ブルームーン-青、君に染まる-

藍沢ルイ

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第一章

雨に染まるグラス

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大学2年の七瀬星空(ななせあかり)は、大学の課題やバイトに追われて、それなりに充実していたが、どこか物足りなさを感じていた。
すると、行き交う学生たちが、とあるバーの話をしていた。それは、不意に耳にした「行けば沼に落ちる」と噂のバーだった。

記憶をたどりながら、街のはずれにでると、濡れたアスファルトが反射して、仄かに光る看板が目に入った。

「&barか……」

その看板を見て足が止まったのは、きっと、心のどこかで癒しを求めていたからなのかもしれない。
親の期待に応えようとして、自分の生き方がわからない。何をしてもうまくいかない。そんな自分を変えたくて、心理学部のある大学に入ったのに、現実はなかなか追いつかない。

&barの扉を開けると、ゆるやかなジャズと柔らかな照明に包まれた空間が広がった。カウンターに立っていたのは、赤茶色の髪を緩く結んだ静かな雰囲気の店主だった。彼はガラス細工のような繊細さを纏っていて、思わず目を奪われるほどだった。

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

その声は低く、けれど優しい余韻を残す。視線があった瞬間。星空の心はわずかに揺れた。

「……はい。あの、初めてなんですけど」

「大丈夫ですよ。よければ、カウンターへどうぞ」

静かに微笑んだその人は、沼澤蓮志(ぬまさわれんじ)。けれどその笑みにはどこか掴めない寂しさが見えたのは気のせいだっただろうか。

「飲み物、なにかおすすめはありますか?」

「そうですね、あなたに合うものを作ってみましょうか」

しばらく沈黙が続いた、でも僕にはそれが心地良かった。

「こちらが、今のあなたに合うと思います。」
_____アズールです。

丁寧に注がれたのは、この夜のような深い青に染まるカクテル。
彼の作るカクテルも、その沈黙も、静かな雨音のようだった。

何か失ったものを抱えている、そんな背中をしていた。
この人のことがもっと知りたい。
気づいた時には、そう思っていた。


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