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23年制作短編
1、まどろみの小部屋
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ふと目が覚めて、辺りを見回す。見慣れない部屋に、見慣れないたくさんの箱。ここは一体どこだろう。
目をこすりながら身体を起こし、男の子はもう一度周りを見回した。やはりまったく覚えはない。
今日、両親は仕事に出ていて、ランチを食べた後に弟と二人でかくれんぼをしていたはずだ。じゃんけんをして、鬼になった弟から逃れるため、家のクローゼットに身を隠し、ドアを閉めた。そこからはどこにも出ておらず、家から一歩も出ていない。それなのに。
いつの間にか眠っていたらしいことだけはわかる。男の子は記憶をたどるのを諦めて、室内の探索を始めた。
それほど狭くはないけれど、どこか薄暗い、屋根裏のような部屋。けれど窓から差し込む光は明るくて、何故か不気味さを感じない、不思議なところ。
窓から外をのぞくと森が見えた。ここは森の中の小屋らしい。地面の高さを見ると、ここはきっと二階。窓から飛び降りるのは危なそう。
部屋の中には、プレゼントがいっぱいあった。どこを見回してもプレゼントの箱。赤や緑や青や白、いろんな色の包装紙に包まれた箱に、色とりどりのリボンが結んである。箱だけではなく、袋に包まれているものも。
中身は何だろう。好奇心がくすぐられる。けれどこれはきっと、誰かが誰かのために用意したプレゼント。だから勝手に開けるわけにはいかない。
それでもまだ七歳の男の子。開けてみたい衝動に駆られてしまう。ひとつくらい開けてみてもいいかな。
ひとつを手に取ってみる。それは両手で抱えるくらいの大きさだった。少し重くて、中には何かが入っていることがわかる。ふってみると音がする。かさかさ、でもない、カチャカチャ、でもない。ことこと、だろうか。なんだろう。男の子は箱を置いた。やっぱり開けてはいけない。
もうひとつ、手に取ってみる。今度は袋だ。深い紺色の袋に明るい緑のテープ。こちらは軽い。お菓子だろうか。それともペン? 以前ペンをもらった大学生の親戚を見たことがある。ペンの何が嬉しいんだと思ったけれど、彼はとても喜んでいた。ブランドがどうとか言っていた。男の子にはなじみのない言葉だったので、あまりよく覚えていない。
あ、あのプレゼント。あれにはママが欲しがっていたお財布が入っているんじゃないのかな。
見つめる先には、赤の包装紙に淡い黄色のリボン。突然よぎった思いに、何故そう思ったのかと疑問が湧いた。
あれ? あの箱には弟が欲しがっていたおもちゃが入っている気がする。何故かそう思って駆け寄った。青地にトナカイやツリーの模様が入った包装紙に、シルバーで縁取られたゴールドのリボンがついている。中が見えるわけではないけれど、とりあえず手に持ってみる。きっとそうだ。でもなんでそう思うんだろう。
プレゼントを置いて、少し歩いてみるとドアが見えた。開けてみると階段がある。ゆっくりと降りていく。
辿り着いた部屋にもプレゼントがあった。たくさんのオーナメントが飾り付けられたクリスマスツリーも。どうやらリビングルームらしい。
男の子は近づいて、きらきらと眩しいツリーを見上げた。楽器を持った天使や笑顔のサンタ、羽を広げたハトやカラフルなボール、いろんな色のまるい玉やソリにのったお人形など、いろんな飾りがついている。
近くにはテーブルと椅子があった。男の子には少し高い。けれどテーブルの上にはクッキーとココアの入ったマグカップ。男の子は背伸びして椅子によじ登り、テーブルの上に手を伸ばす。
クッキーは焼きたてで温かかった。丸いそれを口に入れると、ほのかな甘みが広がって、サクサクと香ばしい。チョコチップの入ったものをもうひとつ。こちらも味わい深い甘さで頬が緩んだ。
