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5、おしゃべり本屋の噂の実態
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「ティーン向け恋愛小説探してるんだけど」
リュックを背負って髪を左右で結んでいる少女は、入ってくるなり店主に話しかけてきた。
「ならこちらの棚ですよ」
「どーもー。お勧めはどれですか」
初めての客だが、随分と人懐っこい子だ。
「お勧めというと、最近売れているのはアクションメインの王道系かな。西洋系で王子様や騎士が出てくるような話だね。現代設定の恋愛ものだとこちらの棚だ。このジャンルも定番で長く売れている。リッチなお嬢様が主人公のものとか、平凡な少女が学園の王子的存在に気に入られたりとか、ヤンキーものもあるよ」
「ありがとう」
「ごゆっくり」
初来店の客に探し物を問われることはあるけれど、こういったお勧めを聞かれることはあまりない。本についてだったのと、おしゃべり好きな性格ゆえに困ることはなかったが、少なからず驚いた。そのまま話し続けることも出来たが、店主は遠慮してレジ横の椅子に引っ込んだ。
やがて少女が、現代設定のティーン向け恋愛小説をレジに持って来た。
「このストーリーは優しくていいね。私も好きだ」
「私最近読み始めたばっかりだから、まだよく知らないの。とりあえず定番っぽいものを読んでみようと思って」
「そうか。じゃあこれから楽しみだね」
「友達に勧められたんだけど、正直王道ものってあんまり好きじゃないんだよね。あんまり読んだこともないんだけど、つまんないかなって。でも読んでみないことにはね」
「そうだね。ならもう一冊ちょっと雰囲気の違うものを読んでみてはどうかな」
「例えば?」
「これが現代設定だから、西洋ものの方はどうだい。序盤は王道だけど、後半は闘いが多かったり、謎解き要素が多いものもあるからね。女スパイが紛れ込んでいたり、ヒロインと王子が戦うものもあったりするし」
「へえ、面白そう。そっちの方が良さそうだからそっちを読んでみるわ」
少女は紹介した西洋ものの方を買っていった。
「こんにちは、おじさん。この前の面白かったよ」
「それはよかった」
二週間ほどして再び現れた少女は、親しげに声をかけてくる。
「今回はね、恋愛小説でヤンデレが出てくるの読みたいんだけど、そういうのある?」
「ヤンデレ系ね。最近はそういう漫画も多いよね。ティーン向け小説だよね?」
「そうそう」
店主はティーン向け恋愛小説コーナーに向かい、棚の中から数冊選んだ。
「この辺りかな。正直ヤンデレの定義については詳しくないんだが、これはヒロインを好き好きすぎるあまり監禁しようとする話で、こっちは愛が重すぎて声をかけられずに好きな人を陰から見守ろうとする男の話で、こっちは好きだからと毒を盛ろうとする男が出てきて」
「すごい、おじさんホントに全部の本を読んでるんだね」
「本屋はみんなそうじゃないかな」
「そうなの?」
「わからないけどね。私はそうしてる」
「どんなの読むか迷ってるなら、ここに来ればいろいろ答えてくれるって聞いたけど、ホントだね」
「うん? 誰かがそう言ってたのかい?」
「誰かっていうか、みんな言ってるよ。大きな本屋は量はあるけど多すぎて、ジャンルも分かれてたりすると店員さんも把握しきれてなかったりするでしょ。でもおじさんは同じ系統のものを内容でまとめて覚えてるから、例えば恋愛ものなら漫画と大人向けとティーン小説全部の中から選んでくれるから、探し物あるときはこっちの方が見つけやすいんだって」
初めて聞く話に、店主は目を丸くした。おしゃべり本屋と言われていたのは知っていたが、そんなふうに言われていたのは知らなかった。
「私も普段は大きい本屋に行ってるから、今回も最初はそっちで買おうと思ってたんだけどね。小説コーナー行ったらすごくいっぱいあって、あらすじ読んでるだけで疲れちゃってさ。だってすごい量あるんだもん。それで店員さんに聞いてみたら人気の本は教えてくれるけど、内容は知らなかったりで反応がいまいちなんだよね。それでこっちに来てみたんだけど、正解だった」
