化物のすすめ(好きになるあなたへ)

リュウノスケ

文字の大きさ
6 / 33

第6話 三種の神器

しおりを挟む
それからは、手紙のやり取りが続くにつれて、お互いが惹かれあい、手紙でのぎこちないやり取りも、普通に伝えられるようになって行った。
お互いのしたの名前もそのまま呼び合える関係となっていた。
あらためて、手紙にして良かったと思っている。
ちなみに今では、それなりの便箋と封筒を選べるようには、成長していた。

ああ、そうそうここらで歴史が変わったことについて一つ報告がある。
なぜだかわからないが、特に何かを変えた記憶はないつもりだ。
冬休み明けから、モテキが到来しているようで、まわりの女子たちに、騒がれはじめて、正直困ったことになったことは、手紙には書いていない。
これは、けっして自慢ではなく、ただの報告だ。
誰に報告しているかって?
はい、すみません。言いたくても言えない気持ちを何とかしたくて、いつもの日記に書いた内容を少しだけここに。


それから、無事小学校を卒業し、中学生となっていた。
前と同じように、バスケ部に入部し、30名ほどいた同級生たちも、地獄のような夏休みを終えるころには、9名まで減っていたのは、前回と変わらない状況だった。
辛い記憶は残っているもので、どんなことをどれくらいやらされたかは、けっこう覚えていた。
そのことを事前に分かっているというのは、こんなにも客観的に自分を見れるものかとかなり気持ちに余裕が持てる状況だった。

そんな夏が終わりを告げるころ、本題のかすみの救出方法が、具体的に分かってきた。
年明けの2月29日、うるう年のその日は、4年に1度だけという時間を調整するために設けられた日なのだが、どうやらこの日には特別な意味があるらしい。
うるう年の祭事には、いつもの年より1つだけ数を増やす慣わしが昔から伝えられているところが、何箇所か言い伝えとして残っているらしい。

準備するものは、3つ。
分かつ姿を映す神鏡。
魂を分かつための宝剣。
分けられた魂を封じる勾玉。

これらを準備し、月明かりを浴びた宝剣にて、神鏡に映る姿を切ることで、人ならざる魂を勾玉に封じることが出来るとのことだった。

手紙の情報によるとこんな感じなのだが、道具と場所は、かすみの神社ということで、その時に僕がその場にいれば、良いらしい。

準備らしい準備をしていた実感はなかったのだが、魂を鍛えることが、僕がやらなければならないことらしく、部活に打ち込む事が、鍛錬となっているとのことだった。

ちょっと、部活の話をしよう。
まぁ、部活をはじめた1年生の最初のころは、3年生が引退する(夏)までの間、ボール1個を持たされ体育館の2階のギャラリーにて、ただひたすらドリブルとランニングのメニューを延々と行う毎日だった。
これは、なんの修行かと思わずにはいられない日々だった。
いよいよ夏休みが始まり、新チームとなり1年生も体育館の床の上で練習出来るようになったその日から、地獄のような走り込みの毎日が始まった。
まず、体育館の4隅に椅子が置かれ、その椅子の外側をランニングすること30分、それから、笛が吹かれ3分間のダッシュが始まり、上位3名ずつ休憩できるというインターバル走のメニューが毎日のように続けられた。
全員で一斉に走るため、このメニューを去年こなしている先輩たちに、1年生が
遅れをとることは当たり前で、僕も2回ほど意識が朦朧とし倒れこみ、体育館外に担ぎ出され、濡れタオルにお世話になったことを覚えている。
この夏を越えることで、根性と持久力がついたのは確かだが、魂が鍛えられたかは、正直よく分からなかった。

部活に明け暮れる毎日が過ぎ去り、年も明け、予定の日が刻々と迫ってきていた。
1年ぶりに会える喜びに、少しウキウキしている僕の気持ちを悟られないように
いつもの調子で、手紙にお互いの近況を書いていた。

その日は、くもっていた。向かう先の天候は、昼から良くなるとの予報で、なんとか晴れること祈りながら、着替えを手早くすませた。
まだ薄暗くとても寒い朝方に家を出て、朝一の電車に飛び乗った。

平日のため、アリバイ作りが大変だった。
このころには、かすみの存在はおふくろにばれており、正直に彼女のことや、
彼女への気持ちを伝えたところ、おやじには内緒ということで応援してくれる
ようになっていた。
今回の学校への病欠による連絡等も引き受けてもらっていた。
それまでにおふくろには、度重なる事情聴取が行われたことを書いておきたい。

電車が、目的地に到着するころには、夕日が少し差しはじめていた。
また、この地に来たことを実感しながら改札をくぐり、かすみのところに足早に向かった。

鳥居をくぐり、神社の境内へと続く階段を上って行った。
かすみは、神社の拝殿で待っているとのことだったので、神社の正面から、くつを脱いで、上がって行った。
お賽銭箱の前までしか行ったことがなかったので、初めての上がった拝殿はとても厳かな雰囲気で、背筋がピンと伸びる感じがした。

かすみは、巫女姿で、何かに祈るように、そこに静かに座っていた。

どう声をかけるか少し考えたが、考えても答えは出そうになかった。

「かすみ、ただいま」

「かなた、おかえり」

振り返った彼女は、少しさびしそうに微笑んでいた。

彼女に用意してもらった衣装に着替え、日が暮れるのを待ちながら、これからしなければならないことの説明を受けた。

3つの法具は、祭壇に納められており、祭壇後ろに見える格子戸から入る月の光で、執り行うようだ。
その日の月の入りの時間は、ちょうど日付が変わるころで、残り時間は、あと4時間程度というところだった。

しばらくして、格子の影が薄暗い拝殿を照らし始めた。
かすみは、宝剣を祭壇から取りだし、三方さんぼうに載せ月の光が当たる所に置いた。
しばらくすると、つるぎの周りから淡い光が漏れ出し始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...