ぱちぱちと音がした。振り返ってみると、背後の暖炉に火がついていた。薪がぱちぱちと爆ぜる音。椅子から降りて、そちらへ向かう。ゆらゆら揺れる炎を眺めていると、なんだか眠くなってくる。すぐ側にはソファもあるのに、椅子に座る方を優先した。
来た道を戻って、さっきはよじのぼった椅子の前に来ると、視界が高くなっている。脚は黒いブーツを履いていて、お腹が大きく出ていた。背もずいぶんと急に高くなったのか、今度はすんなり椅子に座れる。
ゆったりと背もたれに身体を預け、ひじ掛けに手を置いた。まるでいつもそうしているかのように、自然とそう行動した。
椅子は揺れた。ゆらゆらと。それがとても心地良い。まどろみの中、ゆるりとやってきた睡魔に襲われる。ゆっくりと目をつぶる。そのまま深い眠りへと落ちていく。
『メリークリスマス』
遠くの方から声が聞こえた。
「あら、おはよう。うたたねしていたわ」
彼女の声に、目を開けた彼はゆっくりと身体を起こす。
「ああ、また子供がこちらに入り込んでしまったようでね」
「また? あなたったらもう。また休憩所のドアを開けたまま眠ってしまったのね。気を付けてっていつも言っているじゃない」
「いやあ、うっかりしていてな。だが途中で気づいてちゃんと元の世界に戻しておいたよ」
彼はココアの入ったマグカップを口に持っていく。
「やっぱり君の入れてくれたココアは最高だな」
「ありがとう。でも戸締りはしっかりね。それでプレゼントは開けられちゃった?」
「いや、今回の子は我慢してくれたよ。でもいくつか中身を気づかれちゃったかもしれない」
赤と白の仕事着に身を包んでいる彼は、椅子から立ち上がって大きなお腹をぽん、と叩いた。
「子供は眠ったら、あっという間にこちらの世界と繋がってしまうのだから、ドアはちゃんと閉めてくださいね。じゃないと子供もびっくりしちゃうわ」
「ああ、そうだな、すまんすまん。気を付けるよ」
そうして彼は帽子をかぶり、大きな白い袋を肩から背負った。
「それじゃあ仕事に行ってくるよ」
「ええ、いってらっしゃい。ドアはちゃんと閉めて行ってね」
「ああ、そうするよ」
「おにいちゃん、おにいちゃん」
目が覚めると、母親と弟の姿があった。
「おはよう。クローゼットに隠れてそのまま眠っちゃったのね」
なんだか不思議な夢を見た気がする。けれどあまり覚えていない。
「さあ、食べましょう。夕飯の用意が出来ているわ」
男の子は目をこすりながら家族の後をついて行った。それはイブの日のこと。明日はクリスマス当日だ。
「やったあ! これぼくがほしかったやつだ!」
翌朝、弟がクリスマスツリーの下にあった、自分宛てのプレゼントを開けて叫んだ。弟のプレゼントは車のおもちゃだ。弟はさっそくその車を走らせて遊んでいる。
男の子も自分の分を開けてみる。プレゼントは飛行機だった。見た瞬間、こちらも喜びの叫び声をあげた。以前壊れてしまってとても悲しんだのだ。これでまた遊べるし、お部屋に飾ることもできる。
「みて、ぼく、くるまもらったよ」
「僕は飛行機だ」
「良かったわね」
両親の笑顔に見守られ、男の子たちは遊んでいた。その時ふと、両親が持っているものに興味を引かれた。
「それ、なあに?」
駆け寄って聞いてみる。それは父親から母親に贈られたものだった。
「これはパパからのクリスマスプレゼントよ。ママが欲しがっていたお財布なの」
見覚えがあった。ママが欲しがっていたのは知っている。けれど見覚えがあるのは財布だけではない。
「ママ、箱見せて」
「あら、箱が気になるの?」
「うん」
それは白い箱だった。それはよくある箱だったけれど、包まれていたのは赤い包装紙。そして淡い黄色のリボン。やはり見覚えがある気がする。
背後でお礼を言う声がして振り返る。父親がペンを持っていた。喜んでいるようだが、男の子には、正直何がいいのかわからない。そしてその手には深い紺色の袋もあった。そして明るい緑のテープ。
「それも見たことある」
「この万年筆かい?」
「ちがう、こっち」
袋を指さす子供に、両親はどう反応していいかわからない様子だ。
