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イルグリット王国 魔道具編
145話 トーさんとウィルの邂逅
コンコンと部屋の扉が叩かれた。…障子なのに叩くんだ…私がそんな事を考えていると、シンさんが
「どうぞ」と声掛けるとお茶とお菓子が運ばれてきた。目の前に置かれたお菓子とお茶を見てパッと笑顔になる紬木ちゃん。キョロキョロとこちらに目を向けてくるので、
「一息つきましょう」と声を掛けると、紬木ちゃんは嬉しそうに練りきりに添えられていた黒文字楊枝を使って一口大に切っていき、一切れ口に入れて、目を閉じ幸せそうに堪能している。若い子に珍しく和菓子好きなんだなっとほっこり見ていると、シンさんが
「アタシ作法とか分からないニャ」
優雅に食べる紬木ちゃんを見て、しゅんっとする。そんなシンさんに
「あぁ、紬木ちゃんのは、異世界のマナーだから。好きに食べたらいいよ。手づかみでも良いし。わたしも一般人だったからそんな風に食べてたよ」
私の言葉に安心したのか、練りきりを片手で持ってもぐっとそのまま小さな一口を食べて、シンさんは目を見開いてキラキラさせる。
「おいしぃーー!!」とほっぺを押え悶えた。そんな姿を微笑ましそうに見ながらお茶を飲む私を不思議そうに見てくるウィル。
「そなたは幼児とはとても思えんな。言葉使い、気遣い、態度、どれをとっても大人の女性に感じられる」
私はフッと笑うと、ウィルに向かって、
「女性の年齢は見た目に関わらず安易に詮索するものではないわ、王太子殿下」
そう言ってウィンクする私に、ウィルは楽しそうに笑った。
「そうか、ハハハそうだな。失礼した小さなレディー。私の事はウィルでお願いするよ」
私たちのやり取りにシンさんも、紬木ちゃんも不思議そうな顔をする。この二人は擦れてないところが良いね。さて、お祭りまであと数日のこの時に、フリムストの王太子がこの国を訪れたのは何を意図するのか…私は真剣な顔をウィルに向けた。
「それで。あなたの立場で、今この国がどれ程の脅威に晒されているのかご存じないとは思えませんが。下手するとこの街は祭り終わりに魔物の襲撃を受ける。違いますか?」
「小さなレディーはそんなことまで知っているのか…そうだな。私はそれを止めたくて…紬木の力を借りてこちらにやってきた」
「あぁ、それで王宮ですか。なるほど、でもウィル、それは下手をするとあなたの命が危ないと言う事は解っている?」
「小さなレディー、私が守るべきものは自分の身でも、国王でもない。力を持たぬ民なのだ。それはこのイルグリット王国も同じだろう…このままでは多くの血が流れる…それを私は止めたいのだ」
「ウィル様そんな…」
ウィルの言葉に紬木ちゃんはウィルの手を取り必死で首を横に振る。そんな紬木ちゃんの泣きそうな瞳を覗き、重なった手を優しく包み込み愛おしそうに微笑んだウィル。そんなウィルは手を離さないまま私に再度目を向け、自分の思いを話し始めた。
「今回、馬鹿な事を考え…あの勇者や、紬木、あともう一人聖女と言うあの女を無理やりにこの世界に呼び込んだのは、私の父の失策だ。あとの二人は嬉々としてこの世界になじんだが、紬木の様に戦いに身を投じることに忌避感がある者を戦わせるなど…なんと自分勝手で愚かしい行為である事か…自国の事、ひいては、この世界の事は、この世界で生きるものが解決せねばいけない事だと思わないか?」
私にそう言い切ったウィルは、一切の迷いを含まない、真っ直ぐな視線を私に投げかけてきた。 その瞳に、自分さえも顧みない言葉に、応援をしたい。力になってあげたいと、私は心から感じ、ウィルに向かって優しい笑みを向けた。するとスパン!と障子が開いた。
「その意見、俺も賛成だ。最近の王族にしては、筋の通った奴がいるじゃねえか。だいたい事あるごとに異世界召喚だ、転生者・転移者だとこの世界に生きる者たちは他人を頼りすぎる。自分たちの世界の問題は自分たちで解決しないとな。」
いきなり登場したトーさんはニカっと笑ってウィルを見た。ウィルは警戒心を持ちながら、トーさんをじっと見ている。
「俺の名前はクロト。とりあえず冒険者は休業中のカナメの養父だ」
「……そうか。私はウィルフレッド・レミア・フリムスト、ウィルと呼んでくれ。クロトよろしく頼む」
ウィルは立ち上がり手を差し出してきた。トーさんは抱えてる大きい何かを片手に抱え直し、ウィルと握手をした。
「トーさん何抱えてるの?」
聞きながら席を立ちトーさんの側に行く。
「迷子の泣き虫坊主だ。下水道でわんわん泣いててな…連れてきたんだ。落ち着いたら騎士団に連れて行こうと思ってる」
私は不思議そうに子供を覗く。黄金色の髪に既視感を感じた…あれ?あれれ?こんなきれいな黄金の髪ってそうそうないよね…私はウィルをみて、子供を見る。頭をひねる。そんな私を不思議に思ったのか、トーさんは子供を見てウィルを見る。
「なんだ、お前さんの知り合いか?髪が同じ色だ」
「…この色はわが国では王族しか出ない色なんだが。失礼」
そう言って抱えられている子供を見てウィルは目を見開き大声を上げた。
