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コメディー(軽いもの)
おっさんの美味しい料理店
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僕は『美味しい』と評判の店に行く途中だ。
すごい山奥にある。
しかも交通手段がない。
徒歩。
朝7時にその店がある山の麓に来て、店に着いたのは夕方5時。
なかなか厳しい登山と聞いていたので荷物も軽め。
だから昼食はおむすび1個だけだった。
お腹がペコペコだ。
店に入ると、
「いらっしゃい」
おっさんが出てきた。
「ご注文は?」
「おすすめは?」
「ここは山奥なんでな。
肉料理は、鶏か、あとはイノシシ、クマ。
魚料理は川魚のみだ」
「じゃあ。鶏肉……」
「おう」
ずいぶん砕けた口調のおっさんだと思った。
料理もこのおっさんが作るようだ。
しばらく後、料理が運ばれてきた。
見た目は普通であったが……
「いただきます」と一口食べた瞬間、
「おいしい!」僕は目を瞠った。
おっさんは笑った。
「くそうめェだろ」
「……」
(こんなにうめェメシ食ったのは…おれははじめてだ…!!!)
僕はカケラも残さずたいらげた。
食後、おっさんに聞いてみた。
「何でこんなに美味しいんですか?」
おっさんはフッと笑うと、
「まず水な。
この山の水はとても綺麗で美味しい」
「そして、肉と魚。
鶏は放し飼い――もちろん卵もうめェ。
イノシシ、クマもいい食べ物食っている野生――うめェ。
魚も綺麗な川の魚だ――うめェ」
「野菜も、俺がこの山で作った。
美味い水と大自然で作った野菜だ。
当然うめェ」
「そして」
おっさんは僕を見た。
「おまえ――客」
「えっ?」
「こんな山奥まで食べに来てくれた客。
ここに来るまでに腹ペコになったろ?
『空腹は最大のスパイス』ってやつだ」
僕は感動して、おっさんを見つめた。
そうか、おっさんは一番大事なことを――『一生懸命頑張った後に食べる食べ物の美味しさ』を――僕たち客に教えようと、こんな山奥で店を……。
「あとは俺の腕だ!」
と言うおっさんに僕は暖かく微笑んだ。
「そうですね!」
「三つ星シェフだから」
「……」
しばらくフリーズした後、
「……えっ?」
「俺、三つ星レストランで15年料理長を務めたシェフ」
「……」
それがいちばんの『美味しさ』の理由じゃないか……?(結局)
おっさん、下界で働いてくれ。
と思った。
〈終〉
すごい山奥にある。
しかも交通手段がない。
徒歩。
朝7時にその店がある山の麓に来て、店に着いたのは夕方5時。
なかなか厳しい登山と聞いていたので荷物も軽め。
だから昼食はおむすび1個だけだった。
お腹がペコペコだ。
店に入ると、
「いらっしゃい」
おっさんが出てきた。
「ご注文は?」
「おすすめは?」
「ここは山奥なんでな。
肉料理は、鶏か、あとはイノシシ、クマ。
魚料理は川魚のみだ」
「じゃあ。鶏肉……」
「おう」
ずいぶん砕けた口調のおっさんだと思った。
料理もこのおっさんが作るようだ。
しばらく後、料理が運ばれてきた。
見た目は普通であったが……
「いただきます」と一口食べた瞬間、
「おいしい!」僕は目を瞠った。
おっさんは笑った。
「くそうめェだろ」
「……」
(こんなにうめェメシ食ったのは…おれははじめてだ…!!!)
僕はカケラも残さずたいらげた。
食後、おっさんに聞いてみた。
「何でこんなに美味しいんですか?」
おっさんはフッと笑うと、
「まず水な。
この山の水はとても綺麗で美味しい」
「そして、肉と魚。
鶏は放し飼い――もちろん卵もうめェ。
イノシシ、クマもいい食べ物食っている野生――うめェ。
魚も綺麗な川の魚だ――うめェ」
「野菜も、俺がこの山で作った。
美味い水と大自然で作った野菜だ。
当然うめェ」
「そして」
おっさんは僕を見た。
「おまえ――客」
「えっ?」
「こんな山奥まで食べに来てくれた客。
ここに来るまでに腹ペコになったろ?
『空腹は最大のスパイス』ってやつだ」
僕は感動して、おっさんを見つめた。
そうか、おっさんは一番大事なことを――『一生懸命頑張った後に食べる食べ物の美味しさ』を――僕たち客に教えようと、こんな山奥で店を……。
「あとは俺の腕だ!」
と言うおっさんに僕は暖かく微笑んだ。
「そうですね!」
「三つ星シェフだから」
「……」
しばらくフリーズした後、
「……えっ?」
「俺、三つ星レストランで15年料理長を務めたシェフ」
「……」
それがいちばんの『美味しさ』の理由じゃないか……?(結局)
おっさん、下界で働いてくれ。
と思った。
〈終〉
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