「袋? まあ、そうね。どこかで見たのかも」
「そうだね」
「でもどこで見たんだろう」
悩ましげに頭を傾ける男の子に、両親も不思議そうにしている。ふと、ひとりで遊んでいる弟の姿が目に入る。その傍らには、破かれた包装紙。青地にトナカイやツリーの模様が入った柄で、リボンはシルバーで縁取られたゴールドのテープ。
「やっぱり見たことある」
なのにどうしても思い出せない。考えているとき、ひとつ疑問がわいた。
「ママとパパとプレゼントって、サンタさんからのじゃないの?」
急によぎった違和感に、両親に聞いてみる。
「私たちはサンタさんからはもらわないの。だって子供たちのプレゼントで忙しいでしょう?」
「そうだよ。大人の分までやっていたら、サンタさんが大変だ。それにママもパパも子供の頃にたくさんもらってるからいいんだよ」
両親の幸せそうな雰囲気からは、確かに十分な気がした。でもなんだか納得いかない。
「でも、でも、サンタさんがプレゼント用意してくれてるかもしれないよ」
「ママにとってのサンタさんは、パパだからいいのよ」
「ああ。パパにとってのサンタさんはママだからいいんだよ」
それで男の子は合点がいった。同時に思い出した。
クローゼットでみた夢を。あのとき自分はサンタだった。サンタの部屋を見ていたのだ。そしてあのプレゼントの山は、誰かから誰かへのプレゼント。サンタひとりが用意したものではなく、誰かが誰かのサンタとして送るプレゼントも、きっとあそこに現れる。
「そうだ。僕サンタの部屋に行ったんだよ。そこでママとパパのプレゼントも見えたんだよ」
「まあ、すごい」
「そんな体験をしてたのか」
「弟のも見えたんだ。なのにどうして僕自身のは見えなかったんだろう」
「まだ用意してなかったんじゃない?」
すぐ後ろに来ていた弟が言った。
「ぼくがサンタのへやに行ったときは見えたよ。ひこうきだった」
「え、お前も行ってたの?」
「うん。きのうのよるに。クッキーたべて、ココアのんだ」
「あ、僕ココア飲まなかった! 飲んでおけばよかったなあ」
「あら、ココア飲みたかったの? じゃあ入れてあげるわ」
その日は家族みんなでココアをのんだ。
目をこすりながら身体を起こし、男の子はもう一度周りを見回した。やはりまったく覚えはない。
今日、両親は仕事に出ていて、ランチを食べた後に弟と二人でかくれんぼをしていたはずだ。じゃんけんをして、鬼になった弟から逃れるため、家のクローゼットに身を隠し、ドアを閉めた。そこからはどこにも出ておらず、家から一歩も出ていない。それなのに。
いつの間にか眠っていたらしいことだけはわかる。男の子は記憶をたどるのを諦めて、室内の探索を始めた。
それほど狭くはないけれど、どこか薄暗い、屋根裏のような部屋。けれど窓から差し込む光は明るくて、何故か不気味さを感じない、不思議なところ。
窓から外をのぞくと森が見えた。ここは森の中の小屋らしい。地面の高さを見ると、ここはきっと二階。窓から飛び降りるのは危なそう。
部屋の中には、プレゼントがいっぱいあった。どこを見回してもプレゼントの箱。赤や緑や青や白、いろんな色の包装紙に包まれた箱に、色とりどりのリボンが結んである。箱だけではなく、袋に包まれているものも。
中身は何だろう。好奇心がくすぐられる。けれどこれはきっと、誰かが誰かのために用意したプレゼント。だから勝手に開けるわけにはいかない。
それでもまだ七歳の男の子。開けてみたい衝動に駆られてしまう。ひとつくらい開けてみてもいいかな。
ひとつを手に取ってみる。それは両手で抱えるくらいの大きさだった。少し重くて、中には何かが入っていることがわかる。ふってみると音がする。かさかさ、でもない、カチャカチャ、でもない。ことこと、だろうか。なんだろう。男の子は箱を置いた。やっぱり開けてはいけない。
