携帯での連絡は取れなくなる、それぞれ無線を持って行動しよう。」
碧射の言葉を合図に全員防寒着に身を包み、いつでも動けるように準備を始める。
その合間のことだった。幽子が窓から外を覗き込みながらつぶやく。
「…なにあれ。」
「幽子?」
碧射が外を見ると、少し離れた場所を飛ぶヘリに向かって何かが接近していた。碧射は超人的な視力でソレが何かを見た。
「……腕?」
ソレがヘリに到達した瞬間だった。
強烈な爆発音と共に、そのヘリは赤い炎に包まれた。
「な…っ!?」
ヘリは真っ二つに崩れ、炎に包まれながら地上へ落下していく。落下する最中で炎がさらに大きくなり、周りの空気を震わせるような轟音で再び爆発した。
「………!!」
博也が無線機を手に取り、無線を繋いで叫んだ。
「敵襲だ!!」
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「ぎゃっははは!命中だゼェ~!何人死んだかなぁ!?」
ヘリから遠く離れた北海道の大地で、白い獣が笑い声を上げる。ソレはキツネによく似た顔をしていた。ソレは笑い声を上げながら、そばにあった仲間の魔人の死体から右腕をちぎり取った。
「騒ぐんじゃネーヨ、ハッパ。まだ奴ら全員撃ち落としてないダロ。」
「安心しろって、もう奴らは終わるさ…。」
ハッパ、そう呼ばれた獣は引きちぎった仲間の腕を握りしめる。すると、腕はグロテスクに肉の形を変え、手首から丸い肉塊が生えたような形状に変化する。さらに、肉塊から血管が2本、ねじれて紐のように飛び出した。
「んじゃ二投目、頼んだゼェ~。」
「リョーカイ。」
その不気味な肉塊を渡された獣は、古びた望遠鏡を片手に持って覗き込み、空たちの乗るヘリをじっと見つめる。
「マーク、完了。」
そう言って獣は受け取った肉塊から生えた血管の紐を、横にある焚き火の炎に触れされる。先に火がつき、火花を散らしながら燃え始めた。
「行ってコイ。」
獣がゴミでも捨てるように目の前に肉塊を放る。…ソレは地面に落ちる寸前でふわりと浮き、直線状にヘリに向かって飛んでいった。
「ぎゃーははは!当たったら100点だなぁ!?」
「せいぜい10点ダ。」
───────────────────
『敵襲だ!!』
「ッ!?」
ヘリの爆発音が周囲に響いた後、空たちの無線から博也の声が響く。ルナは無線を手に取り繋ぎ返す。
「博也様、先ほどのヘリの爆発は…!」
『その声、ルナか!間違いなく向こうからの襲撃だ!ヘリに何かが飛んできて爆発しやがった!』
「皆様、おそらく魔神からの襲撃と考えられます!警戒を!」
「おいイプシロン!近くの生体反応とかサーチできねえか!?」
凛泉は防寒着を羽織り、ヘリの操縦席に声をかける。
〔現在行っています……こちらのヘリに向かって直線状に接近する飛翔物を感知しました。〕
「くっそ、もう狙ってきやがった!」
「私にお任せ下サイ!」
ドロテアは凛泉を中に引き戻し、ヘリの操縦席の後ろに立つ。
「この位置なら、ヘリの外側まで発動するハズ!」
〔飛翔物の到達まで残り、10m。〕
操縦席の窓から迫るその物質が肉眼でも見える距離まで迫ってきた。
「…『色即是空』!!」
ドロテアがそう叫んだ瞬間、その飛翔物の軌道が大きく逸れヘリを避けるように吹っ飛んだ。
「ヨシっ!」
空たちのヘリの後ろ側まで飛んだ肉塊は、数秒経った後轟音を響かせながら爆発した。
「爆弾…爆弾を作る魔法か!?こんな急に襲ってきやがるとは…!」
〔ルートを変更し、これから地上へ向けて降下を開始します。〕
「おう!早くしてくれよ!ドロテアちゃん、次のヤツは回避できる!?」
「同じ言葉を連続発動はできまセン!誰か、次の手を!!」
空たちは全員武器を構えるが、まだ地上からは距離があった。そのまま無抵抗で構えていては再び爆弾が飛んできた際に対処ができない。
「…碧射様。あなたの目で対象を見つけられますか?」
ルナは無線に向けてそう呟く。
『飛んできた方向を今確認しているが…雪で地上がはっきりと見えない!このままでは次が…。』
すると、イプシロンの音声が無線に繋げられた。
〔現在、飛翔物の飛行角度から射出距離と場所を演算し、管理局に待機している魔法使いに情報を共有しました。〕
その言葉を聞き、凛泉は袖をまくって手首をナイフで切り付ける。そこから溢れた血がナイフにまとわりつき、剣となって凝固した。
「予定より早いが…一匹残らず『獣狩り』してやるよ!!」
〔飛翔物、再び接近しています。起動は先ほど同様ヘリの正面へ接近…〕
イプシロンがその言葉を通達したとほぼ同時に、窓から体を乗り出したルナがハンドガンを発砲する。弾丸は本来なら届かないであろう距離まで加速し、飛翔物を貫いて空中で爆破させた。
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