「マルリシオ!!なんでお前が此処に居る!!」
「どうぞ」と声掛けるとお茶とお菓子が運ばれてきた。目の前に置かれたお菓子とお茶を見てパッと笑顔になる紬木ちゃん。キョロキョロとこちらに目を向けてくるので、
「一息つきましょう」と声を掛けると、紬木ちゃんは嬉しそうに練りきりに添えられていた黒文字楊枝を使って一口大に切っていき、一切れ口に入れて、目を閉じ幸せそうに堪能している。若い子に珍しく和菓子好きなんだなっとほっこり見ていると、シンさんが
「アタシ作法とか分からないニャ」
優雅に食べる紬木ちゃんを見て、しゅんっとする。そんなシンさんに
「あぁ、紬木ちゃんのは、異世界のマナーだから。好きに食べたらいいよ。手づかみでも良いし。わたしも一般人だったからそんな風に食べてたよ」
私の言葉に安心したのか、練りきりを片手で持ってもぐっとそのまま小さな一口を食べて、シンさんは目を見開いてキラキラさせる。
「おいしぃーー!!」とほっぺを押え悶えた。そんな姿を微笑ましそうに見ながらお茶を飲む私を不思議そうに見てくるウィル。
「そなたは幼児とはとても思えんな。言葉使い、気遣い、態度、どれをとっても大人の女性に感じられる」
私はフッと笑うと、ウィルに向かって、
「女性の年齢は見た目に関わらず安易に詮索するものではないわ、王太子殿下」
そう言ってウィンクする私に、ウィルは楽しそうに笑った。
「そうか、ハハハそうだな。失礼した小さなレディー。私の事はウィルでお願いするよ」
私たちのやり取りにシンさんも、紬木ちゃんも不思議そうな顔をする。この二人は擦れてないところが良いね。さて、お祭りまであと数日のこの時に、フリムストの王太子がこの国を訪れたのは何を意図するのか…私は真剣な顔をウィルに向けた。
「それで。あなたの立場で、今この国がどれ程の脅威に晒されているのかご存じないとは思えませんが。下手するとこの街は祭り終わりに魔物の襲撃を受ける。違いますか?」
「小さなレディーはそんなことまで知っているのか…そうだな。私はそれを止めたくて…紬木の力を借りてこちらにやってきた」
「あぁ、それで王宮ですか。なるほど、でもウィル、それは下手をするとあなたの命が危ないと言う事は解っている?」
「小さなレディー、私が守るべきものは自分の身でも、国王でもない。力を持たぬ民なのだ。それはこのイルグリット王国も同じだろう…このままでは多くの血が流れる…それを私は止めたいのだ」
「ウィル様そんな…」
ウィルの言葉に紬木ちゃんはウィルの手を取り必死で首を横に振る。そんな紬木ちゃんの泣きそうな瞳を覗き、重なった手を優しく包み込み愛おしそうに微笑んだウィル。そんなウィルは手を離さないまま私に再度目を向け、自分の思いを話し始めた。
「今回、馬鹿な事を考え…あの勇者や、紬木、あともう一人聖女と言うあの女を無理やりにこの世界に呼び込んだのは、私の父の失策だ。あとの二人は嬉々としてこの世界になじんだが、紬木の様に戦いに身を投じることに忌避感がある者を戦わせるなど…なんと自分勝手で愚かしい行為である事か…自国の事、ひいては、この世界の事は、この世界で生きるものが解決せねばいけない事だと思わないか?」
私にそう言い切ったウィルは、一切の迷いを含まない、真っ直ぐな視線を私に投げかけてきた。 その瞳に、自分さえも顧みない言葉に、応援をしたい。力になってあげたいと、私は心から感じ、ウィルに向かって優しい笑みを向けた。するとスパン!と障子が開いた。
「その意見、俺も賛成だ。最近の王族にしては、筋の通った奴がいるじゃねえか。だいたい事あるごとに異世界召喚だ、転生者・転移者だとこの世界に生きる者たちは他人を頼りすぎる。自分たちの世界の問題は自分たちで解決しないとな。」
いきなり登場したトーさんはニカっと笑ってウィルを見た。ウィルは警戒心を持ちながら、トーさんをじっと見ている。
「俺の名前はクロト。とりあえず冒険者は休業中のカナメの養父だ」
「……そうか。私はウィルフレッド・レミア・フリムスト、ウィルと呼んでくれ。クロトよろしく頼む」
ウィルは立ち上がり手を差し出してきた。トーさんは抱えてる大きい何かを片手に抱え直し、ウィルと握手をした。
「トーさん何抱えてるの?」
聞きながら席を立ちトーさんの側に行く。
「迷子の泣き虫坊主だ。下水道でわんわん泣いててな…連れてきたんだ。落ち着いたら騎士団に連れて行こうと思ってる」
私は不思議そうに子供を覗く。黄金色の髪に既視感を感じた…あれ?あれれ?こんなきれいな黄金の髪ってそうそうないよね…私はウィルをみて、子供を見る。頭をひねる。そんな私を不思議に思ったのか、トーさんは子供を見てウィルを見る。
「なんだ、お前さんの知り合いか?髪が同じ色だ」
「…この色はわが国では王族しか出ない色なんだが。失礼」
そう言って抱えられている子供を見てウィルは目を見開き大声を上げた。
「マルリシオ!!なんでお前が此処に居る!!」
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