「そうか。大きな本屋と比べればどうしたって量は敵わないからね。そんなふうに役に立っているなら嬉しいよ」
「そうそう、あと話し好きだから話かけやすいんだって。それが嫌な人はここは出入り禁止になってるとか」
「そんな。出入り禁止なんてそんなことはないよ。私だってそんなにいつも話してるわけじゃないし、話さないお客さんだってたくさんいる」
更なる情報に慌てて反論すると、少女は「まあ噂だから」と慰めるように言った。
この日少女が買っていったのは、「愛が重すぎて声をかけられずに好きな人を陰から見守ろうとする男の話」だった。
「こんにちは、おじさん」
「やあ、いらっしゃい」
「序盤は王道だけど後半はサスペンスでシリアス風味、でもコメディタッチなストーリーのものってある?」
「盛りだくさんだな」
少女は定期的にやってきて、訪れるたびに要望が増えていく。店主は棚に向かい、脳内検索し、合致するものを選び出す。
「それだと、この辺りかな」
取り出したのは少し厚めの本と、ティーン向け小説二冊。
「こっちはちょっと大人向けかもしれないが、内容としては楽しめるんじゃないかな。サスペンスでシリアス風味、コメディ要素もあるし、ちょっと王道な話だからね」
少女は声を上げて笑った。
「おじさんホントに私が言ったこと一発で覚えてるんだね」
「さっき聞いたばかりだからね」
「でもすごいよ。あとこれ、ちょっと読むの大変そう」
ティーン向け小説と比べれば二倍はありそうな厚さの本に、少女は顔を渋くした。
「そうだな。さすがにそれだけの注文があるとね。まあこっちのティーン向けの方は、要望のいくつかが抜けてるけど、近いかな」
「じゃあそっちにする。あんまり長いと読むの疲れるから」
「そうか」
「このお話はどんなの?」
「ああ、これはね」
すっかり声をかけるのがお馴染みになった少女は、この日も来店してティーン向け小説コーナーに行き、気になる本があると店主を呼んだ。店主は辺りを見回し、人が近くにいないのを確認してから小声で内容を話した。
「君の好みとはちょっと違うかな。あらすじにはヤンデレと書いてあるけど、内容が少し残酷だ。過去のトラウマと向き合う場面があって、君はそれが苦手かもしれない」
「ああ、姉弟の虐待話があるってこと?」
「まあ、そうだね」
「わたしがそういうの嫌いって言ったの覚えてくれてるんだね」
「ああ」
「どうしてそんな小声でしゃべるの」
「ネタバレを嫌うお客さんもいるからね。ちゃんと確認しないと」
「そっか。じゃあこれは?」
「こっちは……うん、うーん、いいんじゃないかな」
「私が嫌いな要素はない感じ?」
「ないこともないけど」
「えーなんで。どんなこと?」
「虫の描写が出てくるんだ。絵は出てこないけど」
「あーうーん、ストーリーには直接関係ない感じ?」
「そうだね。後半にちらっと出てくるだけだから」
「そっか。でもどうしようかな。他に私が好きそうなのない?」
「読む経験を積まないことには正しく検索することは出来ないよ。君自身もまだ気づいてない好みもあるだろうからね」
少女は読み始めたばかりで、本の楽しさをまだ理解できていない。食わず嫌いの本を読んでみた時の醍醐味を。その中の僅かな波間に探していた答えを見出す時の醍醐味を。
本のジャンル分けが難しいのと同じで、好き嫌いは明確に分けられるとは限らない。
「これも虫の描写以外は君の好きそうなストーリーだし、読んでみてはどうだい? いろいろ試してみると慣れてきたり、より細かな自分の好みを知ることができる。そうしたら、もっと詳しい条件で探すことが出来るからね。この本の登場人物に好きな性格やセリフが出てくるかもしれないし、それを見つけたらまた探しやすいだろう? こういうキャラクターの出てくる話を読みたい、とかね」
少女はその本を受け取った。まじまじと見つめて考える。
「うーん。でもやっぱり虫が出てくるのは嫌かな」
「そうか。なら無理にとは言わないよ」
まだこの子には早かったかもしれない。店主は微笑んだ。
「っていうか、今日は漫画の新刊を買いに来たんだよホントは。ついでに何かあるかなって思っただけ。小説はまた今度にする」