もうひとつ、手に取ってみる。今度は袋だ。深い紺色の袋に明るい緑のテープ。こちらは軽い。お菓子だろうか。それともペン? 以前ペンをもらった大学生の親戚を見たことがある。ペンの何が嬉しいんだと思ったけれど、彼はとても喜んでいた。ブランドがどうとか言っていた。男の子にはなじみのない言葉だったので、あまりよく覚えていない。
あ、あのプレゼント。あれにはママが欲しがっていたお財布が入っているんじゃないのかな。
見つめる先には、赤の包装紙に淡い黄色のリボン。突然よぎった思いに、何故そう思ったのかと疑問が湧いた。
あれ? あの箱には弟が欲しがっていたおもちゃが入っている気がする。何故かそう思って駆け寄った。青地にトナカイやツリーの模様が入った包装紙に、シルバーで縁取られたゴールドのリボンがついている。中が見えるわけではないけれど、とりあえず手に持ってみる。きっとそうだ。でもなんでそう思うんだろう。
プレゼントを置いて、少し歩いてみるとドアが見えた。開けてみると階段がある。ゆっくりと降りていく。
辿り着いた部屋にもプレゼントがあった。たくさんのオーナメントが飾り付けられたクリスマスツリーも。どうやらリビングルームらしい。
男の子は近づいて、きらきらと眩しいツリーを見上げた。楽器を持った天使や笑顔のサンタ、羽を広げたハトやカラフルなボール、いろんな色のまるい玉やソリにのったお人形など、いろんな飾りがついている。
近くにはテーブルと椅子があった。男の子には少し高い。けれどテーブルの上にはクッキーとココアの入ったマグカップ。男の子は背伸びして椅子によじ登り、テーブルの上に手を伸ばす。
クッキーは焼きたてで温かかった。丸いそれを口に入れると、ほのかな甘みが広がって、サクサクと香ばしい。チョコチップの入ったものをもうひとつ。こちらも味わい深い甘さで頬が緩んだ。
ぱちぱちと音がした。振り返ってみると、背後の暖炉に火がついていた。薪がぱちぱちと爆ぜる音。椅子から降りて、そちらへ向かう。ゆらゆら揺れる炎を眺めていると、なんだか眠くなってくる。すぐ側にはソファもあるのに、椅子に座る方を優先した。
来た道を戻って、さっきはよじのぼった椅子の前に来ると、視界が高くなっている。脚は黒いブーツを履いていて、お腹が大きく出ていた。背もずいぶんと急に高くなったのか、今度はすんなり椅子に座れる。
ゆったりと背もたれに身体を預け、ひじ掛けに手を置いた。まるでいつもそうしているかのように、自然とそう行動した。
椅子は揺れた。ゆらゆらと。それがとても心地良い。まどろみの中、ゆるりとやってきた睡魔に襲われる。ゆっくりと目をつぶる。そのまま深い眠りへと落ちていく。
『メリークリスマス』
遠くの方から声が聞こえた。
「あら、おはよう。うたたねしていたわ」
彼女の声に、目を開けた彼はゆっくりと身体を起こす。
「ああ、また子供がこちらに入り込んでしまったようでね」
「また? あなたったらもう。また休憩所のドアを開けたまま眠ってしまったのね。気を付けてっていつも言っているじゃない」
「いやあ、うっかりしていてな。だが途中で気づいてちゃんと元の世界に戻しておいたよ」
彼はココアの入ったマグカップを口に持っていく。
「やっぱり君の入れてくれたココアは最高だな」
「ありがとう。でも戸締りはしっかりね。それでプレゼントは開けられちゃった?」
「いや、今回の子は我慢してくれたよ。でもいくつか中身を気づかれちゃったかもしれない」
赤と白の仕事着に身を包んでいる彼は、椅子から立ち上がって大きなお腹をぽん、と叩いた。
「子供は眠ったら、あっという間にこちらの世界と繋がってしまうのだから、ドアはちゃんと閉めてくださいね。じゃないと子供もびっくりしちゃうわ」
「ああ、そうだな、すまんすまん。気を付けるよ」
そうして彼は帽子をかぶり、大きな白い袋を肩から背負った。
「それじゃあ仕事に行ってくるよ」
「ええ、いってらっしゃい。ドアはちゃんと閉めて行ってね」
「ああ、そうするよ」
「おにいちゃん、おにいちゃん」
目が覚めると、母親と弟の姿があった。
「おはよう。クローゼットに隠れてそのまま眠っちゃったのね」
