ラストスパート

ひゅん

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ライバル

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 そんなある日、給食の時間。この日藤波は給仕係であった。重い汁物を持って給食センターから教室に向かっていく時に藤波の隣の席の山田滋子という女の子がこんなことを言った。
「藤波って星崎君と仲良いよね」
「まあね」
「星崎君、毎日マラソン大会のために夜に走り込みしているみたいね」
 山田滋子の母親と星崎の母親とは仲が良かった。滋子が言うことだから間違いない情報だった。星崎が影で努力していたのは知っていた。ほらやっぱり、と藤浪は思った。そうでなければこんなに短期間であんなに速くなるなんておかしい。
「最近、星崎君朝練のタイムかなりいいよな」
「私のお母さんが言っていたんだけど、星崎君お母さんに藤波君の話をよくするそうだよ」
「話? 僕の?」
「星崎君、あんたをマラソン大会で抜くことが目標なんだって。それで毎日お父さんと一キロを五本も走っているそうよ」
 星崎君が僕を抜く? 一キロを五本も走っている? 藤波は複雑な感情を抱いた。藤波にとって、星崎とのかけっこの差は歴然だった。      
 星崎の目標はマラソン大会二十位だった筈。藤波は思った、星崎が自分のペースについてこれるわけがない。短期間でこの差が埋まるわけがなかった。藤波は内心、星崎のことを鼻で笑った。しかし、それにしても確かに星崎はみるみるタイムが縮まっている。星崎は結果を残している。藤波に危機感はなかった。だが、星崎の努力は認めざるをえなかった。星崎は努力の人であった。小学三年に上がって、星崎と毎朝連れだって登校して、時々家にもお邪魔したり学校の休み時間も一緒にいたりして、藤波は星崎が努力の人だということをありありと感じた。しかし人間努力をすれば結果が伴うわけではない。藤波は今まで努力が実を結ぶという経験をしたことがほぼなかった。だから星崎が望むことをちゃんと形にして結果を残していることに感心した。
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