そう言って少女は目当ての漫画を買っていった。やれやれと、店主はレジ横の椅子に腰かけた。
リュックを背負って髪を左右で結んでいる少女は、入ってくるなり店主に話しかけてきた。
「ならこちらの棚ですよ」
「どーもー。お勧めはどれですか」
初めての客だが、随分と人懐っこい子だ。
「お勧めというと、最近売れているのはアクションメインの王道系かな。西洋系で王子様や騎士が出てくるような話だね。現代設定の恋愛ものだとこちらの棚だ。このジャンルも定番で長く売れている。リッチなお嬢様が主人公のものとか、平凡な少女が学園の王子的存在に気に入られたりとか、ヤンキーものもあるよ」
「ありがとう」
「ごゆっくり」
初来店の客に探し物を問われることはあるけれど、こういったお勧めを聞かれることはあまりない。本についてだったのと、おしゃべり好きな性格ゆえに困ることはなかったが、少なからず驚いた。そのまま話し続けることも出来たが、店主は遠慮してレジ横の椅子に引っ込んだ。
やがて少女が、現代設定のティーン向け恋愛小説をレジに持って来た。
「このストーリーは優しくていいね。私も好きだ」
「私最近読み始めたばっかりだから、まだよく知らないの。とりあえず定番っぽいものを読んでみようと思って」
「そうか。じゃあこれから楽しみだね」
「友達に勧められたんだけど、正直王道ものってあんまり好きじゃないんだよね。あんまり読んだこともないんだけど、つまんないかなって。でも読んでみないことにはね」
「そうだね。ならもう一冊ちょっと雰囲気の違うものを読んでみてはどうかな」
「例えば?」
「これが現代設定だから、西洋ものの方はどうだい。序盤は王道だけど、後半は闘いが多かったり、謎解き要素が多いものもあるからね。女スパイが紛れ込んでいたり、ヒロインと王子が戦うものもあったりするし」
「へえ、面白そう。そっちの方が良さそうだからそっちを読んでみるわ」
少女は紹介した西洋ものの方を買っていった。
「こんにちは、おじさん。この前の面白かったよ」
「それはよかった」
二週間ほどして再び現れた少女は、親しげに声をかけてくる。
「今回はね、恋愛小説でヤンデレが出てくるの読みたいんだけど、そういうのある?」
「ヤンデレ系ね。最近はそういう漫画も多いよね。ティーン向け小説だよね?」
「そうそう」
店主はティーン向け恋愛小説コーナーに向かい、棚の中から数冊選んだ。
「この辺りかな。正直ヤンデレの定義については詳しくないんだが、これはヒロインを好き好きすぎるあまり監禁しようとする話で、こっちは愛が重すぎて声をかけられずに好きな人を陰から見守ろうとする男の話で、こっちは好きだからと毒を盛ろうとする男が出てきて」
「すごい、おじさんホントに全部の本を読んでるんだね」
「本屋はみんなそうじゃないかな」
「そうなの?」
「わからないけどね。私はそうしてる」
「どんなの読むか迷ってるなら、ここに来ればいろいろ答えてくれるって聞いたけど、ホントだね」
「うん? 誰かがそう言ってたのかい?」
「誰かっていうか、みんな言ってるよ。大きな本屋は量はあるけど多すぎて、ジャンルも分かれてたりすると店員さんも把握しきれてなかったりするでしょ。でもおじさんは同じ系統のものを内容でまとめて覚えてるから、例えば恋愛ものなら漫画と大人向けとティーン小説全部の中から選んでくれるから、探し物あるときはこっちの方が見つけやすいんだって」
初めて聞く話に、店主は目を丸くした。おしゃべり本屋と言われていたのは知っていたが、そんなふうに言われていたのは知らなかった。
「私も普段は大きい本屋に行ってるから、今回も最初はそっちで買おうと思ってたんだけどね。小説コーナー行ったらすごくいっぱいあって、あらすじ読んでるだけで疲れちゃってさ。だってすごい量あるんだもん。それで店員さんに聞いてみたら人気の本は教えてくれるけど、内容は知らなかったりで反応がいまいちなんだよね。それでこっちに来てみたんだけど、正解だった」
「そうか。大きな本屋と比べればどうしたって量は敵わないからね。そんなふうに役に立っているなら嬉しいよ」
