199 / 244
コルドナ辺境拍領
198話 魔王は突然降臨する【クロト視点】
しおりを挟む
ノンナは今更ながらになぜ領主さまと俺がこんなに親しいやり取りをしているのかと俺に質問してきた。今更か。
「領主さまとは昔なじみなんだよ」
俺がそう言うと苦笑しながら閣下も思い出すようにその問いに答える。
「そうだな、付き合いからして15年くらいか。」
「そうですね―――。あの時はロレンシオ閣下が、次期領主とか知らなかったから、くそ生意気な冒険者と思って魔物と一緒に討伐しそうになりましたね」
「いや、あれ俺のトラウマだからな。あの時周りに居るどの魔物よりもお前が恐ろしかった。伝承の魔王が現れたって死を覚悟したからな」
「魔王とか失礼ですよ」
と言いながらあながち間違ってないけれどなと心の奥で苦笑した。
「そうなんですか…」
どうにか一言返事をしたノンナだが、俺たちのポンポンとやり取りする会話にノンナも閣下の後ろで控えているペンツィネン氏も目に見えてびっくりしているのが分かった。そんな反応を見て閣下は豪快に笑いだした。
「ハハハハ、ノンナ嬢の反応が普通だ。早々領主と冒険者が友人には、なりえまい。
―――そう言えば調理隊に居たお前の娘は、偉く肝の据わった娘だったぞ。唐揚げのリクエストが、一晩で箱一杯になってな、もう一度メニューに入れたいと打診したんだが、他の料理人がすでに予定立てているから無理ですと言い放たれたわ。流石お前の娘だと感心したぞ」
その言葉に悪意は無いと分かっているが、俺の目はスッと座った。
「何カナメに無茶言ってるんですか」
俺の表情の変化に笑いながら「お前ホント娘が大切なんだな。良かったよかった」と、そう言ってとても嬉しそうにしていた。
そんな和やかな雑談中に応接室のドアが叩かれた。
トントントン。
音を聞き、外に向かって閣下が声を掛ける。
「なんだ?急ぎか?今来客中だが」
そう言った言葉に、扉の外から申し訳なさそうな声が返ってきた。
『申し訳ありません冒険者ギルドから至急の知らせが入りまして』
その言葉を聞いた途端、ペンツィネン氏が動き小さく扉を開けた。
「緊急とは、魔物か?盗賊か?」
ペンツィネン氏の言葉に外に居る家令は言いよどみ
「あ…いえ、お客様が…」
そう答えたが、その言葉を遮ったのは閣下だった。
「構わぬ、この者も冒険者だ。緊急を要する時、意の一番に動いてくれる」
閣下の言葉を聞き、ペンツィネン氏が小さく開けていた扉を大きく開けて、伝えに来た家令を部屋に入るよう促した。部屋に入ってきた家令は一礼した後、使者から伝えられた伝言を読み上げた。
「冒険者ギルドから、騎士団員の子女、子息数名で、未成年の冒険者連れ去り未遂が発覚。連れ去られそうになった孤児院の少年と、5歳の少女と連れの幼児は保護しましたとのことです。加害者はギルド長室で面談しているとの事。ご親族のお迎えをお願いしますとの事です」
家令の言葉を聞いた途端、部屋の空気は時が止まったような状態になった。
俺はその凍った空気をさらに重くする言葉を紡ぐ。
「被害者――冒険者ギルドに出入りする5歳の少女なんて…ほぼカナメだけだよな。しかも連れの幼児…コーだな。じゃあ孤児院の少年はアルマか…
ハッハハハ加害者の名前を全員教えろ。俺が始末をつける」
俺の言葉に、閣下が俺を制するように言う。
「いや、クロト落ち着け。今すぐ冒険者ギルドに人をやるから、お前の本気は子供達には一生の傷になるから!!」
その言葉に俺の身体から、熱とも冷気ともつかぬものが溢れ出し、全身を包み込む。
そのまま閣下に向き直ると、先ほどまで軽口を叩いていた友の顔が――一変していた。
鋭い視線がぶつかり合った刹那、空気が震え、殺気が走る。
次の瞬間、ノンナが青ざめた顔で俺の服を引き、叫ぶように声を上げた。
「シッ!師匠!!落ち着いてください!!詳細を聞きましょう!まずは経緯を聞かなくちゃカナメちゃんに叱られますよ!下手すると嫌われますよ!」
ノンナの言葉に溢れ出ていた何かがシュンと消え去り…
俺は力なくしゃがみ込んだ。
「ぐぅ…カナメに…嫌われるのは嫌…」
しゃがみ込んだ俺を皆が恐る恐る見入っていた。
少しして、ふらっと立ち上がった俺は部屋に居る全員に聞こえる声で断言した
「分かった詳細を聞く…冒険者ギルドに一緒に行くから立ち会わせろよ!」
そう言った俺の目には涙が溜まっていたのをその場に居た全員が目撃した。
しかし皆命が惜しいので誰も何も言わなかったそうだ。20年後に閣下が酒の席で愚痴っていたのを聞いたものが居るとかいないとか。
「領主さまとは昔なじみなんだよ」
俺がそう言うと苦笑しながら閣下も思い出すようにその問いに答える。
「そうだな、付き合いからして15年くらいか。」
「そうですね―――。あの時はロレンシオ閣下が、次期領主とか知らなかったから、くそ生意気な冒険者と思って魔物と一緒に討伐しそうになりましたね」
「いや、あれ俺のトラウマだからな。あの時周りに居るどの魔物よりもお前が恐ろしかった。伝承の魔王が現れたって死を覚悟したからな」
「魔王とか失礼ですよ」
と言いながらあながち間違ってないけれどなと心の奥で苦笑した。
「そうなんですか…」
どうにか一言返事をしたノンナだが、俺たちのポンポンとやり取りする会話にノンナも閣下の後ろで控えているペンツィネン氏も目に見えてびっくりしているのが分かった。そんな反応を見て閣下は豪快に笑いだした。
「ハハハハ、ノンナ嬢の反応が普通だ。早々領主と冒険者が友人には、なりえまい。
―――そう言えば調理隊に居たお前の娘は、偉く肝の据わった娘だったぞ。唐揚げのリクエストが、一晩で箱一杯になってな、もう一度メニューに入れたいと打診したんだが、他の料理人がすでに予定立てているから無理ですと言い放たれたわ。流石お前の娘だと感心したぞ」
その言葉に悪意は無いと分かっているが、俺の目はスッと座った。
「何カナメに無茶言ってるんですか」
俺の表情の変化に笑いながら「お前ホント娘が大切なんだな。良かったよかった」と、そう言ってとても嬉しそうにしていた。
そんな和やかな雑談中に応接室のドアが叩かれた。
トントントン。
音を聞き、外に向かって閣下が声を掛ける。
「なんだ?急ぎか?今来客中だが」
そう言った言葉に、扉の外から申し訳なさそうな声が返ってきた。
『申し訳ありません冒険者ギルドから至急の知らせが入りまして』
その言葉を聞いた途端、ペンツィネン氏が動き小さく扉を開けた。
