安全第一異世界生活

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旅と出会いと冒険と

58話 ゴリウサを制する者

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わしは、この北部地方 アズノール山の麓の街。イクスに住むAランク冒険者 ガイ

 この地域はアズノール山からの山の恵みに支えられている。
だから山の生き物を守るため、魔物であっても必要以上間引きすることは無く今までやってきたが、此処近年ウサギが増えすぎている。
毎年大量に街まで下山レースをするウサギたち。そのたびに亀の死骸も増えていく。
 北部地方を収める辺境伯のジーグガング様もウサギの討伐隊を出そうと今年決議されたが、ウサギはあの体躯で力も強い、毛も魔法を通しにくく並みの魔法使いでは歯が立たない。基本ウサギ討伐はCランク以上の冒険者が対象とされるが、北部地方にはダンジョンもなくランクの高い冒険者はそう多くない。

今年もウサギの下山レースが始まり、人数を集め下山してきたウサギの討伐に出ようと門の側に集まっていると、ひときわ背の高い男が少女を肩車し討伐隊の中にいる。
いやいや!何をしているんだ子供を連れてこんな所に!子供が心配なら参加は強制ではないし宿に預けてくればいいものを何を考えているのか!
わしは急いで男に近づき、声をかけた。
 
「おいおい!!ガキと一緒とかあんたふざけてんのか?獰猛なウサギ相手だぞ!」

わしの声掛けに男と、子供は同時にこちらを見て、男は目を細め空気をとがらせてきた。覇気が使えるのかこの男
子供はきょとんとして、わしと男を交互に見ている。かわいい子だまだ4,5歳と言ったところか。こんな危ない場所から離さなければ。

「ガキが可愛いならキチンと安全な場所に預けろ!!」

再度声掛けしたとたん、男からは冷たい空気は霧散し、子供は嬉しそうにニコニコし始めた。わしを見て笑う子供が居るとは、初めてだ。

「心配ありがとう。この子は常に結界張っているんだ。」

わしは驚きで口が閉まらない。こんな幼子がまさか結界魔法が使えるとは、そんなまさか…

「結界?」

「はい!ドラゴンの攻撃も弾きます」

子供の言葉にわしは絶句した。ドラゴンの攻撃をはじく結界などこの国に張れるものは居たか?いや、もしかしてこの幼子はエルフの類やもしれん。見た目と年齢が違うのか、エルフなら魔法にも秀でているのも道理だろう。なるほどなるほど。
男を見るとニコニコと笑顔を張り付けている。あぁなるほどなるほど。

「肩車で結界内に居るんだな。なるほど。安全ならいいんだ。」

わしは一人納得してその場を去った。その後ギルドスタッフに、男のランクを聞いたら

「二つ名持ちのAランク冒険者 黒烏の暗殺者 さんですよ」

二つ名持ちとは…そうか。お手並拝見と行こうか。

門にはまたドーン!ドーン!とカメが当たる音が響き始めた。その時先ほどの男が外壁を上る階段をヒョイヒョイと軽く上がっていく。子供を乗せたまま。上から攻撃魔法でも放つのだろうか、わしは急いで後を追う。わしを見て複数人の後輩冒険者たちが続き付いてくる。
外壁上に続く階段を登り切った時見たものは、騎士のように少女の前に膝を付き少女の願いを聞く男と少女。

「何なりとお申し出ください、愛しの娘の為ならば どんな事でも叶えて見せましょう」

そう騎士のように言った男の言葉…あぁやはり子供だったのか。じゃあ、男もエルフなのか?見た目人族だが…わしが思考していると、高い子供の声が聞こえる

「私の勇敢なトー様ならあの、哀れな亀たちの仇を討ってくださるでしょう?あの横暴なゴリウサ達を懲らしめてやってください」

少女はまるでどこぞの姫君の様な言い回しで父様と呼び男にお願いをした
男は外壁の上に飛び乗って娘に笑顔を向け

「では、愛しの娘はここで俺の勇姿を観覧していてくださいな。ハハ」

そう言って後ろ向きに飛び落ちた。

落ちた!!!

わしたちは外壁に急いで駆けつけたが男が落ちて数秒だ。数秒で…
その場に立っているのは男だけだった。嘘だろ。
少女はニコニコしながら父親を見ている。それが当然かのように……
男はウサギに口上を述べる

「お前らおいたが過ぎるようだな。弱いものと遊ぶより強者に挑め。俺が相手してやるぞ!!」

男がそう言葉にしたとたん黒い魔力が膨れ上がり次の瞬間息が止まるような恐怖を感じた。わしたちは皆膝をついていた。
敵わない。
圧倒的な力の波動。
脂汗を浮かばせながら必死に顔を上げると少女は平気な顔で男に手を振っていた。
この圧倒的な力の影響を全く受けていないと…そんな…そんな馬鹿な…

「嬢ちゃんは、あの覇気が平気なのか!?」

少女はキョトンとした顔をして上を見た。「え?」

「ハキ?」「ウハハ?」

少女のかぶっている帽子から声がした?え?え?なんだどういうことだ?
あの男もそうだが、この少女も何かおかしい
わしたちは息をのみ無言で少女を見た。少女は困り顔で父親に目線を落とす。目線の先の父親の周りに居たウサギたちは、跡形もなく消えていた。

「かなめ~~~亀たち介抱するなら階段から降りておいで!」

「あ!はーい行く!」

少女は駆け足で階段を下りていった。
俺たちは冷や汗が渇かないまま蛇に睨まれたカエルのごとく父親から目が離せない。父親はニッコリ笑って

「ウサギって買い取りできます?」

俺たちは全員コクコクと首を縦に振った

「良かった♡カナメに美味しいもの食べさせてやろう。」

そう言った男の顔は普通の父親の顔だった。
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