なんだか不思議な夢を見た気がする。けれどあまり覚えていない。
「さあ、食べましょう。夕飯の用意が出来ているわ」
男の子は目をこすりながら家族の後をついて行った。それはイブの日のこと。明日はクリスマス当日だ。
「やったあ! これぼくがほしかったやつだ!」
翌朝、弟がクリスマスツリーの下にあった、自分宛てのプレゼントを開けて叫んだ。弟のプレゼントは車のおもちゃだ。弟はさっそくその車を走らせて遊んでいる。
男の子も自分の分を開けてみる。プレゼントは飛行機だった。見た瞬間、こちらも喜びの叫び声をあげた。以前壊れてしまってとても悲しんだのだ。これでまた遊べるし、お部屋に飾ることもできる。
「みて、ぼく、くるまもらったよ」
「僕は飛行機だ」
「良かったわね」
両親の笑顔に見守られ、男の子たちは遊んでいた。その時ふと、両親が持っているものに興味を引かれた。
「それ、なあに?」
駆け寄って聞いてみる。それは父親から母親に贈られたものだった。
「これはパパからのクリスマスプレゼントよ。ママが欲しがっていたお財布なの」
見覚えがあった。ママが欲しがっていたのは知っている。けれど見覚えがあるのは財布だけではない。
「ママ、箱見せて」
「あら、箱が気になるの?」
「うん」
それは白い箱だった。それはよくある箱だったけれど、包まれていたのは赤い包装紙。そして淡い黄色のリボン。やはり見覚えがある気がする。
背後でお礼を言う声がして振り返る。父親がペンを持っていた。喜んでいるようだが、男の子には、正直何がいいのかわからない。そしてその手には深い紺色の袋もあった。そして明るい緑のテープ。
「それも見たことある」
「この万年筆かい?」
「ちがう、こっち」
袋を指さす子供に、両親はどう反応していいかわからない様子だ。
「袋? まあ、そうね。どこかで見たのかも」
「そうだね」
「でもどこで見たんだろう」
悩ましげに頭を傾ける男の子に、両親も不思議そうにしている。ふと、ひとりで遊んでいる弟の姿が目に入る。その傍らには、破かれた包装紙。青地にトナカイやツリーの模様が入った柄で、リボンはシルバーで縁取られたゴールドのテープ。
「やっぱり見たことある」
なのにどうしても思い出せない。考えているとき、ひとつ疑問がわいた。
「ママとパパとプレゼントって、サンタさんからのじゃないの?」
急によぎった違和感に、両親に聞いてみる。
「私たちはサンタさんからはもらわないの。だって子供たちのプレゼントで忙しいでしょう?」
「そうだよ。大人の分までやっていたら、サンタさんが大変だ。それにママもパパも子供の頃にたくさんもらってるからいいんだよ」
両親の幸せそうな雰囲気からは、確かに十分な気がした。でもなんだか納得いかない。
「でも、でも、サンタさんがプレゼント用意してくれてるかもしれないよ」
「ママにとってのサンタさんは、パパだからいいのよ」
「ああ。パパにとってのサンタさんはママだからいいんだよ」
それで男の子は合点がいった。同時に思い出した。
クローゼットでみた夢を。あのとき自分はサンタだった。サンタの部屋を見ていたのだ。そしてあのプレゼントの山は、誰かから誰かへのプレゼント。サンタひとりが用意したものではなく、誰かが誰かのサンタとして送るプレゼントも、きっとあそこに現れる。
「そうだ。僕サンタの部屋に行ったんだよ。そこでママとパパのプレゼントも見えたんだよ」
「まあ、すごい」
「そんな体験をしてたのか」
「弟のも見えたんだ。なのにどうして僕自身のは見えなかったんだろう」
「まだ用意してなかったんじゃない?」
すぐ後ろに来ていた弟が言った。
「ぼくがサンタのへやに行ったときは見えたよ。ひこうきだった」
「え、お前も行ってたの?」
「うん。きのうのよるに。クッキーたべて、ココアのんだ」
「あ、僕ココア飲まなかった! 飲んでおけばよかったなあ」
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