「緊急とは、魔物か?盗賊か?」
ペンツィネン氏の言葉に外に居る家令は言いよどみ
「あ…いえ、お客様が…」
そう答えたが、その言葉を遮ったのは閣下だった。
「構わぬ、この者も冒険者だ。緊急を要する時、意の一番に動いてくれる」
閣下の言葉を聞き、ペンツィネン氏が小さく開けていた扉を大きく開けて、伝えに来た家令を部屋に入るよう促した。部屋に入ってきた家令は一礼した後、使者から伝えられた伝言を読み上げた。
「冒険者ギルドから、騎士団員の子女、子息数名で、未成年の冒険者連れ去り未遂が発覚。連れ去られそうになった孤児院の少年と、5歳の少女と連れの幼児は保護しましたとのことです。加害者はギルド長室で面談しているとの事。ご親族のお迎えをお願いしますとの事です」
家令の言葉を聞いた途端、部屋の空気は時が止まったような状態になった。
俺はその凍った空気をさらに重くする言葉を紡ぐ。
「被害者――冒険者ギルドに出入りする5歳の少女なんて…ほぼカナメだけだよな。しかも連れの幼児…コーだな。じゃあ孤児院の少年はアルマか…
ハッハハハ加害者の名前を全員教えろ。俺が始末をつける」
俺の言葉に、閣下が俺を制するように言う。
「いや、クロト落ち着け。今すぐ冒険者ギルドに人をやるから、お前の本気は子供達には一生の傷になるから!!」
その言葉に俺の身体から、熱とも冷気ともつかぬものが溢れ出し、全身を包み込む。
そのまま閣下に向き直ると、先ほどまで軽口を叩いていた友の顔が――一変していた。
鋭い視線がぶつかり合った刹那、空気が震え、殺気が走る。
次の瞬間、ノンナが青ざめた顔で俺の服を引き、叫ぶように声を上げた。
「シッ!師匠!!落ち着いてください!!詳細を聞きましょう!まずは経緯を聞かなくちゃカナメちゃんに叱られますよ!下手すると嫌われますよ!」
ノンナの言葉に溢れ出ていた何かがシュンと消え去り…
俺は力なくしゃがみ込んだ。
「ぐぅ…カナメに…嫌われるのは嫌…」
しゃがみ込んだ俺を皆が恐る恐る見入っていた。
少しして、ふらっと立ち上がった俺は部屋に居る全員に聞こえる声で断言した
「分かった詳細を聞く…冒険者ギルドに一緒に行くから立ち会わせろよ!」
そう言った俺の目には涙が溜まっていたのをその場に居た全員が目撃した。
しかし皆命が惜しいので誰も何も言わなかったそうだ。20年後に閣下が酒の席で愚痴っていたのを聞いたものが居るとかいないとか。
163
あなたにおすすめの小説
できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―
愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。
彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。
魔法は使えない。
体は不器用で、成長も人より遅い。
前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。
けれどこの世界には、
見守り支えてくれる両親と、
あたたかい食卓があった。
泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、
彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。
これは、
最強でもチートでもない主人公が、
家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す
生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。
……の、予定です。
毎日更新できるように執筆がんばります!
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。
藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。
気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。
訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。
そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。
魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。
連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。
それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。
一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。
本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。
家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、
優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、
俺は必死に、置いていかれないようについていった。
自分には何もできないと思っていた。
それでも、少しでも役に立ちたくて、
誰にも迷惑をかけないようにと、
夜な夜な一人でダンジョンに潜り、力を磨いた。
仲間を護れるなら…
そう思って使った支援魔法や探知魔法も、
気づかれないよう、そっと重ねていただけだった。
だけどある日、告げられた。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、優しさからの判断だった。
俺も分かっていた。だから、何も言えなかった。
こうして俺は、静かにパーティを離れた。
これからは一人で、穏やかに生きていこう。
そう思っていたし、そのはずだった。
…だけど、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、
また少し、世界が騒がしくなってきたようです。
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる