ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
61 / 2,518

第61話 クエスト失敗

しおりを挟む
 フレデリクの街に到着したのは、夕焼けが見えるような時間帯であった。この時間帯は、冒険者が多く帰ってくる。暗くなると門が閉まってしまうため、日帰りで受けられるクエストの場合は、門が閉まる前に帰ってこれるように調整して動いているのだ。

 朝はクエストを受けるだけなので処理は簡単だが、この時間の場合はクエストの成否や報酬の計算・買取で時間がかかるので、朝の込み具合とは違い時間がかかる。

 四つ開けている受付が全部埋まり各列三組ほど並んでいる状態だ。受付にミリーがいたのでその列に並ぶことにした。

 さすがに全員の二十五人で並ぶわけにもいかないので、俺とカエデとピーチで並ぶことにして、他のメンバーは屋敷へ帰ってゆっくりしているように声をかけた。レイリーは護衛役という感じだな。おそらくシルキーたちは夕食の支度を喜々として始めるだろうから、娘たちは手伝いをすることだろう。

 四十分程待ったところで自分たちの順番が回ってきた。

「あれ? シュウ君じゃないですか、獣道の森の調査もう終わったんですか?」

「いえ、ちょっと問題が発生したのでクエストを中断して報告しに来ました」

「え? どういうことですか? 急遽の指名依頼を故意にクエスト中断するのであれば、多額の違約金が発生しますよ?」

「それは覚悟の上です。みんなを危険な目にあわせてまでクエストを遂行するくらいなら、違約金を払います」

「そうですか……一先ず、報告してもらっていいですか?」

 この三日間で狩った魔物の数は七〇〇匹を超えたことを話すと、ミリーさんの顔が青くなっている様子が見れた。

 そのうちの三割以上がランクBの魔物だと知り、さらに顔色が悪くなっていたが、最後にランクAの魔物のヘビーグリズリーが現れたことと、ギルドの情報では、普段の生息域より一〇〇キロメートル程手前に位置するであろうことを話すと、ミリーさんは慌ててギルドマスターを呼びに行った。

 ギルドマスターを連れて戻ってくると、個室へを誘導される。

「シュウ君すまないね、もう一度確認のためにミリー君に話した内容を聞かせてもらうね」

「わかりました」

「まず、今回のクエストを受けて三日間で魔物の討伐数が七〇〇匹を超えたというのは事実かね?」

 肯定の意味で頷く。

「疑っているわけじゃないんだが、三つともBランクパーティー並みの実力があるとはいっても、三日間で七〇〇匹は多すぎる。討伐部位やドロップ品は持ち帰ってきているかな?」

「もちろんです。全部持って帰ってきたかはわかりませんが、可能な限り回収してきています」

「持って帰ってきているなら、疑いようもないな。それで、七〇〇匹のうちの約三割二〇〇匹以上がランクBの魔物っていうのは本当かい?」

「事実です。もちろん討伐部位もきちんと持ち帰っています」

「なんていう事だ……今回の緊急クエストはAランクパーティーでも荷が重いクエストだったのか。シュウ君たちには本当に申し訳ない。結果的にはクエスト失敗になってしまうが、ギルド側のクエストのランク査定が間違っていたために起きた、クエスト破棄なので評価に影響を与えることはない。

 よく情報を持ち帰ってくれた。この情報はギルドの本部に伝えます。ちかく、シングル以上の冒険者が数名とAランクのパーティーが数チームで調査に当たると思われます。Bランク相当のパーティー三チームで、Bランクの魔物二〇〇匹以上とAランクの魔物をよく倒せましたね」

「え? Bランク冒険者って一対一でBランクの魔物を倒せるんじゃないんですか? それなら二〇〇匹が同時に襲ってこなければ、それなりに倒せると思うんですが?」

「ミリー君、シュウ君にきちんとその辺レクチャーしてなかったのかね?」

「はい……Cランクに上がった時間も早かったですし、Bランクになっていないので、まだ説明していませんでした。すいません」

「シュウ君、その辺の話もしておこうと思うのだが、先に討伐した魔物の査定をしようと思うが、いいだろうか? ランクの高い魔物が出てきて危険が高いことが確認されました。

 クエスト自体は失敗扱いになりますが、行く前に約束していた一〇〇〇万フランは報酬として払わせていただきます。予想外の魔物の数ですので、討伐した魔物の査定も少し上乗せさせていただきます」

「えっと、クエスト放棄したのに報酬が出るんですか? 対外的には成功扱いみたいな言い方をされているんですがいいんですか?」

「問題ないというより、こちらが謝罪する側なのです。『危険なクエストを依頼してすいません』と許しを請わないといけないのです。申し訳なかった。今回の場合は、クエストのランクに無理があったので放棄というよりは、遂行困難なクエストでありギルド側の不備なので放棄しても問題はないんです」

「良かった。違約金覚悟での報告だったので得した感じですね。討伐部位は倉庫の方で出しにいきます」

「よろしく頼む」

 買取カウンターの奥にある倉庫に収納の腕輪の中に入れていた七〇〇匹オーバーの魔物の討伐部位とドロップアイテムの一部(食材以外のモノ)を提出して元の部屋へと戻っていく。

 部屋に戻ったシュウたちは、ギルドマスターからランクについての説明を受ける事になった。要約すると
冒険者のランクCまでは、魔物の同ランクを一対一で倒せることが最低条件。

 冒険者のランクB以上は、戦闘力も必要だが冒険者としての品位が求められるようになってくる。

 魔物のランクB以上は、冒険者個人のランクではなく同ランクパーティーで倒せることが条件。なので一対一で倒せる場合、戦闘能力的にはAランクは見込める範囲だとのこと。

 Aランクの冒険者が八人集まっても、Aランクの魔物との連戦は良くても五匹が限度だろうとのこと。Aランクのパーティーで連携が取れていても十匹がいいところではないかとのこと。

 シングル以上の冒険者なら一人で、Aランクの魔物を複数相手にしても圧勝することができる。本当の意味で人外。

 Aランク冒険者とシングル以上は、想像している以上に戦闘能力に差があるようだ。もちろん魔物との相性もあるだろうが、それすらも覆して圧勝できるってことだよな。

 Sランク以上の魔物だとシングル以上の相性のいい冒険者を集めてパーティーを組んで討伐するらしい。ちなみに、冒険者はシングル・ダブル・トリプルと呼ばれるが、魔物はS・SS・SSSと表記され区別して呼ばれている。

「何となく理解できました。俺が苦労して倒した変異種のホモークは例外としても、Aランクの魔物は本来Cランクの俺たちは、相手にするべきではなかったんですね。だれも大きな怪我をしなくてよかった」

「将来有望な冒険者が無事でよかったです。ご迷惑をおかけしました。今後もよろしくお願いします」
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...