「そうそう、あと話し好きだから話かけやすいんだって。それが嫌な人はここは出入り禁止になってるとか」
「そんな。出入り禁止なんてそんなことはないよ。私だってそんなにいつも話してるわけじゃないし、話さないお客さんだってたくさんいる」
更なる情報に慌てて反論すると、少女は「まあ噂だから」と慰めるように言った。
この日少女が買っていったのは、「愛が重すぎて声をかけられずに好きな人を陰から見守ろうとする男の話」だった。
「こんにちは、おじさん」
「やあ、いらっしゃい」
「序盤は王道だけど後半はサスペンスでシリアス風味、でもコメディタッチなストーリーのものってある?」
「盛りだくさんだな」
少女は定期的にやってきて、訪れるたびに要望が増えていく。店主は棚に向かい、脳内検索し、合致するものを選び出す。
「それだと、この辺りかな」
取り出したのは少し厚めの本と、ティーン向け小説二冊。
「こっちはちょっと大人向けかもしれないが、内容としては楽しめるんじゃないかな。サスペンスでシリアス風味、コメディ要素もあるし、ちょっと王道な話だからね」
少女は声を上げて笑った。
「おじさんホントに私が言ったこと一発で覚えてるんだね」
「さっき聞いたばかりだからね」
「でもすごいよ。あとこれ、ちょっと読むの大変そう」
ティーン向け小説と比べれば二倍はありそうな厚さの本に、少女は顔を渋くした。
「そうだな。さすがにそれだけの注文があるとね。まあこっちのティーン向けの方は、要望のいくつかが抜けてるけど、近いかな」
「じゃあそっちにする。あんまり長いと読むの疲れるから」
「そうか」
「このお話はどんなの?」
「ああ、これはね」
すっかり声をかけるのがお馴染みになった少女は、この日も来店してティーン向け小説コーナーに行き、気になる本があると店主を呼んだ。店主は辺りを見回し、人が近くにいないのを確認してから小声で内容を話した。
「君の好みとはちょっと違うかな。あらすじにはヤンデレと書いてあるけど、内容が少し残酷だ。過去のトラウマと向き合う場面があって、君はそれが苦手かもしれない」
「ああ、姉弟の虐待話があるってこと?」
「まあ、そうだね」
「わたしがそういうの嫌いって言ったの覚えてくれてるんだね」
「ああ」
「どうしてそんな小声でしゃべるの」
「ネタバレを嫌うお客さんもいるからね。ちゃんと確認しないと」
「そっか。じゃあこれは?」
「こっちは……うん、うーん、いいんじゃないかな」
「私が嫌いな要素はない感じ?」
「ないこともないけど」
「えーなんで。どんなこと?」
「虫の描写が出てくるんだ。絵は出てこないけど」
「あーうーん、ストーリーには直接関係ない感じ?」
「そうだね。後半にちらっと出てくるだけだから」
「そっか。でもどうしようかな。他に私が好きそうなのない?」
「読む経験を積まないことには正しく検索することは出来ないよ。君自身もまだ気づいてない好みもあるだろうからね」
少女は読み始めたばかりで、本の楽しさをまだ理解できていない。食わず嫌いの本を読んでみた時の醍醐味を。その中の僅かな波間に探していた答えを見出す時の醍醐味を。
本のジャンル分けが難しいのと同じで、好き嫌いは明確に分けられるとは限らない。
「これも虫の描写以外は君の好きそうなストーリーだし、読んでみてはどうだい? いろいろ試してみると慣れてきたり、より細かな自分の好みを知ることができる。そうしたら、もっと詳しい条件で探すことが出来るからね。この本の登場人物に好きな性格やセリフが出てくるかもしれないし、それを見つけたらまた探しやすいだろう? こういうキャラクターの出てくる話を読みたい、とかね」
少女はその本を受け取った。まじまじと見つめて考える。
「うーん。でもやっぱり虫が出てくるのは嫌かな」
「そうか。なら無理にとは言わないよ」
まだこの子には早かったかもしれない。店主は微笑んだ。
「っていうか、今日は漫画の新刊を買いに来たんだよホントは。ついでに何かあるかなって思っただけ。小説はまた今度にする」
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